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梅々

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魑魅魍魎

二日も日記書いてないってどういうこと。日記ぐらい書けよ、自分。というような感じですが始終遊んでたわけではありません。美術館行ったり4Kmも歩いたり、勉強したり、小説ちょろっと読んだり・・・って。偽装恋愛のススメという小説読み始めました。イラストが沖さんだから買ったらびっくりBLでした(笑)。
お母さん、やっぱり『邪道』はBL漫画なんだよ・・・。性別ないからいいじゃん、じゃないんだよ。

それでは七月に旅行行った時からちょろちょろ書いてた小説なんで季節は考えないで。






















“あの副長が娘を囲っている―――――”
最近、屯所内に根も葉もない噂が広がっている。これまでもこういった、いわゆる“副長の女”ネタは数多くあったのだ、色々と。だが今回のコレは信憑性が高い―――――という尾ひれがついている。最近土方さんが夜出掛けていくのだが、それは花街にではないのは確かで。どんな女か、と隊士が冗談混じりに言っていた。

俺には、そんな事関係ないのだけれど。 










紫陽花ノスタルジア 










「出張・・・?」 

「そうだ。お偉いさんの護衛でよ。一人、先に行ってもらってるヤツがいるから、二人でやってくれ」 

「二人・・・ってぇと?」 

ここ数日見掛けないニコチン中毒の顔が頭をよぎった。けれどそれを無理矢理振り払い、興味本位で聞いてみる。すると茶目っ気のある仕草で口許に人指し指を当てた。 

「それはまァ秘密だ。・・・でな、一週間分宿とってあんだけどよ、仕事早く終わったらゆっくり休んでていいからよ」 

「・・・じゃ、頑張りやすか」 

別に、その休養に心惹かれた訳じゃない。そりゃあ、少しはときめいたけれど。体が鈍ってるから遠くへ行くのも丁度良い、それに、俺に頼むってぐらいだから何か起こる確率が高いのだろうと心がうずいたのだ。
つくづく、平和が似合わない性格だ。

刀片手に立ち上がり、部屋を出た。行き先等は山崎から聞いてくれ、と言われていたから、まず始めに山崎の部屋を訪ねる。 

「あ、沖田さん」 

山崎の部屋の障子に手をかけたところで後ろから声をかけられた。山崎のくせに手間とらせやがって、と悪態をぼやきつつ振り返る。
余程顔に気持ちが表れていたのだろう。山崎の顔が引きつった。あ、その表情いい。 

「あの・・・行き先等はこの紙に書いてあるんで。荷造りしたらさっさと出発して下さい」 

歳上のくせに後輩の、ミントンオタクが何を偉そうに。紙を引き千切る勢いでかっさらい、つかつかと自室へ戻り、乱暴に障子を閉じる。
先程もらったばかりの紙に軽く目を通す。此処から車で一時間の都会の外れにあるらしき目的地は中々高級そうだ。タオル等もあるだろう。と鞄に着替えだけ詰めて部屋を出る。勿論、アイマスクと清光は常備品だ。徳川の紋が入ったパトカーに乗り、後ろに荷物をほっぽる。清光だけは、隣の席に立てかけて。
さてと、と意気込みキーを回した。 





* 





「こちらでございます」 

女の声が部屋の外から聞こえ、ノックとともにこの部屋の扉がスライドした。もうついたのか。近藤さんから連絡が入ってからまだ一時間も経ってない。いや、経ったか?とにもかくにも、余程飛ばしたな。真撰組だろうがなんだろうが交通ルールはきちんと守らなければならない。きちんと言い聞かそう。 

「失礼致します」 

襖がそっと開く。部屋の奥にある椅子の上、寛いでいたが座り直す。徐に開く襖に合わせ、下から上へ目線を上げていく。 

「お連れ様です」 

言わなくてもわかる。隊服着てんだから。でも、幻覚かもしれない。居眠りでもしてる・・・訳ねぇよな、やっぱり。 

「えっ・・・」 

驚きの声は俺からではなく、入り口で立ち尽くす、総悟の口から発せられた。あれ?と何か必死に考えているようでもあるし、思考回路がショートしてるようでもある。 

「お客様?」 

「え・・・ああ、すいやせん」 

軽そうな鞄を持ち直し、部屋の隅に座った。向かいの座椅子は空いているのだから、其処に座ればいいのに。 

「わからないことは・・・お連れ様にお聞きください。それでは、ごゆっくり」 

正座し襖を閉じ、少し足早に部屋を出ていく。その後ろ姿を見て、総悟が不満そうに眉を寄せる。 

「何でィ・・・ちゃんと説明しろってんでィ」 

「さっき団体がついたからなァ・・・しょうがねぇだろ」 

「ってかアンタと一緒だなんて聞いてなかったんですけどねィ」 

「俺もだよ。・・・屯所は平気なのか?俺ら抜けてよ」 

「平気なんじゃねぇの」 

どこか投げやりな返事に不満を感じつつ、窓の外を見る。薄く月が輝く中遅咲きの紫陽花が群生していて、滅多に見れない光景だと目に焼き付ける。こんな機会をくれたあの人に心の中で礼を言い、チャンスをどうモノにするか考えた。 


ぎこちなかったのだ。最初から、何もかもが。
そうなってしまったものはしょうがないから諦めていたし、そのぎこちない関係を愉しんでもいた。
あいつが餓鬼の頃から、嫌われていたのはわかっている。―――――それはあいつの姉が関係しているからであって、その上近藤さんも絡んできちゃあ嫌われるのは当たり前だろう。
だけどそれでも、ぎこちなくでも縮めてきてくれた距離は硝子越しに触れ合える程近くて、段々と愛おしく思うようになった。
少しづつ、少しづつ。
互いに呼び方が変わって立場も変わった。それに伴うように。 


「・・・なんでそんな端にいんだよ」 

部屋一つ分離れた隣で体育座りをしている姿に幼い頃の姿が重なる。
道場から迎えに行くと一人寂しく、部屋の隅で体育座りしていた、あの姿が。 

「別に・・・気分でさァ」 

立ち上がり、座椅子に腰掛け、用意されていた茶菓子の包みに手をかけた。
敢えて向かいに座らなかったのは、俺に関わる気はないということ。出来る限り話しかけるな、話すのは必要最低限にしろ、そう思っているのだ。 

「風呂、入ってきまさァ」 

ゆるゆると立ち上がり、衣装箪笥の中から浴衣と足袋、タオルを取り出し、自分が持ってきた荷物をあさる。 

「風呂、地下だからな」 

「へい。・・・露天風呂はないんで?」 

「地下にある」 

「へい」 

颯爽と部屋を出ていく姿を網膜に焼き付ける。けれどそれはすぐに煙でぼやけ、かき消された。 

曖昧なこの関係のように。

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