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梅々

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空っぽの空

やらしいものを書きたくなりました(オイ)
でも描写力・画力ともに無いに等しい私には無理でした。一応、イラストかいたんだけど封印。今度書き直す日が来るかもしれない。

それでは土沖。短編。















なんで俺なんかを選んだの。

初めて触れられた時、浮かんだ疑問。俺なんかよりも綺麗な女の人はたくさんいる上に、俺はずば抜けた才能も何もない。あるとすれば剣術だけ。それしかない、ただの生意気な子どもだ。土方さんにとって俺という人間は。

・・・聞きたくて、でも女々しくて言えなかった事を、簡単にあんたは口にした。
どれだけ俺の予想を外せば気が済むの。





ラピスラズリの計算式





「―――――なんでお前さ、俺に付き合ってんだ?」
口に含もうとした、ミルキーが下に落ちるかと思った。危ない危ない、もしこれがただのドロップだったら間違いなく落ちていた。
ミルキーは少しベタベタしてるのが気に入らなかったけど、そのお陰で落ちなかったのだからこれからはベタベタも気にならなくなるだろう、多分。
「なぁ、なんでだ?」
「・・・別に」
曖昧な返事をし、ミルキーを口に入れた。途端に広がる甘さを土方さんは嫌いだと言うけどその理由がさっぱりわからない。この甘さこそがミルキーのウリなのに。この人は甘いものも辛いものも苦手なのだから仕方がないか。

―――――何で、なんて言わないで欲しい。聞きたいのは俺の方なんだから。
「別に、って何だよ」
「しつこい男は嫌われやすぜ」
俺が好きでも無い奴に日常的に抱かれたりしないと考えれば分かるだろう。そんなことも分かんないのか、なんて、自分も似たようなものだから言えないけど。
分かってほしい。
なんて変な事を考えてしまう自分が嫌だ。女々しい。
「・・・来いよ」
「・・・飴舐めてやすけど」
手首を優しく捕えられ、そのままクイッと引き寄せられる。優しいその所作にいつも胸が疼く。
必要以上の優しさがなんだか怖い。普段通り接してほしいのに、慈しむその触り方は俺に対してのものではないようで。
「そんなのどうでもいい」
有無を言わさず口付けられ、口内を飴と舌が縦横無尽に動き回る。
後頭部を押さえられ、逃れようもなくて体を引き離すように隊服を掴んだ腕を突っ張る。
頭が朦朧としてきた頃、漸く我儘な唇は離れていった。
まるで運命の赤い糸のような銀糸を光らせて。
「・・・甘いな」
「当たり前でしょう」
糸を早く断ち切りたくて口元を擦る。その手を再び優しく握られる。口元の唾液を、人指し指で拭いとられる。
嫌だから止めさせようと顔を背けてもわざわざ体勢を変えてまでしつこく拭われる。
「―――――あんたは」
「あ?」
煙草に火を付ける横顔に、問い返した。怪訝そうに寄せられた眉は綺麗な弧を描いていて、上質なパーツ一つ一つがあるべき場所にちゃんと収まっているからこんな憎らしい程男前なんだと今更ながら思う。
それに比べて俺は女顔だし、この人に抱かれてしまうのもありえないことではない。
「アンタは、何で俺なんかを選んだんで?」
ミルキーが口の中で溶けて無くなってしまった。いつもより早く溶けたように感じるのはキスの所為か。

煙草をくわえながら黙視してくる青い目を、真っ直ぐ見る。
どんな言葉を返してくるのだろうと淡い期待を抱きながら。
「・・・お前だからだよ」
「そんなんじゃ分かりやせん」
表面的な、第三者から見ても言えるような現実を聞いているわけじゃない。
求めているのは、“俺”という人間の存在を必要とする言葉。
「・・・綺麗で、真っ直ぐで、餓鬼みてぇに純粋で・・・強いくせに弱いとか、そこが・・・」
「そこが?」
きまりの悪そうな顔でしどろもどろに言うのが情けなくってこの人らしい。
どうせこの後に続くであろう言葉も、どのくらい腹括って今の科白を言ったかだってもう分かってる。それでも本人の口から聞きたいのは俺がSだからという理由だけでは無いはず。
「そこが・・・。やっぱ何でもねぇ」
吸い始めたばっかりの煙草を灰皿に押し付ける仕草が物に八つ当たりしてる子どもみたいだ。
仕事の面だけだな、土方さんが大人らしく見えるのは。
「それなら俺も言いやせん」
「それとこれとは話別だろ」
「いいえ。何で俺だけそんな変なこと言わなきゃなんねぇんですかィ。平等じゃなきゃ駄目でしょう」
面白くなさそうな顔に笑いかけると失礼なぐらい更に顔を険しくされる。腑に落ちない、何故笑いかけたのにそんな表情されなきゃならないのか。
「・・・言ったら言うな?二言はねぇよな?」
「ええ。約束でさァ」
近付いて行って膝が触れ合う程土方さんの目の前に正座した。絶対に聞き漏らさないという覚悟を表したつもりだが、溜め息をはかれる。
その刹那、煙草の香りが俺を包んだ。
「・・・好き、だ」
人生初めての告白だ。そして、多分一生で最後の告白なのだろう。シャイで奥手でモヤシな土方さんは、態度にしか表さないから。・・・それに態度に表しても分かりづらいのだけど。
「お前も言えよ」
恥ずかしそうに震える声が、総悟、と名を呼ぶ。
思い返すとうすら寒そうな現在の状況だけど、今はただただ温かい。
「・・・本当に嫌いだったら抱かれたりしてやせんよ、俺だって」
「はっきり言えよ」
「我儘でさァね。・・・好きかもしれやせん、アンタの事を」
納得したようではなかったけど、妥協してやるか、と体を撫でられる。
真っ昼間から盛るては流石土方さんだと賞賛したいけど巻き込まれたくない、と心の片隅で呟く。
「あ、そうそう土方さん」
「何だ」
「録音しときやしたから」
「・・・・・・何を」
返事の代わりに携帯のボタンを押す。すると聞こえてきたのは先刻の土方さんの陳腐な告白。
目覚ましにでもしとけば一気に目覚められそうだ。
クスリ、と笑うと諦めたような目が俺を射止めた。今までの経験から、この録音されたものが半永久的に保存されることを分かっているのだろう。
「・・・録音してんじゃねぇ。著作権ってもんがあんだよ」
「・・・じゃあ、代金払ってやりまさァ」
首筋に口付けると、耳元で囁かれる。
「・・・一生尽せよ、クソ餓鬼」
「じゃあ早く死んでもらわねーと」

―――――死ぬときは一緒だからな

半ば一方的に交わされた約束を叶えられないだろうことを知ってるだろうに、戯れに甘えて気付かないフリをした。

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