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梅々

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モンブラン

結局バレンタイン中にはアップできなかった。ロスタイムです。私はまだ今日をリセットしていない、一繋ぎだ終わっていない。





というわけでバレンタインネタ沖←土。
個人的には沖土だけど土沖でも全然いけますね。















いつまでも眩しいままで、綺麗なままで、難攻不落なお前を愛してる。





Mont Blanc




 やっとの思いで見廻りを終え、屯所へ戻る。車の中に大量にあるチョコの類いは見ないふりをして、紙袋ひとつを持ち門をくぐりブーツを脱ぐ。
 バレンタインなどに踊らされている人間を見ているとあほらしくなってくる。ただでさえ甘いものが嫌いなのに町中甘ったるい匂いがし、辺りは赤やピンク色に煌めきハートの乱舞。チョコレートがなんだ。今日この日のせいで俺は、チョコレートが大嫌いだ。きゃーきゃー寄ってくる女共は此方の気持ちも考えずチョコを押し付けてくる。それが嫌だから、なんて私情を仕事に持ち込むのは気に食わず見廻りをいれるが、一々呼び止められ車を使っているってのに通常の数倍時間がかかる。
 擦れ違う隊士に挨拶をし、タイミングよく通りかかった山崎に車の積み荷をどうにかするよう頼む。そうしてから、総悟の部屋の前へ。
 総悟は、毎年この日は有給を使う。討ち入りなど重要な仕事がある場合は勿論そんなもの使いやしないが、バレンタインだからという理由で一日中引きこもるのだ。賢い選択だと思う。どうせ外へ出ても仕事になりゃしない。来年はこうなったら内勤のみにしようかなどと思いつつ、開けるぞと声をかけ障子を開ける。

「あぁ、土方さん。お帰りなせェ」
「おう。これ、おまえの分な」

 寝そべり、ゲームをしていた総悟が振り向く。畳に置いた紙袋を見て白地に眉を寄せた。障子を閉めようと振り返り、部屋の角の山に目がいく。色とりどり、大小様々な箱が山を作っている。その光景に引くが俺の部屋もそうなのだろう。例年通り。そんなにいらないっつうの。寧ろひとつもいらない。

「これで暫くは間食に困りやせんね」
「俺の分もやろうか」
「だったらはなっから貰わなきゃいいのに。八方美人ですかィ」

 ただ純粋にからかわれチクリと、胸が痛む。
 煙草を探すふりをして胸を擦る。物理的には何もないのだ、精神的に痛いだけで。ついでに煙草も取り出すと総悟は嫌そうな顔をする。火をつけると溜め息を吐いた。

「まぁくれんなら貰いやす」
「あいよ。持ってくんのめんどくせぇから取りに来い」
「食うとき行きまさ」
「腐る前にな」

 会話は終わりふぅと紫煙を吹く。前に持ち込んでそのままな灰皿を総悟が投げて寄越した。
 付き合ってるみたいだと、ふと思った。今度は自分の考えが痛い。
 何で俺は、こんな奴を。飽きることなく何度も繰り返した自問をまたする。最近自ずと出た答えは、こんな奴だからと言うもので、相当俺は参っているらしい。
 知らぬが仏とはよく言ったものだ、何も気付かなければ良かったのだ、知らなければこんな面倒なことにはならなかった。こんな風に話もないのに長居することもなかっただろう。
 総悟は、何故追い出さないのだろうか。長居するなとか、さっさと部屋へ戻れと言いそうなものなのに。そうだ、そもそもいま俺が勘違いしかけたのも総悟が追い払わず灰皿を寄越したからであって。意味が分からない。
 チョコをもらうから少しくらいいても煙草吸っててもいいか、許してやろうとかそんな風に思っているのだろうか。あり得る。
 それか、ずっと引きこもっていたから暇潰しに俺をからかおうだとかそんなものなのだろう。
 ちらりと時計を見る。17時過ぎ。雨天で外は青い。気分が天気に引きずられることはないが、低気圧により偏頭痛がするのは辛い。

「頭いてぇ」
「雨ですもんねェ」
「お前は平気なのかよ」
「薬飲みやしたし」

 総悟も偏頭痛持ちになったのはミツバが死んだ頃だった。思いっきり心的要因に引き摺られている、そんな弱さを垣間見てほっとしたのも共通項に何とも言えない気持ちになったのも、胸の中に仕舞い込んでそのままだ。

「薬、飲みやすか」
「あー。もらう」
「そこの机の上でさ」

 ストレスの元は早めに摘み取るべきだ。薬がききにくい体質であるが飲むだけで気の持ち用は変わる。
 飲んだままなのだろう、置いてある錠剤とペットボトルを手に取り、煙草を灰皿に置いてから呑む。間接キスだ、なんて青臭いことを思ったのは一瞬。
 好きだ。
 チョコに託すのは容易い。女ならば。俺は、それから程遠い。
 この距離であり続ければいい。大それたことなど望まない。このままの距離で、このままの関係で。一歩踏み出すことも、気持ちを押し付けることもしたくはない。
 このまま傍にいるのは精神的によろしくない。そう直感して俺は、現実と向き合うことにする。書類とチョコ、どちらが多いか。

「書類やっかな」
「じゃあ土方さんの邪魔しに行こうかなぁ」
「来んな」
「ケチ」

 のそのそ起き上がる様に、本当に来ないでくれと思いながら喜ぶ俺もいる。我ながら面倒臭い。
 じっと見る俺に、ゲームから視線上げてへへっと笑った顔は昔から変わらない。
 変わっちまったのは俺だけだ。俺だけがこんな汚い感情を持っている。申し訳なさが生まれると同時に軋んだ胸を押さえつつ、雨音のする部屋の外へ足を踏み出した。


(俺はこのまま踏み出せず立ち竦んでいるというのに)

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