梅々
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ほりっく
昨日はプレゼミ行ってそのまま飲み会でした。
おまえなら大丈夫だろって先生が言っていたので大丈夫だろう。
先輩方も気さくで良い方たちばかりでした。頑張ろ。
今日はホリックカフェ行きました。
侑子さんの衣装素敵。ああいう胸が開いた衣装は胸がそれなりにあるか全くないかのどちらかがいいですね。
あとグラビアのスカウトきましたが胸ないですよね。
あと新聞に名前が!犯罪は犯してないです!
では約一月遅れましたが成人式ネタ。
それは久々に見る名前であったから、沖田はぱちくりと瞬きをした。
ひじかたさん、心の中でそれを読み上げると懐かしさがじんわり滲み生まれてきて、それがそのまま声になった。
「土方さん」
最後に彼の名前を呼んだのはいつだっだろうかと考えてみる。
沖田はそうして、彼からのメールを読む心の準備を無意識のうちでしていた。嬉しいのだろうか。怖いのだろうか。驚きは形を変えるけれどもそれがどんな感情になるのかまだ、分からないままだ。
土方とは長い付き合いである。沖田がまだ保育園の年中組の夏に土方一家が隣の家に越してきてから、彼が就職し一人暮らしを始めるまずっと隣にいた。彼は姉と一つ違いであるから、沖田は子ども扱いされてばかりだった。
そんな彼と最後に会ったのはいつだっただろう。去年は会わなかった。一昨年は――姉の葬式で会ったか。小雨の降る中、久々に見た顔は憔悴していた。沖田の姉は既に結婚していたけれど、土方の初恋の人だったのだ。その上、彼女が結婚しても尚諦められなかったらしい。それは憔悴しても仕方がないと、実感が沸いていなかった沖田はそう思っただけだった。
後回しにしようかとも思ったがメール無精な彼がわざわざメールしてきたことを思うと大事な用件なのだろう。傍にあったクッションを手繰り寄せ抱えながら開く。
『成人式、出るのか』
たったそれだけの文面で、メールを開く前にうだうだした時間を返してほしいと拍子抜けする。盛大な溜め息を吐き密かに期待していた自分に呆れながら、返信しようと文面を考える。
沖田は、成人式には出ない。その手の儀式ごとは大事なものだとは思うが、誰よりも見せたい、誰よりも喜んでくれる人はもうこの世にはいないのだ。世話をしてくれている叔父らに無駄な金を使わせることもない。父親の遺品の袴で七五三のようだが、一応は写真も撮ってある。当日は家でゆっくりしていようと目論んでいる。
だからそのまま、出やせんと返した。ここから話が発展することはないだろうと携帯をベッドに放り抱えたクッションに顔を埋める。
同級生である山崎からも一緒に出ましょうよと誘われてはいたが、行く気にはなれなかった。久々に会いたいと思うような旧友もいないのだから。ありがたみのない言葉を聞かされどうでもいい人たちと再会して、と漫然とその日を過ごすことに価値があるとは思えない。なんて、並べ立ててはみるが単に面倒なだけなのだ。それと、費用の問題。
しかも予報では七年ぶりの大雪だという。いかない口実にもってこいだ。
明日成人式に出る人々は今頃そわそわしたりしているのだろう。しかしやることのない沖田は、ただうとうととするのみだ。
暫くうとうとしていると、携帯が再び震えた。夢路を漕いでいた沖田はびくりと身を震わせ、顔を上げる。そして今度は躊躇なくメールを開いた。期待混じりの予想通り、送信者は土方だった。
『じゃあ今日か明日、おまえ暇か?』
先程の質問よりも意図が分からず沖田は首をかしげた。暇か暇でないか、の二択なら暇ではあるが、実は試験前だったりする。期末のレポートもあったりする。奨学金なんて借金をこさえて通学しているのだから、一つたりとも単位を落としたくないと思ってはいるのだが、今はまだやる気がでない。そんな深い意図はないだろうと結論づけて、暇ですと送り返した。
案外早く返信が来たから今度も転た寝をする時間はないだろうと、昼寝は諦め自室を出て台所で茶を入れていると三度携帯が震えた。
それを開こうとすると、来客を報せる呼び鈴の音が響いた。誰だか知らないが来客を優先すべきだと、メールは開かず携帯を置いて、パタパタと玄関へ向かう。
「はーい」
ガラガラと近頃立て付けが悪くなり開くのにコツがいるようになった曇り硝子の戸を開ける。硝子越しに大きめな影は見えていたから来客が男なのは分かっていた。しかし、顔を見て沖田は言葉を失った。
何故ここにいるのだろうか。
もしかしたら幻なんじゃないかとまで思い、沖田は目を擦る。しかし正面に立つ男の姿は消えもせず相変わらずそこにいる。
「幽霊?」
「死んでねぇよアホ」
軽く頭を叩かれて地味に痛いのにムッとする。同時にこれがしょうもない幻覚の類いではないのだと知れて益々沖田の小さな頭は理解できなくなる。
何故つい先ほどまでメールでやりとりしていた男が、ここにいるのか。
「……お久しぶりです」
「おう」
とりあえず挨拶をすれば、漸く来客である土方の顔は和らいだ。その表情にぶわっと胸の中に春めいた感情が芽生えかけて視線を反らす。
「あがりやす?」
「ああ」
どうぞと招いて、沖田は自分の部屋へ通そうかと思ったが、土方が何のためにここへ来たのだろうとふと考えた。わざわざ沖田に会いに来たのだろうか。会いに来るほどの用が土方にあるとは思えず、それこそメールで済ませばいいだろう。それか電話でもいい。わざわざ上がってまでの用とは、とそこまで考えて思い至った。
「どうぞ」
「……ここって確か」
二階に上がった右手の部屋へ通すと、土方が眉を寄せた。
姉が亡くなった後も沖田は姉と二人で暮らしていた家に住んでいる。世話をしてくれる遠い親戚がわざわざ東京から来てくれたのだ。だから、姉の部屋だったそこは調度品はほぼそのままに仏壇が置いてある、仏間になった。
土方は姉に線香をやりに来たのだろう。そう読んで沖田はこの部屋へ案内した。
「癪だけど、アンタが線香やりゃあ姉上も喜びまさァ」
「……」
土方は仏壇の前に座ると線香を供え、手を合わせて瞼を閉じた。
その横顔をぼんやりと眺め、未練がましい奴だと沖田は思った。
まだ引き摺っているのか、それともけじめでもつけに来たのか。いま何を姉に伝えているのか知る由もないが、どちらにせよそんなに姉のことを思っているのなら姉と付き合えばよかったのだ。それを姉はずっと待っていたように思う。だから言い寄る男もそれなりにいたが結婚しなかったんじゃないか。自分がいたから結婚しなかった、わけではないと思いたいだけかもしれないが。
だが未練がましさで言えば沖田も負けてはいない。幼い頃から、いまでもずっと土方へあらぬ思いを抱いているのだから。
「……総悟?」
「えっ」
名を呼ばれはっとし、周章てて顔を上げると目前に土方の顔があり沖田はびくりと肩を跳ねさせた。心配そうな顔をして、頬に触れようとする指先を咄嗟に叩き、沖田は動揺を隠し睨み付ける。
「なぁに気安く触ろうとしてんですかィ」
「気安くってな……おまえがぼーっとしてるから」
「考え事してただけでさ。茶煎れるんで俺の部屋で待ってなせェ」
「はいはい」
呆れた口ぶりで言って、姉の部屋を出ていく土方の後ろ姿を見届けてからはぁと息をついた。
未練がましいを通り越してこれでは女々しいのではないか。もう二十歳を迎えているというのに子どもじみた感情が消えず、沖田は自嘲した。
そのまま台所へ向かい、自分の湯飲みにも足しつつ土方に茶をいれてやる。
こんな風にいままでしたことがない。自分が子どもだったのもあるのだろう。それに伴って精神的な距離が開いたのも事実。なのに何故、沖田の思いは変わらないのか。
「どうぞ」
「おう、ありがとな」
相変わらず憎たらしい面構えだ、思ったそれは言葉に出ていたのか、土方に睨まれた。
「お前は相変わらずひねくれた性格だな。……なんで式に出ねぇんだ」
「え? あぁ、成人式ですかィ? 出す金が惜しいからでさァ。そんなに叔父さん達に世話かけたくねぇ」
どうせ誤魔化しても妙に勘が鋭い土方には露見するだろうと、さらりと言えば土方は不機嫌そうにふぅん、と返事を寄越した。聞いてきたのはそっちだろうと沖田まで機嫌が宜しくなくなる。
優しいあの二人のことだから、沖田が行きたいと言えば着付けにかかる費用だとかを気にせず式典へ行かしてくれるのだろう。だが、この家を出たくないという我が儘を聞いてもらったのだからこれ以上我が儘なんて言えない。だからといってアルバイトで貯めた金を崩して行くのも嫌みったらしい。
「写真は撮ったし、明日は雪だって言うし。行ってもつまらない話聞くだけでしょ」
だから行かない理由を並べていれば土方の表情が変わった。
「写真、見せろよ」
見せる義理はないと、突っぱねてしまおうかと一瞬思うが、沖田の中でわざわざ此処へ来たのだからと土方の肩を持つ勢力の方が多く、結果もごもごと、承諾を示し本棚から一冊のアルバムを取り出す。そのまま二人の間にある小さな折り畳み式のテーブルに置けば、土方が手を伸ばした。ぱらり、と表紙を捲る。
「し、」
「七五三みたいとか言わねぇでしょうねェ?」
「……馬子にも衣装だな」
それこそ七五三のときに言われた。土方から見た沖田はいつまでも幼いままなのだと思い知らされているようだ。
元より叶うはずがない恋だと知っていたが、それにしても救いようが無さすぎる。多くは望まないからせめて、子ども扱いだけでも止めてほしいというのに。
そもそも、こうして土方が来さえしなければ自然消滅していたかもしれないのだ。
「用は済んだならさっさと帰りなせェ」
「……なんだよ、久々に会ったってのに」
どこか拗ねた口調で言う土方に沖田は目を丸くする。こんな土方を見たことがない。
「アンタ、キャラ変わった?」
「変わっちゃねぇよ。お前の袴姿見に帰省したってのに」
「はぁ?」
ぱたんとアルバムを閉じながら土方は煙草に手を伸ばした。それから吸っていいか、と問われ灰皿がないと沖田が返すと土方は胸ポケットから携帯灰皿を取り出した。準備がいいことで、と突っ込みたくなる。
「勘違いしてるだろ。俺はミツバに会いに来たんじゃなくてお前に会いに来たんだよ、総悟」
そう笑う土方に、沖田は自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
おまえなら大丈夫だろって先生が言っていたので大丈夫だろう。
先輩方も気さくで良い方たちばかりでした。頑張ろ。
今日はホリックカフェ行きました。
侑子さんの衣装素敵。ああいう胸が開いた衣装は胸がそれなりにあるか全くないかのどちらかがいいですね。
あとグラビアのスカウトきましたが胸ないですよね。
あと新聞に名前が!犯罪は犯してないです!
では約一月遅れましたが成人式ネタ。
それは久々に見る名前であったから、沖田はぱちくりと瞬きをした。
ひじかたさん、心の中でそれを読み上げると懐かしさがじんわり滲み生まれてきて、それがそのまま声になった。
「土方さん」
最後に彼の名前を呼んだのはいつだっだろうかと考えてみる。
沖田はそうして、彼からのメールを読む心の準備を無意識のうちでしていた。嬉しいのだろうか。怖いのだろうか。驚きは形を変えるけれどもそれがどんな感情になるのかまだ、分からないままだ。
土方とは長い付き合いである。沖田がまだ保育園の年中組の夏に土方一家が隣の家に越してきてから、彼が就職し一人暮らしを始めるまずっと隣にいた。彼は姉と一つ違いであるから、沖田は子ども扱いされてばかりだった。
そんな彼と最後に会ったのはいつだっただろう。去年は会わなかった。一昨年は――姉の葬式で会ったか。小雨の降る中、久々に見た顔は憔悴していた。沖田の姉は既に結婚していたけれど、土方の初恋の人だったのだ。その上、彼女が結婚しても尚諦められなかったらしい。それは憔悴しても仕方がないと、実感が沸いていなかった沖田はそう思っただけだった。
後回しにしようかとも思ったがメール無精な彼がわざわざメールしてきたことを思うと大事な用件なのだろう。傍にあったクッションを手繰り寄せ抱えながら開く。
『成人式、出るのか』
たったそれだけの文面で、メールを開く前にうだうだした時間を返してほしいと拍子抜けする。盛大な溜め息を吐き密かに期待していた自分に呆れながら、返信しようと文面を考える。
沖田は、成人式には出ない。その手の儀式ごとは大事なものだとは思うが、誰よりも見せたい、誰よりも喜んでくれる人はもうこの世にはいないのだ。世話をしてくれている叔父らに無駄な金を使わせることもない。父親の遺品の袴で七五三のようだが、一応は写真も撮ってある。当日は家でゆっくりしていようと目論んでいる。
だからそのまま、出やせんと返した。ここから話が発展することはないだろうと携帯をベッドに放り抱えたクッションに顔を埋める。
同級生である山崎からも一緒に出ましょうよと誘われてはいたが、行く気にはなれなかった。久々に会いたいと思うような旧友もいないのだから。ありがたみのない言葉を聞かされどうでもいい人たちと再会して、と漫然とその日を過ごすことに価値があるとは思えない。なんて、並べ立ててはみるが単に面倒なだけなのだ。それと、費用の問題。
しかも予報では七年ぶりの大雪だという。いかない口実にもってこいだ。
明日成人式に出る人々は今頃そわそわしたりしているのだろう。しかしやることのない沖田は、ただうとうととするのみだ。
暫くうとうとしていると、携帯が再び震えた。夢路を漕いでいた沖田はびくりと身を震わせ、顔を上げる。そして今度は躊躇なくメールを開いた。期待混じりの予想通り、送信者は土方だった。
『じゃあ今日か明日、おまえ暇か?』
先程の質問よりも意図が分からず沖田は首をかしげた。暇か暇でないか、の二択なら暇ではあるが、実は試験前だったりする。期末のレポートもあったりする。奨学金なんて借金をこさえて通学しているのだから、一つたりとも単位を落としたくないと思ってはいるのだが、今はまだやる気がでない。そんな深い意図はないだろうと結論づけて、暇ですと送り返した。
案外早く返信が来たから今度も転た寝をする時間はないだろうと、昼寝は諦め自室を出て台所で茶を入れていると三度携帯が震えた。
それを開こうとすると、来客を報せる呼び鈴の音が響いた。誰だか知らないが来客を優先すべきだと、メールは開かず携帯を置いて、パタパタと玄関へ向かう。
「はーい」
ガラガラと近頃立て付けが悪くなり開くのにコツがいるようになった曇り硝子の戸を開ける。硝子越しに大きめな影は見えていたから来客が男なのは分かっていた。しかし、顔を見て沖田は言葉を失った。
何故ここにいるのだろうか。
もしかしたら幻なんじゃないかとまで思い、沖田は目を擦る。しかし正面に立つ男の姿は消えもせず相変わらずそこにいる。
「幽霊?」
「死んでねぇよアホ」
軽く頭を叩かれて地味に痛いのにムッとする。同時にこれがしょうもない幻覚の類いではないのだと知れて益々沖田の小さな頭は理解できなくなる。
何故つい先ほどまでメールでやりとりしていた男が、ここにいるのか。
「……お久しぶりです」
「おう」
とりあえず挨拶をすれば、漸く来客である土方の顔は和らいだ。その表情にぶわっと胸の中に春めいた感情が芽生えかけて視線を反らす。
「あがりやす?」
「ああ」
どうぞと招いて、沖田は自分の部屋へ通そうかと思ったが、土方が何のためにここへ来たのだろうとふと考えた。わざわざ沖田に会いに来たのだろうか。会いに来るほどの用が土方にあるとは思えず、それこそメールで済ませばいいだろう。それか電話でもいい。わざわざ上がってまでの用とは、とそこまで考えて思い至った。
「どうぞ」
「……ここって確か」
二階に上がった右手の部屋へ通すと、土方が眉を寄せた。
姉が亡くなった後も沖田は姉と二人で暮らしていた家に住んでいる。世話をしてくれる遠い親戚がわざわざ東京から来てくれたのだ。だから、姉の部屋だったそこは調度品はほぼそのままに仏壇が置いてある、仏間になった。
土方は姉に線香をやりに来たのだろう。そう読んで沖田はこの部屋へ案内した。
「癪だけど、アンタが線香やりゃあ姉上も喜びまさァ」
「……」
土方は仏壇の前に座ると線香を供え、手を合わせて瞼を閉じた。
その横顔をぼんやりと眺め、未練がましい奴だと沖田は思った。
まだ引き摺っているのか、それともけじめでもつけに来たのか。いま何を姉に伝えているのか知る由もないが、どちらにせよそんなに姉のことを思っているのなら姉と付き合えばよかったのだ。それを姉はずっと待っていたように思う。だから言い寄る男もそれなりにいたが結婚しなかったんじゃないか。自分がいたから結婚しなかった、わけではないと思いたいだけかもしれないが。
だが未練がましさで言えば沖田も負けてはいない。幼い頃から、いまでもずっと土方へあらぬ思いを抱いているのだから。
「……総悟?」
「えっ」
名を呼ばれはっとし、周章てて顔を上げると目前に土方の顔があり沖田はびくりと肩を跳ねさせた。心配そうな顔をして、頬に触れようとする指先を咄嗟に叩き、沖田は動揺を隠し睨み付ける。
「なぁに気安く触ろうとしてんですかィ」
「気安くってな……おまえがぼーっとしてるから」
「考え事してただけでさ。茶煎れるんで俺の部屋で待ってなせェ」
「はいはい」
呆れた口ぶりで言って、姉の部屋を出ていく土方の後ろ姿を見届けてからはぁと息をついた。
未練がましいを通り越してこれでは女々しいのではないか。もう二十歳を迎えているというのに子どもじみた感情が消えず、沖田は自嘲した。
そのまま台所へ向かい、自分の湯飲みにも足しつつ土方に茶をいれてやる。
こんな風にいままでしたことがない。自分が子どもだったのもあるのだろう。それに伴って精神的な距離が開いたのも事実。なのに何故、沖田の思いは変わらないのか。
「どうぞ」
「おう、ありがとな」
相変わらず憎たらしい面構えだ、思ったそれは言葉に出ていたのか、土方に睨まれた。
「お前は相変わらずひねくれた性格だな。……なんで式に出ねぇんだ」
「え? あぁ、成人式ですかィ? 出す金が惜しいからでさァ。そんなに叔父さん達に世話かけたくねぇ」
どうせ誤魔化しても妙に勘が鋭い土方には露見するだろうと、さらりと言えば土方は不機嫌そうにふぅん、と返事を寄越した。聞いてきたのはそっちだろうと沖田まで機嫌が宜しくなくなる。
優しいあの二人のことだから、沖田が行きたいと言えば着付けにかかる費用だとかを気にせず式典へ行かしてくれるのだろう。だが、この家を出たくないという我が儘を聞いてもらったのだからこれ以上我が儘なんて言えない。だからといってアルバイトで貯めた金を崩して行くのも嫌みったらしい。
「写真は撮ったし、明日は雪だって言うし。行ってもつまらない話聞くだけでしょ」
だから行かない理由を並べていれば土方の表情が変わった。
「写真、見せろよ」
見せる義理はないと、突っぱねてしまおうかと一瞬思うが、沖田の中でわざわざ此処へ来たのだからと土方の肩を持つ勢力の方が多く、結果もごもごと、承諾を示し本棚から一冊のアルバムを取り出す。そのまま二人の間にある小さな折り畳み式のテーブルに置けば、土方が手を伸ばした。ぱらり、と表紙を捲る。
「し、」
「七五三みたいとか言わねぇでしょうねェ?」
「……馬子にも衣装だな」
それこそ七五三のときに言われた。土方から見た沖田はいつまでも幼いままなのだと思い知らされているようだ。
元より叶うはずがない恋だと知っていたが、それにしても救いようが無さすぎる。多くは望まないからせめて、子ども扱いだけでも止めてほしいというのに。
そもそも、こうして土方が来さえしなければ自然消滅していたかもしれないのだ。
「用は済んだならさっさと帰りなせェ」
「……なんだよ、久々に会ったってのに」
どこか拗ねた口調で言う土方に沖田は目を丸くする。こんな土方を見たことがない。
「アンタ、キャラ変わった?」
「変わっちゃねぇよ。お前の袴姿見に帰省したってのに」
「はぁ?」
ぱたんとアルバムを閉じながら土方は煙草に手を伸ばした。それから吸っていいか、と問われ灰皿がないと沖田が返すと土方は胸ポケットから携帯灰皿を取り出した。準備がいいことで、と突っ込みたくなる。
「勘違いしてるだろ。俺はミツバに会いに来たんじゃなくてお前に会いに来たんだよ、総悟」
そう笑う土方に、沖田は自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
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