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梅々

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おうおう

銀魂新巻読めてないです。でも夏コミ戦利品読んだら凄く琴線に触れたのがあったので私は一撃必殺の攻撃をくらった気分になりました。朝一で。
座敷牢だなんてそんな・・・さいきん読んだなと思ったらあれは鉄鼠の檻でした。





それでは寝ようと思ったら打ってた土沖。暗めです。
何気に更新してる分米英が進まないっ・・・!!
















消えてなくなること勿れ





ぬばたまの闇に沈む金魚





誰もいない空間が好きだ。
少し物が散らかってるぐらいで、明かりのついていない部屋。世界を切り離す雨音。青い光に包まれた、無機質なもの。その中でじっと座っていると何もかも忘れられるぐらい、幸せになれる。
人工の光も空気調節も無い部屋に一人きり。誰も関わることのない時間。
慈雨と幸福に包まれる。

「総悟。」

「・・・・・・かたさん。」

予想外の乱入者は部屋の戸を鳴らしながら開けた。背負うのは闇ばかり、それが良く似合うのがこの人だ。
久方ぶりに出した声は掠れていて、前半分は聞こえなかったにちがいない。それでも小さくいらえを寄越し土方は沖田の隣に腰掛けた。
閉まった戸を名残惜しく眺める。外からやってきた土方は雨の匂いだとかの混じった、余所の匂いがした。この部屋に異分子が来たのだと思うと不快だけれど、それより土方が異分子であることの方が不快で、沖田は土方に寄りかかった。

「何しに来たんで?」

「来ちゃ悪いか?」

「悪いからきいてるんです。」

煙草の匂いが外の匂いを上回った。体臭といっても過言じゃないと失礼ながら思いつつ、すん、と胸いっぱい息を吸い込んだ。

もう会ってくれないんじゃないかと思った。

もう話し掛けてくれないんじゃないかと思った。

けれどそれは傲慢な考えだったらしい。傷付きもしなかったのだ、土方は。涙も流さなければ憤りもしなかった。そうじゃなければ平然と此処にはいられない。だが、心配はしてくれているのだ。兄貴分として。それだけで沖田は救われた気持ちになった。

「薬は抜けたか?」

「へい。山崎が明日からは部屋出てもいいって。」

「・・・そっか。」

今日まで一週間、とはいえど二日は意識がなかったが、部屋から出ていいのはトイレだけだった。しかも山崎が同伴しなければいけなかった。風呂は体を拭いてお仕舞い、食事は山崎が此処に持ってきて食べる。一日一回来る近藤と、世話をするため殆んど付きっきりの山崎以外、誰にも会っていなかった。
久々に聞いた声に安堵しているのかもしれなかった。寄りかかることを許されて泣きたくなった。
ごめんなさいは言わない。近藤には心配をかけたと思ったから言ったが、土方に言ったらきっと変に勘繰られる。重く思われるのは嫌だ。
こんな風に終わってしまうんだ、心の隅で冷静に見ている自分が居て、足掻いている自分も居る。けれどどうしようもないのだ。

「用がねぇなら帰りなせぇ。・・・そろそろ山崎帰ってくるし。」

「・・・山崎が? ・・・帰ってくるって?」

「ここんとこ一緒に寝るんでさ。頼んでもねぇのに。」

頼んではいないが有り難かった。一人で寝るには悲しすぎて、それでいて山崎になら何を見られても良かったから。
おかあさんみたい、と思ったそのままを昨日言った。そうしたらそれは光栄ですと山崎は笑って返したのだった。酷く安心して抱き枕みたいにしてやったら心臓がバクバクしているのが聞こえて可笑しくなった。それでも、山崎は優しく沖田を抱き締めただけだった。
不埒なことは何一つ、しなかった。

「なぁ、総悟。」

「・・・電話ですぜ。」

伸びてきた手が頬に触れる。向かい合うように土方が体勢を変え寄りかかれなくなる。触れた手が脳から動けと命令を受けた直後に土方の携帯が鳴り、ピクリと指先が動いた。
全てが終局へ向かっているのは変えようのない事実なのだ。だから、いつ何を言われても終われるようでなければならない。沖田は男なのだから、女のように未練がましくあってはならないのだ。
どうやら電話は女かららしい。早速か、と思うと自嘲が禁じ得ない。忙しいから無理だ、今日は会う気がない、その手の言葉が聞こえてきて、こんなところにいるのならさっさと行けばいいのにと純粋に思った。
切れるのは今日でも明日でも、変わらない筈だ。

「・・・ったく・・・・・・。」

「早く行けばいいのに。」

「そ、」

「あんた全然忙しそうじゃねぇのに。」

「総悟、」

「俺に構う暇があるのなら、」

新しい恋人を可愛がってやればいい。
言い切った途端抱き締められて、堪えようのない胸の閉塞感に突き放した。少しのフラッシュバックと耐え難い哀しみ。脳裏に浮かんだあの光景や感触よりも郷愁に胸が騒ぐ。静まろうとはしない。

「もう、いらない。あんたの腕は。」

「っ―――」

これ以上頼ったら依存して離れられなくなる。それは良くないのだと理解しているから、求める体を必死に抱き締めて、腕に爪をたてて堪える。
土方には何とも無かったのだから、自分も余計な傷を増やしてはいけない。生まれたばかりの戒めに身を委ねて、未だに沖田を熟視る土方を拒む。

「総悟。」

「寄らねぇで。早くあっち行って。」

「そんなの、できるわけねぇだろ・・・っ!!」

痛々しい声に、繋ぎ止めようとするかのような遠慮の無い強かな抱擁。窒息しそうになりながら腕を振り回すも意味がなく。頭が何かに触れたと思ったらいつのまにか畳に背をつけていた。
なんでそんなに必死なのか。離れようと努力しているのに、触れてくるのか。

何も分からない、分からないよ。

「土方・・・さん。」

「っ許さねぇ! おまえに触れていいのは俺だけだっ・・・!」

「・・・土方さん?」

「今日やっとあいつら捕まえたんだ。だから、おまえに会いに来れた。・・・守れなくてごめん、総悟・・・。」

泣いている、土方が。
謝るべきなのは土方ではなく沖田なのだ。自分の身も守れず、良い様にされてそれでも生き恥を選んだ沖田が、何よりも悪いのだ。
そう言うとふざけるなと土方に唇を塞がれた。
最後のキスは名前も知らない男だった。
それを消し去るような激しさで、土方は沖田の口腔をまさぐり、蹂躙する。

「・・・これでお前が死んだなら、俺は生きていけなかった。」

「そんなに俺のことすきなんですかィ?」

「ああ、愛してる。」

冗談だったのに、真顔で返され沖田は瞑目した。

強い瞳の激情のままに求められて、沖田はたくさん涙を流した。体に触れる熱は許した人のものだからこそ熱を煽る。
沖田は幸せだと呟き土方に笑いかけた。すると土方が泣きそうに顔を歪めたものだから、沖田は堪らなく愛しいと思い直した。

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