忍者ブログ

梅々

苑咲早良が運営する銀魂BL小説サイトです。 心意気は18禁。 著作権的な何かは放棄していません。マナーは守ってください。 メールフォームやコメント欄は下にありますので、何かございましたらお気軽にご使用ください。感想とか頂ければ舞い上がります! 不定期更新な別館を作成しました。ミツバさん愛してる! 気が向いたらお越しください→http://tokosienoai.dou-jin.com/

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ねこかぶり

猫を被らなければ私はただ口の悪い田舎娘であることに気付いた\(^o^)/
いつだか従兄弟に猫被るのは止めた方がいいよと言われましたが猫には理性兼行儀作法が含まれているので今更別離は出来ません。猫被っても世渡りは下手なままなのですが・・・。愛想笑いとか出来るようになりたいです。
きゃぴきゃぴとした典型的なブリッコに多少憧れてます。
私には無理だ。他人に媚売るのは本当にだめ。だからツンデレじゃないと胸を張って言える。





では、弐萬打です!もう弐萬弐千越えてますが・・・。

まことにありがとうございます。

予告通り東京事変の入水願いチックで心中話です。
とりあえず科白以外片仮名を使わないようにしてみていろいろと挑戦してみました。
















暗闇に堕ちていく





寂滅為楽





気紛れでつけた無線放送は誰の趣味か知らぬがあまり目にしない周波帯で、能だか狂言だか、取り敢えず日本の伝統芸能の部類が流れていた。
震える音色に残る余韻。俺には出来ない変わりにこの人は人の斬り方を知らない。
同じ人間でもこうも差があるのなら、人間というものは如何に広い枠組みか。
眠い頭は変なことを論理的に紡ごうとして挫折し沈黙する。
今寝たら怒るだろうか。
真剣な面持ちで前を見据える男をちらりと見遣る。
俺の視線には気付かない、思い詰めた表情。


この人らしくない。



眩しい街の明かりは過ぎていき、夜が素顔を覗かせる。
初めて歌舞伎町を見た時のことは褪せることなく覚えている。
妖しく揺れる鮮やかで下品な電飾。田舎にはない、近代的な光景に、きらびやかな衣服を纏い歩く人々。
あの頃俺は、何を思い何を夢見たか。
光の減った夜の空、流れ行く風景の中点々と闇に浮かぶ白。梅の花。窓を開ければ香りは届くか。
やってみようと思い開閉器に手を伸ばすが隣にいる存在を思い出し躊躇う。

「おい、総悟」

「ん~」

「寝んじゃねぇよ」

「嫌、だって・・・昨日夜勤・・・」

はぁふ。と大口開けて涙浮かべて酸素を取り込む、頭が小さく動き流れる街灯にきらきら揺らめく。全体的に線が薄い彼は髪の色も薄い。闇夜に沈まぬ鼈甲色。
地球人、という枠で考えれば特異な髪色、然し様々な種族の天人が生活する江戸では奇異の目で見られる事はなく、却って美しさが際立つ。
面と向かって告げたことはなかったが、ずっと綺麗だと思っていた。
告げれば馬鹿にしているだのなんだの言われるに決まっているから、言わずにいるが。

「俺、お前に言いたかったことがあんだけど」

「あ、やめてそーゆーの。俺いま凄いナイーブな気分」

「何言うと思ってんの」

呆れたように笑う顔を一瞥し、彼が見ていたであろう景色を眺める。
人の思考は移ろう。そして、思考は人各々だ。だからこの白梅を見て彼が何を思ったかなんて誰にも分からないし、分かろうとすることは徒労に過ぎない。
唯、心変わりしたのではないことは確か。

「共犯者、か・・・」

「え?」

「いや、別に」

これは、大きな決断。
俺にとっても、彼にとっても。
小さな自分の世界から、限られた枠組みから、外へと飛び出す。

『仕方無い』

あの言葉は誰に向けたものだったのか。
頬を包み告げられた言葉に柔い微笑。きっと忘れられない。否、絶対忘れられない。

「お前さ、」

「今度はなに」

「どれくらい、俺に本当のこと言った?」

「・・・さぁ? 嘘の数だけあんたを愛してやすよ」

何処か投げ遣りなようでいて真摯な言葉。いつも通りのようで、深い奥底があるような。

儚く、脆く軽く・・・それでいて大切な存在。本当に俺なんかでいいのか。


本当に。


今更、裏切ろうたってそうはいかない。いかないけれど、本当にこれでいいのか。
そこで漸く気付く。
躊躇っているのは、他の誰でもなく俺だ。
躊躇っているから信じず本当に? と疑って止まない。それは彼に前科があるからだ、仕方無いと言えば仕方無い。
然し、躊躇し疑っていると露見したら、きっと殺られる。けれどそれは怖くはない。時間の問題だ。
敢えて恐れるとすれば、目的が達成されないこと。

白梅が情景から消え窓の外は等間隔で照らす無粋な人工灯だけがぼんやり明るい。可也離れたようだ。住み慣れ、見慣れた土地から。
裏切りを許さないなどと云えどもう、何人もの人を裏切って此処まで来ている。数えきれない裏切り、それは被っただけでなく与えたものも多く。
これは、これだけは。

「あんた夜目利きやせんよね」

「うるせぇな・・・お前よかきかないだけだよ」

「手ェ狂ったら殺しやすよ。・・・あ、その頃には俺死んでやすねィ。呪わなきゃ」

さらっと言うとあからさまに躯が跳ねて、苦笑してしまう。
これから死のうという人間が、それぐらいでびくついてどうする。


―――――俺を殺して、それからちゃんと一人で死ねるのか。


そんな度胸、あんたにはあるの。
訊いたって、あんたはいつものように誤魔化すんだ。

そろそろ近付く目的地。車は高速を降りて無人の二車線の道路を走る。

「・・・幽霊出そう」

「止めろよ」

「あ、・・・あれって、火の玉?」

「信じるな俺信じるな俺。嘘に決まってる。そう嘘嘘。ったく質悪いよ、お前」

寝る気は失せたのか彼は車窓からじぃっと暗闇を熟視る。真ん丸で褐色の、子どもの頃から変わらぬ瞳を流れていくのはありふれた、けれど漆黒に染まり非日常的な木々。
鮮やかな瞳、目に写るもの全てをそのまま反射させる様は水鏡のよう。

―――――生きたいというのなら、何だってしてやりたいけれど。

近頃見掛けなくなった鬱蒼とした木々に感慨を抱く彼の頼みなら。この“裏切り”を無かったことに今なら未だ出来る。
引き返すことは未だ不可能じゃない。

そうこうしている内に目的地へと着いた。見事に空車の駐車場、中程に車を停める。前の歩道を隠すように植えられている椿。右は赤く、左は白い。正面の椿は赤と白の斑模様で、これは椿ではなく山茶花と云うのだと聴いた覚えがある。
原動機を切ると静寂が刹那だけ広がり、波の音が控え目にこの風情を深愁なものにする。

強く吹く風に木々が揺れると、上空でも強風が吹いたのか月が姿を現した。
海浜公園故に此処からでも微かに、月光に揺れる水面が視界に入る。

「俺があんたを見張ってれば、姉上は安心出来るって、そう思ってたんです」

「総悟・・・」

「俺は、汚い」

「・・・」

厳粛な沈黙。取り繕うような波音。
そっと、足の上に乗せた手に手が覆い被さる。上着の中へ爪先が忍び込み、肌を這う。
けれどそれは、俺のではない肌の温もりを求めている。代替品など、無意味だと分かっているくせに。


―――――本当に、俺なんかで本当にいいのか。


視線で問うと真っ直ぐと揺るぎの無い目が俺を見返す。
もう、戻れない。
そう、強く伝わる。

「汚いのは俺も一緒だ。逃げてばっかいるくせに、諦めきれない、俺が悪い」

「あんたは未だマシでさ」

「そんなことねぇよ。お前らは・・・綺麗だ」

「・・・そういうあんたの性格、大嫌いでさァ」

苦々しく言えば彼は若干悲しそうに眉を寄せる。いつでもどんな時でも容姿端麗な彼は困った顔をしてもいつだって、絵になる。
腹立たしくて、憎らしくて。
月に照らされた顔から目線を反らし、車外へ出る。

後部座席の扉を開け、大事に布に巻かれた愛刀を取り出す。
共にくるまれていた見慣れたもう一本の刀はそっと座席の上に横たえさせる。
鞘からゆっくり、刀身を抜き出す。月に翳すと刃文が端荘に耀く。
もう、この相棒と共に闘うことは無い、絶対に。

「ごめんな・・・」

武士は武士らしく、腹を斬るべきなのだ。
なのに俺は、それを選ばなかった。
こんな俺、お前には相応しくないよ。もっといい男を見付けてくれ、と抜き身の刃に口付ける。
ひんやりとした感触にふっと笑み、元通りに仕舞うと彼も同じように別れを惜しんでいる様だった。

「その辺、見てみるか?」

「いや、いいでさァ」

二人して元の席に戻り、彼は懐から小刀を取り出す。
繊細な模様が施された、七宝の鞘に柄。それを感慨深く眺めた彼の横顔を見ていると視線交わる。

「さぁ、どうぞ。土方さん」

「・・・ああ」

嬉しく思う。
終わりに傍にいる人間に、俺を選んでくれたことを。
車窓を通した光が、彼女の形見を照らし出した。

拍手[1回]

PR

COMMENT

NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 

TRACKBACK

TrackbackURL

  

祝☆映画化

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

プロフィール

HN:
苑咲 早良
HP:
性別:
非公開

カウンター

ブログ内検索

アクセス解析

Copyright ©  -- 梅々 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by petit sozai emi / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]