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梅々

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隣のオタク

今日頑張った。たくさんのとりだめを見ながら一日でこんなに書きました。
誰か誉めて(笑)

次は沖土長編か、今更ながらの土沖ミツバ編後の長話。












偽りの自分を愛して欲しい訳じゃない。でも、偽らなければ誰も俺なんかを愛してくれないから。

貴方の為、歌おう。





迦陵頻伽





「今日のスケジュールは?山崎」
「えぇっと・・・秋葉原でのコンサートですね。今日はそれだけなので午後はゆっくり休めますよ」
あっそう。と呟き、沖田は窓に額を当て、流れ、過ぎて行く景色を視界に映した。ミニスカートからのぞく、白い足を組む。
いくら、ヒーターをつけているからといって、流石に下着がギリギリ見えない程度の長さのスカートを履いてると、若干寒い。
太股と太股を擦るようにすると、山崎の視線が自然と、そちらに向く。
「何見てんで?変態。死ねや」
「・・・そんな態度、ファンの皆さんには見せないで下さいよ。性別不詳の萌キャラっていう設定なんですから」
「お前が勝手にそうしたんだろ」
冷めた目で睨むと慌てて、山崎は言い返してくる。
移動時間の暇潰しは、やっぱこれしかない。
「俺じゃないです!社長が勝手にっ・・・!」
そう言われ、ああと思い当たる。あの松平とか言う鼻の下伸ばしたおじさんなら、そういうこと考えそうだ。会うたび会うたび、鼻の下伸ばしてデレデレして酒呑もうだの何だの絡んでくる。
嫌いじゃあ無いけど。ああいうおじさんは面白いし。
「さ、着きましたよ」
「へいよ。じゃあ猫被んなきゃなァ・・・」
組んだ足を元に戻し、膝上までの靴下を履き、ヒールが適度に高い靴に足を突っ込む。
車に乗るたび靴と靴下を脱ぐ俺を、山崎はおかしいと言うけど、クセだから仕方がないと思う。
「・・・リハ無しでいいんですよね?」
「あたぼうでィ・・・じゃなかった。当たり前でしょ、俺を誰だと思ってるの?」
自分の事を“俺”と呼ぶのは許してくれたけど、特徴のあるこの話し方だけは直せ、と言われた。これが中々難しい。しかも、中性的な感じの話し方にしろなんて言われても。オカマになれってか?
「・・・俺が惚れ直すぐらいの美声をお願いしますね」
「・・・お前を惚れ直させるだけじゃなくて人気スターの一人や二人、落としてみせるから」
衣装はばっちしらしいし、メイクなんて必要もない。山崎から自分専用のマイクを受け取り、ゆっくりとステージ裏の階段から明るい、そして暑いステージへ上がる。
段々と沸き上がる歓声。この時に感じる雰囲気は好きだ。目を瞑ると白く眩しくて、耳に響きわたるのは、俺を求める歓声。・・・殆どがムサイ男共なのは些か気に入らないけれど。

必要と、されてる。

おれが、こんな沢山の人に。

ステージの真ん中まで歩き、真っ正面を見る。そこそこ広い特設のステージから見渡すと、一番後ろの人は視力がいい俺でさえ、顔が見えない。
「おはようございまぁす」
少し地声より高い声を出し、造り笑顔を浮かべると、低い歓声が再び沸き上がる。
こんなにも容易く人に幸せを与えられるなんて。少し、少しだけ自分を偽るだけで。
世の中、不思議な事ばかりだ。
「じゃあ、一曲目行きま~す」
キャラをどんなに明るく変えたって、歌うのは暗い歌ばかりでしかも、地声なのだから意味はないと思う。
それでも、聞いてくれる人が居るのなら俺は、歌うけど。

歌ってる間は客の事なんか考えられないけれども、間奏の間だけは、どんな顔してるんだろとかそれだけを考えてる。
いつものように最前列の人の顔を見回していると、俺の本当に目の前にいる人と目が合った。

なんか、見たことがある気がする。

ロッカーみたいなワイルドな服を着ているその人は、漆黒の髪で蒼い目をしていた。
似てる、似すぎてる。

あの人に。

その後はそれだけが気になった。
「今日はありがとうございました」
満面の笑みを浮かべて手をヒラヒラ振ると、今日はこれで最後であろう野太いワーともウォーとも違う叫び声が上がった。
それに背を押されるようにして、ステージ裏へ戻る。
「―――――お疲れ様でした、沖田さん」
「おう」
マイクを手渡し、顔を見ると、ファンと一緒にノリノリで聞いていたのか、少し紅潮していた。
一番身近にいる、俺のファンだと思う。
「・・・あの、」
呆れつつ山崎を眺めていると、後ろからスタッフに声を掛けられる。幾度か話したことのある人で、趣味も合うし結構気楽に話をすることが出来る。
「なんですかィ?」
「あの、ファンだと言う人が・・・」
遠く後ろに居るのは俺が今日ずっと気になってた人で、心の中であっと思った。
「ダメですよファンなん―――――」
「車ン中呼んでくだせぇ」
「えっ、ちょっ、沖田さんっ」
「心配ならお前もくりゃいいでしょ」
足早にワゴン車の中に入ると、後から山崎が着いてくる。その後ろから、さっきの男の人が。

一番後ろに俺、その隣に山崎。向かい合うように動かしたその前に男の人が座る。
「・・・沖田さん?」
「―――――アンタ、今人気のTOSHIだろィ」
「えっ・・・」
「しっ・・・知ってるでござるか!?」
若干、キャラの違いに引いたけれど、間違いないらしい。
―――――これが、この人が、トシ。
デビュー以来八年間、出したCDは必ずオリコン一位になるし、毎年何かしらの賞をとっている、日本のトップアーティスト。
その人が、秋葉原で俺なんかのライブを、しかも目の前で見ていた。
「・・・あ、あの、サイン貰ってもいいでござるか」
「・・・ってかその前にそのキャラ止めてくだせぇ。気持悪いんで」
そう言うと、一瞬目を丸くした後、リストバンドを外した。
・・・目付きが、変わったような気がする。
「・・・そりゃ悪かったな。でもよ、そういうお前だってキャラ違うだろ」
「え」
山崎が大口開け、間抜けな顔で、一瞬にして態度が一変した目の前の“スター”を見ている。
その気持ちは分からなくもない。
「・・・リストバンド越しの二重人格なんですかィ?」
「ちょっと違うな。リストバンドした時だけ素の自分に戻れんだよ」
そっちのほうが複雑な気がするけれども、敢えてそこはスルーしよう。
問題は、この人がこの場所に居ること。
「で、何しに来たんで?」
「酷い言いようだな、先輩に向かって。・・・ま、別に?ファンがコンサートに来るのは当たり前だろ?」
「・・・アンタの方が、上手いのに? 俺の歌はありきたりで他の歌手が歌ってんのと似たり寄ったりですぜ? それに比べてアンタは、自分で作曲も作詞もする。―――――誰もが、考えらんないような、綺麗な歌を」

姉上は、この人がインディーズだった頃からこの人の歌が好きだった。名前だけは俺も知っていたけれど、どんな歌を歌うのかとかは知らなかった。
ある日姉上に連れられてったのは、デビュー後、初めてのトシのライブだった。
―――――それまで、この人依然に音楽全般に興味を持っていなかったのに、魅了された。
悔しい程に、“綺麗”としか言いようのない旋律、哀しい程に、現実味を帯びた歌詞。
“ファン”になった訳じゃない。音楽に“囚われた”だけで。
「・・・たとえそうだとしても、俺はお前の声が澄んでて綺麗で・・・心に響くから聞きに来たんだ」
あまりにも真っ直ぐに目を見つめながら褒められて、呼吸が一瞬止まった。

なに、この人。

こんな風に褒められた記憶は随分古くて、どう反応すればいいのか困る。
間違っても、ありがとう。は言いたくない。
「―――――ありがとうございます」
代わりに礼を言った山崎を、はっ、として見る。
「・・・何で山崎が言うんで?」
「だって、沖田さん褒められても絶対ありがとうって言わないでしょう?」
「そうだけど・・・」
「こんな風に偉大な人に褒められたんだから、ちゃんと言わなきゃいけないんです。・・・俺が、沖田さんの代わりに」
甘えてしまう。こいつは優しいから。
それじゃあいけないと、分かっているのに。

「・・・」
「・・・お前と歌いたい」
「えっ、」
俺らの話が一段落ついたのを見計らって、呟かれた言葉に驚いた。
「お前に、俺の歌を歌って欲しい」
嘘のような言葉に固まった俺を見て、満足そうに彼は笑った。

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