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梅々

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わんこうめ!


ねぇなんで あなたは

自分の影にまで怯えているの?

私を見て ちゃんと

私はあなたの敵じゃないよ

だから お願い

私だけを見て





なんか地味に忙しい日だった。ゆっくり休みたい・・・。
雨の翌日の晴れた朝は嫌いです。なんか、下からむーんとしてるというか、なんというか。今朝は無性に腹立たしくて、考え事しながら歩いていたら朝一で犬に吠えられて奇声をあげてしまったです。うん、悔しいし恥ずかしいし。躓きかけもしたし・・・。なんだかなぁ。





では、みっつめ。意外と長くなってしまった。
あとななこ!
















3.その手に握られたい





総悟、呼ばれて立ち止まればずるずると部屋に連れ込まれた。書類が山のように積もった副長室、大半が仕上げた書類だということはさっき見たときより移動している書類で分かる。
ああ、まただ。思って瞼を閉じると口付けられる。触れ合う瞬間びくりとしてしまうのは仕方ないことで、その度笑う土方は常識的に有り得ない。従順に受けていると催促するように唇を舐められる。これまた素直に隙間を開けると煙草の味が口いっばいに広がる。数回のキスでこれはきもちいいことだと認識した脳が、あの呪文を繰り返す。
昨日の押し問答はうやむやにされて終わり、土方のお陰で無かったことになったのだと近藤さんに聞いたのは夜のこと。お礼、ちゃんと言っときなさいね、言われて一応は感謝すべきなのかもと思うけれど、タイミングが掴めない。
そうだ、うん、そう。今日、というかアレ以来顔を付き合わせる都度条件反射のようにこうされる。今日は何回目、数えようとして意識に無断侵入されてわけがわからなくなる。こんなじゃあ、小姓と間違えられても仕様のない。

「んんっ・・・、ふぁ、っ!」

最後にびちゃびちゃの唇を舐められてぞくり、とした。その感情を剥き出しにして距離を戻してく顔を見ていると、ほんの一瞬。ちらり、と瞳の色が変わった気がした。瞬きしている間に元に戻ったから目の錯覚かもしれないけれど。
さぁ後はご自由に、手を離されてもすることがないから、座布団を手繰り寄せてその場でごろんと横になる。

「お前、仕事は」

「今日はもうありやせん」

「なら部屋帰れ。着替えろ。皺になる」

「つめたぁい! あんなことまでした仲じゃねぇですかィ」

「・・・」

返す言葉なくぴくりと肩を跳ねさせたヘタレ上司を若気つつも見遣って、本格的に昼寝しようと瞼を閉じる。


俺はこいつを好きなのか。

ほんとうに。


思い上がるなコノヤロー! だとかなんとか言えば良かった。何にも言えずにバッと部屋を出た後に感じた妙な高揚は、なに。
否定を許さない声色だった。頷くしか道のない真摯な目だった。あんなふうに言われたら、なんとも思っていなくても、意識してしまうじゃないか。
カリカリとペンを走らせる音、紫煙を燻らす音以外しない静けさ。とろとろに思考も何も揺蕩う俺の頬に、何かが触れた。
瞼を開けると俺の上から顔を覗き込む、ニコチン大魔人の姿。むにぃっ、と頬を引っ張られる。

「いっふぁ、」

「見廻り行くからついてこい」

「なんで俺が、」

「甘味、奢ってやるよ」

ふわりと微笑。滅多に見ることの出来ない顔(多分、俺初めて見た)に、呆気に取られている間にもスタスタ言ってしまって慌てて追いかける。




満腹感にほぅ、と息を吐いて斜め前を行く男の後を歩く。
禁煙席にどうぞ、言われた時の土方さんの顔といったら。思い出して一ヵ月は笑える。漸く吸える、と幸せそうに煙草を吸う姿を、ちょっとだけ前に出て熟視る。パフェ二杯食っている間ずっと、珈琲飲む間以外機嫌悪そうにトントンとリズムを刻む指先が、見慣れたものなのになんだか違うもののようで、胸がざわめいた。
それは、いまもだけど。
どうしたいのだろう、と若干考えてみると、一つだけピンときた。
煙草を挟む長い指。見ているとキスの最中みたいにとくんとくん胸が騒ぐ。
だからって、と行動に移すのを躊躇っていると、ぽんぽんと頭を撫でられる。

「オイ、どうした」

「・・・そーじゃねぇってのに」

望んでるのは、そんな子ども扱いじゃなくて。呟きに気付いた土方は訝しげに表情を歪める。面と向かって言うのは矜恃が妥協してくれなくて駄目で、腕を掴んで路地に連れていって、人目を確認する。
より眉を寄せた土方に向き直って、煙草をかっさらい唇を押し付けた。

「!」

「っん・・・・・・」

いつもより匂いが強い。直後だから仕方のないことだけど、と思いながらもいつもされているようにしかえす。唇で唇を挟んでぺろぺろ舐める。するとフッと笑って男は、容易に立ち位置を変えた。
壁に押し返されて両手首を優しく捕まれて。何度も啄まれる。
でも、そうじゃない、してほしいことは違う。と抵抗するとあっさりと解放してくれた。

「お前ね、わがままにも程がある」

「違うんでさ」

「なにが」

「キスしたかったんじゃなくて、」

手首を握ったままの指を離させて、そっと指と指とを絡める。
一回り近く違う、節榑立った男らしい手。爪は几帳面に切り揃えられていて、ちょっと伸び気味な俺の爪とは全く違う。唯一共通しているのが竹刀胝だなんて、誇ればいいのか悲しめばいいのか。同じ男なのに。

「ああ、うん。これでさァ」

「・・・なんなのお前」

「手、触ってみたかったんでさァ。こうやって」

「っ・・・まえ、」

チッと舌打ち、続いて暗転。息が出来なくなる程の強さで抱きすくめられて吸う息が煙草の匂いになる。
温かい、一人ごちた声は優秀な耳に拾われたらしく、ばーかと冷たく一蹴。

「今夜部屋来い」

「なんで」

「イイコト教えてやるから」

「なんか、寒気したんですけど」

「気のせいだろ。ほら、戻るぞ」

「へーい」

路地を出るまで繋いだままだった手に、ほんのり頬が熱くなったけど気付かないふりをした。

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