梅々
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(no subject)
土沖沖田朝帰りネタ。
背中合わせ
出来る限り音を立てないようにドアノブを回した。鍵がかかっていないのにほっとしつつ罪悪感に胸を痛めつつ、静かにドアを開ける。寝起きドッキリもめじゃないサイレント具合。
内側から鍵をかけて靴を脱ぐ。脱いだそれを揃えて立ち上がり振り返って、体が跳ねた。
同居人がリビングの入り口に立っている。腕を組んで此方を向いて。リビングもどこも電気がついていない。一晩中待っていた、とかではなくてたまたま起きてしまったのだと思いたい。
何か言わなきゃ、思って声を絞り出す。
「ただいま」
「おかえり」
互いに平坦な声だ。だが俺は言葉がでないぐらいに緊張しているからなのに対して土方さんは恐らく、言いたいことも感情も押し隠しているからだ。できることなら飛び出して逃げてしまいたい。でもそれじゃあ何の解決にもならない。
何食わぬ顔で通り過ぎようと歩みを進める。小さな足音すら響いて、刻一刻と後ろめたさが募る。横を通っても何も言わないし何もされない、でも土方さんのことだからと身構えたら案の定、通り過ぎた後に腕を掴まれた。
「今何時か分かってるか」
「三時半ぐらいでしょう」
「連絡しねぇでどこほっつき歩いてた」
「遅くなるって電話したでしょう。ずっと旦那ん家でゲームしたり勉強したりしてやした」
「遅くなるじゃねぇだろ朝帰りだろ!」
ばん! と壁を叩かれて本能的に怯む。肩が跳ねるのは意思の力じゃ止めようがない。近所迷惑じゃねぇの、隣人さんに苦情言われたらどうするんだと思ったけれど当然のことながらそんなこと言える雰囲気ではない。
朝帰り。人生で初めての朝帰り。大人びた気分になるかもよなんて旦那は言っていたけどその逆だ。理不尽に怒られている。
「じゃあ伝え間違いやした。遅くなるんじゃなくて朝帰りでした。次からは気を付けやす」
「そういう問題じゃねぇ」
一度怒鳴って少し落ち着いたのか今度は怒鳴られなかった。だけど腕を掴む力の強さは増した。痛い。
「アンタだってよく朝帰りするくせに」
「あぁ?」
「なんで俺ばっかり怒られなきゃなんねぇんでィ」
「おまえは未成年だろ!」
二つ目の雷が落ちた。
理不尽だ。俺はアンタが朝帰りしようとからかうだけで一言も口出しはしないのに、なんでこんなに一方的に怒鳴られなきゃなんないの。
アンタは、知らないシャンプーや香水の匂いをつけて帰ってくんのに。
「分かりやした、今度からは泊まるか早く帰るかのどっちかにしやす。こんでいいでしょ」
「よかねぇよ反省してねぇだろ」
「当たり前だろィ理不尽でさァ」
甘い展開を期待して二人暮らしを始めた訳じゃない。ただ、生活費が安くなるから。互いに一人ぼっちだから。
特別な関係なんてなくてただの同居人なんだから干渉されても、と言えないのは土方さんが形式的には保護者だからだ。
もしあれなら俺と住もう、旦那の言葉を思い出す。その方が楽かもしれない。幸せかもしれない。本格的に考慮したい。
「……心配すんだろ」
「え、」
腕を離されたと思ったらそんなことを言われて拍子抜けした。下げていた視線を土方さんに向ける。顔を逸らした上に部屋が暗くて表情は見えない。
心配されたの。いやいや一緒に住んでるかと思ってた。だって、俺がいたら女を連れ込めない。
「すいやせん」
「分かりゃいい。学校だろ。少しでも寝とけ」
「へい」
そう言って土方さんは寝室へ向かった。
残ったら俺は、にやけかけた口許を覆う。心配してくれた。そんな些細なことで期待してしまうバカな俺。
暫くはやっぱりここにいよう、そう思っていそいそ部屋へ向かった。
背中合わせ
出来る限り音を立てないようにドアノブを回した。鍵がかかっていないのにほっとしつつ罪悪感に胸を痛めつつ、静かにドアを開ける。寝起きドッキリもめじゃないサイレント具合。
内側から鍵をかけて靴を脱ぐ。脱いだそれを揃えて立ち上がり振り返って、体が跳ねた。
同居人がリビングの入り口に立っている。腕を組んで此方を向いて。リビングもどこも電気がついていない。一晩中待っていた、とかではなくてたまたま起きてしまったのだと思いたい。
何か言わなきゃ、思って声を絞り出す。
「ただいま」
「おかえり」
互いに平坦な声だ。だが俺は言葉がでないぐらいに緊張しているからなのに対して土方さんは恐らく、言いたいことも感情も押し隠しているからだ。できることなら飛び出して逃げてしまいたい。でもそれじゃあ何の解決にもならない。
何食わぬ顔で通り過ぎようと歩みを進める。小さな足音すら響いて、刻一刻と後ろめたさが募る。横を通っても何も言わないし何もされない、でも土方さんのことだからと身構えたら案の定、通り過ぎた後に腕を掴まれた。
「今何時か分かってるか」
「三時半ぐらいでしょう」
「連絡しねぇでどこほっつき歩いてた」
「遅くなるって電話したでしょう。ずっと旦那ん家でゲームしたり勉強したりしてやした」
「遅くなるじゃねぇだろ朝帰りだろ!」
ばん! と壁を叩かれて本能的に怯む。肩が跳ねるのは意思の力じゃ止めようがない。近所迷惑じゃねぇの、隣人さんに苦情言われたらどうするんだと思ったけれど当然のことながらそんなこと言える雰囲気ではない。
朝帰り。人生で初めての朝帰り。大人びた気分になるかもよなんて旦那は言っていたけどその逆だ。理不尽に怒られている。
「じゃあ伝え間違いやした。遅くなるんじゃなくて朝帰りでした。次からは気を付けやす」
「そういう問題じゃねぇ」
一度怒鳴って少し落ち着いたのか今度は怒鳴られなかった。だけど腕を掴む力の強さは増した。痛い。
「アンタだってよく朝帰りするくせに」
「あぁ?」
「なんで俺ばっかり怒られなきゃなんねぇんでィ」
「おまえは未成年だろ!」
二つ目の雷が落ちた。
理不尽だ。俺はアンタが朝帰りしようとからかうだけで一言も口出しはしないのに、なんでこんなに一方的に怒鳴られなきゃなんないの。
アンタは、知らないシャンプーや香水の匂いをつけて帰ってくんのに。
「分かりやした、今度からは泊まるか早く帰るかのどっちかにしやす。こんでいいでしょ」
「よかねぇよ反省してねぇだろ」
「当たり前だろィ理不尽でさァ」
甘い展開を期待して二人暮らしを始めた訳じゃない。ただ、生活費が安くなるから。互いに一人ぼっちだから。
特別な関係なんてなくてただの同居人なんだから干渉されても、と言えないのは土方さんが形式的には保護者だからだ。
もしあれなら俺と住もう、旦那の言葉を思い出す。その方が楽かもしれない。幸せかもしれない。本格的に考慮したい。
「……心配すんだろ」
「え、」
腕を離されたと思ったらそんなことを言われて拍子抜けした。下げていた視線を土方さんに向ける。顔を逸らした上に部屋が暗くて表情は見えない。
心配されたの。いやいや一緒に住んでるかと思ってた。だって、俺がいたら女を連れ込めない。
「すいやせん」
「分かりゃいい。学校だろ。少しでも寝とけ」
「へい」
そう言って土方さんは寝室へ向かった。
残ったら俺は、にやけかけた口許を覆う。心配してくれた。そんな些細なことで期待してしまうバカな俺。
暫くはやっぱりここにいよう、そう思っていそいそ部屋へ向かった。
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