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梅々

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徹頭徹尾

おあいさんがめっちゃ好きです。イメージはミツバさんと一緒だけど、そよ姫が混ざった感じかな。・・・これは六月は真紅の薔薇の話です。
この小説の話が本当なら、光縁寺にある沖田家縁者の墓はおあいさんのものとなります。五月に行ったばっかだけど、また行きたいッス。真撰組・・・新撰組巡りツアー。


それでは、百人一首で病ネタ。











君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと 思ひけるかな





白木蓮の散る季節





声をかけようと大きく息を吸い込み、口を開く。けれど、吐いた息は音を成さず、目の前の空間に溶け込んだ。
五度目の深呼吸。
だけど別に俺は深呼吸するため此処へ来たんじゃない。今度こそ、と障子に手を掛け声帯を震わせた。
「総悟」
返事の代わりに寄越された咳は少し水気を含んでいて、視線を上げられない。脳裏に浮かぶのは、残酷なまでの、赤。
入り口で立ち尽くす俺を記憶よりも弱々しい声が呼んだ。
「土方さん」
漸く顔を上げると、暗い部屋の中、唯一光を入れている窓台に求めていた人影はあった。
何日、いや何週間ぶりだろうか。想像よりも元気そうだがやはり、顔の線が細く、顎が鋭利になっている。
「久しぶりですねィ」
「・・・だな」
「あんた、毎日来ると思ってたんですがねィ」
毎日、来てた。総悟が隔離されたこの部屋に移ってから、一日に二回は。けれどこうして足を踏み出したのは今日が初めてで、知らないのは当然のことだ。
「・・・俺、変わりやしたか?」
いつの間にか伏せていた顔を上げマジマジと総悟を見る。
変わった、って例えばどんな風に?
「病人っぽくなったとか痩せたとか」
そう言われ、少し近付いてみる。足下が陽に当たり、暖かい。
総悟は顔を背け、窓際に植えてある白木蓮の花を弄ぶ。
―――――綺麗になったと思う。
真っ白な長襦袢から覗く脚も、窓明かりを浴びているのに雪のように白い。周りに漂う雰囲気も、大人しくなったせいか神秘的な感じもする。
姉に、近付いたような。
「―――――大人っぽくなったんじゃねぇか?」
「おや、アンタが誉めるなんて珍しいや。俺明日にでも死ぬんですかねィ」
「そんな元気そうな顔して何言ってやがる」
茶化すように言っているが、それは本心なのかもしれない。本心かどうか、確かめる術を俺は持っていないけれど。
「ところで・・・今日は非番じゃねぇんでしょう?こんなところで油売ってていいんですかィ?」
隊服姿の俺を眩しそうに見上げ、羨ましそうにするわけでもなく懐かしがるわけでもなく、淡々と問い掛ける。
どんなことを今、思っているのだろう。
「最近暇だからなァ・・・俺らが居なくても平気みてぇだ」
「俺ら、じゃなくて俺は、でしょう」
軽い咳に隠れる程小さな呟きは、辛うじて俺の耳に届いた。
安静にしていれば、こんな部屋に独り、隔離されれば治るような病気ではない。本人でさえ、言わずとも気付いている。
だからこそ浮かべる自嘲的な笑み、辛辣な言葉。
代われるものなら代わりたい。けれど、もし代われたとして、俺がそう望んでも総悟は絶対に拒む。
アンタの方が真撰組には―――――近藤さんには必要だろィ?
とか、そんな風に。
「俺にはお前が必要だ」
「・・・・・・ハッ」
刹那、目を丸くしたが、すぐに噴き出した。腹部を押さえ、愉快そうに。
こんなに笑う総悟を俺は、初めてみた。
近藤さんや姉の前でどうだったかは知らないが。
「・・・そんな冗談言って、どうしてぇんで?」
やっと笑い終え、総悟は再び窓の外を見た。白い指先が、白い花に溶け込んで輪郭が消えてしまいそうだ。
天邪鬼で口煩いマセ餓鬼が、こんなにも儚く見える日が来るとは。
「冗談じゃねぇよ」
「嘘でィ。アンタは近藤さんと真撰組がありゃあいんだろィ?―――――姉上もいない、今」
違う。嘘じゃない。
今此処に居るこの存在を、無くしたくないからこんなにも悪あがきしている。こんな風に閉じ込めたって、仕事休ませたって何も変わらないって、・・・淋しいだろうことを分かっていながらもこうさせているのは、俺が欲張りだからだ。

―――――全部、俺のエゴだ。

小さく肩を震わせた総悟を、窒息するぐらい強く抱き締めた。

このまま、永遠に・・・。

そんな願いは叶わないというように、総悟の手から雪のように白い花が音をたてて落ちた。





#50

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