梅々
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命日
- 2012/05/11 (Fri) |
- 土沖 |
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土方さんの命日ですね。
今日は三連勤最後でした!
明日はラルクのライブ。
明後日から三連勤。
ナウシカは今月三回目でしたが何度みてもいい。クシャナ殿下が大好きです。
では、命日記念の失恋ネタ。
今日は三連勤最後でした!
明日はラルクのライブ。
明後日から三連勤。
ナウシカは今月三回目でしたが何度みてもいい。クシャナ殿下が大好きです。
では、命日記念の失恋ネタ。
終わって気づいた。
俺は、おまえが好きなんだ。
月見ず月
書類を片付けていると、一応礼儀正しく部屋へ入ってきた山崎が、情けない声を発した。ドラえもんに縋るのびたのようだ。返事をする気も萎える。いや、この後山崎が何を言うか分かっているから、言葉が喉に張り付いて出てこないのだろう。緊張した。張りつめた一本の糸のようになる。触れられたら千切れてしまいそうに脆い。
俺の背後に座り、ドサッと何かを置いた音がした。書類だろう。予測してげんなりしてしまうのは仕方がない。
「沖田隊長がいないんですよー探してもらえませんか副長」
ほらな。やっぱりそう来た。苦々しい気持ちとともに煙草を灰皿にぐしゃりと擦り付け、溜め息をこぼす。
昨日までの俺ならば、文句を言いながらも行っただろうが。今日の俺は違う。行くのも苦痛でしかない。
それを知らない山崎に教えるのは面倒だ。自分で探しに行けと、言ってみる。
「俺じゃ見つけられませんよ。副長じゃないと。お願いしますよー! 隊長に確認してもらわないといけない書類があるんです」
そういやこないだ町中で一番隊隊士がひったくりを捕まえたらしい。その際隊士が捻挫をしただとか総悟が言っていた。それについての書類だろうと振り向けば、捨てられた子犬のような顔をしていた。それが有効なのは近藤さんにだけだ。俺には通用しない。それを知っていてもするのだから、きっと作った表情ではないのだろう。
総悟が見つからねば代理に俺が目を通さねばならない。わざわざ仕事を増やすようなことはしたくないし息抜きだと、渋々立ち上がった。
「おまえは、そこの書類を分類しとけ」
「ありがとうございます副長!!」
ばっと明るくなった山崎の表情とは逆に俺の表情が曇ってるんじゃないかと思う。きっと表には出ていないのだろうが。
部屋に山崎を残し、凝り固まった体を解しながら外へ出る。西日が眩しい町はあちこちでこどもの声がし、軒先からは夕食の匂いが漂ってくる。ぼちぼち歩いていると五時を報せる音楽が流れ始め、ばたばたと家へ帰っていく。遠くからは夕飯よと、母親が子どもを呼ぶ声も届いた。今日は風が強い。その上少し肌寒い。声も匂いもよく届く。
昨日の夜もやはり肌寒かった。久々の独り寝がより、堪えた。総悟と付き合うようになってからは、仕事がない夜は寄り添って眠るのが常だった。だから、昨夜もそうなるだろうと思っていたのだが。
いつも通り部屋へやってきた総悟に、別れを切り出された。いつものようにくもりない眼で真っ直ぐに俺を見る総悟。平坦な口調で別れて下せェと、言われた。
俺の何が悪かったのだろう。
総悟に告白されてからは、他の女とも切れていたし接待も含め仕事以外で夜部屋を空けたことはなかった。キスだってした、それ以上のことも何回もした。いずれも気持ち良さそうにしていたから相性の問題ではないだろう、ならばなんなんだ。昼間まで普通に、過ごしていたのに。思ったがどれも言葉にはならず、そうかと返すので精一杯だった。問い返して何になる。女々しいだけではないか。
付き合い始めも、振るのが忍びなく付き合ったようなものだった。きっと断れば、今までの関係ではなくなるのだろうと考えたらそれがとても恐ろしいことのように感じた。誰よりも一番、時間も感情も秘密も共有している相手だ、手離したくないとその時は思った。だから、頷いた。
いま思えばそれは勘違いだったのだろう。
馴染みの駄菓子屋へ足を運んで見たがいなかった。これまで俺がアイツを見つけられたのは、アイツが心のどこかで見つけてほしいと思っていたからで。いまの総悟が同じように、見つけてほしいと思っているとは思えない。だから、きっとこれも無駄骨だ。
大分気も紛れたからこのまま帰るのもありだろう。そう思うのに足は勝手に路地へ入り、人工物より自然の青が目につく、緩やかな上り坂の続く林へと進んでいた。この先に、去年総悟と祭りをひやかしに来た神社がある。いるかいないかはさておきそこを覗いたら帰ろう。
懐かしくもある湿った草の匂いを嗅ぎつつ歩いていると、社の横手が視界に入ってきた。正面へ回ってみると、賽銭箱によりかかり眠る栗色がひとつ。
ふっと笑みが零れる。すぅすぅと穏やかな寝息を聞きながらしゃがみこむ。無粋なアイマスクをつけているが白く滑らかな頬も、あどけなく開いた唇も愛らしくて、そっと手を伸ばし頬を撫でる。びくり、総悟の体が一瞬反応したが、起きる様子はない。
失って気づくなんて馬鹿だ。
俺は、最初からおまえが好きだったんだ。
「総悟」
「んん……」
愛しい、だからこそ俺はおまえを受け入れた。
「あれ、土方さん?」
「おら、サボってんな。山崎が探してんぞ」
「何でアンタが探しにきてんの」
「煙草買うついでだ」
アイマスクを外した総悟が俺を真っ直ぐに見る。
その目が、もう俺だけを真っ直ぐに見つめることはないのだろう。それでもいい。
一瞬でも俺のものであったんだから。
「帰んぞ」
「……へい」
背中を向け歩き出せばいつもの距離から足音がする。
変わらないそれに喪失感がじくじく疼いた。
俺は、おまえが好きなんだ。
月見ず月
書類を片付けていると、一応礼儀正しく部屋へ入ってきた山崎が、情けない声を発した。ドラえもんに縋るのびたのようだ。返事をする気も萎える。いや、この後山崎が何を言うか分かっているから、言葉が喉に張り付いて出てこないのだろう。緊張した。張りつめた一本の糸のようになる。触れられたら千切れてしまいそうに脆い。
俺の背後に座り、ドサッと何かを置いた音がした。書類だろう。予測してげんなりしてしまうのは仕方がない。
「沖田隊長がいないんですよー探してもらえませんか副長」
ほらな。やっぱりそう来た。苦々しい気持ちとともに煙草を灰皿にぐしゃりと擦り付け、溜め息をこぼす。
昨日までの俺ならば、文句を言いながらも行っただろうが。今日の俺は違う。行くのも苦痛でしかない。
それを知らない山崎に教えるのは面倒だ。自分で探しに行けと、言ってみる。
「俺じゃ見つけられませんよ。副長じゃないと。お願いしますよー! 隊長に確認してもらわないといけない書類があるんです」
そういやこないだ町中で一番隊隊士がひったくりを捕まえたらしい。その際隊士が捻挫をしただとか総悟が言っていた。それについての書類だろうと振り向けば、捨てられた子犬のような顔をしていた。それが有効なのは近藤さんにだけだ。俺には通用しない。それを知っていてもするのだから、きっと作った表情ではないのだろう。
総悟が見つからねば代理に俺が目を通さねばならない。わざわざ仕事を増やすようなことはしたくないし息抜きだと、渋々立ち上がった。
「おまえは、そこの書類を分類しとけ」
「ありがとうございます副長!!」
ばっと明るくなった山崎の表情とは逆に俺の表情が曇ってるんじゃないかと思う。きっと表には出ていないのだろうが。
部屋に山崎を残し、凝り固まった体を解しながら外へ出る。西日が眩しい町はあちこちでこどもの声がし、軒先からは夕食の匂いが漂ってくる。ぼちぼち歩いていると五時を報せる音楽が流れ始め、ばたばたと家へ帰っていく。遠くからは夕飯よと、母親が子どもを呼ぶ声も届いた。今日は風が強い。その上少し肌寒い。声も匂いもよく届く。
昨日の夜もやはり肌寒かった。久々の独り寝がより、堪えた。総悟と付き合うようになってからは、仕事がない夜は寄り添って眠るのが常だった。だから、昨夜もそうなるだろうと思っていたのだが。
いつも通り部屋へやってきた総悟に、別れを切り出された。いつものようにくもりない眼で真っ直ぐに俺を見る総悟。平坦な口調で別れて下せェと、言われた。
俺の何が悪かったのだろう。
総悟に告白されてからは、他の女とも切れていたし接待も含め仕事以外で夜部屋を空けたことはなかった。キスだってした、それ以上のことも何回もした。いずれも気持ち良さそうにしていたから相性の問題ではないだろう、ならばなんなんだ。昼間まで普通に、過ごしていたのに。思ったがどれも言葉にはならず、そうかと返すので精一杯だった。問い返して何になる。女々しいだけではないか。
付き合い始めも、振るのが忍びなく付き合ったようなものだった。きっと断れば、今までの関係ではなくなるのだろうと考えたらそれがとても恐ろしいことのように感じた。誰よりも一番、時間も感情も秘密も共有している相手だ、手離したくないとその時は思った。だから、頷いた。
いま思えばそれは勘違いだったのだろう。
馴染みの駄菓子屋へ足を運んで見たがいなかった。これまで俺がアイツを見つけられたのは、アイツが心のどこかで見つけてほしいと思っていたからで。いまの総悟が同じように、見つけてほしいと思っているとは思えない。だから、きっとこれも無駄骨だ。
大分気も紛れたからこのまま帰るのもありだろう。そう思うのに足は勝手に路地へ入り、人工物より自然の青が目につく、緩やかな上り坂の続く林へと進んでいた。この先に、去年総悟と祭りをひやかしに来た神社がある。いるかいないかはさておきそこを覗いたら帰ろう。
懐かしくもある湿った草の匂いを嗅ぎつつ歩いていると、社の横手が視界に入ってきた。正面へ回ってみると、賽銭箱によりかかり眠る栗色がひとつ。
ふっと笑みが零れる。すぅすぅと穏やかな寝息を聞きながらしゃがみこむ。無粋なアイマスクをつけているが白く滑らかな頬も、あどけなく開いた唇も愛らしくて、そっと手を伸ばし頬を撫でる。びくり、総悟の体が一瞬反応したが、起きる様子はない。
失って気づくなんて馬鹿だ。
俺は、最初からおまえが好きだったんだ。
「総悟」
「んん……」
愛しい、だからこそ俺はおまえを受け入れた。
「あれ、土方さん?」
「おら、サボってんな。山崎が探してんぞ」
「何でアンタが探しにきてんの」
「煙草買うついでだ」
アイマスクを外した総悟が俺を真っ直ぐに見る。
その目が、もう俺だけを真っ直ぐに見つめることはないのだろう。それでもいい。
一瞬でも俺のものであったんだから。
「帰んぞ」
「……へい」
背中を向け歩き出せばいつもの距離から足音がする。
変わらないそれに喪失感がじくじく疼いた。
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