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梅々

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飛行機

国際通りを散策して帰ってきたぜ本土・関東。
とにかくコリラックマかわいすぎてやばかったし自分の土産ばっかだけどまぁいいよね。国際通り店限定のグッズもアニメイトで買ったし、悔いはない。
帰りの飛行機で同人誌も読めたし。

いまとても永倉とか原田とか書きたいけど試験一週間前なので明日からスパルタでいきます。
今日だけは自分の布団でぬくぬくしようか。





では、一応参萬打記念だった沖土3Z。続きます。
















羨んでばかりじゃ仕様がないと分かっている

けれど、羨まずにはいられない

だって全てほしい





思想の自由は此処に





土方さん、呼ばれ振り向いたのは五時間目終了を告げる鐘が鳴ってから丁度一分後だった。
それはなんの変哲もない、晴れと曇りの中間の空が作り物のような、六月。何か違いがあるとしたら、あと少しで修学旅行へ行くという事実により恋人を作ろうとする輩が増えたということぐらいか。
教科書の類いを机に仕舞い、振り向き様辺りを見ると夢の世界の住人がちらほら居た。普段はあっち側の総悟が珍しく起きていて、携帯を弄っている。

「んだよ」

「手に水って書いてなんて読みやすか」

「ちょうずだよ」

「山の羊」

「やぎ」

ふーん、と返されて首だけ向けていたのを体勢を変え、椅子に横向きに座る。
携帯ゲームか何かしているのか、顔を上げようとしない。
長めの前髪は邪魔ではないのだろうか。地毛でその色、というのがとても綺麗で子どもの頃から好きだった。切る度切るのが勿体無いと思っていた程に。
かしかしボタンを打つ指は俺みたくごつくない代わりに細く長い。竹刀胝のあるけれど白く柔らかそうに見える。
触れてみたい。その指にも、髪にも、頬にも。

―――――おかしい、こんな気持ち。

男同士なのにな、自嘲は曖昧に消える。

「ったく、そんぐらい分かれよ」

「確認しただけでさァ。お、全クリ」

頬杖で若干隠れた口角が上がる。
こういう時近藤さんならおぉ良かったな! と頭を撫でる。けれどそれが俺には出来ない。そういう立ち位置だからだ。
これで触れようものならば、訝しげな顔でこてんぱんに罵られるだろう。

とてもとても触りたい。

「そういや最近、アンタ恋人いやせんよね」

「まーな」

「半年、か。あんたにしちゃあ、日照ってやすね。大抵半月で次見っけてたのに」

「その言い様止めてくんね? なにそれ、俺はそんな女好きに見えんの?」

「えぇ」

「・・・」

即答されて二の句が継げなくなる。別に俺は総悟の言う通りの女好きなんかではちっともない。
最初の彼女は年上だった。大学生、年は知らないけれど中三の俺に一目惚れしたらしく、家庭教師をかって出て色々と教えてくれた。けれど一年で切れた。今のところ最長だがそれはどうでもいい。
高一の夏、自覚してしまったから明け透けに言えばよくある「好きな人ができた」というやつだ。
それでも、応援するわ、と言った彼女は大人だと思った。
キーンコーン・・・と鐘が鳴り始め、座り直す俺の袖を、総悟がクイクイ、と引いた。

「・・・なんだよ」

「どーせ帰り暇だろぃ? 駅前にあんみつ食いに行きやしょう」

「はいはい」

また奢らされるのかと少し憂鬱になるがそれがまた嬉しかったりする。剣道部だからバイトは出来なくて、小遣いでやりくりしている俺の、支出の60%は総悟の腹へと消えていく。
それが苦ではない俺は、最早病気。





荷を詰めて、さぁ帰るかと鞄を担ぐと同時に沖田くん、と高い声が後ろの席の集り魔を呼んだ。きょとん、とそちらを見る総悟につられ見れば、クラスの女子が数人集まって、手招きしていた。それがドア付近の席だったから、俺も何となくついていく。

「何でぃ」

「ちょっと手貸して」

「はぁ」

なんだ? という微妙な顔をしつつも総悟は掌を下にして差し出す。
それをそっと掴んで、総悟の傍に居た女子はまじまじと見つめながらその手を揉んだり撫でたりする。
俺がしてみたかったことを遠慮なくするそいつに嫉妬心が芽生えたがそれは表に出さずじっとその様を眺める。

「うわー、肌キレイ」

「凄いなぁ。指もさ、長いし」

「・・・で、何の用ですかィ?」

痺れを切らした総悟が、手を引っ込めながら言う。
あーあ、と残念そうに言って、女子は心理テストだと言った。

「掌を下に向けたらSで、上に向けたらMなんだって。あー、土方くんにもやればよかった」

「ふーん。どうせ土方さんはMだから、掌上にしやすぜ?」

「変なこと言ってんじゃねぇよ」

「まぁもう用ないんだろィ? 帰りやすね」

言いながら俺の鞄を掴んで廊下へと向かう総悟ににこやかに彼女らは手を振る。
若干不機嫌なのは何故なのだか。
総悟の思考回路はジェットコースターのようにカーブを描き速度も疎らだから、いまいちついていけない。
濁った白の空は暑さをあまり感じさせない。適度に風が吹いてそれなりに涼しく、過ごしやすい。
総悟の行きたい店は穴場で、大通りに面しているが人は少なく、味も可也美味い。そして安いのだ。文句のつけようがない。学校から五分程でつくというのも特筆すべきところだろう。

「雨降ったら嫌だな」

「そんなん言ってると降りやすぜ」

ニヤニヤしながら言われると無性に腹が立つのは何故だ。言っていることはどうでもいいことなのに。
総悟だからか、と納得するのは容易いが、よってさらに悩まされる。

なんで俺はこいつを好きなのか。

よりによって、なんで。
百歩譲って近藤さんなら未だ分かる。惚れ惚れとすることはままあるし。が、総悟なのだ。見た目は良い。それだけは手放しで誉められる。けれど、性格は論外だ。我が儘でドSで、縦横無尽で俺をなんだと思ってんだと怒鳴りたくなることばかり。
どこを誉めろと。どこを好けばいいのだ。

“てめーらにこの人の何がわかんで? 貶すんなら俺よかこの人を理解してからにしなせェ”

「・・・あれ?」

「は?」

「・・・いや、なんでもねぇ」

「とうとう呆けやしたか」

「ちげーよ」

言った総悟の表情を、とてもよく覚えている。いままでで一番、総悟が怒りを露にした表情。
次に向けられた言葉は、なんだった。それ以前にあの言葉はいつ言われたものだった。
思い出せない。思い出せないまま件の店についてしまった。
毎回お決まりの奥の席に向かい合って腰かけて、ふーと息をつく。ついた早々抹茶とアイスコーヒーを出されるのは常連の特権だ。
総悟は飲み物を置かれると同時にあんみつ、と注文する。甘党にはついていけない。
ブラックコーヒーを一口飲み込むと総悟が此方を見ているのに気付いた。
物言いたそうな眼で、じっと。

「なんだよ」

「いや。・・・ねぇ、手ェ出してみてくだせぇ」

「・・・その手には乗らねぇよ」

「さっきの気にしてんで? 関係ねぇんでほら、」

「・・・はいよ」

手を差し出すとその手をぎゅうと握られる。そして、自分がされていたように俺の手を総悟は撫で始め、掌を上に向けた。
触れたくて触れたくて仕方の無かった指先が、やさしく俺の肌を這う。
柔らかく、且つ骨の触れる感触がする指にどきどきしながら予想外の行動を甘受していると不意に、総悟が呟いた。

「やっぱり、あんたのが男らしい」

「そうか?」

「俺はいつまでたっても、アンタには追い付けないんだ」

「は?」

手を離しながらの一言に驚き、間抜けな声を出してしまった。
珍しく、真剣な表情で真実味を帯びた口調で言うから、嘘ではないかというくらい、演技めいていたから。

本音を探ってしまう。

「・・・アンタよか男らしくなりてぇのに」

「お前はいまのままで十分だと思うよ」

それじゃあダメなんでさ。
どうぞ、俺らを隔てるようにマスターの腕が伸びて、カタンとあんみつが置かれる。
ひたすらに真摯な言葉に何かを諦めたような眼。それは一瞬で掻き消されて、きらきらと子どものような瞳があんみつだけを見る。

いつだって真実を掻き消されて、俺は本心に辿り着けないんだ。

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