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梅々

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さらば愛しき日々よぉ

明日からは心機一転脱☆ぐーたらでいきたいと思います。
だから忙しくて更新が亀の歩みになります。多分。米英書かなきゃなんで!





では夏の中編最終話。
長いです。
九時に寝る予定だったのにー!















かげろうに魅せられただけなのだ





かげろうゆらゆら夏のざわめき





一緒になって。
そんなこと言われたのは初めてで思考を停止させていると、いますぐ答えて欲しいわけではないからと、彼女は温かく送り出してくれた。それが昨日のこと。
布団の中でごろごろしていると毎朝恒例といっても過言ではない感じに、勢いよく障子が開いた。
いつもはごろごろしているだけだが今日は違う。きちんと考え事をしているというのに。文句の全てを視線に込めて、睨み付けると険しい顔をしつつもいつもとは違う苦々しさを孕んだ顔が睨み返してきた。

「熱は」

「んまぁ、微熱程度」

「・・・」

眉間に皺が寄る。
昨日は治ったと告げて公務に出てあの人の元へ行ったのだから、それよりはマシじゃないだろうか。熱っぽさの残る頭は明瞭ではなく、靄がかかったかのようにぼんやりとしている。

「今日は俺に付き合え」

「はぁ?」

とりあえず、着替えろと言われて渋々隊服に手をかける。何もかもはだけさせて下着一枚になったところでコホッ、と小さく咳をしたのが聞こえた。
移ったならばそれで良い。そうか、これは風邪を移す好機なのだと思い直したらなんだか気分も良くなった。熱も下がったような錯覚がする。俺ってば可也現金。

「で、どうすればいいんで?」

「見回り行くぞ」

「・・・朝飯は」

「もう十一時だ」

嘘だぁ、と思って正確に時を刻んでいるであろう携帯のディスプレイを見るとその通りで、信じられない。
時間に厳しいのだ、土方さんは。それなのに寝坊を許された。なにがあった、と悩んでしまうのは当然のことだろう。一昨日の祭から、ちょくちょく不可思議な言動をする。
深く考えようにもそんな思考力常日頃からない俺には熱があるいま益々ない。

「・・・飯は」

「奢ったる」

「・・・マジでか。顔洗ってから行くんで、先玄関行っててくだせェ」

珍しい。風邪だからか、いやだがこんな風に変な土方さんを見たことない。うーん、と悩みつつ洗面所へ行くと山崎とばったり会った。いつ見ても変わりない地味さだ。
そんなこと考えながら顔を洗っていると山崎が口を開いた。

「本当は今日、副長と俺のシフトだったんですよね」

「ふーん」

「・・・それが昨日になって隊長と変わってくれって」

「へぇ、そうなんで」

漸く顔を拭いて山崎を見る。
底の浅そうで中々読めないやつが山崎という人間なのだ。へなへなしているか無表情。それなのに何を考えているか分からない。なんだかなぁ。

「・・・最近、副長が傍によくいませんか?」

「・・・昔からいっからなァ」

「まぁ、そう言うと思いましたけど」

蟠りをわざと作るような物言いをして、山崎は去った。
ますます曖昧になって訳が分からなくなっただけじゃないかと苛々するけれど肝心の山崎はもう視界にはいない。
あのやろう、そう思いながらずかずか行くと穏やかな表情の土方さんが煙草をふかして立っていた。さっきとは打って変わって涼しい顔をしているものだから、なんだか一人でたかが山崎の所為で怒っているのは馬鹿馬鹿しい気もしてきて。はぁ、と溜め息交じりにブーツに足を突っ込み、隣に並び立つ。
今にも雨が降りだしそうな天気に、傘を持っていくべきかと考えたけれどそんなこと微塵も気にかける様子なく土方さんはずんずん歩いていくので、降ったなら土方さんに全ての責任を押し付けようと手ぶらで出る。土方さんと一緒にいて楽なのはそういうところだ。何も持っていく必要のないところ。刀と自分さえいれば、あとはこの人がなんとでもしてくれる。
行き着いたのはいつものファミレスだった。おごってくれるというだけで殊勝なことなのだ、文句は言いませんとも。勿論。
注文をすませると土方さんは煙草に火をつけた。

「・・・もうあの女とは会うな」

「は・・・? あの女ってぇのは、時雨さんのことで?」

名前を出したら無言で、煙草を挟む指先が動揺した。だから間違いないのは確かだ、他に俺が知っている女なんてたかが知れている。
思えば簪を貰ったと言ったときから良い顔をしなかった。会ってからも、そう。この人とあの人はどうにも合わないらしい。
だからって、それだけでこんなけったいなことを言うような人ではない。きちんとした理由が整然と並べ立てられていて、その上での発言なのだ。
例えば、あの人が攘夷派の手先だとか云う。

「会うな」

「なんでですかィ?」

「・・・好きなのか、」

質問を質問で返すなとよく言うくせにそれをする。
そう文句を返そうとすると料理が運ばれてきて、タイミングを逃した。
好きか、と問われれば好きだと思う。が、一緒になりたい、と思うような好きの類いではないのだ。唇を重ねることを想像してみても、なんの感想も抱かないし。一年中会えなくても死にはしないしきっと忘れてしまうのだろう、だから一緒になりたいと思うような色恋の好きではない。

「おまえが気になるんだよ」

「・・・」

ファミレスを出た道中、土方さんが言った。立ち止まると、斜め一歩先を歩んでいた土方さんも立ち止まった。
気になるとは、どういうことか。
先程の話の流れからいくと、まぁそういうことなんだろうと当たりをつける。
つまりは心配しているのだ。保護者代わりを気取っているこの上司は。悪い女に引っ掛からないか、だとかそういうことを。

「安心なせェ。あの人は友達みてぇなもんだから」

「そうか」

安心したように肩の力を抜く姿が何故か、琴線に触れたらしい、何かがざわめく。けれどそれは形容し難いもので、なにも云うことができない。
そのまま土方さんは歩き出して、俺もついていくしかなくなる。
何なのだろう、この動揺、ではないが揺れる心は。ボキャブラリーが少ないから言葉にできないのか、それともそれは関係ないのか。

「土方さん、」

「おまえは、俺のこと嫌いだよな」

「勿論。・・・なんでィ、いきなり」

即答すると紫煙が濃く空を漂った。
いらえを待ちながらのんびりと、見回りとは言えないぐらいほのぼのと歩く。言われた言葉を反復する。
好きなのか、と言われ、気になる、と言われた。その前はそばにいろ、と。
それらを、結んで考えると、結論は?

「・・・俺はお前を嫌いじゃないよ」

「は、」

「・・・お前がそうじゃないのは、分かってるけど」

後ろにいるから表情が窺えない。
けれど、いまの言葉に自分が明らかに動揺しのは、分かった。
唐突に、衝動が沸き上がった。
それは、制御できないぐらい、強かった。

「土方さん、」

「え、・・・ん!」

肩を掴んで振り向かせるとすぐにくちづけた。
それは、一秒にも満たない間微かに触れただけだけれど。
離れてから気付いた、今自分達はどこにいるのかを。けれどここは河原で、見回したけれど誰もいなかった。よかったぁ、と一安心。
一安心してから、今度は自分が何をしたかに思い至って、土方さんに視線を向けた。

「―――」

びっくりしている。
それは当然だ。
仕様がないこと。だって俺は、同性の上司にキスしたのだから。
あれ、これはファーストキスか?
いや、そんなわけないはず。いやでも、なんて考えているとグイッと強引に腕を引かれた。そのまま引き寄せられて、ぎゅうう、と抱き締められた。

「はぃ?」

「好きだ、総悟」

「へ?」

頭がついていかない。でも思考が現状に追い付くとなんだか、とても胸が満たされていることに気付いて。
ああそうか。
好きなんだ、このどうしようもない人のことを。
気付けばすぐにいままで言われた言葉の意味が分かって、ついでに自分が鈍かったことまで気付いた。

「俺もですぜ」

「え、」

「なんか、あんたのこと好きみてぇ。キスしてぇって思ったのもあんたが初めてだし」

「マジでか・・・」

ぱちくりと瞬きするさまにぷ、と吹き出した。いやはや、この人がこんな顔できるだなんて。笑うしかない。腹を抱えて笑っていると土方さんの背後からリリーン、と澄んだ音がした。ビクリ、肩を揺らして土方さんが振り向く。
そして、誰かが立っているのが見えた。

―――――時雨さん。

「妾とともに来てくださいまし」

「きこえたろ、あんたじゃダメだとよ」

「貴方様にはきいていません」

澄んだ音は彼女の足元にいる黒猫がつけている、首輪からしたらしい。猫が動くたびに鈴が鳴る。
思えば、屋敷から離れたところで会うのは初めてだった。

「一緒に、来てくださいな」

「・・・それはできやせん」

一言、簡潔に言う。すると彼女の顔が刹那だけ悲しそうに歪んだ。
不思議だと思った。彼女とこの風景が合わない。あの屋敷や竹林の、敷地内でなければいてはならないような、気がした。
それは、土方さんも一緒なのかもしれない。汗が頬を伝っている。

「これが最後です。共にいらしてくださいな。全てを捨てて。そうすれば・・・」

あの人と会えるかもしれないわ。
にこり、と微笑んだ顔が重なった。あの人―――――姉上と。
会いたいのは当然だ、けれども、それは望んじゃいけないことだし、もう割りきらなければいけない。実際割りきれないけれども。

「それでも俺はここにいまさァ。大事なものは守るためにあるんだから、俺はそれを守りたい」

「・・・」

失ったものを追うよりも、今あるものを大切にしなければいけない。そうでなければ顔向けできない。
そう、と彼女は小さく呟いた。
リリーン、と猫の鈴が鳴る。
途端、ぶわぁぁぁ、と強風が拭いた。思わず目を瞑り、止んだとともに前を見る。

「あ、れ・・・れ?」

「・・・行くぞ」

「え、どこに」

俺の手を握りつかつかと、この1ヶ月で通い慣れた竹林へと向かう。
土を踏みしめ舗装された道から外れ竹林に入る。
けれど。

「・・・ない」

「・・・昔ここに大名の娘が住んでいたらしい。・・・それが、財産狙った強盗に殺された」

「はぁ、ってそれじゃあ、」

「・・・そいつは祝言の前だったんと。まぁ、面食いだったんだな、おまえ狙うなんざ」

「・・・あんたの手、湿ってる」

ざんりゅうしねん、とかいうものがあるらしい。お盆の怪奇スペシャルでやっていた。強い念が、思い残したものの元にとどまるのだとか。
つまりは幽霊の類いなのだ。そして土方さんはその類いが嫌いだ。
頑張ってるなぁ、感心していると深く深く、息を吐く音が聞こえた。

「怖かったんで?」

「んなわけねぇだろ・・・」

「まぁ、これからも俺が守ってやりまさァ。・・・気が向いたら」

にっこり笑いかけてやると瞬時に土方さんの頬に朱が散って、新鮮な反応にこっちまでもが恥ずかしくなってしまった。

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