梅々
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はる
今日は暖かくて春だなぁという空気でした。早いよ!まだ二月だよ!新生活が始まるしで、春はあんまり好きではないです。
去年からちょっと苦手になりました。冬の冷たい空気は好きです。
そんなわけで春っぽい感じで小説書いてみました。
なんか、意味不明なのを狙ってみたらいい感じにいきました。
去年からちょっと苦手になりました。冬の冷たい空気は好きです。
そんなわけで春っぽい感じで小説書いてみました。
なんか、意味不明なのを狙ってみたらいい感じにいきました。
春の夜は怖い
左様なら
くい、と袖を引っ張ってみた。梅の薫る穏やかな陽気の夜。今日の空気は春そのものだ。桜が咲いているんじゃないかと錯覚しちまいそうな二月末。見回りの最中だがただの散歩のような気楽さで歩く前の男は、煙を吐きながら無言で振り返った。
「キス」
一言、欲しいものを告げた。だからってどうしても口付けたいわけではない。ただ、何かほしかった。無性に。
土方さんは、軽く周りを窺ってからまたもや無言且つ無表情で唇を合わせてくれた。途端に、花開くように目が覚める。
春は怖い。生温い風がただ怖い。無言のそれは、人間らしさを引きずり出そうとするようだ。郷愁と浮遊感、その手に包まれて孤独感が犇々と足の先から這い上がる。
ただ怖い。姉の咳を、思い出した。
唇を離してくれた土方さんは、俺の顔に添えていた手で軽く頬を撫でてから、行くぞと一言発してまた歩き始めた。
まだ、春ではないのだ。ただ空気が生温い、だけ。
*
妖怪がでるの、たくさん。だから春の夜は大人しくしていないと駄目なのよ。
優しい声が昔そう言った。あの頃はそれで春の夜が怖かった。でもいまはそんなものいないことも知っているし、それよりも不審者のほうが手に負えない。身に染みている。
例えば夜道を歩いていたらすれ違い様に体に触れてきたやつや、ちょっと助けてくださいと言うものだからついていったら急に脱ぎ出して恥部を露出したやつや、真っ裸で襲いかかってきたやつもいる。皆返り討ちにしたが。
気付いたら寝ていたらしく、ベンチの上、目覚めたら夜空が綺麗だった。不審者の多くは公園で捕まえた。だから、近寄らないようにしていたのに。さっさと出ようと上体を起こしたら、目の前に人がいて吃驚した。
「土方さん」
「三人」
「はい?」
「俺がお前を見掛けてから、お前に近寄ってきた男の数」
梅の別名は春告草とも言うらしい。ならばとっくに春なのだ。あんなにも綺麗に梅が咲いている。
梅が好きな土方さんは春が好きに違いない。それならば俺のような嫌悪感はないのだろう。
「不審者ホイホイですかね、俺」
「かもな」
隣に座り土方さんははぁと息を吐いた。息を吐きたいのはこちらだ。春が終われば気持ちも落ち着くのに。
好きだったんです、あなたのことが。
そう言った名も知らぬ隊士が急に怖く思えた。真っ直ぐな目で俺を見て、真摯に、言葉を待っていた。何をされたわけでも、されかけたわけでもなかった。ただ、好意が怖かった。だからって彼本人を嫌いなわけではないし寧ろ知らないし、気持ちは嬉しいけどとありきたりなことを言ったのだった。
興味がないと言うのが本音。名前を知らないのがいい証拠。俺の世界は、他人が悲しむぐらいに狭い。その狭い世界に入れる人間は限られている。簡単には死なないこと。俺の世界をこれ以上狭くしない人。だから、彼にはその資格がなかった。
「犯人捕まってよ。こないだ、俺を襲ったやつだった」
「・・・」
夜の見回りの最中、彼は刺されたのだった。滅多刺しにされて路地裏で、息をすることなく眠っていた。悲しくはなったがそれだけだった。ありきたりな返事をしたら、謝りながらも迷惑序でに一緒に見回りをしてください、団子奢りますからと言われたのが昨日。
その彼が今日死んだ。
土方さんが襲われたのは夜道でキスした翌日だった。未遂だしと、土方さんは仏心を出したのだという。
「仇になりやしたね」
「・・・お前が好きだったんだと。お前が楽しそうに話していたから嫉妬して、気付いたら襲ってた。・・・俺はキスしたの、見られてたそうだ」
「セクハラだってそいつが訴えれば土方さんの副長の座は俺のものだったのに」
「お前がしろっつったんだろ」
本気で呆れた物言いの、土方さんに身を乗り出して唇を塞いでやった。煩く感じて、序でに確かめたくなってしてみたけれど、土方さんは条件反射のように舌を絡めてきた。
土方さんはまだ俺の世界の中にいる。いつになったら世界の外へ出ていってくれるのだろうか。
「春は嫌いでさ」
「俺もだ。虫が増える」
ならば俺は花なのか。そしたら土方さんだって虫なのに。害虫を駆除する虫。俺が飽きたら、捨てられちゃう。
「・・・悲しくはないのかよ」
「それなりに」
「まぁ、俺も」
虫同士が潰しあってくれて良かった。
そう言ったアンタも、そしてきっと俺も少し狂ってる。
(左様なら)
(春が怖い理由はアンタ)
キスして何も感じなくなったら、土方は沖田の世界の外に出たことになる。
でもまだ中にいるから、キスの最中に無防備な土方を刺すことが沖田にはできない。
左様なら
くい、と袖を引っ張ってみた。梅の薫る穏やかな陽気の夜。今日の空気は春そのものだ。桜が咲いているんじゃないかと錯覚しちまいそうな二月末。見回りの最中だがただの散歩のような気楽さで歩く前の男は、煙を吐きながら無言で振り返った。
「キス」
一言、欲しいものを告げた。だからってどうしても口付けたいわけではない。ただ、何かほしかった。無性に。
土方さんは、軽く周りを窺ってからまたもや無言且つ無表情で唇を合わせてくれた。途端に、花開くように目が覚める。
春は怖い。生温い風がただ怖い。無言のそれは、人間らしさを引きずり出そうとするようだ。郷愁と浮遊感、その手に包まれて孤独感が犇々と足の先から這い上がる。
ただ怖い。姉の咳を、思い出した。
唇を離してくれた土方さんは、俺の顔に添えていた手で軽く頬を撫でてから、行くぞと一言発してまた歩き始めた。
まだ、春ではないのだ。ただ空気が生温い、だけ。
*
妖怪がでるの、たくさん。だから春の夜は大人しくしていないと駄目なのよ。
優しい声が昔そう言った。あの頃はそれで春の夜が怖かった。でもいまはそんなものいないことも知っているし、それよりも不審者のほうが手に負えない。身に染みている。
例えば夜道を歩いていたらすれ違い様に体に触れてきたやつや、ちょっと助けてくださいと言うものだからついていったら急に脱ぎ出して恥部を露出したやつや、真っ裸で襲いかかってきたやつもいる。皆返り討ちにしたが。
気付いたら寝ていたらしく、ベンチの上、目覚めたら夜空が綺麗だった。不審者の多くは公園で捕まえた。だから、近寄らないようにしていたのに。さっさと出ようと上体を起こしたら、目の前に人がいて吃驚した。
「土方さん」
「三人」
「はい?」
「俺がお前を見掛けてから、お前に近寄ってきた男の数」
梅の別名は春告草とも言うらしい。ならばとっくに春なのだ。あんなにも綺麗に梅が咲いている。
梅が好きな土方さんは春が好きに違いない。それならば俺のような嫌悪感はないのだろう。
「不審者ホイホイですかね、俺」
「かもな」
隣に座り土方さんははぁと息を吐いた。息を吐きたいのはこちらだ。春が終われば気持ちも落ち着くのに。
好きだったんです、あなたのことが。
そう言った名も知らぬ隊士が急に怖く思えた。真っ直ぐな目で俺を見て、真摯に、言葉を待っていた。何をされたわけでも、されかけたわけでもなかった。ただ、好意が怖かった。だからって彼本人を嫌いなわけではないし寧ろ知らないし、気持ちは嬉しいけどとありきたりなことを言ったのだった。
興味がないと言うのが本音。名前を知らないのがいい証拠。俺の世界は、他人が悲しむぐらいに狭い。その狭い世界に入れる人間は限られている。簡単には死なないこと。俺の世界をこれ以上狭くしない人。だから、彼にはその資格がなかった。
「犯人捕まってよ。こないだ、俺を襲ったやつだった」
「・・・」
夜の見回りの最中、彼は刺されたのだった。滅多刺しにされて路地裏で、息をすることなく眠っていた。悲しくはなったがそれだけだった。ありきたりな返事をしたら、謝りながらも迷惑序でに一緒に見回りをしてください、団子奢りますからと言われたのが昨日。
その彼が今日死んだ。
土方さんが襲われたのは夜道でキスした翌日だった。未遂だしと、土方さんは仏心を出したのだという。
「仇になりやしたね」
「・・・お前が好きだったんだと。お前が楽しそうに話していたから嫉妬して、気付いたら襲ってた。・・・俺はキスしたの、見られてたそうだ」
「セクハラだってそいつが訴えれば土方さんの副長の座は俺のものだったのに」
「お前がしろっつったんだろ」
本気で呆れた物言いの、土方さんに身を乗り出して唇を塞いでやった。煩く感じて、序でに確かめたくなってしてみたけれど、土方さんは条件反射のように舌を絡めてきた。
土方さんはまだ俺の世界の中にいる。いつになったら世界の外へ出ていってくれるのだろうか。
「春は嫌いでさ」
「俺もだ。虫が増える」
ならば俺は花なのか。そしたら土方さんだって虫なのに。害虫を駆除する虫。俺が飽きたら、捨てられちゃう。
「・・・悲しくはないのかよ」
「それなりに」
「まぁ、俺も」
虫同士が潰しあってくれて良かった。
そう言ったアンタも、そしてきっと俺も少し狂ってる。
(左様なら)
(春が怖い理由はアンタ)
キスして何も感じなくなったら、土方は沖田の世界の外に出たことになる。
でもまだ中にいるから、キスの最中に無防備な土方を刺すことが沖田にはできない。
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