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梅々

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スランプ

結構原稿進めました、とは言っても千字ぐらいですけど、うん。
今日は久々に化粧して、バイトの面接に行ってきました。受かるかな。本当落ちまくりですね私は。なんでだろう。
明後日から友人宅へ遊びに行くので明日は荷造りせねば!





それではスランプなこの間の池の主な沖田ネタの続き。



















水の中心





 池へ赴けば既に、水辺に腰かけたそれが足をばたばた動かし水飛沫を上げて遊んでいた。待たせちまったのか、思って駆け寄るとくるり、それは振り返った。昨日と同じ赤い瞳が、瞬きをした途端青く変わった。
え。神様だか妖怪だかは目の色も変えられるのか。変えられても不思議ではないがあまりにも突然で驚く。

「土方さんだ」
「お前、目が…」

 あまりにも吃驚して昨日あれだけ敬語を使おうと思ったのに失念してしまった。だが気に止めた様子はなくえ?と首を傾げると少ししてああと声を発した。

「警戒色でしょ。普段は青いんですが、警戒するとちぃっとばかし目の色が変わっちまって」

 そう言って立ち上がった、それの足は今まで水の中にあったくせに濡れていない。人間じゃねぇんだ、改めてそう見せつけられて目眩がした。
 炎天下の草原、みぃんみぃんと蝉が鳴くなか突っ立っているのは中々に辛い。木陰に移れば後ろから音もなくそれもついてくる。
 何故こんなファンシーなことになっているのか。妖怪だの神様だの、非現実的なものが好きなのは俺ではなくあのジミなオタクだというのに。どうせなら山崎の奴を呼び寄せるか。あの民俗学マニアをと思いながら昨日と同じ位置に座り込む。

「土方さんは働いてるんですかィ」
「学生だ」
「へぇ。じゃああれか、夏休みってやつ」
「そうだ。…お前は何なんだ?」
「だから俺はこの池の主でさ」

 昨日言ったじゃねぇですかィと眉を寄せられる。だが、聞きたいのはそこではなくて。

「そうじゃなくて。神様とか妖怪とか」
「さぁ?そういうのは見方次第でしょう」

 事もなくそんな風に言われてああなるほど、と目から鱗が落ちた。流石だ。何年生きているかは知らないが達観している。
 それから、何故だかお互いの話をした。名前は総悟と言うらしいが本当の名前は教えられやせん、だとかで通称らしい。別にそんなこと興味ないのだが。数千年生きているが何年生きているのかは忘れているだとかで、それぐらいしか情報はない。それに比べ俺は質問攻めだった。どれも大したものではないのだが。

「土方さんは花好きですかィ」
「まぁ、普通だけど」
「向日葵見に行きやせんか」
「はぁ、」

 拒否権は果たしてあるのか。とりあえず曖昧に頷くと寝転がっていた総悟はむくりと起き上がった。行きやしょう!張り切った声を出して駆けていく。それを追うのだが。総悟は長い雑草を気にすることなく駆け、その上池を横断して林へ向かう。比べて俺は、雑草は掻き分け池は迂回して行かなければならなく、必然的に遅れが出る。
 俺は、自分が意識したものにしか触れないんでさァと総悟は言った。だから水の上に立とうと思えば立てるし、泳ごうと思えば泳げる。濡れようと思わなければ濡れることもない。だから林の中へ入ると、総悟の通り道は木が避けていく。その木が元に戻る前に走らなければいけないから中々大変だ。ネコバスを思いだしながら走っていれば、総悟が立ち止まっていた。まだ林の中だ、待っていてくれてたのか。

「アンタ遅い!」
「しかたねぇだろ!草も木も邪魔するし池の上なんざ歩けねぇんだから!」
「…そっか」

 合点したと青い目をまんまるくしてそいつはすいやせんと、口調は軽いが謝ってきた。謝られたことに驚く。謝るのか。
 俺はもしかしたら勘違いしていたのかもしれない。コイツは、そんなに悪いやつではないのでは。

「まぁ走る必要はねぇんで歩きやしょう。俺に触ってりゃ、あんたのためにも道は開いてくれやすよ」

 なんて言いながら手首を掴まれた。走って体温の上がった体には冷たくて気持ちが良い。
 手首を掴まれたから、至近距離で歩くことになって。あの昨日もした花の香りがする。きっと総悟から漂っているのだろう。俺は汗臭くないか、少し心配になった。
 少し歩いていると、段々と明るくなってきて、木々も減ってきた。

「土方さん、ほら!」

 林を抜けた正面には沢山の向日葵があった。黄色い大輪の花が空を向いて咲いている。顔よりも大きい花ばかりであまりの迫力に吐息が漏れる。

「すげぇな…」
「でしょう? ここは今は俺とアンタしか知らないんでさ。ひみつきちにしやしょう」
「ひみつきちってな…」

 そんな年じゃない。とっくの昔に卒業している。
 だが、まぁこんな奇天烈なやつといる時点でそんなことは関係ないかと思い直して。
 太陽を一心に見上げる花を穏やかな気持ちで見つめた。

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