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梅々

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臥薪嘗胆とか関係ないけど

昨日、電車の中でできましたよ壱万打ネタ!
そして今日は新潟にいます。新潟。明日は日光へ行く予定。・・・だけどコンビニまで車で10分以上って不便だと思います。
あ、そういえばSAでジャンプ軽く立ち読みしました。将軍・・・(笑)祝・再登場。
そうだ、ブロスがヤバかった。プラモ特集でドイツ兵のをいじってました。どうせならイタリアにしろよ!
あとノルウェー特集とか。隣にスーさんとフィンがいてときめいた。





それでは土沖土目指した壱万打記念。椎名林檎のブラックアウトをイメージ。
壱万千、二千、三千も一緒に祝います。
本当にありがとうございます。














「行くぞ、総悟」

「どこへ?」

「此処じゃない、どこかに」

そう言って差し出された手を、俺は迷うことなく掴んだ。





星屑の溜息





いつもと同じようでどこか違う、握った指先は冬も近いというのに湿っていた。
緊張?
何故、この人が緊張せねばならないのか。いつもは掴める、この人の思考回路が今日は霧のようで掴めない。
人のいないプラットホームに手を繋いだまま佇む。
何がしたいのか何を求めるのか。生き写しの人形のような土方さんは教えてはくれないだろう。

委員会が終わった直後の空も暗かったけれど今の空は其れよりも暗い、漆黒だ。星も人工衛生さえも見えない。
吐息は白く空に上り空気と混ざる。見慣れた冬の光景、だけれど俺は非日常な状況でそれを見つめている。
遠くから静かに、ホームに電車が入ってくる。
チラリホラリと幾人か乗っているけれど、片手で足りる程度の人数。俺らは無人の最後尾から二両目に乗る。両隣を見てみるが誰もいない。二人しか乗車していないような錯覚に、現実が覆われた。

「土方さん」

「なんだ」

繋いだ手は冷えて、だけれど土方さんの手に少し暖められて、ふわふわの座席の上に置かれている。離す気がないのを知っているから俺は、そのことは気に止めない。
世界はどんなに広かろうと、クローン人間を作り出す程までには発達していない、はず。
だから此処にいる人間は間違いなく土方さんだし、こんな突拍子のない行動に付き合う俺だって、本物。

「桜はやっぱりもう散ってやすよね」

「・・・十月にも咲く品種があるらしいけど、どうだろうな」

ガタン、ゴトンと俺らを乗せた箱は揺れ、風景が流れ去る。一つ一つの輪郭を辿る暇は無い。闇と一体化したそれらは存在を誇張するため光を放つ。
歌舞伎町の町並みが段々と、遠ざかる。
どこへ行きたいのか何をしたいのかどうして俺となのか。
聞いたら答えて、未だ聞かないから。

忍び足で冬が近付いてきた。大胆に冬が姿を現すのは朝と夜だけ。今、少し寒い。

「ねぇ、寒い」

「・・・だから朝、上羽織って来いっつっただろ」

「今更でさァ。・・・暖めてくだせぇよ」

体ごと土方さんの方を向く。下からじいっと見つめれば、溜め息混じりに繋いでいた手を離された。そして。
ぎゅっ。
寄り添うように優しく強く抱き締められる。二人しかいない車内で隙間なくくっついて。
誰も目撃者が居ないからこその行為。

箱がブレーキをかけ始め、仄かに明かりがついているが無人のホームへ入り、止まる。開いたドアから入り込んだ空気はどこか、素朴さを感じた。
そしてまた、機械的に電車は走り出す。
過ぎ去る景色に感慨はわかない、輪郭の溶けた人工物は存在の主張を諦め始め、それに比例し空気も冷たくなってゆく。
走れば走る程、光が減っていく。
求めている世界が、わかった気がした。
寒さは恐れるに値せず、ドアが開く度襲いかかる冷たい風も、苦にはならない。

「知ってやすか? 人一人の世界はとても小さいって」

「知ってるよ。だから他人と関わって自分の世界を広めるんだろ」

でも俺は思う。
1+1=2、という式はいつでも成り立つものではないと。だって、俺と土方さんの世界は共通しているところが多くある。故に、1+1は1.5にも満たないんじゃないだろうか。
小さな世界は小さなまま。

降りるぞ、声をかけられて手を引かれる。見たこともない風景、というか駅名。
終電を迎え送り出した此処は辺りが眠りについているように、静かで暗い。
手を引かれて人も改札もない建物から出る。
点点と弱い光を放つ外灯が闇へ続く商店街の存在を告げている。奥に微かに見えるのは信号だろう、夜だからか黄色く点滅を繰り返す。
ひんやりとした風が頬や首筋を撫でる中、半歩先を行く土方さんについていく。
目的地は何処。無粋な質問は土方さんが望むものを手に入れてから。
例えば、目的地が海だったなら、俺はどこのロマンチストだと笑っただろうけれど、今俺らは多分山へ向かっている。
ネオンの明かりが一切ない、それだけで厳粛な雰囲気さえ醸し出す町から空を見上げる。飾りもののように、漆黒の上空に浮かぶのは白く瞬く星々。
こんな沢山の星、初めて見た。

「綺麗だろ?」

「えぇ、すんげぇ綺麗・・・」

「・・・あと少しで着くから」

駅から見えた信号はもう通り過ぎて両側が林になっている、舗装された急な坂道から人一人通れる程度の脇道へ入る。一人きりだったのなら、絶対土方さんは通らないであろう道。歩を進める都度、長く伸びた草が足に当たるその音と、風に揺れる木々の音以外しない。

昨日の夜、部活が終わった後の帰り道から既に少し変だった。
いつものように俺の家の前で別れようとしたら、すっぽりと体を包まれていて。姉上に見られたらどうすんだ、文句を言おうとした唇は降ってきたキスに役目を果たさなかった。
・・・あんなことを外でやる人ではないのだ、土方さんは。

着いた、呟きに声を上げると小さな空間があった。針葉樹に囲まれた小さな草原、上空はプラネタリウムのように、星が見える。
非現実だ。
空が落ちてきそう。
ただあるのは静寂と不安定な星の光。俺らみたいな不安定さ。

「俺、ノイローゼなんかな・・・」

「さぁ? そんなことねぇと思いやすぜ」

不安、焦り、喧騒への苛立ち。
それらが飽和量に達し越えると、真面目な人間はこうなるらしい。
静寂と無人、非現実。

「なんで、俺も連れてきたんで?」

「嫌だったか」

「嫌じゃねぇけど」

「・・・ただ、おまえと居たかった」

空じゃなくて心が堕ちた音がした。
こうやって、この人は。
俺の心に巣食っていく。

手の下で草が揺れる。
隣に座っているこの人を、滅茶苦茶にしてしまいたい。素面でこんなことを言う、愛しくも疎ましい土方さんを。

「・・・ああもう、アンタなんでそんなに」

「? なんだよ」

俺の心は砕けてしまいそうだ。砕けたら、きっと。
二度とこの人から離れられなくなる。

繋いでいた手を離して勢いよく抱き締める。二人して草っぱらに倒れこんで、無言のまま抱き締めあう。

もう、帰りたくない。

誰もいない、この世界でずっと。





#12
天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ
をとめの姿 しばしとどめむ

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