梅々
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徒労
笑おうか?笑ってみせようか?鏡には置き去りのこども 可哀想にママは戻らないのね 雨は降って止むことも知らずに
かがり火とかいうタイトルだったような気がするけど違うな。かがり火は「うだる暑さがもうそこまできてた」で始まるから。タイトル思い出せないなぁ。
今日ちょっと定期無くしまして底無しのブルーなんですが、明日は銀魂だという現実に救われてます、少し。結局ヤなことが起きるのもいいことが起こるのも現実なのだよ。なんて言ってみるけど底無しのブルー。
底無しのブルーってなんかイイ(笑)
それでは表でアップした百人一首。
相変わらず私は変な文を書く。
かがり火とかいうタイトルだったような気がするけど違うな。かがり火は「うだる暑さがもうそこまできてた」で始まるから。タイトル思い出せないなぁ。
今日ちょっと定期無くしまして底無しのブルーなんですが、明日は銀魂だという現実に救われてます、少し。結局ヤなことが起きるのもいいことが起こるのも現実なのだよ。なんて言ってみるけど底無しのブルー。
底無しのブルーってなんかイイ(笑)
それでは表でアップした百人一首。
相変わらず私は変な文を書く。
汗の臭いと篭った空気。
決して美味だとは言えないその空気が好きで、いつもいつも急いであの場所へ向かっていた。
まるで何かに追われていたかのように。
ミューズの焦燥
「ッハァ、ハァ・・・・・・」
蝉が遠くで近くで哭いている。朝の濁った日がさして、ぼやけた視界に一本の砂利道と、その両わきに広がる田畑、奥に続く林が気だるげに写る。もう一刻も走り続けているような錯覚に陥るが現実には四半刻にも満たないだろう。
春も終わりだというのに肌寒い。羽織を持ってくれば良かったなどと思うがもう後の祭だ。足を踏み出す度背にかけた竹刀が跳ね、背に当たる。それが少し痛いが走るのを止められない。
後ろを振り返っても誰もいない何もいない。なのに、焦燥は募るばかりだ。自分が居ない内にこれ以上、土方と近藤が仲良くならないように─────なんて幼稚な事を考えているわけでは、無い。確かに早くついて少しでも長く近藤の傍に居たいとは思う。
けれど、違う。それとこれとは。
林の間を駆け抜けて、民家の向こうにある小路から、砂利を下駄底で弾く音が聞こえてきた。
こんな朝早くに、誰だろう。
足音が大きくなり、垣根から黒い着流しが現れる。漆黒の長髪をなびかせ振り返ったのは見慣れた男。
「・・・」
「・・・・・・待てよ」
走り去ろうとした沖田の竹刀を掴み、マイペースにその男は歩く。足に力を入れ、走ろうとするが竹刀を掴まれたままじゃどうしようもない。渋々睨み上げると涼しい顔した男は竹刀を離し、代わりに沖田の手首を握った。幼く、且つ細身の沖田の手首は力を込めれば折れてしまいそうだ。
「・・・離せよ」
「急がなくてもいいだろ。何をそんなに急いでんだ?」
何を。問われても困る。此方は走りたくて走っているんじゃない。ただ勝手に足が走り続けているだけで、疲れるし息は苦しいし本当は歩きたい、休憩したい。だけど。
何故かこの足は追われているかのように全速力で走る。
「・・・神社の近くの土手につくしが沢山生えてんだ。知ってるか?」
「・・・知らない」
いきなりこの男は何を言う。突拍子も無い話に気が抜けてしまう。
この男が自分に話かけてくるというのも珍しい。近藤の伝言以外、会話というものをまともにしたことがなかった。どういう風の噴きまわしだ、一体。
「───焦んなくても、平気だ。気楽にいけよ」
「は・・・?」
意味が分からず聞き返すと、曖昧な笑みを浮かべられた。
思えばそれが、俺が初めて見た土方の笑顔だった。自分でも気付かない深層心理にあった、幼い自分へのプレッシャーやら何やらに、あの男は気付いていたのだ。そして“そんな小さなこと、気にするな”とでも言うように彼は少しだけ歩調を自分に合わせてくれた。
「・・・土方さんって昔から気障なヤローだったんですねィ」
バリ、と煎餅を噛むとパラパラと欠片がテーブルの上に落ちた。かき集めるのが面倒でそのままにしておくと、近藤が丁寧に食べかすを一ヶ所に集めてくれる。
「そうか? あいつは昔から素直で純粋で、いいヤツだったけどな」
「女に対しては素で気障なんでさァ、あの人は」
「マジで? いいないいな。俺も気障になりてぇな」
そのままでも近藤はかっこいい。と沖田は思うし、きっと土方も思っている。けれど、それは男から見てかっこいいだけであって、女が思うかっこいいとは少し、違うらしい。
チュンチュンと二羽の雀が、楽しげに庭先で舞っている。それを眺めぼんやりと煎餅をかじる自分には焦燥なんてものが無いように思える。
「近藤さん、花札やりやしょうよ」
「おっ、懐かしいなァ。久々にやるか」
平凡な日々に焦燥はぼやけて消えてしまったようだ。
自分にとってそれが良いことか、なんて分からないけれど。
今はこの場所に居れればそれだけでいい。
#76
わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの
雲居にまがふ 沖つ白波
決して美味だとは言えないその空気が好きで、いつもいつも急いであの場所へ向かっていた。
まるで何かに追われていたかのように。
ミューズの焦燥
「ッハァ、ハァ・・・・・・」
蝉が遠くで近くで哭いている。朝の濁った日がさして、ぼやけた視界に一本の砂利道と、その両わきに広がる田畑、奥に続く林が気だるげに写る。もう一刻も走り続けているような錯覚に陥るが現実には四半刻にも満たないだろう。
春も終わりだというのに肌寒い。羽織を持ってくれば良かったなどと思うがもう後の祭だ。足を踏み出す度背にかけた竹刀が跳ね、背に当たる。それが少し痛いが走るのを止められない。
後ろを振り返っても誰もいない何もいない。なのに、焦燥は募るばかりだ。自分が居ない内にこれ以上、土方と近藤が仲良くならないように─────なんて幼稚な事を考えているわけでは、無い。確かに早くついて少しでも長く近藤の傍に居たいとは思う。
けれど、違う。それとこれとは。
林の間を駆け抜けて、民家の向こうにある小路から、砂利を下駄底で弾く音が聞こえてきた。
こんな朝早くに、誰だろう。
足音が大きくなり、垣根から黒い着流しが現れる。漆黒の長髪をなびかせ振り返ったのは見慣れた男。
「・・・」
「・・・・・・待てよ」
走り去ろうとした沖田の竹刀を掴み、マイペースにその男は歩く。足に力を入れ、走ろうとするが竹刀を掴まれたままじゃどうしようもない。渋々睨み上げると涼しい顔した男は竹刀を離し、代わりに沖田の手首を握った。幼く、且つ細身の沖田の手首は力を込めれば折れてしまいそうだ。
「・・・離せよ」
「急がなくてもいいだろ。何をそんなに急いでんだ?」
何を。問われても困る。此方は走りたくて走っているんじゃない。ただ勝手に足が走り続けているだけで、疲れるし息は苦しいし本当は歩きたい、休憩したい。だけど。
何故かこの足は追われているかのように全速力で走る。
「・・・神社の近くの土手につくしが沢山生えてんだ。知ってるか?」
「・・・知らない」
いきなりこの男は何を言う。突拍子も無い話に気が抜けてしまう。
この男が自分に話かけてくるというのも珍しい。近藤の伝言以外、会話というものをまともにしたことがなかった。どういう風の噴きまわしだ、一体。
「───焦んなくても、平気だ。気楽にいけよ」
「は・・・?」
意味が分からず聞き返すと、曖昧な笑みを浮かべられた。
思えばそれが、俺が初めて見た土方の笑顔だった。自分でも気付かない深層心理にあった、幼い自分へのプレッシャーやら何やらに、あの男は気付いていたのだ。そして“そんな小さなこと、気にするな”とでも言うように彼は少しだけ歩調を自分に合わせてくれた。
「・・・土方さんって昔から気障なヤローだったんですねィ」
バリ、と煎餅を噛むとパラパラと欠片がテーブルの上に落ちた。かき集めるのが面倒でそのままにしておくと、近藤が丁寧に食べかすを一ヶ所に集めてくれる。
「そうか? あいつは昔から素直で純粋で、いいヤツだったけどな」
「女に対しては素で気障なんでさァ、あの人は」
「マジで? いいないいな。俺も気障になりてぇな」
そのままでも近藤はかっこいい。と沖田は思うし、きっと土方も思っている。けれど、それは男から見てかっこいいだけであって、女が思うかっこいいとは少し、違うらしい。
チュンチュンと二羽の雀が、楽しげに庭先で舞っている。それを眺めぼんやりと煎餅をかじる自分には焦燥なんてものが無いように思える。
「近藤さん、花札やりやしょうよ」
「おっ、懐かしいなァ。久々にやるか」
平凡な日々に焦燥はぼやけて消えてしまったようだ。
自分にとってそれが良いことか、なんて分からないけれど。
今はこの場所に居れればそれだけでいい。
#76
わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの
雲居にまがふ 沖つ白波
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