梅々
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命日
- 2012/05/30 (Wed) |
- 沖土 |
- CM(0) |
- Edit |
- ▲Top
最近命日ラッシュですね。はからずとも日付だけは皆固まってる。
そんなわけで沖田さんの命日ですね。
お客さんが少なかったので、今日は予定より45分勤務時間が少なかった。仕方がない。
あと口座のお知らせが来ましたので通販の申し込みをしていただいた方にはこれからお知らせいたしますー!
大変お待たせしました。
そして拍手ありがとうございます!
では命日なので病ネタ。
そんなわけで沖田さんの命日ですね。
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では命日なので病ネタ。
ないものねだり
クスクス、聞こえた笑い声が一瞬昔愛した女性のものに聞こえて、はっと振り返った。けれどそれは錯覚で、彼女の弟が楽しげに笑っただけだった。
彼女の享年に追い付いたアイツは、何の因果か彼女と同じ病にかかった。腹だけでなく肺まで真っ黒になっちまった、なんてけたけた笑っていたアイツが、隣から消えて何ヵ月経っただろう。
俺が気づいたときには既に、手の施し用がなかった。苦しみを和らげ、僅かに病の進行を遅らせる、それしかできない状態になっていた。アイツは、心配かけないために、戦い続けるために、黙っていたのだろう。山崎も丸め込んで。
でも、と稀に思うことがある。アイツはこうなることを望んでいたんじゃないか。姉と、同じように死ぬことを。それはないと分かっている。刀を持った以上、畳の上ではなく、近藤さんのために、守るもののために死にたいと思っていたはずだ。しかしこれも憶測でしかない。アイツの考えを、気持ちを、分かったことは一度もない。アイツが分からせようとした時以外に。
一人で武州へ戻るという総悟を何とか引き止めて、屯所の離れに住まわせた。彼処へ入ることができるのは医者と、山崎だけだ。今、誰よりも一番アイツを知っているのは山崎だ。俺でも近藤さんでもない。その事実がなんとも腑に落ちず、アイツをこうして遠目から見るたびに、もっと近くでその顔を見たいと思う。
度々、アイツが好きだった菓子を山崎に持たす。その度に沖田さんが喜びます、と山崎が寂しそうに笑うのを見る。何でお前がそんな顔するんだ。純粋に疑問に思うが言葉には出来ない。何を言おうと、次に俺がアイツを間近で見られるのは完治したときか呼吸を止めたときのどちらかしかないのだ。
もう触れることも叶わない。声をかけることも、何も。じわじわと絶望が足元を掬っていく。目眩がしそうになった。
「副長」
「……山崎、どうした」
「俺より土方さんのが顔色が悪いから、あっち行けと言われまして」
やるせなさそうに山崎は、笑った。
俺が見ていたのと同じように、アイツも俺のことを見ていたのか。目を見張る俺に、ふと、山崎は溜め息を吐いた。
「俺ですら気付かなかったのに、沖田さんは一目見ただけで分かったんですね」
「……そうか」
「沖田さん、いつも副長のこと見てるんですよ。話だって、副長のこと話すと楽しそうにする」
傍にいる時間じゃないんですね、なんて。言われても俺は傍に居られるだけで羨ましいと思う。全て託されてしまった今、俺のエゴで会うわけにはいかないのだから。
俺の代わりに近藤さんを頼みまさァ。
最後にアイツがそう言ったときの声も表情も、俺の服を掴んだ指先の震えも、覚えている。忘れられない。真っ直ぐに俺を見る瞳はとてつもなく澄んでいて、全てを覆い隠すように穏やかだった。静かな微笑みさえ浮かべていたくせに、詰めが甘いのか故意なのか、指先の震えだけは、隠せていなくて。許されるのなら抱き締めたかった。
「……休む。何かあったら言え」
「はい。早く治してあげてください。沖田さんのために」
「あぁ」
部屋へ戻り、急ぎの書類がないことを確認してから横になる。熱っぽい、だからこそこんなに思考が纏まらないのだ。
こんな形で失うと、思っていなかった。ずっと隣にあり続けるものだと、そう思っていたのだ。根拠もなく、祈るように。
だが、会えなくてもいい、声を聞けなくてもいい。遠目にでもその姿を見ることができるならそれでいい。再び失う日が来ることを、考えたくない。
総悟、と久しく呼んでいない名を呟くと虚しく響いた。
クスクス、聞こえた笑い声が一瞬昔愛した女性のものに聞こえて、はっと振り返った。けれどそれは錯覚で、彼女の弟が楽しげに笑っただけだった。
彼女の享年に追い付いたアイツは、何の因果か彼女と同じ病にかかった。腹だけでなく肺まで真っ黒になっちまった、なんてけたけた笑っていたアイツが、隣から消えて何ヵ月経っただろう。
俺が気づいたときには既に、手の施し用がなかった。苦しみを和らげ、僅かに病の進行を遅らせる、それしかできない状態になっていた。アイツは、心配かけないために、戦い続けるために、黙っていたのだろう。山崎も丸め込んで。
でも、と稀に思うことがある。アイツはこうなることを望んでいたんじゃないか。姉と、同じように死ぬことを。それはないと分かっている。刀を持った以上、畳の上ではなく、近藤さんのために、守るもののために死にたいと思っていたはずだ。しかしこれも憶測でしかない。アイツの考えを、気持ちを、分かったことは一度もない。アイツが分からせようとした時以外に。
一人で武州へ戻るという総悟を何とか引き止めて、屯所の離れに住まわせた。彼処へ入ることができるのは医者と、山崎だけだ。今、誰よりも一番アイツを知っているのは山崎だ。俺でも近藤さんでもない。その事実がなんとも腑に落ちず、アイツをこうして遠目から見るたびに、もっと近くでその顔を見たいと思う。
度々、アイツが好きだった菓子を山崎に持たす。その度に沖田さんが喜びます、と山崎が寂しそうに笑うのを見る。何でお前がそんな顔するんだ。純粋に疑問に思うが言葉には出来ない。何を言おうと、次に俺がアイツを間近で見られるのは完治したときか呼吸を止めたときのどちらかしかないのだ。
もう触れることも叶わない。声をかけることも、何も。じわじわと絶望が足元を掬っていく。目眩がしそうになった。
「副長」
「……山崎、どうした」
「俺より土方さんのが顔色が悪いから、あっち行けと言われまして」
やるせなさそうに山崎は、笑った。
俺が見ていたのと同じように、アイツも俺のことを見ていたのか。目を見張る俺に、ふと、山崎は溜め息を吐いた。
「俺ですら気付かなかったのに、沖田さんは一目見ただけで分かったんですね」
「……そうか」
「沖田さん、いつも副長のこと見てるんですよ。話だって、副長のこと話すと楽しそうにする」
傍にいる時間じゃないんですね、なんて。言われても俺は傍に居られるだけで羨ましいと思う。全て託されてしまった今、俺のエゴで会うわけにはいかないのだから。
俺の代わりに近藤さんを頼みまさァ。
最後にアイツがそう言ったときの声も表情も、俺の服を掴んだ指先の震えも、覚えている。忘れられない。真っ直ぐに俺を見る瞳はとてつもなく澄んでいて、全てを覆い隠すように穏やかだった。静かな微笑みさえ浮かべていたくせに、詰めが甘いのか故意なのか、指先の震えだけは、隠せていなくて。許されるのなら抱き締めたかった。
「……休む。何かあったら言え」
「はい。早く治してあげてください。沖田さんのために」
「あぁ」
部屋へ戻り、急ぎの書類がないことを確認してから横になる。熱っぽい、だからこそこんなに思考が纏まらないのだ。
こんな形で失うと、思っていなかった。ずっと隣にあり続けるものだと、そう思っていたのだ。根拠もなく、祈るように。
だが、会えなくてもいい、声を聞けなくてもいい。遠目にでもその姿を見ることができるならそれでいい。再び失う日が来ることを、考えたくない。
総悟、と久しく呼んでいない名を呟くと虚しく響いた。
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