梅々
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いいふうふ
バイト一時間早く上がれました!
ので、いいふうふネタ。でもできてもいない土方と沖田です。
ので、いいふうふネタ。でもできてもいない土方と沖田です。
冬の音
幸せそうな老夫婦が手を繋いで歩いているのをぼんやりと見ていたら、ぽす、と頭をぶつけた。パッと前を向くと隊服だ、それも此方を向いている。優しさなのかぶつかる前に手で頭を押さえてくれたらしい、中途半端な位置に手がある。それなら一声かけるなりすればいいのに、と思うのは正しいはず。
視線を上へ向けると、すまし顔の土方さんがちょうどその中途半端な手をポケットにしまいがてら煙草を咥えたところだった。瞳を少し伏せて、ライターで火をつける。煙がくゆってじんわりと消えていく。
「何ですかィ」
「呼んでも気付かなかったぞ、おまえ」
「マジですかィ」
ぼんやりしていただけなのに。おかしいなと首をかしげる。それを目を細めた土方さんが見て、ほんの少しだけ、口角が上がった。珍しく笑っているのにぎょっとして、此方は逆に眉を寄せる。これじゃあいつもと逆だ。俺が笑って土方さんがいぶかしむ常と。
意味が分からないから放っておこうと先に歩き出す。あの夫婦はとっくに視界から消えてしまって、目を奪われるようなものは何もない。
寒さにマフラーを少し上げて両手をポケットにしまう。はぁ、と息を吐くがまだ無色で、これからより寒くなるのだと思うと憂鬱になる。でも、寒いのは好きだ。雪が降るし、近藤さんがむやみやたらに引っ付いてくる季節だし。土方さんは冬が嫌いらしいけれど。とてもよく似合うのだが。
思うに、土方さんは嫌いなものに好かれるタイプだ。冬もそう、インテリ眼鏡もそう。土方さんの嫌いなタイプなのによくちょっかい出されている。
そう思ったままを言えば。後ろを歩いていた土方さんがはぁと怪訝な声を発した。衝動的に振り向く。俺の好きな、困ったような必死に悩んでいるような顔。この顔だけは好きだ。写真を撮ってポスターに引き伸ばして自室に飾ってもいいと思えるぐらい。それを言ったら悪趣味だと言われちまったけども。
「その理論で言えばお前は俺を好きなことになるけど」
「全部が全部当てはまるとは言ってないですぜ」
「……」
歩みを緩めれば横に並び、それから定位置の斜め前に土方さんが来る。煙がふわりと空を汚して、それからすぅと溶けていく。
何だかんだいってこのいつもの距離が一番落ち着く。土方さんが煙草を吸っているのも、この角度からそれを見るのもいやに馴染んでいて。
「今日はいい夫婦の日なんだってな」
「はぁ」
「近藤さんが花束持って乗り込むらしい」
「ははっ。それじゃあ包帯準備して待たなきゃですね」
突拍子のない、と思ったけれど俺があの老夫婦を見ているときに言おうとしたのはこれだったのだろう。敢えてするような話ではないと思うけれど。
結婚なんて俺はしない。俺にとっては近藤さんが全てで、彼女一人を守ってあげたいなんてそんなよくある話、俺には当てはまらない。でも、と、チラリ。黒い背中を視線で焼く。
「…俺はアンタと一生傍にいたいなんてさらさら思わねぇけど、多分一生アンタは傍にいるんでしょうね」
「そうだろうな。お前の傍を離れようとは思わねぇし」
「はい?」
寝言は寝て言ってほしい、ぼやいたら楽しげに肩を揺らされてますます意味が分からない。だってさっき俺のこと嫌いだと認めたばかりじゃないか。
嫌いでいてくれないと困る。大事に思われちまってるのはこの際我慢するから、せめて俺のことを嫌っていて。
「アンタが変なこと言いやがるから余計寒くなりやした」
「じゃあ温めてやろうか」
「とうとう見境なくなったんですかィ」
「とうとうってなんだ」
振り向いた顔が苦笑していた。俺の好きでない優しい顔。
「まぁ、良い仲間ではいてくれよ」
「良い兄貴分、ならいいですぜ」
そう言って口角を上げればふっと土方さんも笑う。生温い感情が芽生えそうになって、ふいとまた顔を反らした。
幸せそうな老夫婦が手を繋いで歩いているのをぼんやりと見ていたら、ぽす、と頭をぶつけた。パッと前を向くと隊服だ、それも此方を向いている。優しさなのかぶつかる前に手で頭を押さえてくれたらしい、中途半端な位置に手がある。それなら一声かけるなりすればいいのに、と思うのは正しいはず。
視線を上へ向けると、すまし顔の土方さんがちょうどその中途半端な手をポケットにしまいがてら煙草を咥えたところだった。瞳を少し伏せて、ライターで火をつける。煙がくゆってじんわりと消えていく。
「何ですかィ」
「呼んでも気付かなかったぞ、おまえ」
「マジですかィ」
ぼんやりしていただけなのに。おかしいなと首をかしげる。それを目を細めた土方さんが見て、ほんの少しだけ、口角が上がった。珍しく笑っているのにぎょっとして、此方は逆に眉を寄せる。これじゃあいつもと逆だ。俺が笑って土方さんがいぶかしむ常と。
意味が分からないから放っておこうと先に歩き出す。あの夫婦はとっくに視界から消えてしまって、目を奪われるようなものは何もない。
寒さにマフラーを少し上げて両手をポケットにしまう。はぁ、と息を吐くがまだ無色で、これからより寒くなるのだと思うと憂鬱になる。でも、寒いのは好きだ。雪が降るし、近藤さんがむやみやたらに引っ付いてくる季節だし。土方さんは冬が嫌いらしいけれど。とてもよく似合うのだが。
思うに、土方さんは嫌いなものに好かれるタイプだ。冬もそう、インテリ眼鏡もそう。土方さんの嫌いなタイプなのによくちょっかい出されている。
そう思ったままを言えば。後ろを歩いていた土方さんがはぁと怪訝な声を発した。衝動的に振り向く。俺の好きな、困ったような必死に悩んでいるような顔。この顔だけは好きだ。写真を撮ってポスターに引き伸ばして自室に飾ってもいいと思えるぐらい。それを言ったら悪趣味だと言われちまったけども。
「その理論で言えばお前は俺を好きなことになるけど」
「全部が全部当てはまるとは言ってないですぜ」
「……」
歩みを緩めれば横に並び、それから定位置の斜め前に土方さんが来る。煙がふわりと空を汚して、それからすぅと溶けていく。
何だかんだいってこのいつもの距離が一番落ち着く。土方さんが煙草を吸っているのも、この角度からそれを見るのもいやに馴染んでいて。
「今日はいい夫婦の日なんだってな」
「はぁ」
「近藤さんが花束持って乗り込むらしい」
「ははっ。それじゃあ包帯準備して待たなきゃですね」
突拍子のない、と思ったけれど俺があの老夫婦を見ているときに言おうとしたのはこれだったのだろう。敢えてするような話ではないと思うけれど。
結婚なんて俺はしない。俺にとっては近藤さんが全てで、彼女一人を守ってあげたいなんてそんなよくある話、俺には当てはまらない。でも、と、チラリ。黒い背中を視線で焼く。
「…俺はアンタと一生傍にいたいなんてさらさら思わねぇけど、多分一生アンタは傍にいるんでしょうね」
「そうだろうな。お前の傍を離れようとは思わねぇし」
「はい?」
寝言は寝て言ってほしい、ぼやいたら楽しげに肩を揺らされてますます意味が分からない。だってさっき俺のこと嫌いだと認めたばかりじゃないか。
嫌いでいてくれないと困る。大事に思われちまってるのはこの際我慢するから、せめて俺のことを嫌っていて。
「アンタが変なこと言いやがるから余計寒くなりやした」
「じゃあ温めてやろうか」
「とうとう見境なくなったんですかィ」
「とうとうってなんだ」
振り向いた顔が苦笑していた。俺の好きでない優しい顔。
「まぁ、良い仲間ではいてくれよ」
「良い兄貴分、ならいいですぜ」
そう言って口角を上げればふっと土方さんも笑う。生温い感情が芽生えそうになって、ふいとまた顔を反らした。
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