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梅々

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十日ぶり更新

今日は試験三日前であるにも関わらず小説書きたくて、そして眠たくて仕方なかったです。しっかりしろ私!夏休みのバイトも探さねばだし大変です\(^o^)/





それでは遅くなりました!
おきたん土沖続きです。次回は甘えろで終わる予定です。土方悶々。














欲しがれば手に入りそうで

思い上がりそうで怖くなる





催涙雨





 期末テスト二日目の金曜日、それが今年の総悟の誕生日だった。テスト期間は年中無休でストーキングに励む近藤さんを置いて早めに学校に来て総悟にノートを見せたり、勉強を教えたりしてやる。俺が山を張ったところを総悟が全力で覚える。それを当日の朝やるだけでぎりぎり及第点にいるのだから、総悟はやればできるはずなのだがやらない。もし総悟が、自力で勉強し出したらこう頼られることもなくなるだろうから現状が嬉しくもあるのだが。受験が不安でならない。
 誰もいない二人きりの教室。冷房はついていないがまだ朝だからか、窓から入る風だけでなんとかやっていけている。今日は一時間目のみだから俺にもゆとりがある、はずなのだが。一つの提案を言おうか言うまいか悩んでいてゆとりどころではない。
 今日から祭りがある。此処からは三つ駅が離れていて決して近いわけではないが、県内では有名な七夕祭りだ。地震の影響で開催が危ぶまれていたが、夜七時までと短縮してやるらしい。それに誘おうかと悩んで悩んで今日は寝不足だ。祭りが好きな総悟なら行くだろうとも思うし、今日は家で姉とゆっくりしたいと言うんじゃないかとも思う。断られたら、と考えると怖い。他意なく、本当に姉と過ごしたいだけだったとしてもそれなりには俺は凹む。その上、あの担任相手だったら行っていたんじゃないかとかそんなことを考えてしまう自信がある。みっともない。
 確かに俺と総悟の関係には進展してほしいが、総悟が誰のものにもならないのならこのままであり続けてもいい。なんだかんだ言って、結構な時間傍にいられているから。
 だが受験がある。大学行ってもこのまま、とは考えづらい。総悟があの野郎とできさえしなければそれでいいのだが。

「土方さん?」

「あ?」

「また考え事ですかィ」

「いや…」

「そんなにいい女なんですかねェ」

「そうじゃねぇよ」

 片眉を上げてからかうような猫の眼で見られてむっとした。女のことなんざ数年まともに考えていない。考えていても気付けば総悟のことにシフトしていて、その度に罪悪感が湧くというのにそういうことを何も知らずに、さして興味もなさそうにからかわれると押し倒したくなる。友情がなんだ、平穏がなんだ。今すぐにでもおまえがほしいってのに。
 衝動を堪え、やけくそで口を開く。

「今夜祭りあるだろ」

「んー……あぁ、七夕祭りですかィ」

「そうだ。一緒に行かねぇか」

「はい?」

 総悟は無表情で首を傾げた。さらり、揺れる髪は細くしなやかで掻き乱したくなる。
 これは自棄であるから。どんな返事だろうと今はそこまで凹みはしないだろう。明日一日中後悔しそうだが、言って良かったと思ってはいる。うだうだと何もしないよりかは断然違う。自己満足に過ぎず総悟が行くはずがないのだけれど。

「夕飯、準備してくれてんだろィ?」

「節電云々で七時までしかやってねぇからそんな遅くまでいねぇよ」

「でもなんでアンタ……今まで誘ってきたことねぇのに」

「折角だから誕生日祝ってやろうと思ったんだよ。嫌なら嫌って言やいい」

 明確な答えを寄越さずにあれこれ総悟らしくなく言う。それに苛ついて吐き捨て、屈んで鞄から教科書を取り出す。ついでにペットボトルをと、鞄の中を探っていたら総悟が何か呟いた。しかしなんと言ったのか聞こえない。

「なんだ?」

「行ってやっても、いいですぜ」

「えっ!? いった!」

 驚きのあまり、頭を上たらガッと机の角にぶつかった。ずきんずきん、唸る後頭部を抑え踞っているとだせぇなァと冷たく溢される。
 痛みより腹立ちが勝って心配ぐらいしろ!と、今度こそ顔を上げたら。頬杖をついて総悟はあまり毒気のない笑みを浮かべていた。柄にもなく、きゅんとした。適切な表現が浮かばなくて薄ら寒いが本当に、胸がきゅんと騒いだ。
 現金なもので頭痛も大人しくなる。

「…本当にいいのかよ」

 俺で。アイツではなくて。心の中ではそう続いたが勿論問えるはずがない。折角のチャンス、敵に塩を送る余裕なんて。

「いいでさ。帰って昼食ったら行きやすか」

「あぁ。……去年うちのねぇちゃんたちがやった浴衣あったろ。折角だからあれ着てこい」

「甚平ですけどねィ。まぁいいですぜ」

 じゃあ試験頑張らねぇとなァ、真剣に俺のノートを読み出した総悟に隠れて、ガッツポーズを一つした。





 ジジジジ、と蝉がなく。昼間は静かだが夕方になると蝉の声をよく聞くようになった。夏だ。あっという間に夏になってしまった。これからは勉強の追い込みで中々遊べなくなるのだろう。受験生の夏休みは地獄のようなものだ。この夏の頑張りようで、受験の結果が決まるといっても過言ではない。例年、休みの間は宿題をするために会ったりしていたが、三年生になると宿題なんか殆ど出さなくなる。会う機会が減ってしまう。
 憂鬱なことわ考えていたらカランコロンと足音がして顔を上げた。約束の時間ちょうどぐらいだろう。そわそわしながら、振り返る。

「土方さん」

「総悟」

 濃紺に赤い金魚の泳ぐ甚平を着て、手には黒いちりめんの巾着を持った総悟が俺を見た。下駄の音が止み目の前に立ち止まる。
 体育で見慣れているはずなのだが、黒に近い濃紺から覗く白い膝、すらりと伸びた両の足を直視できない。白く滑らかなそれには傷一つない。細さをとっても姉が昔大事にしていた人形並だ。あれよりも肌理細かく柔らかそうだけど。

「土方さん?」

「よ、し…んじゃ行くか」

 訝しげに小首を傾げる仕草が狙っているようにしか見えない。和装なのが余計、総悟の首の華奢さを強調する。青少年であるのによくここまで我慢できる。頭の中じゃどんなに汚していても、俺たちの関係は清いままだ。なんせ付き合っていなければ、そうなる可能性すらない。

「アンタのご所望の甚平、どうですかィ」

「…っ!!」

 そう言って胸元を摘むものだから、鎖骨の下の日に当たっていない肌がチラリと覗いて。鼻血の出しすぎで死にそうだ。
 意外と似合ってるよ、気持ちを三割減で告げれば意外とは何だとムスッとした表情を浮かべる。本音を告げれば引くだろうに、思いながらよくよく見れば照れているようで。唇を尖らすのは本気で止めてほしい。塞ぎたくなるのを堪えようと拳を握る。

「でもアンタも甚平か。ヤだなァ」

「仕方ねぇだろ。…おまえのそれ買うときに序でに買ったから着てけっつわれたんだよ」

 俺のは黒に青の縦縞の至って地味なものだ。本当についでに買ったとしか思えない質素な感じ。総悟の甚平さえ良ければ蔑ろにされても別に良いんだけど。
 しかもこうして、一緒に着て祭りへ行けるのだし。

「似合うか?」

 ふざけて俺も聞いてみる。どうせこてんぱんに、自意識過剰だのなんだの言われるだろうと思っていれば。

「まぁ俺には劣りやすがね」

 なんて目を反らして言いやがるから。
 そろそろ握った拳に爪が食い込みすぎて痛い。

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