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梅々

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おめでとう!

バイト探してたらこんな時間!
今日受けたの受かるかな!





それでは遅くなりましたが沖土おきたん!
エロ…いりますかね?
ちゅうしてるだけです。おめでとう!















たった一言にも愛があふれて




くろあげはちょう





 宴会を途中で抜けてごろり、静かな自室で横になる。一応俺が主役であるけれど飲めや騒げやのどんちゃん騒ぎに主役だなんだは関係ないだろう。いい加減眠気を感じて行灯を灯しただけで枕にして頭を預ける。
 あと数十分で十九になる。無事に誕生日を迎えられたとぼんやり思ってそれから、付き合い始めてそろそろ一年が経つなと思った。付き合い始めて、というか押し倒してからなのだけれど。去年の誕生日過ぎに押し倒して、それからずるずると二日に一回ぐらいしているけれど中々飽きない。あの人も妥協というものを知らないのかいまでも拒んで、そのくせ最後は一緒に達する。気持ち良いなら嫌がらなければいいのに。体が順応したから、そんな反応するだけなのか。嫌われていても仕方ないことをしている自覚はあるけれど嫌われていないのは知っている。あの人は本当に俺に甘い。
 瞼を閉じてうとうとしかけると僅かに木の軋む音がした。床の鳴き声が段々と近づいてきて、耳に馴染みのある足音に変わる。
 こんな夜更けに仕事の話だろうか。さっき見たときは結構飲んでいるみたいだったけれど。酔った土方さんは可愛いけれど仕事の話になるとねちねちしてとても煩くなる。プレゼントを渡しに、なんてことはないだろう。土方さんは変なところ気障だから前日に渡すのとか、あまり好きではない。
 俺には許可を得てから入室しろとか言ってくるくせに名前を呼びながら障子を開けて、ズカズカ枕元へ向かってくる。

「総悟」

「俺ァ眠たいんで明日にしてくだせぇ」

「別に仕事の話じゃねぇから」

 どすん、傍に腰かけたのが分かって俯せのままそちらに顔を向ける。偉そうに胡座をかいて腕を組む土方さんと目が合う。珍しく煙草を咥えていないのは酔ってそれどころじゃないからか。目は元からだが据わっていて、縁が赤い。色っぽい顔してるなぁと見上げていると総悟、と呼ばれた。それでも動かずにいると酔っ払いらしく手加減なしで頭を叩かれて渋々、起き上がってやる。なんですかィ、言いながら叩かれた頭がじんじんとして片手で擦っているといきなり胸ぐらを掴まれた。そのままぐいと引っ張られて乱暴に唇を塞がれる。
 土方さんからなんて初めてじゃないか。ぱちぱち瞬きしながら甘受していると唇を割って舌が入ってきた。経験値の差か天性の才能か、キスのうまさは土方さんのほうが上だからなすがままに任せてやる。今は眠気が勝っているから押し倒したいとも思わない。

「ん、」

 仕掛けてるのは土方さんのくせに応えてやれば眉を寄せて声をあげた。それにゾクリ、背筋が震えて絡められる舌に噛みつけばより艶っぽい顔をした。一度唇が離れる。荒い息を濡れた唇から逃す様に、吸い込まれるように唇を寄せた。
 ほんの数秒前まではただただ眠たいだけだったのに。今はそれが嘘みたいに土方さんがほしい。吸って吸われて噛んでしゃぶられて。やけに積極的な土方さんに負けじと胸ぐらを掴み返して脇腹を撫でてやれば引き締まった体が逃げる。
 ちゅぷん、糸を繋いだ唇も逃げてしまい、詰まらないものだと視線を投げる。そもそも一体どうして、キスしてきたりしたのか。

「どうしたんですかィ土方さん」

「別に」

 そこではたと気が付いた。眠気はもう俺の中にはなく、唇が離れたのが残念だと思っている。押し倒したいぐらいに欲情しているわけではないが、今日はこのまま一緒に寝たいと思うぐらいには、土方さんがほしい。
 こうやって、傍にいるといつも土方さんが欲しくなっていて。離れているときに欲しいなぁと思うことはあまりないのに。

「…俺からキスしちゃいけねぇのかよ」

「初めてだから裏があんじゃねぇかと」

「おまえじゃあるまいし」

 言ってぷいとそっぽを向く。拗ねた様子におやまぁ可愛いなぁと眺めてどれだけ俺は信用がないのかについて、考える。常日頃から命狙っていればそれは仕方がないだろうと思うけれど、それならこの人はどうして、俺の相手をしてくれるのか。俺には剣の腕と男らしくなく姉上に似ているこの顔ぐらいしかない。他には何にもないのに。そもそも顔だって好きじゃない。姉上に似ていることは誇らしいけれど男らしさには程遠い。俺はいつになったら男らしくなれるのかなんて、考えている限りなれないのは知っている。

「土方さん」

「ん」

 呼びながら唇を奪えば低い声がくぐもった。
 俺は土方さんがほしい。蝶の標本みたいにピンを刺して動けなくしたいぐらい。でも俺が好きなのは近藤さんを思う土方さんだから、そんな風にできても嬉しくないし。結局中途半端に求めるしかできないから焦れったい。
 何度も角度を変えてキスしていると土方さんの腕が背中に回った。垂れかかるようにして求めてくる。それが地味に嬉しい。

「…総悟」

「へい」

「おまえ、何が欲しい?」

 まるで甘えるように肩に額を乗せ土方さんが聞いてきた。珍しい仕草だと思いながら、視界に映る黒髪をまじまじと見る。
 欲しいものは、どう考えても手に入らないものばかりだ。例えばと、例を上げるのも馬鹿馬鹿しくなるくらい。
 だから茶化して言ってみる。

「髭とか肩幅とか、筋肉ですかねィ」

「無理に決まってんだろ」

「聞いたなら責任取って持ってきなせェよ」

「おまえはかぐや姫か」

 別に俺が欲しいわけではないくせに、なんてつまらないことを言おうとして止める。かぐや姫はいい見てくれのお陰で好かれて、五人の野郎に無茶を言って一人の男をふり天へ帰る。誰のものにもなろうとせずただ一つだけを見る、それは土方さんに似ている気がする。
 ガキの頃からずっと俺は、この人の背中を追って追い抜きたくて、その視界に入りたくて堪らなかったような気がする。今は昔ほどがむしゃらじゃなくなったけれど性懲りもなくまだ、諦めてはいない。

「一緒に寝なせェ」

「は」

「そんでいいでさ。プレゼント」

 ぽかんと呆けた顔に俺が惚けそう。好きになるんじゃなかったと何度目か分からない本気ではない後悔をして、端によって布団に横たわる。
 蝶にでもなれば、その視界に入ってアンタの意識を俺に向けさせることができるのか。それなら蝶になりたい。だからそのため、今は醜く這いずって。
 時計を見ればそろそろ日付が変わろうかという時間帯。お祝いは?とのそのそ布団に入ってきた土方さんに問えばまだ酔いの醒めぬ顔でじとりと睨まれた。

「まだ日付変わってねぇ」

「ロマンチストでさァね、アンタは」

「…ってか」

 ヤらなくていいのかよ。
 ぼそりと言われて呼吸が止まった。えっ、と思わず漏らせば不覚だとでも言うように背を向けられる。
 本当はちょっとでもアンタが俺を気に掛けてくれている、とかだったなら。
それが何にも変えられないプレゼントだ。

「おめでとう、総悟」

「ん、ありがとうごぜぇやす」

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