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梅々

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イギリスは愛らしいさぁ

基本スタンスについて昨日アップしたくせに、今朝おめざめテレビ見てアメリカ不況のニュースやってたから米英書いた早良です。早良って書いてばかと読む。

昨日通販で届いた土沖小説読んでウハウハです。読書こそ心の友。
青春だー!って感じの甘酸っぱい小説が書きたい。





それでは百人一首で米英。
風邪アメリカ。
















憂かりける 人をはつせの 山おろしよ
はげしかれとは 祈らぬものを





紫石英




見慣れた家のベルを鳴らすが、煩わしいこの家の住人も何も出て来なかった。
仕方なしにノブを回すと開いていて、お邪魔します、申し訳程度に呟いて勝手知ったる屋内へと入る。
シーン、としていて何も音が聞こえない。聞こえるとしても、外の鳥が哭く声や、車が通る音だけ。この家の中からは俺がたてる、軋む板の音しかしない。
寝室のドアを開き、隙間から顔を覗かせる。
眼鏡をサイドボードに置き眠っていた彼は青白い顔をしていた。久々に見る、レンズ無しの顔。
枕元に近寄り手頃な椅子を引き寄せる。ギシッ、と椅子が軋んだけれど彼は未だ眠ったままで。

「・・・アメリカ」

「・・・」

「・・・アメリカ?」

呼んでも目覚めない彼が何だか恐くって、もう一度呼ぶと不安がそのまま声に出て笑えた。
スゥッ、とアメリカが閉じていた瞼を開き、俺を写す。

「・・・アレ? イギリス。・・・人の家に入る時はチャイムをちゃんと鳴らすのがマナーだと知らないのかい?」

「ちゃんと鳴らしたに決まってんだろ、馬鹿・・・」

いつもなら怒鳴り返すのだけれど、安堵した所為で涙が滲みそうになった。

そんなに、恐いのか。

この存在を無くすことが。

「そうか、全然気付かなかったな・・・」

「ったく・・・。林檎、買って来たぞ。向いてやろうか?」

「風邪が移る前に帰った方がいいんじゃないのかい?」

勇気を振り絞ってかけた声は遠回しな拒絶の前に散った。
ああ、まただ。いつだっておまえはそう。
俺の淡い期待も勇気も何も、粉々にする。いつだって、どんなときだって。

「・・・なら、俺は帰る。さっさと治せよ、迷惑だから」

「分かってはいるけどね・・・。あぁ、そうだ。庭に君の好きな林檎が出来たよ。好きなだけ持って行くといい」

毎年この時期になるとアメリカは庭になった林檎をくれる。林檎はバラ科の植物だ。俺の象徴的な薔薇の。・・・まぁ、関係ないことなのだが。
ソレを、植えたのは自分自身なクセにアメリカは絶対に食べない。買って来たものとか、貰ったものとかは食べるけれど。
どういうつもりか、さっぱりわからない。

「それじゃあ、ありがたく貰ってく。じゃあな、アメリカ」

俺なんかが側にいるよりも、日本やらリトアニアやらがいたほうが嬉しいのだろう。
それなら、俺はさっさと帰るしかしてやれない。
もう、アメリカは愛しかったあの日々のアメリカじゃないんだから、俺の大切なヤツじゃ、ない。

部屋を出ようとすると抑揚のない声でイギリス、と呼ばれた。

「・・・・・・何だよ」

「紅茶、煎れてくれないかい? 熱でフラフラして何も出来ないんだ」

「・・・煎れたら帰るからな」

ざまぁみろ。
と、初めて呪いが(アメリカに対して)成功したと素直に喜べないのは最近は呪ってないからか、被害を被るからか。
台所を借りて湯を沸かし、カップにソーサーに・・・と準備をして立っているとガッ、と背後から何かに抱きつかれた。
驚いて振り向けば、歩けないはずのアメリカ。

「・・・アメリカ?」

「―――禁断の木の実を食べたイブは知恵を得たのに、君はちっとも理解しようとはしないんだね、イギリス」

「は・・・?」

「素直になれないくらい、呪いたいくらい俺が好きなんだろう? それなら、わかるはずじゃないか」

「―――何、を」

掠れた声に柔く笑んだアメリカは、俺を抱き締めたまま引っくり返して、頬を熱い手を沿える。

「君にこんな姿見られたくないけど、側にいてほしいんだって」

「―――頭、おかしくなったんじゃ、ないのか・・・?」

「かもしれないね」

真っ直ぐと、視線を合わされて反らせない。
カタカタ、とやかんが騒ぎ出しても、アメリカはじっと俺を見たままだ。

「・・・寝ろ。もう、帰るからな」

手を振り払い背を向けて、紅茶を注ぐ。その間も背後に気配を感じたままで、若干のいたたまれなさに胸を苛まれつつもソーサーの上にカップを、砂糖とミルクをその隣に置き、真っ直ぐ廊下へ向かう。

「イギリス・・・」

「もう、昔みたいには戻れないんだよ、アメリカ」

そうとしか言えなくて、心とは裏腹な言葉が口をつく。
玄関を出ると強く風が吹いて、庭の林檎の木がサワサワと揺れた。





#74

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