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梅々

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憎愛

「沖田君、君は副長になりたいのだろう?」

「・・・そういう、アンタの夢は何」

「よくぞ聞いてくれたね、沖田君。先ずは、土方君にメイド服を着せてだね、侍らせるのだよ」

「そいつァいいや」

「そして君には天人のもたらした素敵な薬で猫耳・尻尾をはやしてもらいヴィンテージ姿で・・・」

「(土方さんよか危ないのか・・・)」





↑のイメージでメイド土方を描いたら案外自分のじゃ萌えなかった。で、沖田描いたら可愛くなってよかったんだけどあれだよね、立夏だよねって思いました。
鴨さんは変態だといい。





それでは夏・連作の五話目。
土沖で「風鈴」です。















いつ俺が死んでもいいように。

少しずつ少しずつ、お前に何かを渡していくんだ。

いつか来る決別の日には、お前の部屋が俺のあげたもので埋まっているように。





蜩の鳴き声





その日土方は少し、本当に少しだけ不機嫌だと自分でわかっていた。しかし実際には大層不機嫌であることを本人は気付いていない。
原因はどれも沖田絡みだ。
“俺の許可なしに俺に触んねぇで、気安くあんたのもの呼ばわりしないなら、いいですぜ”そう沖田が出した条件を呑み付き合い始めた三日目、進展しなければ前と変わらない現状に我慢の限界がきた土方は、夜沖田の部屋へ行き開口一番にこう言った。

「キスしていいか」

しかしながら返事は嘲笑とともに寄越され、武士に二言は無いと渋々その日は諦めた。
そしてその翌日。つまり昨日のことだが、土方にとっては大事件が起こった。
ついうっかり、許可を得ず沖田に触れて口付けてしまったのだ。
悪戯をする為か土方が起きるより早く起きて、土方の部屋を訪れた沖田に土方はうっすらと気付いていたが意識は未だ寝たままでいると枕元で、
土方さん。
と呼んだのだ。寝惚けていたから夢だと思い、腕を伸ばし抱き締めて唇を重ねるとパシン。頬を張られ驚きのあまり唇を離すと首を狙い刀が振り下ろされた。寸でのところでそれを避けたはいいがそれ以来口をきいてもらえなければちょっかいを出されることもない。
しかも、今だって本当なら沖田との見回りだった筈なのに替え玉に山崎が寄越されて。不機嫌にならずにいられるわけがない。

「・・・副長」

「あんだよ」

「急ぎの仕事思い出したんで先戻ってますね」

「だったらアイツの代わりに来なけりゃよかっただろ。さっさと戻れ」

「はい、それじゃあ・・・」

不機嫌な土方に慣れている山崎でさえ青い顔をして乾いた笑みを浮かべ走り去って行く。真選組の隊服を来ていなければ単なるチンピラだ。
そんな物騒な顔をしたまま土方は一点を見つめ立ち止まった。
―――――チリン、リリーン、と澄んだ音を奏でる其れは風鈴。
濁りの無い透明な球体に見事な筆使いで咲いた青い花に、土方は何故か沖田のことを思い出していた。

「何かいいものありました?」

「・・・此れを、一つ」

こんなもの買うとは、近藤さんのこと言えないかもしれない、と思いつつ土方は勘定をし、箱に入った其れを受けとる。
沖田に渡しても、受け取ってもらえないかもしれないし壊されるかもしれないけれど、買ってしまったのだし。
ふーっと紫煙を燻らせ、帰路につく。



門をくぐり沖田の部屋へ向かい、障子を開けると案の定沖田はそこでサボっていた。煎餅をかじりながら頬杖をつきテレビを見ている沖田に、声をかけるべきか悩む。
自分の部屋に飾っておけばよかった。そうすれば、こんな気まずい思いせずにすんだと言うのに。

「何か用ですかィ」

「・・・いや、あの、な・・・」

声をかけるだけかけ振り向かない、沖田が寄りかかっているテーブルにコトン、と箱を置く。
その音に沖田は振り返り、不思議そうに其れを見る。なんだ、此れ。と口には出さず視線で問う沖田に居心地の悪さを感じる。

「其れやるよ」

「はぁ・・・。此れ、なんなんで?」

「開けりゃ分かるだろ。・・・じゃあ」

あまりのいたたまれなさに部屋を出ようと背を向ける、がそれを阻むように名を呼ばれた。久々に名を呼ばれたな、などと思いつつ振り返るとガサゴソと沖田が箱を開けていた。
そして、現れた其れに目を丸くする。やはり驚くよな、と土方は障子を閉めテーブルにつく。

「・・・ふーりん」

「やっぱ、いらねぇか?」

「アンタ、なんでこんなん買ってきたんで?」

指で弄び、涼感ある清音を鳴らす沖田をちらりと見て、視線を外す。
此れを見てお前の姿が浮かんだから。
なんて言ったら腹抱えて笑われそうだ。言える筈がない。何か他に言い訳になりそうな言葉は無いかと頭をフル回転させるがこういう時に限っていい言葉が思い浮かばない。
仕方ない、と間をもたせる為煙草に火をつける。けれどこのままじゃ埒が明かないだろう。沖田には掛らないよう煙を吐く。

「いいだろ別に。・・・安かったから買ってきたんだよ」

「千五百円て律儀に書いてありやすぜ?」

「・・・・・・」

返す言葉が見付からなくて言葉に詰まる。こうなったら何を言っても無駄なのだ。沖田に嘘は通用しない。
ハァと溜め息を吐き外方を向いて頬杖をつく。
すると、コツン、と肩に重みを感じ振り向くと肩に蜂蜜色が寄りかかっていた。

「こんなんで機嫌取ろうとしたんで? アンタ馬鹿ですねィ」

どこか戯れるような響きで言われ、詰られるよりも辛いと土方は不貞腐れる。

「いらねぇんだったら寄越せよ、俺の部屋に飾るから」

「いいんですかィ? そんなこと言っちゃって。・・・許してくださいって言えたら許してやりますぜ?」

何だか睦言のようで、いつもなら決して言わないのだけれど土方は煙草を灰皿に置き、戯れ言として口にする。
録音でもされていたら後々面倒だと思いつつ。

「悪かった。これからは気を付けマスから許してください」

「ヨシヨシよく言えやした」

満足そうな顔の沖田にこれからも振り回されるのかと憂鬱になっていると襟足をさわさわと撫でられた。
そしてゆっくりと顔が近付いてきてふっくらとした唇が重なってくる。
ちゅ、と一瞬重ねられて離れていった其れに呆然とする。

「も一回、シたいですかィ?」

「・・・五回ぐれぇしてぇな」

仕様がねぇなァ。
呟きとともに押し倒され、再び口付けられる。
ある意味アメとムチだな、なんて思考は深い接吻に消えていった。

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