梅々
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やっぱり沖田が好き
さっちゃんかわいかったさっちゃん。
あと人気投票の結果だけ立ち読みしました。五位までと新八しかしらない。
とりあえず170cm!と五位以上ドSばっかりな事実と沖田・・・´・ω・`
ショックなのか沖田最下位妄想が止まらないです。
拍手たくさん、ありがとうございます!とても嬉しいです^^
それではスランプ気味ですが漸くとしたん。
沖土チックで、少女漫画チックで無駄に長いです。
あと人気投票の結果だけ立ち読みしました。五位までと新八しかしらない。
とりあえず170cm!と五位以上ドSばっかりな事実と沖田・・・´・ω・`
ショックなのか沖田最下位妄想が止まらないです。
拍手たくさん、ありがとうございます!とても嬉しいです^^
それではスランプ気味ですが漸くとしたん。
沖土チックで、少女漫画チックで無駄に長いです。
魔法が溶けても、いい
夢は夢のまま
馬車に南瓜
プレゼントをやりまさァ。真夜中にそう言いながら総悟が部屋に来た。近藤さんのくれた有休のお陰で書類は片付いて、夕食と共に宴会もして。今年もたくさんのマヨネーズをもらい満足していたところだった。
総悟に祝われたことはない。昔から、ずっと。武州にいた頃は、姉の手前渋々花を摘んできてくれたりしたが、それもほんの二三回だ。心は込もってなかろうと貰えただけ有り難く思っている。それなのに、今になって。
布団を敷く手を止める。時計を見れば夜十一時半、そろそろ俺の誕生日も終わろうとしている。
「何だ」
「ついてきてくだせぇ」
言うや否や、再び部屋を出ていこうとする総悟に呆れながらもついていく。煙草と刀だけは、手に持って。
気付けば総悟は隊服のままなのだった。普段なら疾うに私服に着替えている時間帯だ。宴会も終わった今、寝汚い総悟のことだから寝ていてもおかしくないのに。
てっきり総悟の部屋に向かうものだと思っていたが予想はあっさりと裏切られた。部屋の前は通りすぎ、廊下をずんずん進み、玄関へ着く。そして総悟はブーツに足を食ませた。
ここで漸く、おかしいだろと思う。
「ちょっと待て」
「なんでさァ」
「どこ行くんだ」
「外ですぜ」
「なんで」
「・・・別に、いらねっつうんなら、来なくて良いですけど」
片方の足だけ革靴を履いて、総悟はまっすぐに俺を見る。どうするんだ、と目で問われた。柳眉が寄せられ、眉間にしわができている。
総悟が部屋に来たとき。もしかしたらプレゼントという名のバズーカの一発や二発を食らうかもしれないと思った。ついてこい、と言われて、トラップがしかけられているかもしれないと思った。だが。こんな顔をされてしまうと疑いづらくなる。たとえプレゼントがただの攻撃にすぎなくとも、一応俺の誕生日に託つけてくれるのならそれでいい。自発的に、何かをしてくれるだけで。
進歩だ。
「・・・行く」
「んじゃあ、さっさと来なせェ」
もう一方の足もブーツに突っ込んだ総悟に続き、草履を突っ掛ける。カラカラ、戸を開けると寒さに身が震えた。気温はいいのだが、風がまだ少し、つめたい。三寒四温は春が来るまでのものだと思っていたが、春も過ぎ初夏に入ろうとしているいまもまだ、続くものらしい。
腕を擦りながら空を見上げる。屋根より高く、船が空を泳いでいる。餓鬼の頃は、こんな光景を見ることになると思わなかった。屋根より高く空を泳ぐのは、鯉のぼりと雲だけだった。
チャリ、鍵がぶつかる音が静かな夜道に響く。運転席に総悟が座るのを横目に、助手席に腰かけた。
「何処行くんだ?」
「秘密でさァ。まぁ、すぐ着きやすが」
悪戯に笑った顔がすぐに、真面目な顔に変わる。
そんな表情が、好きだと思った。綺麗だと。言えはしないから心の中で呟き窓を開ける。夜風は冷たい。熱った頭を冷やすぐらいは役に立つだろう。煙草を取り出し窓枠に肘を付く。チラリ、総悟が此方を一瞥した。
見てくれだけは最高級である。非の打ち所がない美貌だ。本人からしたら童顔だの男らしくないだの、不満はあるだろうが、形容し賛美するのも馬鹿らしくなるような面をしている。これは先天的なものだ。
その顔と、剣の腕だけは無条件で認めている。なんだかんだ言って、刀にかける愛情は俺以上のものだ。周りに悟らせないけれど手入れも欠かさないし、鍛練もこっそりと行っている。才能もあるのだろうけれど、これは後天的なものであると俺は思っている。総悟自身の努力だ。
近藤さんへの信仰にも似た直向きな想いには、正直閉口している。俺も似たようなものであると、自覚はしているがここまで盲目的ではない。
見回りのルートにもある、見知った道を左折して知らない道に入る。屯所からさして離れてはいないが、通ったことはなかったと仕事柄左右の建物を記憶していると車が止まった。
「ここでさァ」
「・・・え、」
視線を前に向ける。そこには小さな公園があった。ブランコ、シーソー、滑り台。在り来たりな、けれど幼い頃に遊んだ覚えのないそれらに、加え。
メリーゴーランドが公園の中央で回っていた。しょぼい電灯が遊具を地味に彩る中、それだけがキラキラと輝いている。光がチカチカ闇にぼやける。
無言で下りた総悟の横に並ぶ。メリーゴーランドを見るのは、松平の娘のデートを邪魔しに行ったとき以来だ。それ以外ではガキの頃、一度だけ家族で遊園地に行き乗ったことがある程度。いずれも馬車で、馬には乗ったことがない。松平に連れていかれたときの、あれが総悟の人生初のメリーゴーランドだったんじゃないか、と思ったが自分も似たようなものだ。
「さ、土方さん。乗りなせぇ」
「え?」
「穴場ですぜ、此処。周りに誰もいねぇから見られる心配もないし」
言いながら総悟は俺の手を引いた。冷たい指先が俺の手を包み、きゅうっと引っ張る。胸がドキドキする。たったこれだけで心臓が騒ぎ出すとはさすがに総悟には言えない。誰にも言えない。
恋をしているらしい。俺は、総悟に。それも幼稚で笑い出したくなるほどに純粋なものを。見てくれと剣の腕以外文句なしに誉められるところがない、総悟に。
柵を開け、総悟は俺を馬の前に立たせた。白い瞬きをしない作り物の馬は、大きめのサイズだ。俺が乗っても足が地面につかないほど高さがあるだろう。公園の中にあるものだから、てっきりもっとちゃちいものだと思っていたのだが意外なことに丈夫そうだし中々凝った作りだ。
「・・・ね、乗りなせェ」
「なんで」
「思い出をプレゼントしてやりてぇんでさァ、アンタに」
「メリーゴーランドにいい年して一人で乗った思い出なんざいらねぇんだけど」
「じゃあ一緒に乗れば文句はねぇんですかィ」
何故そうなると、即座に突っ込める程純粋じゃない。一緒に、の意味を深読みした大人な俺は、音さえ発せずに総悟を見た。一度間が空けば取り繕うのもおかしい。そのまま無言でいれば、ふっと総悟が笑ったように、見えた。
よいしょ、おっさんくさい声を発しながら総悟は馬の上に飛び乗った。そして徐に、手を差し出してくる。
「・・・着流しだからきついんだけど」
「誰も見やしねぇし、横座りでも」
どうしてそこまでして乗らせたいんだ、文句を言いかけたら早くしないと回りだしやすぜと阻まれた。
渋々、差し出された手に掴まれば軽々と俺が乗れるよう、手を引いて。
昔は、否今も変わらず。俺は総悟を肩車してやることもおぶることも、やったことはないが抱き抱えることもできる。だが総悟は当たり前のことながら、昔は俺を抱き抱えることなんかできず、俺を引っ張ることも押すこともできなかったわけで。それがこうも易々と、腕一つで俺を引っ張り上げて。オヤジだなんだ、揶揄われても仕方ないと思うぐらいに郷愁が胸を包んだ。
結局俺は横座りで馬に乗ることになって。貸しきりのメリーゴーランドがゆるり、動き出す。
「・・・これ端から見たら寒い光景だろうな」
「誰も見てねぇから寒くなんてねぇですぜ」
一定の速度で視界は流れ、一定のリズムで馬が上下に動く。節電を叫ぶこの時代に、貸し切りで乗っているとは本当に色々と軽視しすぎている。それと、常識も。
真選組副長、それと斬り込み隊長の二人が仲良くメリーゴーランドに乗っている。記事になったら一面に載れるのではないか。載ったなら死にたい。
そう、ごちゃごちゃと考え込むのは悪い癖だと近藤さんによく言われる。チラリ、繰り返す景色から視線を反らして横に座る総悟を見る。何もなくても煌めく硝子玉のような瞳は、幻想的なメリーゴーランドの光に輝きをより増して、溶け込みそうな不思議な色になっている。
コイツになら殺されていいと、思うことがある。総悟なら迷いも何もなく、一撃で息の根を止めてくれるだろう。それに、最期に見るのが総悟というのも、満更悪くはない。叶わない、ことなのだが。
「土方さん」
「あんだよ」
「日付が変わりまさァ」
くるくる、貸しきりのまま回るそれから、公園内にある時計が見えた。暗くぼやけてはいるが、そろそろ十二時を迎えようとしているらしい。
確かに、思い出にはなったけれど。総悟は何をしたかったのだろうか。メリーゴーランドに乗った思い出なんかあってもと、思ってしまう。
「プレゼントでさァ」
「え、・・・っん」
至近距離にあった顔が近づいた。総悟の瞳の、光彩が見える距離。唇が、触れて。
それは一瞬で、離れた途端、あれほどまでに煌めいていた光がふっと消えた。馬車も止まったがそのままに、息を飲んで総悟を見る。
月明かりに見える総悟の顔は言葉を待っているようだった。
「な、にしやがる」
「悪戯でさ。忘れらんねぇ、思い出でしょう?」
「・・・」
皮肉を込めそんな風に総悟は言うが。良い意味で俺は忘れられない。望んだものだったからだ。二度と得られない、口付け。
ある意味皮肉だ。
先に総悟は降りて、日付変わっちまったけど、と煙草を一箱、投げて寄越した。そしていつも通りニヤニヤ、笑う。
「期待したわりには何にもなかっただろィ?」
「いや、」
これ以上ないぐらいのものを得た。
ありがとな、それだけ言って煙草を懐に入れ、頭をぽんぽんと撫でる。手触りを楽しんでいると見慣れたバズーカの銃口が目の前に現れた。
夢は夢のまま
馬車に南瓜
プレゼントをやりまさァ。真夜中にそう言いながら総悟が部屋に来た。近藤さんのくれた有休のお陰で書類は片付いて、夕食と共に宴会もして。今年もたくさんのマヨネーズをもらい満足していたところだった。
総悟に祝われたことはない。昔から、ずっと。武州にいた頃は、姉の手前渋々花を摘んできてくれたりしたが、それもほんの二三回だ。心は込もってなかろうと貰えただけ有り難く思っている。それなのに、今になって。
布団を敷く手を止める。時計を見れば夜十一時半、そろそろ俺の誕生日も終わろうとしている。
「何だ」
「ついてきてくだせぇ」
言うや否や、再び部屋を出ていこうとする総悟に呆れながらもついていく。煙草と刀だけは、手に持って。
気付けば総悟は隊服のままなのだった。普段なら疾うに私服に着替えている時間帯だ。宴会も終わった今、寝汚い総悟のことだから寝ていてもおかしくないのに。
てっきり総悟の部屋に向かうものだと思っていたが予想はあっさりと裏切られた。部屋の前は通りすぎ、廊下をずんずん進み、玄関へ着く。そして総悟はブーツに足を食ませた。
ここで漸く、おかしいだろと思う。
「ちょっと待て」
「なんでさァ」
「どこ行くんだ」
「外ですぜ」
「なんで」
「・・・別に、いらねっつうんなら、来なくて良いですけど」
片方の足だけ革靴を履いて、総悟はまっすぐに俺を見る。どうするんだ、と目で問われた。柳眉が寄せられ、眉間にしわができている。
総悟が部屋に来たとき。もしかしたらプレゼントという名のバズーカの一発や二発を食らうかもしれないと思った。ついてこい、と言われて、トラップがしかけられているかもしれないと思った。だが。こんな顔をされてしまうと疑いづらくなる。たとえプレゼントがただの攻撃にすぎなくとも、一応俺の誕生日に託つけてくれるのならそれでいい。自発的に、何かをしてくれるだけで。
進歩だ。
「・・・行く」
「んじゃあ、さっさと来なせェ」
もう一方の足もブーツに突っ込んだ総悟に続き、草履を突っ掛ける。カラカラ、戸を開けると寒さに身が震えた。気温はいいのだが、風がまだ少し、つめたい。三寒四温は春が来るまでのものだと思っていたが、春も過ぎ初夏に入ろうとしているいまもまだ、続くものらしい。
腕を擦りながら空を見上げる。屋根より高く、船が空を泳いでいる。餓鬼の頃は、こんな光景を見ることになると思わなかった。屋根より高く空を泳ぐのは、鯉のぼりと雲だけだった。
チャリ、鍵がぶつかる音が静かな夜道に響く。運転席に総悟が座るのを横目に、助手席に腰かけた。
「何処行くんだ?」
「秘密でさァ。まぁ、すぐ着きやすが」
悪戯に笑った顔がすぐに、真面目な顔に変わる。
そんな表情が、好きだと思った。綺麗だと。言えはしないから心の中で呟き窓を開ける。夜風は冷たい。熱った頭を冷やすぐらいは役に立つだろう。煙草を取り出し窓枠に肘を付く。チラリ、総悟が此方を一瞥した。
見てくれだけは最高級である。非の打ち所がない美貌だ。本人からしたら童顔だの男らしくないだの、不満はあるだろうが、形容し賛美するのも馬鹿らしくなるような面をしている。これは先天的なものだ。
その顔と、剣の腕だけは無条件で認めている。なんだかんだ言って、刀にかける愛情は俺以上のものだ。周りに悟らせないけれど手入れも欠かさないし、鍛練もこっそりと行っている。才能もあるのだろうけれど、これは後天的なものであると俺は思っている。総悟自身の努力だ。
近藤さんへの信仰にも似た直向きな想いには、正直閉口している。俺も似たようなものであると、自覚はしているがここまで盲目的ではない。
見回りのルートにもある、見知った道を左折して知らない道に入る。屯所からさして離れてはいないが、通ったことはなかったと仕事柄左右の建物を記憶していると車が止まった。
「ここでさァ」
「・・・え、」
視線を前に向ける。そこには小さな公園があった。ブランコ、シーソー、滑り台。在り来たりな、けれど幼い頃に遊んだ覚えのないそれらに、加え。
メリーゴーランドが公園の中央で回っていた。しょぼい電灯が遊具を地味に彩る中、それだけがキラキラと輝いている。光がチカチカ闇にぼやける。
無言で下りた総悟の横に並ぶ。メリーゴーランドを見るのは、松平の娘のデートを邪魔しに行ったとき以来だ。それ以外ではガキの頃、一度だけ家族で遊園地に行き乗ったことがある程度。いずれも馬車で、馬には乗ったことがない。松平に連れていかれたときの、あれが総悟の人生初のメリーゴーランドだったんじゃないか、と思ったが自分も似たようなものだ。
「さ、土方さん。乗りなせぇ」
「え?」
「穴場ですぜ、此処。周りに誰もいねぇから見られる心配もないし」
言いながら総悟は俺の手を引いた。冷たい指先が俺の手を包み、きゅうっと引っ張る。胸がドキドキする。たったこれだけで心臓が騒ぎ出すとはさすがに総悟には言えない。誰にも言えない。
恋をしているらしい。俺は、総悟に。それも幼稚で笑い出したくなるほどに純粋なものを。見てくれと剣の腕以外文句なしに誉められるところがない、総悟に。
柵を開け、総悟は俺を馬の前に立たせた。白い瞬きをしない作り物の馬は、大きめのサイズだ。俺が乗っても足が地面につかないほど高さがあるだろう。公園の中にあるものだから、てっきりもっとちゃちいものだと思っていたのだが意外なことに丈夫そうだし中々凝った作りだ。
「・・・ね、乗りなせェ」
「なんで」
「思い出をプレゼントしてやりてぇんでさァ、アンタに」
「メリーゴーランドにいい年して一人で乗った思い出なんざいらねぇんだけど」
「じゃあ一緒に乗れば文句はねぇんですかィ」
何故そうなると、即座に突っ込める程純粋じゃない。一緒に、の意味を深読みした大人な俺は、音さえ発せずに総悟を見た。一度間が空けば取り繕うのもおかしい。そのまま無言でいれば、ふっと総悟が笑ったように、見えた。
よいしょ、おっさんくさい声を発しながら総悟は馬の上に飛び乗った。そして徐に、手を差し出してくる。
「・・・着流しだからきついんだけど」
「誰も見やしねぇし、横座りでも」
どうしてそこまでして乗らせたいんだ、文句を言いかけたら早くしないと回りだしやすぜと阻まれた。
渋々、差し出された手に掴まれば軽々と俺が乗れるよう、手を引いて。
昔は、否今も変わらず。俺は総悟を肩車してやることもおぶることも、やったことはないが抱き抱えることもできる。だが総悟は当たり前のことながら、昔は俺を抱き抱えることなんかできず、俺を引っ張ることも押すこともできなかったわけで。それがこうも易々と、腕一つで俺を引っ張り上げて。オヤジだなんだ、揶揄われても仕方ないと思うぐらいに郷愁が胸を包んだ。
結局俺は横座りで馬に乗ることになって。貸しきりのメリーゴーランドがゆるり、動き出す。
「・・・これ端から見たら寒い光景だろうな」
「誰も見てねぇから寒くなんてねぇですぜ」
一定の速度で視界は流れ、一定のリズムで馬が上下に動く。節電を叫ぶこの時代に、貸し切りで乗っているとは本当に色々と軽視しすぎている。それと、常識も。
真選組副長、それと斬り込み隊長の二人が仲良くメリーゴーランドに乗っている。記事になったら一面に載れるのではないか。載ったなら死にたい。
そう、ごちゃごちゃと考え込むのは悪い癖だと近藤さんによく言われる。チラリ、繰り返す景色から視線を反らして横に座る総悟を見る。何もなくても煌めく硝子玉のような瞳は、幻想的なメリーゴーランドの光に輝きをより増して、溶け込みそうな不思議な色になっている。
コイツになら殺されていいと、思うことがある。総悟なら迷いも何もなく、一撃で息の根を止めてくれるだろう。それに、最期に見るのが総悟というのも、満更悪くはない。叶わない、ことなのだが。
「土方さん」
「あんだよ」
「日付が変わりまさァ」
くるくる、貸しきりのまま回るそれから、公園内にある時計が見えた。暗くぼやけてはいるが、そろそろ十二時を迎えようとしているらしい。
確かに、思い出にはなったけれど。総悟は何をしたかったのだろうか。メリーゴーランドに乗った思い出なんかあってもと、思ってしまう。
「プレゼントでさァ」
「え、・・・っん」
至近距離にあった顔が近づいた。総悟の瞳の、光彩が見える距離。唇が、触れて。
それは一瞬で、離れた途端、あれほどまでに煌めいていた光がふっと消えた。馬車も止まったがそのままに、息を飲んで総悟を見る。
月明かりに見える総悟の顔は言葉を待っているようだった。
「な、にしやがる」
「悪戯でさ。忘れらんねぇ、思い出でしょう?」
「・・・」
皮肉を込めそんな風に総悟は言うが。良い意味で俺は忘れられない。望んだものだったからだ。二度と得られない、口付け。
ある意味皮肉だ。
先に総悟は降りて、日付変わっちまったけど、と煙草を一箱、投げて寄越した。そしていつも通りニヤニヤ、笑う。
「期待したわりには何にもなかっただろィ?」
「いや、」
これ以上ないぐらいのものを得た。
ありがとな、それだけ言って煙草を懐に入れ、頭をぽんぽんと撫でる。手触りを楽しんでいると見慣れたバズーカの銃口が目の前に現れた。
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