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梅々

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ハッピーバレンタイン!

できたー。

作った紅茶のシフォンケーキも表面は狐色ではなかったけれどおいしくできました。明日辺り写メ載せたいな。





それでは土沖でバレンタインネタです!
甘めを目指しましたが如何でしょう?
















秘密にしても伝わってしまう





ほろ苦い僕と甘い君





それはそれは、とても運が良かったのだ。何気無く組んだ、シフトが。勤務表は基本的、二ヶ月前には組んでおく。個人的な用事(シフトを変えるに値する)は二ヶ月前に決まっていることなんて少ないのは知っているが、デートの日だ何だと、予め出勤が決まっていた方が便利なのだ。
二月の勤務表を決めるのは、つまり十二月。多忙な中でざっと流れ作業で決めたその勤務表。タイムマシンがあるのなら褒め称えてやりたい程のものだった。

「・・・邪魔でさァ」

「邪魔はしてねぇだろ。見てるだけ」

にっこり笑ってやれば、珍しいものを見たと驚きながらも泡立て器を投げつけられた。それを易々とキャッチして、また背を向け始めた背中を熟視る。
今日は午前が仕事だった。総悟も同じで、明日は俺は休みで総悟は午後のシフト。
今日は、二月十三日だ。
今になって、決めるときに「トシ、十四日は休みにしていいからな。ってかこれ局長命令!」と近藤さんが言ってくれた理由が分かった。毎年二月十四日は、見回りに行った先々で(好意を寄せてくれている者には申し訳ないが)酷い目にあっている。去年は出張だったから良かったが、本当に一年で一番、体力を消耗するのがバレンタインだったりする。
けれど、愛しい恋人がわざわざ俺のために頑張っている様を見ていると、体力なんか消耗するはずもなく物凄く癒される。

「・・・期待すんじゃねぇよ、土方さん」

「それは無理だな」

賄いのおばちゃんに貰ったのだという、桃色のエプロンを身に付けた総悟が振り返る。白いシャツにスラックス、という格好でそれをつけているから華奢に見える。流石に少女には見えないが、薄い肩に引き締まった四肢、細い腰なんかは十分に欲をそそるものだ。
こいつが俺の恋人、改めて意識するとなんて嬉しい響きだろうか。未だ付き合って三年目、片想いの期間はその三倍ほどあるのだから浮かれていてもいいはずだ。
一昨年は口移しで一口大のチョコをもらい、去年は山崎と作ったという、俺の好みな甘さのチョコクッキーをもらった。今年は何を作るのか、未だ明かされていない。
たとえ総悟が作ったものがダークマターと化していようが、俺はそれを絶対に食える自信がある。だから今なら、近藤さんがあの可哀想な玉子焼きを嬉々として食べる気持ちも分かる。

「順調か?」

「いまんとこ。まぁ、焼けなきゃわかんねぇんで何とも言えやせんが」

こないだ俺にバレないようこっそり買っていたお菓子の本をじぃっと見つめながら総悟は返した。
山崎情報では俺は今日、一日中仕事で外に出ていたらしい。それを聞いた総悟は今日作ることを決め、山崎はそれを俺に伝えに来た。ナイス、山崎。礼はミントンを一回見逃すでいいだろう。
それにしても本当エプロン姿が可愛い。台所を借りる代わりに着用を強要されたと唇を尖らせて言っていたがいい趣味していると思う。後ろからこう見ていると、不埒な思いが沸々と沸き上がり、それを抑制するのは中々きつい今。
手についた、白い物体をペロリと舐める後ろ姿を見て我慢が出来なくなった。

「総悟」

「うっ、ア!」

ぎゅうっと後ろから包むように抱き締めると、びくんと肩を跳ねさせてどこから出してんのというような高い声を上げた。怪訝そうに振り返った顔も、桃色のフリフリのお陰でいつもの何倍も可愛い。勿論、常に可愛いのは違いないが。
抵抗を楽しみながら手元を覗き込む。本は「紅茶のシフォンケーキ」と書かれたページが開かれていて、その手前にあとは焼くだけだろう、型に黄色い生地が入っている。

「もう、止めてくだせェ!」

「これでも結構堪えたんだぜ?」

「オーブンに入れりゃ手ェ空きやすから、」

「そしたら、構ってくれんだな?」

にんまり笑って耳の裏側から言葉を吹き込めば、その甘い刺激と地雷を踏んだことに気付き、肩が跳ねる。
抱き締めていた片手を離して、型を持つ。そこまでの大きさはないが片手じゃやはり不安定で、それを支えるように総悟が俺の手の上から両手でそれを包んだ。そのまま二人で持ったままオーブンへと向かう。共同作業か、呟いたら白い肌が真っ赤に染まった。

「一緒にやったら、意味ないじゃないですかィ」

「やってないに等しいだろ、こんぐらい」

「・・・でも、」

折角アンタの為に作ってんのに。
多分、深い意味はないだろうその言葉が強烈に胸に染みた。
さっきの言葉通り手が空いたのだろう、抵抗をせずに腕の中にいる総悟の顎を捉えて口付けた。啄むように幾度も幾度も唇同士を触れ合わせる。それだけで目元を染め、総悟は潤んだ瞳を俺に向けた。

「・・・もう、立ってらんね・・・・・・」

「敏感すぎだろ。・・・続きは夜な」

さっきまで座っていた椅子に腰掛け、俺を跨ぐよう総悟を座らせる。未だ興奮が引かないのか妖艶な雰囲気を纏ったままで、もう一層このまま、とも思うがそこはどうにか我慢。
ひたすらくっついて、ケーキが焼けるのを待った。



「ん、うまい」

「本当ですかィ」

生クリームでデコレーションされたそれを口に含む。食感はふわふわでしっとりしていて、紅茶の香りと生クリームの程好い甘さが口の中で混ざり合う。
思ったままの感想を言えば覗き込んで感想を待っていた総悟が顔を綻ばせる。ほら、と頬を緩ませながら口許に持っていっているとパクリとおいしそうに食み、モグモグといとけなく咀嚼しうん、うまいと首肯した。
口許についた生クリームを舌で拭ってやると、俺の口にもついていたのかペロペロと舐め返された。
擽ったいけれどそれがまた愛撫のようで、悪戯好きな舌を絡めとって深いキスをすると甘い紅茶の味がした。

「ん、ふぁ・・・、っは、ん」

「ありがとな、総悟」

「ん・・・。土方さん」

隣から身を擦り寄せて名前を呼ばれた。その声が呼ぶのは俺の名前だけと確信を持って言えるほどに甘ったれで愛が飽和している声色で。
腰を抱き寄せ同じ温度で名前を呼び返したら嬉しそうに笑った。

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