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梅々

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もう一月下旬

宇治十帖も読み終えました。匂宮が悪い。中の君はどうなったんだろう。
浮舟は可哀想。もう少し楽観的に、と思うけれど源氏物語の女性は皆個性があっていいと思う。

あとセンターリサーチ帰ってきました!
指定校で受かったところはAとB判定、第一志望はCとDだったので、頑張れば行けたんだろうな。未練がましいですね(^_^;)



あと、拍手とアンケートありがとうございます!とても嬉しいです!
手錠の約束の続きも早く書きたいです!まだ考えてもいませんがww





では、ひめはじめの続きです!まだ終わらなかった・・・。
体調不良でなければもっと書けたのに!
















嘘でもいい。

少しでもいい。

だって、幸せなんて儚いから良いものなのだろう?





シンデレラデー





 元旦、だからといって日常とさして変わりはなく、書類整理に、酔っ払いどもの相手、交通整理と忙しい。テレビをつければどこの局も同じように、芸人を集め初笑いがどうのなどと言っているのだろう。笑いよりも休息を欲する、心の底から。
 はぁ、と肩を叩き土方が部屋に入ると、沖田が寝そべりゲームに勤しんでいた。最近のゲーム音楽はピコピコじゃ形容できないぐらい音質もよく、軽く覗き込んだ画面には鮮やかな城が映っている。流石この時代。近々3Dのゲームも発売されると聞いた。革新されていく技術は、果てが見えない。先へ先へと進み、初心の姿が霞んでいきはしないのか疑問に思う。
 くるり、首だけを此方に向け、沖田の瞳が土方の姿を捉える。

「なに? やりたいんで?」

「・・・堂々とサボり過ぎだ、おまえは」

 顔の近さに唇を寄せてしまうところだった。土方はふいと顔を背け、文机の前に胡座をかく。
 目が覚めた時には既に、沖田は腕の中にはいなかった。確り抱いて眠った温もりは、疾うにすり抜け湯を浴びているところだった。出てきた沖田と新年の挨拶を交わし、いつものようにホテルを出て屯所へ戻り、後はもう別行動で。朝、未だホテルにいた時分にタイを直してやったとき沖田が顔を背けた以外は何一つ、変わりない。思い返すと恥ずかしいが、沖田のタイを直してやるとき、土方は必ずといってもいいほどに沖田に唇を寄せていた。そうして、実感を得ていたのだ。
 それがこうもあっさりと終わってしまった。ありがとう、も言えてない。今更礼を言うのもおかしく、土方は途方に暮れる。
 終わったから、と言って感情も容易く切り替えられるわけではない。だからといって隠そうと、付き合いのなかった頃へ戻ろうとすることも叶わない。知ってしまった今と、ただ思っていた昔とは大きな隔たりがある。

「土方さん、初詣行きやしょうよ」

「あのな、俺忙しいんだけど」

「近藤さんも忙しそうなんでさ。だからアンタで妥協してやるから」

「おまえな、何様、」

 振り返り様怒鳴りかけて、言葉が詰まった。体勢は先程と同じように寝そべっていて、だらしないことこの上ないが、眼差しは嫌に真っ直ぐなのであった。
 そんな眼差しに、土方は弱い。沖田がそんな目をするときは必ず、何らかの揺るがない意志があるときで、惚れたからなどの理由は抜きにしても土方は従わずにはいられなくなる。
 六角事件の処理の時もそうだった。沖田はいつになく真っ直ぐと土方を見て、報告をした。守られなかった者を、少しでも守るため。あの時はただ民間人の死者を出したことを悔いてのものだと思っていたけれど、実際は違った。普段は、沖田が何を思っているか大抵は分かる。だが、この瞳をする時の沖田は何を考えているのか、少しも分からない。
 たかが初詣、沖田が考えているのはくだらないことだろう。
 くだらないこと、それは土方に対する嫌がらせなのかもしれない。

「人多いな」

「そりゃあ、元日だし」

 初詣、なんて年明け早々に行ったことのない土方は、あまりの人の多さに絶句した。がやがやわいわい、人がゴミのようだと言いたくなる気持ちが分からなくもない程で、これからそのゴミの一員になるのだと考えたらぞっとする。予想以上の人数に、屯所の傍の小さなところはどうだと沖田に提案するが、馬の耳に念仏。
 細い体でずんずん先に進まれ、土方は後を追うしかない。

「去年も此処に来たんでさ。だから、その礼参りに」

「礼って、なんの」

「・・・色々と」

 返事を返した沖田の腕を掴み引き寄せる。よろめいた老婆が、沖田の目の前で体勢を取り直し、すみませんねと一言寄越す。気を付けろ、小言をやりつつ覗いた顔は不自然なほどに無表情で、はっと気付いた土方は腕を話す。小さく、沖田が息を逃した。
 何ら変化がない、はずが。腕を掴んだだけで硬直されいたたまれなさが募る。

「俺ちょっとトイレ行ってきまさァ。甘酒と餅、買っといてくだせェ」

「金、ちゃんと返せよ」

「出世払いで」

 沖田が出世することなど果たしてありえるのか。その想像には不吉なことが付随して、土方自身が死んでから、としか思えない。または、あの奇妙なイボの見せた世界のような。どちらにせよ土方に優しくない未来だ、新年早々から不吉なことは考えたくない。
 言われた通りのものを買い、喧騒から離れた石垣に寄りかかる。
 暫く待っても沖田は来ない。冷めては餅も甘酒もうまくはないからはらに入れてしまった。それでも来ない。仲のよさそうな家族が往復するのを見届けて、痺れを切らし土方は沖田を探しに向かう。無理言って連れだし、物を買わせておいて一人で屋台見物して回るほど沖田はねじくれていなければ、金だって所持していないだろう。厄介事に巻き込まれでもしていたら、笑えない想像だけはリアルにする自分が恨めしい。
 厠へ向かう人気の少ない道に、沖田の姿を認めた。声をかけようとして土方は、躊躇う。沖田は誰かと話していた。それが万事屋の主で腹の底から不快感が込み上げる。
 何故総悟は、俺を待たせてあの野郎と話しているのか。気を許した顔をして。俺に触られたとき、あんなにも硬直していたのに。ドロドロと込み上げてくる感情を土方はどうにか押し殺しやり過ごそうとするが、途方に終わる。
 銀時が、馴れ馴れしく沖田の頭を撫でたのだ。

「ってめぇ何してやがる!」

「うげ。多串君に元日から会うとは今年ついてねぇな、俺」

「それはこっちのセリフだ天パ! 何しやがった」

「まだ頭撫でてただけですぅ~」

「まだって何だまだって!」

 銀時の何もかも見透かしたような、舐めきったような視線が、土方の神経を逆撫でする。沖田の腕を乱暴に掴み、来た道を引き返す。

「痛いっ、土方さん!」

「うるせぇよ」

 改めて思う。沖田はどんな心算で土方を受け入れたのか。冷静になれない土方には、弄ばれたようにしか思えない。
 境内の奥、人気の無い林で沖田の腕を離す。雲居から覗く日に沖田の髪が鮮やかに輝いて、目が眩みそうになる。
 こんなにも憎たらしいのに、困惑したような顔を向ける沖田が愛しくて堪らない。

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