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梅々

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どっきりか何かですか

今日カウンターが二百近く回っていてどれだけ視力がいかれたかと思いました。カウンターの故障だったらどうしよう・・・。

ありがとうございます!

そんなわけで久々に一日で一作書き上げました。
いまならどや顔しても許されそうですww





それでは3Z沖土です。
土方虐め隊!















世界が回る。

ただ一人を中心にして。





環の始まり





元来、うじうじするのは性に合っていない。そんな風に、悩むこと事態少なかったからだ。
だから今、空前絶後の危機に遭遇していたりする。
眩しい炎天下、暑さと考え事で一睡も出来ずふらふらした体で準備運動を行う。なんでこんな時期に陸上をやるんだ、なんでこんな時期に陸上を選んだんだ。カリキュラムを組んだ教師にとりあえず文句を言いたくなるがそれすらできない。

「土方さん、顔色悪いですけど、大丈夫ですか」

「・・・大丈夫だ」

名前が近い人と準備運動をしろと言われていて、渋々山崎と組んで柔軟をやる。総悟は、近藤さんと組んでいる。ちらり、様子を窺い見て溜め息が出そうになった。アイツの所為だ、この寝不足は。
山崎の背を必要以上に押しながら睨み付けていると、同じように、けれど楽しげに近藤さんの背を押している総悟と目が合った。
そして、目眩。

「土方さん!?」

山崎の声が酷く遠くに聞こえ、意識は深い底無し沼へ落ちた。


知ってはいた。知らない方が無理というのが正しいのかもしれないが。
総悟は、近藤さんを敬愛して止まない。
それは俺も変わらない、変わらないのだけれど総悟とは違い区別をしっかりとしている。近藤さんには恋愛感情は一切湧かない。大切な友人で、尊敬していて、愛しくはあるが、それは純粋なものである。
だけど。俺が総悟に向けるものは謂わばその逆で、とても濁った醜い、自分中心な感情だ。全てを手に入れなければ納得しない、そんな厄介なもの。恋をしたいなんて思うのは余程酔狂な人間じゃないだろうか。沁々そう思う。
だから、俺は。

「起きやしたか」

「・・・保健室、か?」

「そ。アンタ倒れたから。柄にもなく」

薄緑のカーテンに囲まれたベッドの上に横たわっていて、その横で総悟が携帯を弄っていた。
寝不足に炎天下のダブルパンチ。そんなのにダウンするほど脆くないはずだが、それほど弱っているのか。総悟の所為で倒れたと言っても過言ではないのに、呑気に携帯弄りやがって。
目眩を堪えつつ、ゆっくりと上体を起こすと総悟が眉を寄せた。

「少し休んでなせェ。体育なら、いいでしょ」

「・・・おまえがサボりたいだけだろ。ダシに俺を使うな」

思ったままに言ったら携帯をパタンと閉じ、総悟は溜め息をついた。確かに体育ならノートの心配などないけれど。休みたくなかった。
多分、総悟の言いなりになりたくないのだ。今は。
近藤さんを、総悟がどう思っているのか本当のところ、よく知らない。俺が近藤さんに抱いているものと同じか、それとも総悟に対して抱いているものと同じなのか。それによって、俺と総悟との関係が何なのかが分かる。
何か言え、と声に出そうとすると同時に唇が塞がれた。悪戯にそれは触れて、総悟はニヤリと口角を上げる。

「一緒にいたいんでさ」

「・・・信じられるか」

本心を呟けば心外だという表情をされる。それこそ心外だと、言ってやりたい。
もしもいま俺が女だったら、身も蓋もなく総悟にすがって問い質すだろう。俺はおまえのなんなんだ、と。それこそ私と仕事のどちらが大切だと問う女のように。
数日前に見た、総悟の純粋な笑みがこうまで俺を悩ます。近藤さんにそんな顔を向けるのに、なんで恋人の俺には向けないんだ。
・・・女々しくて、吐き気がする。
手元のシーツを握りしめ、ふざけんなと声に乗せる。

「土方さん?」

怪訝そうに総悟が、眉を寄せる。

どうして。

どうして近藤さんにはそんな顔を向ける?

どうして―――――。

「どうして、俺と付き合ってんだよ」

「え・・・?」

気付いた。
この言葉は言ってはいけなかった。墓穴を掘った。
売り言葉に買い言葉で飲み比べをして、正体を無くしたところ何故か、俺たちは性行為をしていた。後ろから揺さぶられて、耳元にかかる総悟の吐息が嫌に色っぽくて、これ以上の幸せはないと、考えたことだけは覚えている。
その翌日、軽いノリで付き合わないかと、言われたことも。
だから、俺は恋人であっても単なる性処理のためのものに過ぎない。友人で幼馴染みであるのも確かに本当だけれど。それ以上の感情は伴っていないのだ。
若気の至り。よくあるそれでしかない。
意識して、自己嫌悪に陥った。
浮かれていた。そんな、非常識な恋慕が罷り通るはずがないというのに。俺にはあんな台詞、言う権利もないのに。
なんて愚かしいことを。
浅ましくて滑稽で、そんな自分に涙腺が緩む。

「なんで・・・泣いてんですかィ」

「うるせぇほっとけ」

「無理に決まってんでしょ」

驚いた表情を浮かべていた総悟が、ジャージの袖で俺の頬を拭う。こんな風に優しくされたのは初めてかもしれない。泣いた自分に余計苛立ったが泣いてよかったかもとも思う。
別れよう、その一言を口にしようとするも、総悟が付き合っている事実を覚えているかさえも危うくて、言えない。
どんどん、女々しくなっていくのが分かる。一度泣くと駄目なようだ。きっとこれ以上の醜態はない。
こんな俺じゃあ、総悟の方から願い下げだ。

「・・・どうして泣いてるんですかィ」

「言わねェ」

「俺の所為、ですかィ」

「・・・そうだ」

「なら、いいや」

俺の涙を拭いながら、総悟が柔らかく微笑した。それは、この間近藤さんに向けていたものと同じもので思わず見惚れた。
そんな惚けた俺を、総悟がベッドに押し倒す。スプリングがギシギシ、軋む。
状況に頭がついていかなくて、頭の中が疑問符でいっぱいだ。

「総悟?」

「すっごい興奮しまさァ。アンタが俺の所為で泣いてるなんて。夢見てェ」

嬉しそうに総悟が目を細めて、首筋に顔を埋めた。鎖骨の窪みから甘い痛みが伝わって、じんわりと身体中に伝わる。何度も行為に及んだからかそれだけで、欲情してしまう。

「・・・なんで泣いたんで」

総悟の瞳に嗜虐の色を見出して体がすくむ。こんなところで何かされたら、それを考えたら熱は上がってしまいまた自己嫌悪する。
答えなければ、何をされるか分からない。期待してしまうけれども、そんなアブノーマルな思考は無視して口を開く。

「おまえが近藤さんに笑いかけてたから、」

「・・・あぁ。近藤さんに嫉妬したんですかィ。土方さんは女々しいなァ」

「・・・っ」

「でも安心しなせェ。俺は、近藤さんには欲情しやせん」

「・・・本当に?」

「本当でさァ。俺が欲情するのはただひとり」

アンタだけだと。
いつものように悪戯に笑って総悟はキスをくれた。
心底安堵して、されるがまま身を委ねて幸福に酔いしれる。

醜態を揶揄われ遠慮はもうしないと、夜通し攻められるまであと十二時間。

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