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梅々

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あれれ

保存ボックス探ってたら出てきた(笑)
これも確か長編の中の一話。












土方さんが、結婚した。


相手は将軍様のご親戚かなんからしくて、土方さんの相手にはぴったりだと思った。 

だって、あの人は真撰組にしか興味がないから。その人と結婚したのだって、金持ちで、なんか裏から手をまわせるからだとか言ってた気がする。・・・間接的に、俺の為になってるけど。 










恋文を、あなたに。 










「沖田さ~ん!こっちです!」 

「オウ、山崎ィ・・・お前なんつー髪型してんで?」 

呼ばれて振り向けば、前髪を見事に七三分けにした山崎の姿が。こういうリーマン、普通にいそう。 

「美男美女の夫婦ですね~」 

新郎新婦を見つめ、羨ましそうに呟いた。 

確かに、山崎の言う通りだ。土方さんは初のスーツ姿でその上中々似合ってる。やっぱ色男はいろいろと特をする。 

ジィ、と観察するように眺めていると運悪く、目と目が合った。何か言おう、と思ったけど此処から土方さんまでかなり遠い。口パクでおめでと、と言い、さっさと目線を反らした。 

そう、目出度い日なんだ、今日は。俺が土方さんから解放される、記念の日。もう俺は、あの人に抱かれなくなる。用無しになる。俺は残り少ない思春期を楽しく過ごせる、という訳だ。 

「沖田さんも、似合いますね。すっごく可愛いですよ」 

指摘され、自分のカッコを見直す。黒の正装チックな袴。・・・確かに、形容詞では可愛いがぴったりかもしれない。けれどなんでそれをたかが山崎に言われなければならないんだ? 

「可愛いなんて言うんじゃねぇ。死になせぇよ山崎」 

冷たい一瞥をくれてやったのに、今日の山崎はビクともしない。 

「沖田さん、あの俺・・・」 

「総悟、山崎!早く来いよ~!もうすぐ始まんぞ~?」 

「へ~い。今行きまさァ!」 

近藤に呼ばれにこやかに、足取り軽く駆け寄る沖田を見て山崎は溜め息をついた。 

(折角、余計な虫も居なくなったし告白しようとしたのに・・・) 

毎度の事ながら運が悪い。いつも告白しようとすると土方にさりげなく邪魔されてきた。だから、土方が多忙なこの日こそは・・・!と気張ったものの、今度は近藤である。本気で諦めるべきではないだろうか。 

「・・・沖田さん、置いてかないでくださいよ」 

いや、でもこれからは土方は新婚なのだ。俺にも十分チャンスはある、そう思い込むことにした。 

「総悟、この魚上手いぞ?」 

「そりゃ金持ちと結婚してんだ。不味いもんが出たほうがびっくりでィ」 


とわいわいがやがや三人が話しているのを、静かに土方は見守っていた。 



真撰組に休みはない、と言っても過言ではないだろう。何せ攘夷浪士が何時、何をしてくるか此方にはわからないのだ。式場から二次会等にも出席せず屯所に帰ってくると、夜番の隊士以外は既に寝入ったのか静かだった。目を閉じ耳を澄ますと聞こえてくるのは虫の音だけ。うとうととしてくるのを頭を振り、我慢する。 

別に、誰かを待っているとかではない。ただ、なんとなく未だ寝たくないのだ。やっと手にした自由の夜、なんだか勿体無い気がして。 

最初、この関係が始まったのは何時の事だったか。真撰組が結成されてからだというのは覚えているのだが何時ごろだったかまでは覚えていない。きっかけも、忘れた。だからと言って別に思い出す必要はないのだ、何処にも。 

もう、蹂躙されることもないのだから。 

嫌々、体を重ねる事も。 


だからといって徹夜なんてしたくない。本格的に落ちかけてきた瞼を擦り、伸びた瞬間障子がガラッと開いた。 

「・・・っじかたさん」 

今頃は二次会真っ只中のはずなのに、なんで主役がこんなところへ? 

「よォ、まだ起きてたのか?」 

待っていた、と思われるのが嫌で、直ぐ様言い返した。 

「今寝ようとしたとこですぜ、丁度」 

だから、早く帰ってくれ。 

そう言葉に滲ませたのに去る気配はないどころか、パタンと内側から戸を閉めた。 

「言っとくけどな、例え結婚したからといってお前を手放したりしねぇから」 

「え・・・」 

目を見張る俺を、愉しそうに土方さんは見下ろしてきた。 


逃げ場はない、とでもいうように。

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