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梅々

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ラブロマンス

風邪記念小ネタ弐。
そして百人一首。ってか試験勉強しろって話。





沖土。






初めてアイツの寝顔を見たのは、道場で俺が熱を出した時だった。枕元に座ったま眠るその男に、目眩がした。多分、それはきっと風邪の所為だと思っていたのだけれど。





死刑判決





それから度々、昼寝してんのを見掛けるようになった。正確には昼寝とは言わない。十時ぐらいから昼飯までの時間アイツは寝てるから。近藤さんだって昼寝すんのは俺と同じおやつの後なのに、昼寝にしちゃあ早すぎるだろと毎度のことながら思っていた。
それと共に、何でかアイツの寝てる姿を見ると体がズクズクと、変になる。今まで味わったことのない感じに、自分の体じゃなくなったんじゃないかと思う程。近藤さんの寝顔見たってこうはならない。
だから、ある日俺は訊いてみた。

「お前が寝てんの見ると体が変になんでィ。理由を述べろコノヤロー」

「はぁ? 変、ってどんな風に?」

「ズクズクするっつーか・・・動悸・息切れ・眩暈?」

少々の沈黙の後、その男は苦笑しつつこう言った。

「お前が俺ぐらいになったら、教えてやるよ」

そんな先の話、待てる筈もないし狡猾な大人は守るつもりの無い約束は先延ばしにすると知っていた。勿論、姉上や近藤さんはそんなことしないけれど。
だから、対処策を考えた。
毎日毎日、他人の寝姿眺めてうんうん唸っているのは如何に滑稽か、当時は気にせず毎日悩んでいた。
そして、見つけた方法。
ほんの気まぐれで口付けた、それだけで、動悸・息切れ・眩暈は全て消え去った。刹那だけ口付けて、離す。それ以上せず、口付けたら直ぐに土方の部屋を立ち去る。あまり長居すると土方が気配で起きてしまう、だから。
それを何度繰り返したことか。

気付きゃ俺はもう18で、道場を出て江戸へ来て、真選組の幹部になっていた。一個上の上司が土方だというのは気にくわないが、給料もいいしそれ以外は文句はない。
だけど。口付けただけじゃ足りやしない。命狙い出してから、より神経質になっているからキス以外何もできやしない。
とどのつまり、俺は土方とキス以上をしたいのかと、想像してそれが嫌じゃなくて、驚愕した。

『お前が俺ぐらいになったら、教えてやるよ』

あの約束を、あの男は未だ覚えているのだろうか?
答えを、今度こそ与えてくれるのだろうか?

いつもは無遠慮に開ける障子を、ノックしてから開けてみた。

「土方」

「久々に呼び捨てだなてめぇ。喧嘩でも売りにきたのかよ」

「もうそろそろ時効かと思いやして」

「はぁ、何の?」

「あんたが寝てんの見ると体が疼くんでィ。理由を述べろコノヤロー」

「―――」

現在進行形な告白に目を丸くした後、あの時と同じ苦笑を土方は浮かべた。

「てめぇは俺のことが好きなんだよ」





#21
今来むと いひしばかりに 長月の
有り明けの月を 待ち出でつるかな

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