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梅々

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末法

死にたい。ぐらいに疲れました。
バイト入るときは、店長とあとに入った子だけだったので今日余裕じゃんと同期のこと言っていたのですが入った途端に来店ラッシュで三人でばったばたして宴会も始まったりで。一人先輩きて一人帰って、ドリンカーさん来てくれて。運んでも運んでも減らないなくならないドリンクに食事、ナイアガラのごとく連なるドリンクオーダーの恐ろしさ。馬車馬のごとく働きました。四時間半で一息つけたの数回しかなかった。しかもふぅーーぐらい。ドリンカー一人に対してオーダーが30以上だから30分おくれとか当たり前のようになってしまって申し訳ございませんと謝り続けていたら死にたくなってきました。今ものすごくマイナス思考ですね。

漫研楽しかった!アナザーの漫画借りました。
銀魂新刊読み終えたけど萌えの宝庫過ぎてとりあえずノーコメント。





では五周年続き。アップしおえたらいろいろ修正したい。



















リリスの微笑み





「総悟君じゃないの」
「おはようごぜぇやす、旦那」
「おはよ」

寮の一階にある食堂でぼんやりしていると、目の前の席にことんとお盆が置かれた。顔を上げると、珍しい色だけれど見慣れてしまった銀色の髪がふわふわしていて、緩い顔で旦那が俺を見ていた。旦那も土方さんと同じく一期上の先輩で、たまに一緒に授業をさぼったりする仲だ。そして俺の知ってる限り、土方さんをからかえる唯一の人。
 向かいに座った旦那の、盆の上を見ると相変わらず犬の餌がそこにあった。ご飯の上に小豆が乗っている。これらもまた、人間界から輸入したものであるらしい。小さな虫や花の蜜ぐらいしか食せるものがなく、食事は一種の娯楽であったのが、こういったものの流入で俺らの生活にも組み込まれたのだと歴史の授業で習ったけれど、この食い方はないだろう。

「総悟君、今日は早くない?」
「目が冴えちまって」

時計を見れば一時間目が始まる三十分前だ。先輩に起こしてもらえなくなってからは遅刻すれすれだったから、俺にしては物凄く珍しい。明日は槍でも降るんじゃないかと思うほど。
ちゅう、と花の蜜のジュースを吸っていると額に腕が伸びてきた。

「熱はねぇな」
「あったら起きてないでしょう」
「いや昨日土方に呼ばれたって聞いたから、知恵熱とか?」

旦那は何でも知ってるなと、思ったままに言えば総悟君のことならねとウインクを寄越された。比喩ではなく飛んできたハートを指で弾き返して、魔力の素敵な無駄遣いにふと笑う。
がつがつと、犬の餌を頬張る旦那を頬杖ついて見ていれば、知っている気配が近づいてきた。くるりと振り返れば、いままさに俺の肩を叩こうと微妙に手を伸ばして吃驚した顔をしている、眼鏡。

「おはようございます、二人とも」
「おう、おはよ」

丼を抱えながらひらひら旦那が手を振る。それをちらりと見てから新八に視線を戻すと、今日は早いんですねと微笑まれる。嫌みじゃないのが逆に痛い。
何でィ、俺より弱いくせに生意気だ。
むっとすると分かったのか、今日はいいことあるといいですね、早起きは三文の得だしと、困ったような笑顔を浮かべる。山崎よりは空気が読める奴だ。

「そろそろ教室の方行きませんか?」
「んー? じゃあ行こっかな。飲み終えちまったし」
「えー。総悟君俺より新八を選ぶの」
「拗ねたふりしねぇでくだせェ、いい大人のくせして。口の横にご飯ついてやすぜ」
「銀さん、今日は朝先生に呼び出されてるんじゃなかったんですか?」
「うわやっべ」

慌ただしく口許を拭って盆を掴んでじゃあねと去っていく旦那を見送る。何気なく新八を見れば、新八も俺を見てくすりと笑った。その笑い方は優しくて、なんだか温かくて、姉上のようだ。新八はたまに、そんな顔をして笑う。お前はお母さんかと言いたくなる。確かに心配性だし家庭的で貧乏くさい。生まれてくる性別を間違ったな。
立ち上がって新八を見ると、行きましょうかと微笑む。癒されるっちゃ癒されるかもしれない。
何となく、新八の手を掴んでみるといつもと変わらず少しかさかさしていた。食堂で洗い物のバイトをしているから荒れている。

「おっ、沖田さん、何してるんですか」
「いや、なんとなく」

掴んだだけでテンパる様にくすりと笑ってしまう。手なんか何度も握ってる、でもそのたびにこうして新八は慌てるのだ。それが面白くて好き。
掴んだまま教室へ行こうと歩き出すと、まったくもうとため息を吐かれた。





この世界には、つがいの制度がある。人間でいうケッコンと、似ているらしい。
相手がどんな種族かに関わらず、契った相手とは死ぬまで繋がり続けるのだ。繋がりは片方が死ぬまで切ることはできない。どこにいても存在が分かり、幸せも悲しみも、共有することができるのだそうだ。替えはきかない、一生に一人だけの特別な存在。だからこそ慎重に探さなければならないのだという。
そんなもの俺はいらない。姉上とさえ繋がっていられれば俺はそれだけでいい。ほしい人は手に入らないのだから。
ベッドの上でごろごろしていると、コンコンとノックが響いた。起き上がるのが面倒ではーいと声を張る。するとドア越しにおれおれ、と詐欺のような言葉が聞こえてきた。声で旦那だと分かるけども。人の部屋を訪ねといておれおれはないだろうと文句を言いたくなる。でも声をかけるだけ俺よりマシだ。
 立ち上がって欠伸をしながらドアの鍵を開ける。俺と負けず劣らず、眠たそうな顔をした旦那と目が合う。

「お邪魔して平気?」
「いいですぜ」

 ドアを開けたままどうぞと端に寄る。どうもどうもと旦那は奥へ進んで、今は誰も使っていないベッドに腰かけた。ギシ、と軋む耳障りな音がする。
出す飲み物もないから、向かい合うようにして自分のベッドに腰かける。ふわふわとした髪の毛を見ているとどうも、触りたくなって困った。いつものことながら。

「なんか甘いもんねぇ?」
「旦那にやる分はねぇですねェ」
「けちくせ」
「それほどでも」

一応ポケットの中を探ってみるも、飴やチョコの包み紙しかない。残念なことに中身は全部、俺の胃袋に入ってしまっている。
旦那がこうして俺の部屋へ来るのはそうあることじゃないけれど、大抵がただの暇潰しだから気にせずに、ベッドに俯せになった。そして、枕元にいつも置いている呪いのかけ方大事典をぱらぱらと眺める。簡単にできるものは殆ど土方さんに試してしまったから、まだやっていないのは手のかかるものや、土方さんにかけてもつまらないものばかりだ。

「総悟君さぁ」
「へい?」
「誰と相部屋になるか決めた?」
「いや、まだでさ」

本当に何でも知ってるなと顔をあげる。膝に肘をついて頬杖して、旦那は真っ直ぐに俺を見ていた。今日はただ暇を潰すために来たのではないらしい。この話をするために来たようだ。何だと首をかしげつつ旦那の様子を窺う。
するとにんまりと、旦那が笑った。

「俺の部屋においで」
「旦那の部屋?」
「そう」

 ぎしり、ベッドを軋ませ旦那が立ち上がる。その音に怯んだ、俺の寝転がるベッドに座った。そして手が伸びてきて、さわり、頭を撫でられた。ペットを可愛がるようなその手つきに緊張がほどけて、漸く自分が緊張していたのだと知った。
忘れたと思っていたのに、体はまだ覚えているらしい。土方さんが思い出させるからいけないんだ。

「俺は、アイツみたいな真似しねぇよ。総悟君が嫌がることなんて、しない」
「……」

その瞬間蘇る、忌々しい男に触れられた記憶。ねっとりと体を這う武骨な掌、耳にかけられる荒い息、縛られた腕の痛み、直接性器を愛撫されて、穴の中を弄くられて射精した自分。気持ち悪かったのに嫌だったのに、体は全て受け入れた。もし旦那が助けてくれなかったら、俺は、あの男に突っ込まれてもよがっていたかもしれない。
体は正直だ、なんてあの男は言ってやがったけれど全くその通りで。そういう風に生まれついたんだから仕方ないだろう。どれだけ俺が、気持ち悪いと思っても。
自分が夢魔だと知ったのは学校へきてからだ。性感を力の源にする種族故に体は刺激に敏感で、俺の体液には媚薬のような効力もあるのだという。そして今はもう、神すら堕とす、なんて言われた所為で狩られたり監禁されたりした所為で絶滅しかけている。その上純系ではない限り、夢魔になる確率は少ないのだそうだ。現におれと姉上は両親とも同じなのに、姉上は普通の悪魔だ。

「総悟君」
「旦那は、体目当てなんですかィ?」

言ってて自分の言葉に笑いそうになった。
誰にも言わないでいた。自分が何なのか。言えば何に利用されるか分からない、俺がどうにかなるだけならまだいい、俺の所為で姉上も夢魔なのだと、思われでもしたら。何か酷いことをされたら。そう思うとただ怖いし、知られたいとも思わない。姉上に知られるぐらいなら俺は死にたい。みっともない弟なんだと、思われでもしたら。
それで、誰にも言っていなかったのに、何故か旦那には知られている。狼男だから鼻がいいんだと本人は言っていたけれど。

「そりゃあ総悟君はいい匂いするけど。そんなわけないでしょ」
「じゃあなに」
「総悟君とつがいになりたいってことだよ」

つがいには愛がないとなれねぇんですぜ。
言えば旦那はそんなこと知ってるよと言った。

「総悟君が誰を好きなのかも、ちゃんと知ってる」

ちらり、旦那の赤い瞳に炎が揺らいだのを俺は、見逃さなかった。

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