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梅々

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美人薄命

DOLLSの二巻が欲しい・・・。君と僕。の二巻も欲しい・・・。
誰か「ただひとつだけの永遠」っつう土沖同人誌譲って・・・。
リアルに金ないけど。師走には銀魂ゲーム出ちゃうしね、二月には沖土オンリーがあるしね。


それでは表にもアップした百人一首。読んだらフルに頭を使える駄作仕様。













朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木





雨雲と風車





カラカラカラ・・・。歩を進めようと足を上げた瞬間に一斉に風車が鳴りだして神様とか不吉な予感とか信じていなくても何かあるかも。と思う。
風はさっきから強かった。それでも、風車は回っていなかった。なのに何故今更。
「・・・じかたさん」
「・・・」
「土方さん」
「・・・あ?」
とんでいた意識を、呼び戻す声は聞き慣れた死神の声だった。
屯所を出た時は一人だった。走って追い掛けてきたのだろうか。わざわざ何のために。
また、悪戯でも思い付いたのだろうか。勘弁して欲しい。

最近、老けたかもしれないと思うようになった。「土方さん、老けたんじゃねぇですかィ?さっさと隠居して俺に副長の座譲りなせぇ。」とか言われなくなった代わりに、自分で。
例えば立ち上がる時。

よっこらしょ。
言ってから慌てて口を押さえる。大体、こう言う時は誰も周りに居ない時なのだが、辺りを見回してしまう。
他には、夜中に突然足をつったりだとか。身動きしてねぇのにつるなんておかしいだろ、自分につっこみ入れても意味はなく虚しさが膨らむだけだ。

「・・・煙草屯所に忘れてやしたよ。携帯灰皿も」
はい、と渡されて箱に悪戯が無いか確かめる。前に一度、中身がチョコレートにすり替えられていたことがあって、あんときはチョコが溶けて大変だった。
よく駄菓子屋に売っている、煙草のように紙で包装してある安いチョコ。煙草を吸うのなんざ習慣、というか癖みたいなものだから、一々煙草チェックなんてしない。チョコだと気付くはずはなく、火を着けたら急に茶色い液体が煙草から垂れて、服についた。
そこで漸く偽物だと気付き、早速総悟を怒鳴ったのをいまでも覚えている。

携帯灰皿を開けると、中から何かが出てきてドキリとした。
・・・ビックリ箱の中身のような、一瞬見ただけでお手製だと分かる、俺にそっくりの人形だった。
「・・・何これ」
「ハロウィンでさァ。お菓子くれても悪戯しやす」
楽しそうに話す横顔は子どもらしいあどけなさが残っていて、いつになればコイツは大人らしくなれるのだろうと余計なお世話かもしれないが思った。
―――――そしてずっと総悟はこのままなのだと、思い至る。
「・・・俺に利益ねぇってか先に悪戯すんなよ」
未だに回り続ける風車の列は、この界隈の果てまで続いているらしく、茶色い壁の飾りのように、赤い風車が遠くまで並んでいる。誰も居ない、人気の無い道。きっと何処かの神社で祭でもやっているのだろう、笛の音に太鼓を叩く音、それに交じり賑やかに騒ぐ人々の声が耳に届く。

―――――風はもう、止んでいた。

「総・・・。ったく・・・祭りにでも行ったのかよ」
先程までいつも通り俺の斜め後ろを歩いていた彼を振り返るが、何もなかった。
祭好きだからな、今日は許してやるかと一人きりの道、携帯灰皿を握って歩いた。

風車は、止まることがない。







夢を見た。
目覚めは最悪、とまではいかなかったが、頬が濡れていた。そんな悲しいものでは無かったはずだが、と裾で顔を擦る。

祭りへ、行った夢だった。
近藤さんと俺と、総悟の三人で。
こないだの見回りの時のことが忘れられなかったからだろう。一人で行かせず、ついて行ってやれば良かったか、と気になっていた。
俺の財布を自分の財布のように持ち、総悟は俺の金で近藤さんに奢ったりして三人で食べ歩いた。
「土方さん、金魚掬いで勝負しやしょう」
「いいぜ」
屋台の奥、折り畳み式のちゃちい椅子に座っているおっさんを、知っている気がした。誰だっけな、と悩んでいると早く、と急かされる。総悟は既に、カップと掬うやつを手に持っていた。
二人分の料金を払い、手渡しでセットを受け取り、背後で見守る近藤さんの合図で勝負は始まった。
よーい、どん。
リズム良く金魚を掬っていくが、紙は切れそうで危うい。総悟の事を気にする暇もなく掬い続けていると、終に紙は破けた。隣を見ると、余程自信があるらしくニヤリと笑っていた。
「・・・で、何匹ですかィ、おじさん」
総悟につられて顔を上げたその時、思い出した。
この初老の優しい顔をした男が誰だったか。

総悟が贔屓にしていた駄菓子屋の主だ。
―――――今は亡き、親切な店主。

そうだと気付いた途端声を掛けられた。
「・・・気付いちまったんだねぇ。君は帰らなければいけないな。・・・彼と、ともに」

その時の寂しげな笑顔が印象に残っている。
それと同じ笑みを、別の人間がしていたからだ。

行ってきまさァ。
挨拶代わりにか、ふざけて寄越された投げキッスを呆然と見ていると、不意に微笑まれた。
初めて向けられた純粋な笑みに思わず見惚れてしまった俺の顔面、御守り代わりにしていた姉の指輪を投げつけられる。縁日で買った安っぽい指輪を、総悟が買ったものだからと大事に肌身離さず彼女が持っていたそれを、今は、総悟が肌身離さず持っている。
大事に持ってなせェ。と言う声は既に遠く、俺は行けねぇんだから御守り持ってるべきなのはお前だろ、と返せなかった。


足を、怪我した。
馬鹿馬鹿しいことに暗い夜道を一人歩きしていて襲撃を受け、全員ねじふせ一息ついたところをドンと。
飛び道具はルール違反だろ。射った奴の利き手らしい左手に刀をぶっさし思った。
貫通はしていなかったが無理をすれば障害が、と涙目で休むよう言う近藤さんの手前始まった引きこもり生活。その、二日目だった。


総悟は帰らなかった。

帰ってきたけれど、言葉も話さない、動きもしないただの屍だった。
・・・これまたコイツも、足をやられたらしい。
この間俺を襲ったやつらのアジトに一番隊を率いて踏み込み、最後の一人を追い詰めたところまでは良かった。けれど、予想外の隠し通路があったらしく、そこから飛び出してきたやつの放った弾が、足の付け根に命中した。
仲間が駆け付けた時には既に意識が無かったが、側には総悟が斬った二人が倒れていた。
小雨の降るなか泣き続ける近藤さんを見ていられなかった。


『・・・もしもし土方さん?』
「・・・あれ。何、終わったのかよ」
はぁ、と溜め息が聞こえてきて自然と顔をしかめてしまう。電話してる最中に溜め息はないだろう。馬鹿にしすぎだ、俺を。
さっき渡されたばかりの指輪を光で透かしてみたりし、弄ぶ。
『ひじか・・・さん』
不自然なぐらい声が弱々しくあきらかに呼吸が速い。
瞬時に、長年の経験から悟った。
だが、無理矢理そんなことないと自分にいい聞かせた。
「・・・どうしたんだよ」
『俺、あんたに二度と会えねぇみてぇでさァ・・・。足撃たれちまったし、毒までまわってきやしたし。・・・だから・・・最期に、』
「何言ってんだよ・・・」
プツリ、と音がした。
残酷に鳴り響く機械の音は、繋がりが切れた証だ。
故意に切ったのかどうかは不明だが、もし電話をかけてもその携帯の持ち主は出ないだろう。
あいつは、今この時から永久に、夢の世界の住民になったのだから。
会えるわけがない。
もう二度と。
犇々と感じた絶望は、今は何処へ行ったのだろう。


「・・・何でお前あの時電話したんだよ」
「えっ・・・?ああ、アレ? 着信履歴のいちばん最後の人に電話かけただけでさァ」
何その地味な理由。最後に話したかったのは俺だったのかと浮かれた自分が馬鹿みたいじゃねぇか。ふざけんな。
仕返し、とばかりに美味しそうに飲んでいたココアを横取りし、一気に飲み干してやった。
あ。
と、か細く漏れた声は俺に同情してるわけではなく俺に消化されるココアに対してでまた、むかむかしてきた。
「・・・甘っ」
「でしょうねィ。―――――最後に話したいと思いやしたぜ。俺は、あんたと」
「・・・は、」
先程と真逆の事を言われても。茶化そうと視線を合わせると、真摯な瞳が俺を射止めた。
急に態度を裏返すのを止めてほしい。振り回される方からしたら迷惑で堪らない。
「・・・ドラマの再放送の予約取り消して欲しかったんでさァ。俺もうずっとみれないから。だから、土方さんを選んだんです」
「お前なっ・・・!!」
一瞬でも、可愛いとこあるんだな、コイツにも。なんて思った自分が恨めしい。
「・・・夢、視すぎなんでさァ。土方さんは」
指輪をじぃっと眺めながら総悟は呟いた。
「確かにな」


コツ。爪先に何かが当たった。それは、見慣れた自分のライターで、つい先日から無くしていた物だった。
また、悪戯しやがったのか。あの馬鹿は。
そんな暇があるのならもっと有意義なことをすればいいのだけど。

いまはもう動かない風車を一つ拝借し、手土産に持っていってやろう。
花束なんかよりも喜ぶだろうから。

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