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梅々

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桜、食べられないかな・・・

雲雀さん大好きだー。初めて本家の骸さんを見たような気がするよ。二次しか見たことなかったような。

明日からお弁当です。やだなぁ。





では、今日一日で打った3Z。恋人未満。
















皮一枚と、骨格のつくり。

ただそれだけで。





たとえ君が、泥棒になろうと





あー、また呼び出しくらってら。

窓の外を眺めたら丁度、見っけてしまった姿。女子三人に囲まれた男一人。内容が体育館裏来いよ的な内容なら面白かったのに。
実際は、どう考えても違う。もじもじしている女の子一人、それを励ます女の子二人。偽善者はただその柔らかな唇から発されるであろう言葉を静かに待つ。
はらはらと、桜の降る校舎裏。誰よりも彼処に馴染んでいるだろう、男。偽善者だ。
どうせ断るなら期待を持たせずばっさりきる。切り捨てる。それが相手にとって一番いいと思うのに。やんわりと、それでいてはっきり断るのは相手を傷つけたくないという偽善の現れだ。逆に俺は冷たいのかもしれないけれども。
同情とも嘲るのとも似て非なる感情を胸にぼんやりと窓の下の青春を見ていると、沖田くん、と背後から呼ばれた。
聞き覚えのない高い声。振り返り誰だろうと見れば開け放された後ろのドアの向こうに二人組。
まぁ俺も同類なのだけれど。思い直して高見の見物を止める。

人体を構成する物質は皆同じだという。肥満の人と筋肉質の人とは多分、量的なものの差はありそうなものだけど。そして様々な物質から成る骨格に筋肉などがついて皮を被る。それで人間の出来上がり。
つまり、見た目なんてそんなもん。骨格が同じでも肉付きが違えば顔は変わる。ほんのちょっとの差で、不細工と整った顔との対極に揺れる。
だからそんなもんに振り回される人間は、哀れなんじゃないか。
例えば、風鈴。弘法も筆の誤りというように、硝子製の球体は見事な曲線を描いていても、絵付けにミスが生じればそれは失敗作に早変わりする。風鈴自体はただ無理矢理絵を描かれているだけなのに。
生まれ持った体や身体能力、性別は選んだものじゃない。だから性格とか、自分が生まれてから備わった形質で人を判断すべきなんだ。

誰もいない階段の踊り場、赤い頬をして俯く彼女を見ながらとりとめなくそんなことを考える。

「あの、俺好きな人いるんで」

「えっ・・・?」

ばっちりと視線が合った刹那、より頬を染め彼女は俯く。未だ何も言われてない、これはいつも通り。

「あの、誰ですか・・・?」

控え目な声。嫌いなタイプじゃないけれど。俺は知らない、この人を。
脳裏を掠めたのは告白されていた土方さん。たまには、相手に思いやりも必要かと口から出た出任せ。
悪いのは土方さん。揶揄いたいのも土方さん。
だから。

「強いて言えば土方さん?」

「土方君・・・?」

「ま、そんな感じで」

きょとんとしつつも頭がくるくる働いているだろう彼女に背を向けてひらひら手を振る。
これは、うそ。



「ってめ、なんつーこと言ってんだよ!」

「はい? なにが?」

春の日差しの元小鳥の囀りに耳を澄ましながら青い青い空に思いを馳せていたら、不躾な音が清々しい眠くなる空気をかきけした。背を向けるように寝返りを打って、視界に入らないようにしてみる。
人の噂は七十五日。だからあと七十三日はこの噂に堪えなきゃならない。
ざまーみろ、土方。

「お前よ、人間的にどうなんだ」

「あんたに人間性を否定されたくねーです。だからなに」

しらばっくれるとぺしんと頭を叩かれた。そのまま隣に座ったのが漂う紫煙で分かる。
二日前に断る口実に嘯いた言葉は今日には学校中に噂話として蔓延したらしい。
俺には何も被害がないけれど、この人には何かあるのだろうか。
コクられる回数が減ったとか?

「下らねぇ嘘に俺を巻き込むな」

「へぇ、どんな嘘で?」

「・・・わかってんだろ」

「あんたについた噂は数知れず、星の数ほどありまさァ」

はぐらかせば躊躇うような沈黙。
これもまた悪戯。あんたに、ナルシストみたいな言葉を言わせる為の。一つ引っ掛かれば連鎖して可也の数の悪戯に。俺が意図せずともそうだから、楽しくってしょうがない。
訝しげな表情、怒った顔、満更でもなさそうだったり驚いたり。たまに意表返しに成功したときの嬉しそうな顔だったり。嫌いな土方さんのそうころころ変わる表情は好きだ。
どんな顔をするのか、仰向けになって土方さんを見上げる。ふーっと吐いた臭い煙りは落ちることなく頼りなく上昇していく。

「・・・お前が、」

「うん」

「・・・・・・俺を好きだってやつ」

「―――」

してやられた感があるのは何故だろう。明後日の方向を向いて、土方さんは照れたように呟いた。
照れる? なんで。
巻き込むな、そう言ったはずだろう。

「・・・土方さん?」

「んだよ」

「どんくらい迷惑ですかィ」

「可也」

「なんで、どうして?」

ちらり、一瞬睨まれた時此方を見た頬が染まっていた。なんてことだ。豆鉄砲を食らった鳩ってこんな感じか。あらゆる思考と否定が交互に頭でなされる。
照れた顔なんて、はじめて。

「ねぇ、土方さん?」

「うるせぇ。・・・嘘だって言ってこい、元凶に」

邪険にしないで、ただ本心を知りたいだけなんだから。
言い捨て煙草をコンクリートで潰した男が逃げる前に裾を掴む。
逃げそびれた男はこれまたはじめての表情と困惑を隠す舌打ちをしてまた座る。

「なにがそんなに迷惑なんで? コクられる回数減ったから? 近藤さんが気を使うから?」

「違う」

「じゃあ、そんな噂でさえ許せないぐらい、俺が嫌い?」

「・・・違う」

返った否定に安心した。安心して、そしてそんな自分に首を傾げる。そんなに嫌われたくないのか、この人に。自分が痛い人間になっしまったのかと身震いすると、冷たい手に頭を撫でられた。
総悟、と呼んだ声は切羽詰まった、聞いたことのない声。

「意識しちまって・・・お前のことしか考えらんねぇんだよ」

「土方さ・・・っ」

急に暗くなった視界。塞がる口に超至近距離にある不思議な色の瞳。
数秒じっと重なった唇は何もせず離れていった。
い・し・き?
そんな、寒すぎる。痛くてきもすぎる。
離れて交わった目は痛々しくて、自嘲を浮かべる唇が可哀想すぎて。
次の瞬間、世界は回った。

「総悟、」

「多分、これは気の迷い」

正直な偽善者或いは天の邪鬼な俺に言い聞かせるように呟いて、ファーストキスを奪った男の唇を塞ぎ返した。





--------------------
恋泥棒or嘘つきの成れの果て。
どちらが全うだろう・・・。

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