梅々
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すいかおいしい。
午前中もおえかきしてしまった。
さぁどうしようかなぁスパークの沖土。
それでは土沖風味の沖受けです。
天の邪鬼の恋
あまりの疲労感と、心地よい振動に甘えて視界を閉ざす。眠気は訪れるけど意識を両手挙げて手放すのは厳しい状況で、静かなエンジン音や隣に座る者の気配を感じながら微睡む。
いつもこの帰路で微睡むと、幸せな夢ばかり見る。今日は、何も知らない子どもの頃の夢だった。ただ純粋に、土方さんを嫌って幼稚な悪戯ばかりをしていた。いまだって幸せだけどやっぱりあの頃とは違ってしまって、保護者代わりな二人は俺のことを何も知らない子どもだと言うけれど、そんなことは全くないのだ。
自分の思う正しさを貫くために、長いものに巻かれなければならないことを知っている。
現に、今だってそう。
「沖田君、そろそろ起きなさい。屯所に到着する」
「……へい」
起こすためか何か知らないが太ももを撫で回す男の手に嫌悪を感じながらも瞼を開ける。車窓の景色は屯所のすぐ裏手のもので、漸くこの男から解放されるのだと肩の力を抜く。
黒塗りの高級車が門前に停車し、俺はそそくさと外へ出る。
「さようなら」
「ああ。沖田君、また今度」
できることなら二度と会いたくはない。そう思うから曖昧に頷くだけにして、発車した車を見送った。
見張りの隊士に一声かけ、伸びをしながら住み慣れた屯所の敷地内へ入る。
早く寝ちまおう。嫌なことは寝て忘れるに限る。
大部いい時間だからとなるべく音をたてず玄関の戸を開く。すると上がり口に佇む二本の足が視界に入って、視線を上げて見ればそこにいるのは予想に違わぬ過保護な鬼。
「ただいまでさ」
「おかえり」
いい加減帰りを待たなくてもいいのに。仕事中毒のくせにこの待ち時間を無駄だとは思わないのだろうか。
日付も変わろうかという時間なのに、蝉が鳴いている。夜はもっと静かなものだった、ような気がするけれど、こんな時間になる前に眠っていたから気づかなかったのかもしれない。夜遊びは最近覚えたばかりだから。
乱雑に下駄箱に靴を入れ、顔を上げる。俺を見る土方さんは、珍しく考えが読み取れない顔をしている。故意に隠そうとするときよりも、複雑に感情が入り組んでる時の方が土方さんは分かりづらい。怒っているのか呆れているのか、自分の無力でも嘆いているのか。俺のことを軽蔑しているのかもしれない。軽蔑されるだけのことはしている。だから傷ついたりはしない。
「退いてくれねぇとあがれやせんよ」
「あぁ、悪い」
横に詰めた土方さんの隣に上がる。出迎えは終わったんだから部屋に戻ればいいのに、俺が歩き出すまでこの人はじっと俺を見ている。
まるであの男のようだとは、思いやしないけれど。不躾な視線により疲れる。
「そういや」
「なんだ?」
部屋へ戻ろうと歩き出した足を止めて振り返る。煙草を吸いたいのか、口許を撫でていた土方さんと視線があう。またやるせなさを顔に出しているのに笑いたくなった。
「予算あげてくれるって、あの人が」
「―――」
たった一言でこれだけ土方さんを傷つけられるなら俺の自己犠牲も満更無駄ではなかったんじゃないのかと思う。
やっぱりしゃぶってやったのが良かったんですかね、と追い討ちをかけてやろうかとも思ったが、土方さんのMPは既に零らしいから止めておく。歩き出しても続く足音は聞こえない。まだ立ち尽くしているのか。うちひしがれているのか。
全部アンタが望んだことのくせに。
名前も覚えていない、あの官僚のペットになってから数ヵ月が経つ。
それまではなんだかんだ適当な理由をつけ断っていただろう、俺を指名しての接待。それが俺の耳に入ったのは、近藤さんが出張している間だった。土方さんがわざわざ俺の部屋へ出向いて、告げたのだ。真選組のためなら、断れないのを知っていて。だからって土方さんを責める要素は何もない。決めたのは俺だ。そこに選択肢があったかどうかも、関係ない。
酌して終わる、なんてことはないだろうと身構えて行けば案の定、布団の敷かれた如何わしい雰囲気の隣室へ連れていかれて痛い思いをした。それだけならばよかったのだが、俺のためだと言ってただ単に自分がいい思いをしたいだけだろう、媚薬を使われてわけがわからなくなるほど乱れた。
あれから何回接待をしたか。俺の体はきっとあの男好みになっていることだろう。今では薬なんかなくったって突っ込まれてよがる。
ねぇ、アンタどんな気持ちなの。訊いてみたくてもいつも訊けない。
「総悟」
「なんですかィ」
「……お前は俺を嫌いだよな」
言うに事欠いてそれか。笑いたくなったけれど真剣な質問なのは知っているからふっと口角を緩めるだけに留めた。
嫌いだし、大好きだ。アンタだけ。こんな風に心の中で感情がぐちゃぐちゃになるのは。好きと嫌いが入り交じって、苦しめたくなる。求めさせたくなる。
俺が今していることは、アンタを監禁したあの悪戯と大して変わらないのかもしれない。土方さんの反応が見たい。今度こそ俺を見捨てるのか。勿論、組のため、近藤さんのためではあるけれど。
こんな俺に好かれてしまったアンタをどう思っているか。望まれた答えをやるのは気に入らない。
「……憐れんでやすよ」
「どういう意味だよ」
「文字通りでさ」
このまま土方さんに抱かれたっていい。開かれることに慣れた体に嫉妬して。体すらアンタだけのものにはならない事実にうちひしがれて。
そんなアンタを思い浮かべながらあの男に抱かれているのだと知ったら、どんな反応をするのだろう。
早く、触れてくれればいいのに。
物言いたげな視線だけを寄越す土方さんに堪えきれずふっと笑った。
さぁどうしようかなぁスパークの沖土。
それでは土沖風味の沖受けです。
天の邪鬼の恋
あまりの疲労感と、心地よい振動に甘えて視界を閉ざす。眠気は訪れるけど意識を両手挙げて手放すのは厳しい状況で、静かなエンジン音や隣に座る者の気配を感じながら微睡む。
いつもこの帰路で微睡むと、幸せな夢ばかり見る。今日は、何も知らない子どもの頃の夢だった。ただ純粋に、土方さんを嫌って幼稚な悪戯ばかりをしていた。いまだって幸せだけどやっぱりあの頃とは違ってしまって、保護者代わりな二人は俺のことを何も知らない子どもだと言うけれど、そんなことは全くないのだ。
自分の思う正しさを貫くために、長いものに巻かれなければならないことを知っている。
現に、今だってそう。
「沖田君、そろそろ起きなさい。屯所に到着する」
「……へい」
起こすためか何か知らないが太ももを撫で回す男の手に嫌悪を感じながらも瞼を開ける。車窓の景色は屯所のすぐ裏手のもので、漸くこの男から解放されるのだと肩の力を抜く。
黒塗りの高級車が門前に停車し、俺はそそくさと外へ出る。
「さようなら」
「ああ。沖田君、また今度」
できることなら二度と会いたくはない。そう思うから曖昧に頷くだけにして、発車した車を見送った。
見張りの隊士に一声かけ、伸びをしながら住み慣れた屯所の敷地内へ入る。
早く寝ちまおう。嫌なことは寝て忘れるに限る。
大部いい時間だからとなるべく音をたてず玄関の戸を開く。すると上がり口に佇む二本の足が視界に入って、視線を上げて見ればそこにいるのは予想に違わぬ過保護な鬼。
「ただいまでさ」
「おかえり」
いい加減帰りを待たなくてもいいのに。仕事中毒のくせにこの待ち時間を無駄だとは思わないのだろうか。
日付も変わろうかという時間なのに、蝉が鳴いている。夜はもっと静かなものだった、ような気がするけれど、こんな時間になる前に眠っていたから気づかなかったのかもしれない。夜遊びは最近覚えたばかりだから。
乱雑に下駄箱に靴を入れ、顔を上げる。俺を見る土方さんは、珍しく考えが読み取れない顔をしている。故意に隠そうとするときよりも、複雑に感情が入り組んでる時の方が土方さんは分かりづらい。怒っているのか呆れているのか、自分の無力でも嘆いているのか。俺のことを軽蔑しているのかもしれない。軽蔑されるだけのことはしている。だから傷ついたりはしない。
「退いてくれねぇとあがれやせんよ」
「あぁ、悪い」
横に詰めた土方さんの隣に上がる。出迎えは終わったんだから部屋に戻ればいいのに、俺が歩き出すまでこの人はじっと俺を見ている。
まるであの男のようだとは、思いやしないけれど。不躾な視線により疲れる。
「そういや」
「なんだ?」
部屋へ戻ろうと歩き出した足を止めて振り返る。煙草を吸いたいのか、口許を撫でていた土方さんと視線があう。またやるせなさを顔に出しているのに笑いたくなった。
「予算あげてくれるって、あの人が」
「―――」
たった一言でこれだけ土方さんを傷つけられるなら俺の自己犠牲も満更無駄ではなかったんじゃないのかと思う。
やっぱりしゃぶってやったのが良かったんですかね、と追い討ちをかけてやろうかとも思ったが、土方さんのMPは既に零らしいから止めておく。歩き出しても続く足音は聞こえない。まだ立ち尽くしているのか。うちひしがれているのか。
全部アンタが望んだことのくせに。
名前も覚えていない、あの官僚のペットになってから数ヵ月が経つ。
それまではなんだかんだ適当な理由をつけ断っていただろう、俺を指名しての接待。それが俺の耳に入ったのは、近藤さんが出張している間だった。土方さんがわざわざ俺の部屋へ出向いて、告げたのだ。真選組のためなら、断れないのを知っていて。だからって土方さんを責める要素は何もない。決めたのは俺だ。そこに選択肢があったかどうかも、関係ない。
酌して終わる、なんてことはないだろうと身構えて行けば案の定、布団の敷かれた如何わしい雰囲気の隣室へ連れていかれて痛い思いをした。それだけならばよかったのだが、俺のためだと言ってただ単に自分がいい思いをしたいだけだろう、媚薬を使われてわけがわからなくなるほど乱れた。
あれから何回接待をしたか。俺の体はきっとあの男好みになっていることだろう。今では薬なんかなくったって突っ込まれてよがる。
ねぇ、アンタどんな気持ちなの。訊いてみたくてもいつも訊けない。
「総悟」
「なんですかィ」
「……お前は俺を嫌いだよな」
言うに事欠いてそれか。笑いたくなったけれど真剣な質問なのは知っているからふっと口角を緩めるだけに留めた。
嫌いだし、大好きだ。アンタだけ。こんな風に心の中で感情がぐちゃぐちゃになるのは。好きと嫌いが入り交じって、苦しめたくなる。求めさせたくなる。
俺が今していることは、アンタを監禁したあの悪戯と大して変わらないのかもしれない。土方さんの反応が見たい。今度こそ俺を見捨てるのか。勿論、組のため、近藤さんのためではあるけれど。
こんな俺に好かれてしまったアンタをどう思っているか。望まれた答えをやるのは気に入らない。
「……憐れんでやすよ」
「どういう意味だよ」
「文字通りでさ」
このまま土方さんに抱かれたっていい。開かれることに慣れた体に嫉妬して。体すらアンタだけのものにはならない事実にうちひしがれて。
そんなアンタを思い浮かべながらあの男に抱かれているのだと知ったら、どんな反応をするのだろう。
早く、触れてくれればいいのに。
物言いたげな視線だけを寄越す土方さんに堪えきれずふっと笑った。
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