梅々
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花の金曜日
久々にバイト5時間入りました。ふぅ。
秘書検定受けてるので勉強しています。
五周年ネタも書いてます。
去年12月に書いた土沖。コピー本にしようと思って挫折したもの。続きます。
「じゃあ行ってきやーす」
「行ってらっしゃい、そうちゃん」
十四郎さんによろしくね、と笑顔で言う姉上にこくりと頷いて、俺は勝手口を出た。見上げてみるとまだ六時前なのに紺色の空で星がきらきら瞬きをしている。点点と雲が浮かんで、まるで夏祭りで食べた綿菓子を千切ったようだ。空に向かってはぁと息を吐くと、雲のように白い吐息が段々と薄れて夜空に溶けていく。そんなことをしていたら冷たい風がひゅうと吹いて、ぶるりと体が震えた。早く家の中へ入りたい。
姉上が手入れしている椿の垣根。家の周りをぐるりと囲むそれは玄関だけじゃなくて、ここ、勝手口の前でも50cmほど途切れている。そこからはお隣さんの勝手口が覗いていて、いつものようにノックをしてから入ると、おばさんが夕飯の支度をしていた。
「こんばんはでさ、おばさん」
「そうちゃんこんばんは。十四郎なら部屋にいるわよ」
にっこりと出迎えてくれたおばさんににっこりと笑ってお礼を言って、着替えセットの入った洗面器を持ったまま階段をかけあがる。お隣の土方さんの部屋は階段を上がった真っ正面にある。俺の部屋の真向かいで、ベランダからベランダへ、飛び移ろうと思えばできる距離だ。ベランダの壁が高くて昇るだけで大分疲れるけれど、大きくなったら楽に乗り越えられるんだろう。それまで、俺と土方さんが仲良しのままかは分からないけれど。
ノックしないで部屋を開ける。土方さんは勉強机に向かっていて、背中しか見えない。
「ひじかたさん」
「あ、そうご」
くるり、振り返った土方さんが俺を見てふっと笑った。土方さんは、こうやって俺を見るとき優しい顔をする。それがとてもうれしくて、好き。俺を見ただけで土方さんは笑顔になるんだから、とても幸せなことだ。
ドアの隙間から覗いていた俺にいつものように土方さんがおいでおいでと手を振る。だからととっ、と歩いて中に入り、土方さんの袖を引く。
「ふろ入りやすぜ」
「あいよ」
「テレビ見たいから早くしてくだせェ」
「ならもっと早く来いよな」
なんて文句を言いながら、土方さんはてきぱきと着替えを出して。一緒に洗面所へ向かって服を脱ぐ。
脱いだ服は適当に畳んで、土方さんのあとに続いて風呂場に入る。土方さん家の風呂場はリフォームしたばかりで、一番風呂でも床も壁も冷たくなくてぽかぽかしている。俺の家の風呂は暖房なんて優れたものはなくて、いつでもひんやりとしているから、入るときは姉上と二人一緒に入る。その方が節約にもなるし、楽しいし暖かいし。でも今日は姉上は風邪気味だから土方さんと。土方さんと入るのも楽しいから好きだ。
「頭洗ってやるよ」
「じゃあ俺もアンタ洗ってあげる」
「おまえ目に指入れてくるからヤだ」
「だって土方さん面白いんだもん」
自分よりも少し上の位置にある目を見てにんまり笑えば、やり返してやるからなと土方さんも笑う。そうしてから横腹に手を伸ばしてきて、こちょこちょとくすぐられる。あまりにくすぐったくて笑いたくないのに笑っちゃって、やり返してやろうと思っても体に力が入らなくて。くすぐってくる手から逃げようとしゃがむと、土方さんもしゃがんできて逃げられない。
「っも、やでさっ」
「どこが? 楽しそうじゃん、お前」
脇の下も擽られてびくんと体が跳ねた。その拍子によろっと体が後ろに倒れて、そのままこけそうになる。
「あっ」
このまま転んだら頭をぶつける。痛さを想像してぎゅっと目を瞑った。でも、それと同時に。ぐい、と腕を引かれて、後ろに倒れるはずだった体が前へ倒れて、おでこが何かに当たった。こてん、と柔らかい感覚に目を開けると、真ん前に土方さんの顔。土方さんの、青みがかった目に自分の顔が映ってる。
頭を包むように撫でられて、やっと床にぶつからないよう抱き締めてくれたんだと分かった。
「ごめん、ふざけすぎた」
「本当でさ」
かみつくみたいに言えば申し訳なさそうに眉を八の字に下げる。それを見てにんまり笑う。俺も一緒にふざけたんだから、そんな気にすることじゃないのに。しかも、ちゃんと土方さんは守ってくれた。ケガだってしてないのに。本当なら、俺がお礼を言うべきなのだ。土方さんは俺に甘い。それが弟扱いみたいで気に食わない。同い年なのに。
「体と頭洗ってくれたら許してやりまさァ」
「……何様だおまえ」
「そうご様ですぜ」
「ふざけんなよ」
言いながら土方さんはシャワーを出して頭にかけてくる。指先が荒々しく動いて、濡れて束になった髪があちこち滴を飛ばす。
土方さんは優しい。優しくて、好きだ。
秘書検定受けてるので勉強しています。
五周年ネタも書いてます。
去年12月に書いた土沖。コピー本にしようと思って挫折したもの。続きます。
「じゃあ行ってきやーす」
「行ってらっしゃい、そうちゃん」
十四郎さんによろしくね、と笑顔で言う姉上にこくりと頷いて、俺は勝手口を出た。見上げてみるとまだ六時前なのに紺色の空で星がきらきら瞬きをしている。点点と雲が浮かんで、まるで夏祭りで食べた綿菓子を千切ったようだ。空に向かってはぁと息を吐くと、雲のように白い吐息が段々と薄れて夜空に溶けていく。そんなことをしていたら冷たい風がひゅうと吹いて、ぶるりと体が震えた。早く家の中へ入りたい。
姉上が手入れしている椿の垣根。家の周りをぐるりと囲むそれは玄関だけじゃなくて、ここ、勝手口の前でも50cmほど途切れている。そこからはお隣さんの勝手口が覗いていて、いつものようにノックをしてから入ると、おばさんが夕飯の支度をしていた。
「こんばんはでさ、おばさん」
「そうちゃんこんばんは。十四郎なら部屋にいるわよ」
にっこりと出迎えてくれたおばさんににっこりと笑ってお礼を言って、着替えセットの入った洗面器を持ったまま階段をかけあがる。お隣の土方さんの部屋は階段を上がった真っ正面にある。俺の部屋の真向かいで、ベランダからベランダへ、飛び移ろうと思えばできる距離だ。ベランダの壁が高くて昇るだけで大分疲れるけれど、大きくなったら楽に乗り越えられるんだろう。それまで、俺と土方さんが仲良しのままかは分からないけれど。
ノックしないで部屋を開ける。土方さんは勉強机に向かっていて、背中しか見えない。
「ひじかたさん」
「あ、そうご」
くるり、振り返った土方さんが俺を見てふっと笑った。土方さんは、こうやって俺を見るとき優しい顔をする。それがとてもうれしくて、好き。俺を見ただけで土方さんは笑顔になるんだから、とても幸せなことだ。
ドアの隙間から覗いていた俺にいつものように土方さんがおいでおいでと手を振る。だからととっ、と歩いて中に入り、土方さんの袖を引く。
「ふろ入りやすぜ」
「あいよ」
「テレビ見たいから早くしてくだせェ」
「ならもっと早く来いよな」
なんて文句を言いながら、土方さんはてきぱきと着替えを出して。一緒に洗面所へ向かって服を脱ぐ。
脱いだ服は適当に畳んで、土方さんのあとに続いて風呂場に入る。土方さん家の風呂場はリフォームしたばかりで、一番風呂でも床も壁も冷たくなくてぽかぽかしている。俺の家の風呂は暖房なんて優れたものはなくて、いつでもひんやりとしているから、入るときは姉上と二人一緒に入る。その方が節約にもなるし、楽しいし暖かいし。でも今日は姉上は風邪気味だから土方さんと。土方さんと入るのも楽しいから好きだ。
「頭洗ってやるよ」
「じゃあ俺もアンタ洗ってあげる」
「おまえ目に指入れてくるからヤだ」
「だって土方さん面白いんだもん」
自分よりも少し上の位置にある目を見てにんまり笑えば、やり返してやるからなと土方さんも笑う。そうしてから横腹に手を伸ばしてきて、こちょこちょとくすぐられる。あまりにくすぐったくて笑いたくないのに笑っちゃって、やり返してやろうと思っても体に力が入らなくて。くすぐってくる手から逃げようとしゃがむと、土方さんもしゃがんできて逃げられない。
「っも、やでさっ」
「どこが? 楽しそうじゃん、お前」
脇の下も擽られてびくんと体が跳ねた。その拍子によろっと体が後ろに倒れて、そのままこけそうになる。
「あっ」
このまま転んだら頭をぶつける。痛さを想像してぎゅっと目を瞑った。でも、それと同時に。ぐい、と腕を引かれて、後ろに倒れるはずだった体が前へ倒れて、おでこが何かに当たった。こてん、と柔らかい感覚に目を開けると、真ん前に土方さんの顔。土方さんの、青みがかった目に自分の顔が映ってる。
頭を包むように撫でられて、やっと床にぶつからないよう抱き締めてくれたんだと分かった。
「ごめん、ふざけすぎた」
「本当でさ」
かみつくみたいに言えば申し訳なさそうに眉を八の字に下げる。それを見てにんまり笑う。俺も一緒にふざけたんだから、そんな気にすることじゃないのに。しかも、ちゃんと土方さんは守ってくれた。ケガだってしてないのに。本当なら、俺がお礼を言うべきなのだ。土方さんは俺に甘い。それが弟扱いみたいで気に食わない。同い年なのに。
「体と頭洗ってくれたら許してやりまさァ」
「……何様だおまえ」
「そうご様ですぜ」
「ふざけんなよ」
言いながら土方さんはシャワーを出して頭にかけてくる。指先が荒々しく動いて、濡れて束になった髪があちこち滴を飛ばす。
土方さんは優しい。優しくて、好きだ。
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