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梅々

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雛祭りでさァ!!

雛あられ、食べれなかった・・。すっごくショック。でも散し寿司食べたのでよしとするか。
それでは今回は(も?)土沖で。












「・・・すげぇ」 

市中見回りの最中、とある店のショーウインドウを眺め、総悟は感歎の声を上げた。 







流し雛 







「・・・十二単衣か。」 

とあるスタジオらしく、一日限定で貸し出すらしい。すぐ、そこから立ち去ると思っていたが、総悟は硝子に手をつき無表情で眺めている。 

「・・・着てぇのか?」 

「・・・んな訳ねぇだろィ?ちょっと目ェひいたから眺めてただけでさァ」 

そう言い、歩きだしたと同時にその店のドアが開いた。 

「総悟君」 

「アレ?旦那?」 

中から出てきたのは死んだ魚の目をした、天然パーマの男。土方がこの世で最も嫌いな人間だ。彼はあからさまに眉を寄せた。 

「今日バイトやってんだけどさ、着ない?割引すっから」 

「着やせん。ねぇ?」 

急に話を降られ不機嫌な顔のまま総悟の方を向いた。 

「着てぇなら着りゃあいい」 

「えっ・・?」 

不機嫌な顔してるし、常識的に止めるだろうと思っていたらしく総悟は腑抜けた声を出した。 

「じゃ、着ようぜ?ほら多串、金」 

「言われなくてもわかってる」 

財布を取出し、看板に書いてあった通りの料金を差し出すと、半分だけ受け取った。訝しげな視線を向けると、いらねぇよと首を横に振った。 

「だけどさ、一枚だけ写真撮ってくんねぇ?」 

「ハァ?何をだ?」 

「馬鹿野郎。総悟君に決まってんだろ~?」 

ダメだ、コイツ。と指までさされ、切り掛かろうと思ったが、時間の無駄だとギリギリのところで踏み止まり、貸衣装一式を片手に持ち、総悟の手首を握り足早に去った。 





**** 





「土方さんって・・」 

「あんだよ」 

「何気にすげぇですよねィ」 

サラリ、と無情に、というか今気付いたという風に告げられた言葉に、自分でも驚く程、傷ついた。浮世でいう恋人同士になってからもう何年も経っているのに、本当、今更か。泣きてぇよ。 

「羨ましいぐらい手先器用ですよねィ」 

「・・・そうかよ」 

誉められたって、全然嬉しくない。そりゃあいつもの俺なら素直に喜ぶ――――というか裏がありそうだと疑うか。でも、後でふと思い出してにやけそうな気がする。 

「出来たぞ」 

言い捨て、煙草に火をつけた。総悟は転ばないよう亀の歩みで鏡の前まで行き、また、すげぇ、と呟いた。 

「すげぇな土方さん・・すげぇでさァ」 

それには答えず、フーッと紫煙を吐いた。クルッと振り返った総悟の顔は不安そうだった。 

「土方さん・・?」 

「あんだよ」 

一生懸命、先程より速い足取りで(とは言ってもいつもより全然遅いのだが)俺の目の前に歩いてきた。 

「どうしたんです?急に不機嫌になって・・・」 

その台詞に、顔を上げ総悟を見た。夜、閨の中で見せるような切なげな顔。素面の時には見る事はないだろう、とは思っていたが、何故こんな顔をさてんだろう。いつもみたくからかってくると思ったのに。暫く無言で居ると、総悟は座り込み俺の頬に、そっと手を当てた。そして、控えめに接吻してきた。 

「・・・脱いだ方がいいですかィ?着替えたほうが」 

「なんでだよ」 

「旦那の手前、ああ言ったから、マジで着るとは思ってなかったんでしょ?だから不機嫌なんじゃねぇんですかィ?」 

「ちげぇよ」 

未だ頬に当てられた子供体温の手にそっと自分の冷たい手を重ねた。 

「似合いすぎなんだよてめぇ」 

そして、そのまま口付け、ゆっくりと後ろへ倒した。 

「沈んでたと思ってたら・・・何盛ってるんで?」 

潤んだ瞳でそう言われても迫力にかける。というか逆にそそられると前々からそう言ってるのに。 

「いいじゃねぇか。おまえだってそうだろ?」 

「・・・全然」 

言葉とは裏腹に、縋るように背に腕を回す。そこがまた可愛いんだけど。 

「・・・着物・・どうしよ」 

「クリーニングに出すから、心配すんな」 





もしかしたら、あの野郎はこうなる事をわかっていたのでは―――と頭の隅のほうで、微かに残っていた理性が呟いた。

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