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梅々

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比例する恋模様

今日漸く3ZⅢ読みました。読書感想文ネタがあったとはびっくりだ。やっぱり沖田はそういう系読むんだね。当たり前だよね。
というか土方先生にして漫画かいてくれないかな、空知先生。絶対土方が先生やったらやらしいと思う。白衣にメガネってお医者さんごっこ?みたいな。





さて、夏の中編です。
















うだるような暑さにどうかしてたんだ。
なんて言っても言い訳だろと笑われてしまうだろうけど。
普通の俺じゃあんなこと言えなかったって。





憂鬱な月を手に入れて





英語の宿題も無事終わり、祭の日になった。未だ沖田の機嫌を損ねたままで、昨日も二人で英語の宿題をしたが、必要最低限の会話しかしなかった。
沖田から聞いた場所に約束の時間より十分早く着いたが案の定、誰もいない。
近くにあった木に寄りかかり、腕を組み目を瞑る。早く来ないだろうか、と考えるよりも先に沖田の事が頭に浮かぶ。
どうしたいのだろう、沖田は。
初めて、こんなに真剣に仲違いをした。謝ろうとしても、それを沖田が許さない。無言で制止する。
怒らせたつもりなどない。だからこそ余計、早く謝っていつものような関係に戻りたいのに。

「とぉしぃ~! 待ったぁ?」

「・・・近藤さん、キモイからその走り方やめてくれ」

オカマのように内股で走り口許に手をあて、空いた手を大きく振りながら寄ってくる近藤さんは発情期のゴリラとでも言えよう。そこはかとない破壊力を持っている。
というか、今時のブリッコはそんなことするのだろうか・・・?

「トシも浴衣着て来たんだな」

「着ねぇっつったのに姉貴が無理矢理着せやがった」

「ハハハ。あの人らしいな。総悟にも一緒に着ようって言ったけどな・・・だから遅いのか?」

そう、沖田は大抵、土方らと集まるときは約束の時間の五分前に来る。あんな性格からしたら意外だ、姉の教えなのかもしれない。土方が十分前、近藤さんが三分前に来るのが普通だから確かに、遅い。
携帯を見ると約束の時間丁度だ。

「あ、来た来た。そーご!」

来たのか、と携帯を懐に仕舞い、近藤さんの見ている方向を見る。パタパタと小走りしている沖田が着ているのは濃い青の浴衣。姉に遊ばれる弟が彼処にもいた。近付いてきてわかったことだが、頭には水色の花の髪止めまでつけている。見た目が良い、というのも問題かもしれない。沖田の場合、特に。

「すいやせん、遅れやした」

「気にすんな。にしても総悟、似合ってるな~」

「・・・これ姉上が授業で縫ったもんなんでさァ。女物ですぜ? 似合ってるって言われても」

「そうか? いいことじゃねぇか、何でも似合うって」

その言葉に土方共々吹き出してしまう。
女顔は沖田のコンプレックスだと近藤さんだって知っている。それなのにそのようなことを言えるとは、流石、としか言いようがない。
もし今の言葉を土方が言ったのなら、余計関係は悪化していた、というか修復不可能になるに違いない。

「さ、行こうぜ行こうぜ」

「ですねィ」

そう言い沖田は近藤の浴衣の袖を掴み歩き出す。
―――――いつもなら、沖田は土方の傍を歩きやれあれ買えだのやれこれ買えだのせがってくるのだが。
隣に居ないことを寂しく感じるなど、どうかしているかもしれない。あんなに煩わしくて、あんなに迷惑をかけられたというのに。

「トシも食うか? 焼きそば」

「え? ああ、いらねぇよ」

気付けばいつの間にか二人共焼きそばとお面を持っていた。ぼーっとしていた所為だ、疎外感なんか感じていない。これっぽっちも。
道の端に立ち止まり二人が食べるのを待つ。手持ち無沙太で懐に入れてある煙草を吸おうとし躊躇う。沖田は知っているが近藤さんは土方が煙草を吸うことを知らない。知ったら彼のことだ、止めるに決まっている。それが土方の為を思っての言葉だと分かっているが、もう止められないのだ、無駄に心配をかけさせる訳にはいかない。
出しかけたケースを懐に仕舞い直すと同時に、近藤さんがあっ、と声を上げた。

「お妙さぁぁん!!」

またあの病気が始まったかと苦笑する土方の前を近藤さんは走り過ぎていく。その姿を見送り、いつものように殴られたとこまで見届けた後、沖田の方を向き直る。
バチッ、と視線がまともに合う。

「・・・露店でも、見に行くか?」

「奢りてぇってことですよね、それ。いいですぜ、赤字になるまで食べ歩いてやりまさァ」

そういう意味では無いのだけれど。でも、一緒に居てくれるのなら少しぐらい痛い目見てもいいかと、後々悔やむだろうが思う。
なんか変だ、考え方が変わった。
こんなに沖田に依存していたとは。信じたくない、というか信じられない。

「林檎飴食いたい」

「はいはい。安い方にしろよ」

「嫌でさァ。おじさん、でかいのくだせー」

「あいよっ」

威勢の良い、漁師のようなおじさんは沖田の顔を見て「おじょーちゃんにはおまけしてやろう」と邪気の無い笑みを浮かべ沖田に飾ってあった中で一番美味そうなのを渡し、土方の手から小さい方の金額だけを受け取った。

「デートかァ。いいね、若い者は」

「なっ、違いまさ・・・」

「でも喧嘩して機嫌悪いんですよ、コイツ」

「ちょっ・・・! 土方さん!?」

焦る沖田の腕を引き、土方はおじさんに会釈をしてから歩き出す。
すたすたと人混みをかきわけ歩く土方に沖田は転びそうになりながらついて行くしかない。
沖田がつまづきかけたのが掴んだ腕から伝わって、なんでこんなことをしているのだろうと土方ははっと我に返る。
我に返った序でに沖田の手を離し立ち止まる。歩き過ぎたらしい、露店の無い境内の端まで来ていた。

「ったく・・・土方さん、あんたどうしたんで?」

乱れた裾を正し、腰ぐらいの高さの石塀に座り林檎飴を舐めながら沖田は問う。
ぶらんぶらんと足を振る沖田は久し振りに穏やかな表情をしているように見える。
沖田は穏やかでも土方は穏やかではない。自分の行動理念が分からないのだ、無理もない。
ただ一つ言えるのは、今の自分はオカシイということ。

「俺、お前とは死ぬまで一緒にいると思う」

「はい?」

「だから、なんつーか機嫌直して欲しいんだけど」

「・・・・・・・・・・・・・・・プッ」

目に涙を浮かべ腹を抱え沖田は笑い出す。
何がそんなにツボったのか。土方には皆目見当がつかない。柄にもなくキョトンとしていると漸く笑い終えた沖田が指の背で涙を拭う。
そして意味ありげな眼差しを向けられる。

「一世一代の大告白聞いた気分でさァ」

「え゛」

“俺、お前とは死ぬまで一緒にいると思う”

“だから、なんつーか機嫌直して欲しいんだけど”

自分の言ったことを思い出し土方は気恥ずかしくなってくる。
沖田相手に、何を。
真面目な顔してあんなこと言った自分が恥ずかしい。沖田の言うように、告白しているようだ。
そういう目で沖田を見ているわけではない。・・・ない、のか? 本当に?

「・・・あんた俺のこと好きなんで?」

「なっ・・・違ェよ」

「本当に、違いやすか?」

「違うっての」

ちぇっ、つまんねぇの。
ふざけた口調で言われた言葉は沖田の本心のように聞こえた。

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