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梅々

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瞑想の森

最近パソコン触ってません。カウンター見たいな。そろそろいい感じじゃないかな。
というかスカイクロラ見たいです。永遠の愛・・・。いいですよね。人間にはなしえないことです。生きている限りは。





それでは連作じゃないような気もする夏・連作シリーズ二話目。もう八月か。ちょっとしか出来なさそうなペースですが。
沖土でお題は「花火」。濡れ場一応あります。
















指と指を繋いでも

口付けても

それだけじゃ足りない





火薬と空の花





「花火?」

「そう、花火」

にこやかに沖田が副長室へ入ってきたのは数分前のこと。沖田の機嫌が良いとろくなことがないと身構えたが今回ばかりは違った。
土方が背を向けている文机の上に昨日まであった書類の山は今は束ぐらいに減っていて、吸う量は減ったが換気もせず煙まみれでうっすらと霧のようになっている中、互いの顔が見えるぎりぎり、という至近距離で面を合わせ沖田の持ってきた話の内容を聞く。

「何処の花火」

「隅田川の花火」

有名どころではないか。
しかし悲しいかな、遠くはないが此の仕事故に一度足りとも行ったことがない。行ってみたい、と土方だって思わなくはない。何か良い句が出来そうだし、江戸の花というぐらいだ、期待しても裏切られないだろうし。
けれども、去年まで仕事で行けなかったのだ、今年だって行ける筈がない。
第一、沖田も土方も本日は非番ではない。バリバリ勤務が入っている。

「行かねぇよ」

「行きやしょうよ、初デートに」

「はぁ?」

そういう魂胆だったのか、と気付くのが遅かったなと自覚しつつも土方は少し呆れる。
沖田と土方が所謂“恋仲”になったのは少し前のことだ。酒を浴びる程飲まされ正体を失ったところヤられて、初めて男に掘られたという事実に打ちのめされるかと思っていた翌朝、胸のつっかえが取れたような妙な解放感に驚いた。そして気付いたのだ、とっくの昔にこの生意気でドSな餓鬼に惚れていたことを。
その日からなんとなく付き合っていることになっている。他の誰も知らないし、付き合おう、と言ったわけでもないけれど。
自分が下とは・・・・・・と、今でも思うが沖田の乱暴な抱き方にも慣れ、あろうことか他の女相手には勃たなくなってしまっている。沖田には決して言えないが。

「ねぇ、デート」

「仕事あんだろ」

「近藤さんに言ったら、俺ら午後から非番になりやした」

「・・・」

甘い。甘すぎるだろう。何故こうも近藤さんは沖田に甘いのだろう。土方だって文句は言えない、それなりに自分も甘やかしてしまっていると思っているから。だがしかし。
局長の権限で非番に、なんて。公私混同はまずくないか。

「一昨日でかい捕物あっただろィ? それからあんたずっと書類とにらめっこしてっから、息抜きさしてやろう、って」

「・・・なら、行くか」

折角の好意なのだ、受け取らなければ、と思うのもあるが、これ以上愚図愚図して沖田の機嫌を損ねてしまったらまずいというのがでかい。
一旦部屋から沖田を追い出し、私服に着替える。

『行きやしょうよ、初デートに』

初デート。なんて新鮮な響きなのだろう。
思えば生まれてこの方、デートなんかしたことがない。
相手は既婚者ばかりだったし、未婚の女が相手のときだってあったが一夜限り、というのが多かったし。
自分が女役だとか関係なしに、初デートが楽しみになってきた。


***


「かき氷、あんたは何味にしやすか?」

「俺はいらねぇよ」

「そんなこと言わずに食いなせぇよ。あんたは・・・いちごでいっか」

俺がいちごかよ、とつっこむ気力も失せる人の多さだ。隅田川なんか建築物で見ることも出来ない、歌舞伎町の外れで花火大会とは全く関係ないらしい祭が、時間が被っているのに賑わっている。
隅田川の花火を見に行こうと言ったくせにこんな近場で何をしているのだろう。

「はい、土方さん」

「おう」

財布といちごのかき氷を渡され、財布を懐にしまうと、空いた手と手を重ねられる。
其のまま人混みの中をスイスイかきわけ、沖田は人の少ない階段の元で立ち止まった。
くるり、と振り返った沖田の眼差しが意外にも鋭く、不覚にも土方の胸がドキリと鳴る。

「そういやあんた、人混みダメでしたよね。大丈夫ですかィ?」

「ああ。・・・つーか隅田川行くんじゃなかったのかよ? こんな地元なら車乗って来なくても良かっただろ」

「旦那に穴場教わったんでさ。ちょっと歩きやすが我慢してくだせぇよ」

「万事屋に・・・?」

つい口から出た糾すような声にハッとし後悔するが今更だ。前を行く沖田の顔は見えないが繋いだ手がプルプル震えている。
万事屋を好ましく思っていないのは事実だ。だけどこう嫉妬するなんてまるで餓鬼のようで恥ずかしい。それが沖田に露見していることが更に羞恥を煽る。

「・・・笑うんじゃねぇよ」

「じゃあ、なじってほしいんで?」

「ンなわけねぇだろ!」

暗い、林の中の階段に、自分達以外の人影はない。一人なら通らないと言い切れる、こんな何か出そうな道だけれど何故か怖くはなく。
沖田がいれば幽霊なんかに恐怖心を抱くことはない、とは言い切れないがどうやらその手の心理作用らしい。正体不明の何かよりも沖田の方が恐ろしいからだろうが。
漸く階段を上り終えると、鳥居があり、仄かな松明の明かりに照らされた境内が視界に入り、背筋が粟立つ。
なんて荘厳な眺めだろう。
夜の闇の中、橙黄色に御堂が染まって天女でも舞い降りて来そうな儚さがある。

「綺麗でしょう。初めて来たとき俺でさえ寒気しやした。・・・で、あんたもこうゆうの好きだろうから」

「・・・すげぇな」

「お気に召したようで良かったでさァ」

そう言ったまま沖田は土方を連れ御堂の裏側へと向かう。
御堂の裏には木が一切なく、賑わい始めた歌舞伎町だけではなく眠りにつく江戸一帯が眺望出来た。
先客は一人もいない。確かに穴場だと思う。

「あ、始まりやすよ」

ぱぁぁ、と閃光が空を駆ける。
一瞬の沈黙の後、空に色鮮やかな花が咲き、ドドォン、と遅れて大きな音が耳に届く。

「やっぱ、花火っていいもんですよねィ」

「だな・・・」

言った途端クルリと世界が回った。耳に音は響くが花火は土方の視界に映らない。
花火の光を浴びた沖田が、視界を覆う。

「あんたも、綺麗でさ」

「・・・・・・ナニ口説いてんだよ」

「理由なんか分かってんだろィ?」

優しさなんか知らない人間がするような荒々しい口付けに応え、夢中で舌を貪り合う。ドン、ドドンと花火が咲く音の合間に濡れた音と声が耳を犯す。
とろけそうな快楽に、これから味わう此とは比べようのない快楽を思い出して体が震え、息も熱くなる。
袷の隙間からいつもは冷たいけれど熱を帯びた指先が侵入して、土方の肌を撫でる。

「ァ、っん・・・」

「ん、はァ・・・。あんたいまどんだけヤラシイ顔してっか、分かる?」

「んなの分かるわけねぇだろ・・・」

「花街のおねーさんも真っ青な破壊力ですぜ」

「な・・・っァ、」

クニ、と両胸の突端を揉まれ視界が霞む。声を出さないよう唇を噛むが、それを許さないかのように強く敏感な性器を愛撫される。久々な所為か体が言うことをきかない、肌が沖田の手に馴染み余計悦楽が体を渦巻く。
ユラユラと潤んだ視界に花火が映り、理性が蘇った。
此処は何処だ。

「っ止め、ろ・・・! ぅ、っあ・・・・・・外だ、ぞッ!」

「だからどうしたんで?」

「人来たらっ・・・!!」

「大丈夫でさァ。人来たら見せつけてやりゃあいいんで」

「ざけんなッ!!」

怒鳴ると同時に熱く脈打つそれを強く握られ、ウッと土方の息が詰まる。
晒け出した肌に触れる外気が湿っぽい。時折吹く風に揺れる木々、麓から聞こえる人々の騒ぐ声が理性を擽る。こうしているだけでジワジワと体が疼き始める。

「イヤならこのまま花火見て帰りやす? こんなんで帰ったら犯罪ですけどねィ」

「っ・・・」

そんな気は更々ないだろうに。
赤や青の幻想的な光に照らされた顔は滾る欲情を隠さず、獲物を見る獣のような鋭い眼差しで土方を見下ろす。
嗚呼、そそる。
このままお預けなど、出来る筈もない。

「好きにしろよ、総悟」

「・・・。いいんですねィ? 好きに、しやすぜ」

甘く囁かれ息が上がる。
塞き止めていた手が上下に動き、絶頂を促す。そっと沖田のものに手を伸ばすと既に硬くなっていてフ、と笑みが溢れる。

「っ土方さん?」

「余裕ねぇんならさっさとしろよ」

「・・・好きにしていいんじゃなかったんで?」

突然後孔に冷たいものが触れ、竦む体を沖田がそっと抱き締める。
入り口を解し這入ってくる指先に不快感を抱くが、なんとか堪え逸楽を探る。

「ヤル気満々だったのかよ・・・」

「言っただろィ? 寒気したって」

先の言葉には裏があったのかと、この光景に純粋な感動を抱いたのかと勝手に思い勝手にそんな感性があったんだと沖田に感動した土方は溜め息を吐こうとし失敗する。
二本目の指を食んだ体はそれに不快感ではなく快感を見出し意思とは裏腹にはしたなく腰は揺れる。
淫乱だとまた詰られてしまう。
そうは思っても止まらない。

「ッは・・・、ぁ・・・焦らしてんじゃねぇよ」

「意図してるわけじゃねぇですっての」

三本の指がバラバラに動き怡怡箇所を何度も掠る。その動きと花火の音に追いやられてゆく。
綺麗な物を純粋に楽しめなくなったのは純粋ではなくなったからか。
欲しい物を貪欲に求めてしまうのはいつかこの手から無くなる日が来ることを知っているからか。
それが綺麗で純粋な者から見れば“汚い”行為だろうとも、止められはしない。

煽る音をたて指が引き抜かれる。そんな音よりも理性を乱す表情の沖田が吐息混じりの声で名を呼ぶ。

「挿入れやすぜ」

「優しくしろよ? クソガキ」

「足腰立たなくしてやりまさァ」

グッ、と肉をかきわけ孔内を満たしていく熱をキュゥと絞る。小さく息を詰め、一際大きくなった沖田のそれがズン、と奥を突く。
痛みさえも快楽に変わってしまい、沖田の成すがまま揺さぶられ土方は甘い声をあげる。

「んぁ、っ・・・は、ァっ」

「いつもよかイイですぜ・・・っ。興奮してんで?」

「ぁっ・・・ん、ちがッ・・・」

より感じるところを貫かれ目の前が白く霞む。絶頂を迎え、熱く収縮する土方の体の奥で沖田も吐精した。

ぼんやりとした意識を引き戻したのはフィナーレなのか次々に上がる花火の音だった。
ばち、っと目を開けると綺麗が花火が、眼下に広がっていた夜景が先刻より九十度違って見える。余韻を残し消えていく花火の上に次の花火が咲く。綺麗なもんだと思いながら首を回すと横向きに沖田の顔が。

「あ~・・・。何してんの」

「成り行きで膝枕を。嬉しいですかィ?」

「ヤローに膝枕されて嬉しいわけねぇだろ」

「俺にケツ掘られてよがってたくせに」

「うっせ」

ああ返したが少しは嬉しかったりするんだよな、と再び花火に視線を戻しながら土方は心内で呟く。徒に沖田の指が髪を弄び、土方の額を滑ってゆき擽ったい。
ドォン、と余韻を残し最後の花火が消えていった。

「・・・車で来て良かったでしょう?」

「用意周到だな、お前・・・」

「あんたの為を思ったんでさァ」

頬を両手で包まれ見上げると沖田が柔い笑みを浮かべていた。
そっと唇を重ねると、ふわりと夜の優しい風が吹いた。

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