梅々
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土沖か沖土について語り合える友人が欲しい・・・。
オンリーの宝、ノータッチといっても過言ではない感じです(;_;)
欲求不満なんだぜ!
それでは、五万二千打リクエスト土沖の続きです。中編小説になりそうな予感です!
三部作で終わるのかな?
オンリーの宝、ノータッチといっても過言ではない感じです(;_;)
欲求不満なんだぜ!
それでは、五万二千打リクエスト土沖の続きです。中編小説になりそうな予感です!
三部作で終わるのかな?
鳴かせてください
それまで、私は泣きませぬ
月に叢雲花に風
裏道を曲がりに曲がり、辿り着いたのは未だ土方にも知られていない、数少ない秘密基地だった。秘密基地といってもただ単に、サボり場所であるのだけれど。
三方向、だけでなく人一人通れる程のスペースが開いている以外、周りは建物に囲まれている空き地。前に猫を追いかけていたら此処に辿り着き、それからは時々誰にも会いたくない時に訪れる。
「あー憂鬱」
誰も返事をしないと分かりきっている独り言をして、雑草の上に寝っ転がる。誰かさんの瞳の色のような空が四角く切り取られていて、それを見たくなくて横を向く。するといつぞや追いかけた黒猫が、小道から入ってくるのが視界に入った。その猫は、軽やかな足取りで真っ直ぐ、俺の前へ向かってきた。
猫は嫌いじゃない。というか寧ろ好きだ。なんとなく近付いてきたソイツに手を出すと、鼻を擦り寄せて、それから頬をすりすりしてきた。可愛いなと、呟けば返事をするようににゃあお、と鳴いて俺の顔に顔を擦り寄せてくる。
「・・・おまえみたいだったら良かったのに」
俺、若しくは土方さんが。
そうしたら、もうちょっとは満足できていたと思う。立ち位置は変わらずとも。でも、近藤さんのように擦り寄ってきて欲しいわけではない。そうじゃなくて。
冗談でも好きです、と言える関係だったなら。
「ミャーオ」
微睡んできた俺の隣で同じようにうとうとしながら、猫は真っ直ぐに俺を見て鳴いた。おやすみ、と聞こえたのは多分、俺が余程眠たかったからだ。
「おやすみ・・・」
*
夢を視ているんだ、と自分が分かっていることはあまりない。その上、自らの意志でその夢を終わらせることができるのは希だ。話には聞くが、俺は出来た試しがない。
今回もまた、例に漏れず。
「土方さん」
「ん? どうした、総悟」
振り返った顔は果てしなく優しくて、ずきんと胸が痛んだ。実際こんなに穏やかな表情を浮かべて見られたことがない。土方さんがこんな表情を浮かべることもできるのだというのは知っていたけれど。
それはいつも、姉上か近藤さんに向けられていた。
「黙り込むなよ。用があんだろ?」
「・・・土方さん、俺―――」
夢の中だということははっきりと分かっているから、思いきって告白してみようと思った。けれど、俺の言葉を遮るように、女が土方さんを呼んだ。
そのひとは、ついさっき土方さんに声をかけていた人だった。
美冬、と現実と同じように土方さんがそのひとの名を呼ぶ。
前に聞いた、近藤さんが土方さんをからかっていたのを。お前、美冬太夫と良い仲なんだろう、と。それに土方さんは満更でもなさそうな顔をしていた。旦那に会う前の話だ、あれからずっと続いているのなら、土方さんにしては珍しく関係が長いし一度切れてまたくっついたなんていうのも、土方さんにしてはあり得ないこと。
どっちにしろ、あのひとは土方さんにとって特別なのだ。
俺や、近藤さんといった区分とは別の位置にある、特別。姉上と同じような。
俺がそこに入ることができないのもそれを望むのも烏滸がましいと理解している。でも羨ましくて。
昔からずっと一緒にいた。近藤さんと同じぐらい、土方さんのことを知っている。
それに、俺は誰よりも土方さんを好きな自信がある。剣の腕とそれだけは、誰にも負けたくはない。
「私を選んでくださるんやろ?」
美冬太夫は、土方さんの首に腕を巻き付け猫なで声と甘ったるい口調で以て、土方さんを誘惑する。
これは俺の夢なのに。
なんでそんなひとなんかとくっついているの。
俺の方が、比べられない程に想っているのに、アンタのことを。
「俺は―――」
ゆっくと、土方さんが口を開く。
嫌だ。
聞きたくない。
どんな言葉であろうとも、聞きたくない。
「おーい起きろー」
「ん、あ・・・? あれ、旦那・・・?」
開かれたその口から発された声は土方さんのものではなく、驚いて瞬きしたら旦那の顔が垂直に視界に映った。
その背景の空の色はもうどちらかというと目の前の人の瞳の色になっていて、大分寝ていたのだと気付いた。
それにしても。旦那は本当にやる気のない顔をしている。そこそこ嫌な夢であったにも関わらず、それを考える気すら起こさせないのだから。
「早く帰って仕事しなさい」
「旦那の口からそんな殊勝な言葉が聞けるとは。なんなら仕事、分けてやりやしょうかィ?」
「・・・ごめん、今その手の言葉はマジでキツい」
動物だったら耳が悄気ているんじゃないかという程に悲壮感が漂っていて、つい手が動いた。よしよし、と頭を撫でる。すると本当に動物を撫でているような柔らかさだったから、おぉ、と少し感動。
土方さんの頭はこんなに柔らかくないのだろうなぁ、なんて、自然と頭の中で考えていたから遣りきれない。
「・・・っていうか、旦那どうして此処へ?」
「・・・猫に宝くじ盗られてよ、追いかけたら此処についた」
「切実ですねィ」
「そうは言うけどよ、それが一等だったらどうするよ? 大損だろ?」
「はは」
土方さんと旦那は似ていると、よく思う。
けれどいまは全然似ていないと思う。旦那の傍にいると肩の力が抜けてしまうのだ、自然と。だから気楽に色んな他愛もない話をできる。だからって恋愛相談は絶対しないけれど。
旦那も好きだ、でもそれはどちらかといえば近藤さんに向けているものと同種で、慕っていると表現するのが一番近い。
土方さんに向けているのは、醜くて汚い、だけれど純粋な愛情。
「旦那のこと、好きになりゃもっと楽だったかもしれないのに」
「ん?」
「何でもねぇでさ」
呟いてみたけれどそんなことは絶対にないのだろう。
きっと、愛とは痛みや苦しみを伴うもので、それに、土方さんを選ばないなんてことはないから。
それまで、私は泣きませぬ
月に叢雲花に風
裏道を曲がりに曲がり、辿り着いたのは未だ土方にも知られていない、数少ない秘密基地だった。秘密基地といってもただ単に、サボり場所であるのだけれど。
三方向、だけでなく人一人通れる程のスペースが開いている以外、周りは建物に囲まれている空き地。前に猫を追いかけていたら此処に辿り着き、それからは時々誰にも会いたくない時に訪れる。
「あー憂鬱」
誰も返事をしないと分かりきっている独り言をして、雑草の上に寝っ転がる。誰かさんの瞳の色のような空が四角く切り取られていて、それを見たくなくて横を向く。するといつぞや追いかけた黒猫が、小道から入ってくるのが視界に入った。その猫は、軽やかな足取りで真っ直ぐ、俺の前へ向かってきた。
猫は嫌いじゃない。というか寧ろ好きだ。なんとなく近付いてきたソイツに手を出すと、鼻を擦り寄せて、それから頬をすりすりしてきた。可愛いなと、呟けば返事をするようににゃあお、と鳴いて俺の顔に顔を擦り寄せてくる。
「・・・おまえみたいだったら良かったのに」
俺、若しくは土方さんが。
そうしたら、もうちょっとは満足できていたと思う。立ち位置は変わらずとも。でも、近藤さんのように擦り寄ってきて欲しいわけではない。そうじゃなくて。
冗談でも好きです、と言える関係だったなら。
「ミャーオ」
微睡んできた俺の隣で同じようにうとうとしながら、猫は真っ直ぐに俺を見て鳴いた。おやすみ、と聞こえたのは多分、俺が余程眠たかったからだ。
「おやすみ・・・」
*
夢を視ているんだ、と自分が分かっていることはあまりない。その上、自らの意志でその夢を終わらせることができるのは希だ。話には聞くが、俺は出来た試しがない。
今回もまた、例に漏れず。
「土方さん」
「ん? どうした、総悟」
振り返った顔は果てしなく優しくて、ずきんと胸が痛んだ。実際こんなに穏やかな表情を浮かべて見られたことがない。土方さんがこんな表情を浮かべることもできるのだというのは知っていたけれど。
それはいつも、姉上か近藤さんに向けられていた。
「黙り込むなよ。用があんだろ?」
「・・・土方さん、俺―――」
夢の中だということははっきりと分かっているから、思いきって告白してみようと思った。けれど、俺の言葉を遮るように、女が土方さんを呼んだ。
そのひとは、ついさっき土方さんに声をかけていた人だった。
美冬、と現実と同じように土方さんがそのひとの名を呼ぶ。
前に聞いた、近藤さんが土方さんをからかっていたのを。お前、美冬太夫と良い仲なんだろう、と。それに土方さんは満更でもなさそうな顔をしていた。旦那に会う前の話だ、あれからずっと続いているのなら、土方さんにしては珍しく関係が長いし一度切れてまたくっついたなんていうのも、土方さんにしてはあり得ないこと。
どっちにしろ、あのひとは土方さんにとって特別なのだ。
俺や、近藤さんといった区分とは別の位置にある、特別。姉上と同じような。
俺がそこに入ることができないのもそれを望むのも烏滸がましいと理解している。でも羨ましくて。
昔からずっと一緒にいた。近藤さんと同じぐらい、土方さんのことを知っている。
それに、俺は誰よりも土方さんを好きな自信がある。剣の腕とそれだけは、誰にも負けたくはない。
「私を選んでくださるんやろ?」
美冬太夫は、土方さんの首に腕を巻き付け猫なで声と甘ったるい口調で以て、土方さんを誘惑する。
これは俺の夢なのに。
なんでそんなひとなんかとくっついているの。
俺の方が、比べられない程に想っているのに、アンタのことを。
「俺は―――」
ゆっくと、土方さんが口を開く。
嫌だ。
聞きたくない。
どんな言葉であろうとも、聞きたくない。
「おーい起きろー」
「ん、あ・・・? あれ、旦那・・・?」
開かれたその口から発された声は土方さんのものではなく、驚いて瞬きしたら旦那の顔が垂直に視界に映った。
その背景の空の色はもうどちらかというと目の前の人の瞳の色になっていて、大分寝ていたのだと気付いた。
それにしても。旦那は本当にやる気のない顔をしている。そこそこ嫌な夢であったにも関わらず、それを考える気すら起こさせないのだから。
「早く帰って仕事しなさい」
「旦那の口からそんな殊勝な言葉が聞けるとは。なんなら仕事、分けてやりやしょうかィ?」
「・・・ごめん、今その手の言葉はマジでキツい」
動物だったら耳が悄気ているんじゃないかという程に悲壮感が漂っていて、つい手が動いた。よしよし、と頭を撫でる。すると本当に動物を撫でているような柔らかさだったから、おぉ、と少し感動。
土方さんの頭はこんなに柔らかくないのだろうなぁ、なんて、自然と頭の中で考えていたから遣りきれない。
「・・・っていうか、旦那どうして此処へ?」
「・・・猫に宝くじ盗られてよ、追いかけたら此処についた」
「切実ですねィ」
「そうは言うけどよ、それが一等だったらどうするよ? 大損だろ?」
「はは」
土方さんと旦那は似ていると、よく思う。
けれどいまは全然似ていないと思う。旦那の傍にいると肩の力が抜けてしまうのだ、自然と。だから気楽に色んな他愛もない話をできる。だからって恋愛相談は絶対しないけれど。
旦那も好きだ、でもそれはどちらかといえば近藤さんに向けているものと同種で、慕っていると表現するのが一番近い。
土方さんに向けているのは、醜くて汚い、だけれど純粋な愛情。
「旦那のこと、好きになりゃもっと楽だったかもしれないのに」
「ん?」
「何でもねぇでさ」
呟いてみたけれどそんなことは絶対にないのだろう。
きっと、愛とは痛みや苦しみを伴うもので、それに、土方さんを選ばないなんてことはないから。
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