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梅々

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遅くなりました!

ひめはじめネタ続きできました!

スランプと遅筆ともう最悪のタッグです!

まだ背後注意ではないです土方め。
































できることなら離したくはない



だが、未練がましい素振りなど見せるわけにはいかないだろ?











シンデレラデー











 お疲れ様です、山崎が頭を下げて擦れ違った。顔がにやついているのは逢い引きの後だからだろうと、口を出さないことにし、土方は軽くいらえを返し肩をならしながら部屋へ戻る。煙草を灰皿に揉み消し、捲っていた袖を元に戻す。

 今年中に片付けるべき書類は全て終わりあとは見回りに出るだけだ。デスクワークに疲れた体を程好く解せるだろう、期待しつつ上着を羽織る。刀を腰ひもで留め煙草に携帯、念のため財布も持ち部屋を出た。

 毎年、近藤は沖田にお年玉を渡す。そして土方にも。だから土方はお年玉として毎年近藤の好きな日本酒をやり、沖田には元日に何かしらをおごるようにしている。気恥ずかしく、それとなく渡すしかできないけれど。

 来年はできるのだろうか。一年限り、で終わるのは、恋人関係だけであるのかそれ以上の曖昧な領域までも含まれるのか、土方には分からない。

 廊下の角を曲がると、人影が視界に入った。玄関先に同じ烏色の服を着た者が立っている。茶色い頭が、此方を振り向いた。



「・・・総悟」



「あぁ、土方さん」



 ぱちぱち、音がしそうな瞬きをして、沖田は此方に近づいてくる。睫毛が長い、なんて見惚れている場合ではないと、土方は軽く咳払いをする。

 沖田の仕事は疾うに終わっている。だから今頃はもう、入浴も済まし、宴会にでも顔を出しているだろうと勝手に思っていたのだが。土方の予想に反し、沖田は隊服のままであり、しかも玄関にいた。

 何をしているのだろう、悩まずにはいられない。



「宴会、出んじゃねぇの」



「酒はもう予約済みでさァ。どうせだし、アンタにおごってもらおうと」



 土方が靴を履く、その隣で沖田は同じようにブーツに足を食まし、戸を開けてやれば当然といった顔で先に外へ出て、土方が隣に並ぶのを待つ。

 土方にとっては嬉しい。今日の終わり、つまり関係が解消される最後まで傍にいられるということだからだ。沖田はただ単にたかりたいだけだろうと構わない、今夜は無礼講だ。

 町は明るいが出歩いている人間はそう多くない。大抵は屋内で年の移ろいに思いを馳せ、親しいものと酒を飲み交わしていたりするのだろう。故に、見回りの意味はないに等しい。攘夷派の人間も彼方は彼方で、既に出来上がっているだろう。ノリとしては攘夷浪士も真選組も変わりがない。



「肉まん! あ、あそこ甘酒置いてらァ」



「だなー・・・」



「買ってこいよ」



 クイクイ、袖を引いて無邪気に瞳を輝かせたと思えば、生意気な顔で見下すような目を沖田は向ける。めんどくせ、そんなこと思ってはいないが呟くだけ呟いて、土方はコンビニへ向かい沖田の所望したものと煙草を買う。あいよ、と渡せば沖田の表情が年相応に緩み、土方の表情も知らぬ間に柔らかくなる。

 小憎たらしくて、本気で殺したくなる時も多々ある。だが、こういう表情を見ると抱き締めたくなるからいただけない。沖田の全部が好きなわけではない。全力で殺しにかかるのは止めてほしいし、もう少し強がったりせずに他者に頼るべきだと思うけれど、相対的に見るとそんなところも可愛らしい。結局はこの上無く惚れているのだ。そう結論づいて土方は一人、赤面する。

 沖田が食べ終えるのを待ってから歩き出し、ぶらぶらとポケットに手を突っ込みながらただ歩く。言い方を変えればデートになるのではないか。思い至り、土方はゴホッと噎せた。



「大丈夫ですかィ?」



「ん? あぁ」



 声も表情も通常通りだが気遣う素振りを見せる沖田に、土方は沸き上がる衝動をなんとか堪える。抱き締めたい。それだけではなく、もっと。今日で最後だというのなら、忘れないように何度も飽くことなく抱きたい。

 だがこんな風に傍にいられるだけで良い。本来は一人きりの年越しだったのだ、それを考えたらどれだけ幸せか。



「土方さん」



「なんだ」



「・・・」



「なんだよ」



「・・・今夜はしてくんねぇんですかィ」



 刹那思考が空っぽになり、気付けば土方は沖田の腕を引いて路地裏に入っていた。恥ずかしげに視線を外し、頬を染め弱々しい声で沖田は訊ねた。その仕草と、沖田の固く握った拳が震えているのを見たら。傍にいられるだけで、と思ったばかりだがそれがぷつんと切れた。

 何度か沖田と訪れたことのある、古ぼけた宿へ入る。外装を見ると今にも朽ち果てそうだが、内装の損傷はそこまでではなく、老舗旅館を思い出させる落ち着いた連れ込み宿だ。受け付けに座る好好爺に札を放り、土方はズカズカと最奥の部屋へ向かう。各部屋の襖には部屋の名を冠する花が描かれているが奥のこの部屋のものだけは違う。この建物の中で異質なほど真っ白い。襖は真っ白いが、この部屋の褥は赤くしかも絹だ。所謂VIP専用らしい。このような襤褸屋に来るのは金があまりない者ばかりのため、土方以外使う者はいないようだが。

 その奥の部屋へ入り、入ると同時に土方は沖田を抱き締め、そして唇を塞いだ。

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