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梅々

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ひじかたおめでとうしろう

泡風呂しようとおもったら親が介入してきてやる気がそげたので止めました明日帰ってくるはずがなぜ今日帰ってきたのか。
土方誕生日おめでとう。
そんなこんなで面倒な日でした。

明日は土方の髪がいつもよりワイルドなことになっていそう。汗かくようなことしたんでしょ。きじょういでしょうか沖土でしょうか。

好きなんです、と言った。
その直後に羞恥からか彼はうつむき、さらりと天使の輪が乱れる。
ずっと、彼から聞きたいと思っていた言葉だった。夢にも何度か見た。
想像通り、諦めつつも縋るようなすかすかな声だった。
それが、俺ではなく俺の最も嫌いな野郎に向かい放たれる場面に出会すとは。
ついていないにも、ほどがある。
そんな光景を昨日見てしまったものだから今日は格段に喫煙量が多く、入室する都度、無意識であろうが山崎はかすかに眉を顰める。流石に悪いなと僅かに思うが言いはしない。
はぁと、煙を逃がしていれば失礼しますと声がかかる。入れとペンを置きながら返せばさぁと障子が開いた。声から斉藤だとわかったが何の用だろうか。何か命じていただろうかと悩みつつ振り返れば珍しく、にこりと笑っていた。
「……なんだよ」
「副長誕生日だろ?おめっとさん」
「……それだけか」
返せば礼もなしかと、文句を言いつつワンカートン投げて寄越す。プレゼントなのだろう。朝から隊士にすれ違う度祝いの言葉を送られ、毎年のことだがむず痒くもありがたく思っていたけれど、どうしても素直に喜べない。
それもこれもあいつのせいだ。忌々しさが表情に出かけ、慌てて気を引き締める。
「今年も沖田は相変わらずかね」
「今年はねぇかもな」
脳裏にあいつを思い浮かべたタイミングで話題にしてくるものだから、つい言い方に感情が滲んだ。しかし気付かれることはなかったらしい、そうかねぇ、なんて言いながら顔の前で手で扇いでいる。煙いのだろう。
「ありがとよ」
「いえいえ。……噂をすれば、」
「あれ、斉藤さんじゃねぇですか。サボり?」
「一緒にすんなっての。見回り帰りだよ。じゃあ、」
聞こえた声に心臓がはねた。障子越しの陰に、何とも言えない罪悪感を抱いた。後ろめたい気持ちに満ち満ちて、去ろうとする斉藤を引き留めたくなる。
そんな俺の心情を知らない斉藤はさっさと立ち去り、代わりに総悟が入ってくる。
「はい、土方さん」
そうして何食わぬ顔で、一輪の花を渡してくる。
出会ってからずっと誕生日には花を渡してくる。最初はその辺に生えている雑草だったのがこちらへ出てきてからは花屋で買っているのか、ラッピングされるようになって。
「ありがとな」
「いーえ」
礼を言えばふっと笑う、その滅多に見られぬ穏やかな笑みが好きだ。だから毎年、柄にもなくこの日を楽しみに来た。今までにもらった花も、全てとってある。ミツバに押し花にすればずっととっておけると聞いて、書物の間に挟んである。
けれど、それももう終わりか。
「なぁ、総悟」
受け取ったそれをくるくると回して眺めてながら言えば、向かいに腰掛けた総悟がきょとんと海色の瞳を向ける。
「お前、万事屋が好きなんだろ」
「え、」
こんなことを言っても詮無いと分かっているのに。
「昨日、お前があいつに言ってんの、偶然聞いた」
顔を上げれば呆然とした真ん丸い瞳と目が合う。
恨みがましく、告げる気はないが。どうせならこの機会に白状してしまいたい。
ずっと好きだったのだと。
叶わないと知ってはいたが。
実際に他の野郎を好きになったと聞いて、平常心ではいられない。だからこそ吐露しようとしているのだ。後悔するに決まっている。
「……引かれるかもしれねぇけど」
再び花に視線を戻す。あの瞳を見ながら言えるものか。
「ずっと、おまえが好きだった」
「……えっ?」
驚いたと告げる声色にふっと笑う。気付かれていなかったのか。過保護以上の面倒見だと山崎には突っ込まれたが。
忘れてくれと、繋げようと思ったが言葉が続かない。俺がどれだけ、ひた隠しにするのに腐心したか。少しぐらいは、俺のことで悩んでくれればいいと我が儘にも思う。
「アンタ、それ……本気?」
「俺が冗談でこんなこと言うと思ってんのか」
「思わねぇけど、でも」
「でも、なんだよ」 
 三度総悟を見やれば、俯いていた。昨日は後ろから見たなと眺めていたら徐に顔を上げた。
頬が赤い。瞳も心なしか、潤んでいる。
「そうご、」
「俺も、アンタのこと、」
す、までは聞こえたがそのあとはか細く震えて、ただの吐息となった。首まで真っ赤にして総悟は俺の耳あたりをじっと見つめている。
え。
それこそ冗談なんじゃと疑っている自分もいるにはいるが、目の前の総悟に感化されて顔が火照っていく。こんな顔して嘘をつけるような人間ではないはず。
怖ず怖ずと頬に触れてみる。びくりと大袈裟なまでに体を震わせるも受け入れられて、困ったように眉を寄せながら俺の目を見返してくる。
「昨日のあれは、旦那に向けてじゃないんでさ」
「そうか」
「そ。勘違いですぜ」
ふふっと猫のように目を細め、俺の手を包む。普段は冷たい指先が、あつい。
「じゃあ、俺見回り行くんで」
「は?」
まだ仄かに顔を赤らめているくせに余韻もなく立ちあがる、その手をきつく掴む。
普段はさぼるくせになんでこんなときに限って仕事しようとするんだ天の邪鬼。
「今日は有給使え」
「え。いいでさ別に」
「いいから。俺の傍にいろ」
嬉しすぎて手放したくないんだと、告げたら真っ赤になった。

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