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梅々

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ジャンプ

連載書くてかいってばりばり百人一首書いてました。しかも一日で表の雛祭りネタとこれ完成させちゃいましたからね。
結構すごいと自分で言ってみる。
次も多分、3Zの短編になりそう。いま3Zブームなもので。

それでは、百人一首で病ネタ。















花さそふ 嵐の庭の 雪ならで
ふりゆくものは わが身なりけり





添え星





この心臓を、この肺を、貴方の物と変えられれば良いのに。





「沖田さん」

布団に潜り込もうと、温い布団に足を突っ込んだとこで呼び止められた。
薬と水差しを乗せた盆を両手に持った山崎は、ふと悲しそうに瞳を細めた。

「副長が─────」


心臓が止まるかと思った。
それを聞いた刹那。けれど、夢みたいなその言葉にこみあげてきたのは嬉しさじゃなくて切なさで。馬鹿なお人だ。そう呟くので精一杯だった。




午睡から目が覚めると、障子を通し差していた日差しは既に無く辺りは真っ暗だった。度々雪の積もる冬の終わりだ、未だ陽が沈むのは早い。
そろそろ土方さんの好きな梅の花が咲く頃だろう。明日辺り部屋を抜け出して眺めに行ってみようかな。去年、巡回の途中見つけた梅が群生している場所は此処からそう遠くないはずだから。病に冒されたこの体でも行ける程には。

ギシ、ギシッと足音が近付いてきて障子に行灯の灯りが映る。この足音は絶対、土方さんだ。
長くこの部屋に篭りきりだから、足音で誰が来たか分かるようになってしまった。元気だった頃から土方さんの足音は分かっていたけど。
音をたてず静かに障子は開き、二十四時間ぶりの顔が隙間から覗く。

「…起きてたのか」

「ええ」

律儀に毎日同じ時間に来なくてもいいのに。この人らしいといえばこの人らしいし、俺だって出来る限り会いたいと思うからいいのだけれど。

この病は、移るものだから。

この人には、移って欲しくない。
死んで欲しくない、だから。
その為にはもう二度と会えなくても、いい。

行灯を俺の枕元に置き、土方さんもその傍に座る。
行灯に照らされた顔はこの人にしては無表情で、何かごちゃごちゃ無駄なことを考えてるのを表に出すまいとしているのが見え見えだ。


─────嗚呼やっぱり。
山崎が言ってたのは本当のことらしい。流石監察であり、土方さんの秘書的なことしてるだけはある。

「あんた、馬鹿だろィ」

「何がだよ」

少しムスッとしているのは思い当たりがあるからだろう。
土方さんは馬鹿正直過ぎる。そんなとこが愛しくて堪らない。けれど、抱き締めることさえ躊躇われる。

「山崎がねィ、あんたが死に場所を探してるっつってやしたよ」

「ハァ!? ……誰が、そんなことするかよ」

「代われるもんなら、代わりてぇって。俺の代わりに、死ぬって」

山崎が言っていた。自分もそう思うし、土方さんもそう思っていると。
だから俺は一蹴したのだ。俺の代わりに死ぬなんて、冗談も大概にして欲しくて。
俺にそんな価値はない。確かに、剣の腕はそれなりにはあるけれど誰も彼もが自分が代わりに……と思う程の価値なんて微塵も。何十、何百人もの犠牲を出して生きてきたから、これ以上何の犠牲も身代わりも、必要ない。

「…これからも……ずっと、行き続けろ」

「無理なこと、言わねぇでくだせぇよ」

そんな顔で、非現実的な望みを。
無理なこと口にされても困るのは俺だ。しかも、そんな泣きそうな顔で。
俺だって出来るもんならもっともっと、じいさんになるまで生きて、土方さんや近藤さんの傍にいたい。それが出来なくても、真撰組の役に立って死にたい。それが俺の存在意義で、俺の幸せなのだから。

「……俺が介錯してやろうか? 今この場で」

「あんた、言ってることが矛盾してやすぜ」

「うっせぇ」

大切なものや愛しいものを守ることが出来なかったその両腕は、如何程の悲しみを抱いているのだろう。その両腕に、更に悲しみを上乗せしてしまうのは嫌だけれど。本当は反吐が出るぐらい優しいあんただから、悲しませないようにしても必ず気に病む。涙を流すことも出来ずただ後悔する。
気に病めばいい。“俺”がいたことを忘れることなんて許さない。

「土方さん」

「んだよ」

「迎えに来るまで、勝手に死ぬんじゃねぇよ。俺が絶対来やすから」

「………。本当に来そうだな」

泣きそうに微笑むその唇に、己の唇を重ねることは叶わない。口付けの代わりにと這わせた指をぎゅっと土方さんは握った。

「…畜生」

泣かないで。
涙なんかで俺のことを忘れないで欲しいから。


呪いのようにあんたの中、在り続けて。





#96

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