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梅々

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病は気から

サイト回りは癒されます。
というか沖田に猫耳つけたい。ニャンニャン言ってほしい。自給自足しか出来ませんが何か。
土方鬼畜にして沖田をニャンコにして×××・・・。


テンションがおかしいのはサイト回りのせいだ、間違いない。





それでは、ノートあさってたら出てきた一年前の小説。
・・・病で山→沖ようそがあるかもしれない。
史実っぽい。というか少し無茶苦茶な気がする。















人は死を前にして素直になれるというのなら

伝えたい、言葉が





慎ましやかな日々





とうとう、来てしまった。
冷たい風が剥き出しの顔や指先を嬲る。じんじんと、耳が痛い。
目の前には少し古そうだが立派な家屋。

この中に、彼が。

頼まれた時は二つ返事で喜んで承諾したのに、若干の緊張、期待と―――――畏れ。
会いたかった。会いたくて堪らなかった。―――――でも。

ごめんください、声をかけると訛りのない澄んだ声の返事が聞こえ、下女が出てきた。俺が草鞋を脱ぐのを待ってから、女は奥へと進み行く。二十歳そこらだろう、綺麗な黒い髪を肩口で揃えている。

「最近は沖田さん、顔色も宜しくなりまして・・・」

部屋へ向かう間中ずっと続く世間話の殆んどが共通項である沖田さんのことで、素直な俺の耳はその名だけを受け取って、他の言葉は流してしまう。
漸く辿り着いた最奥の部屋、襖は白地に赤と金の豪華な模様入りのもので、丁重にもてなされているんだ、と思うと気分が少し軽くなった。

「沖田さん、お客様ですよ」

正座し彼女は室内に声をかけ、襖を開く。現れたのは十二畳程の部屋。中央に布団が敷いてあるだけで家具らしい家具があまりない殺風景な部屋があった。開け放された向こう側の障子から、切り取られた美しい庭園が白く化粧していた。
その背景に溶け込むようにして、彼の人は縁側に座っていた。

「もう・・・寝ていてくださいな」

いつものことなのか、ハァ、と溜め息を吐きつつ、俺を室内へと促し彼女は、お茶を持ってきます。と去った。
何ヵ月ぶりの、再会。
なのに何故か胸は切ない。

「・・・沖田、さん」

ゆっくりと、白い長襦袢に羽織を肩にかけただけの姿で目の前の彼は振り返る。
いつもの眼差しが蘇る。

「久し振りですねィ・・・。元気でしたかィ? 山崎」

耳に馴染んだ声が久々に俺の名を呼ぶ。鈴のような澄んだ声に紡がれた名を、何度も胸の中で反復する。来て、良かった。

「お久しぶりです」

挨拶を返すと、優雅な仕草で立ち上がった。歩く度に軽やかにさらりさらりと金糸の髪が踊る。
痩せた、と思ったけれどそれが更に神秘的な美しさに磨きをかけていて、紅い円らな瞳には儚さが増し、古い書物に出てくる天子のようだ。
これが、死する者故の美しさなのだろうか。

「座りなせぇよ。立ってられっとなんか・・・嫌」

「あ、はい」

沖田さんが座った布団の横になるべく埃をたてないよう徐に座った。
来たときから思っていたが、この部屋は井草の匂いしかしない。日当たりもそんな良くない筈だが、じめじめした感じも病の匂いもしない。開け放された障子の所為か、それとも。

「粗茶ですが、どうぞ」

先刻の下女が盆に白と緑の湯飲みを乗せ戻ってきた。盆ごと俺らの傍らに置くと、一点を見つめてから立ち上がり、ペシンと沖田さんの頭を叩いた。
呆気にとられてしまう。

「開けておかないでくださいと、きちんと申し上げた筈です」

「いいじゃねぇですかィ」

流石、というべきなのか悩むけれど沖田さんをきちんと怒れるのは彼女にとって弟のようなものだからなのか、兎に角副長が見たら驚くんだろう、そう思う。
ふくれっ面で頭を擦るのを見て思い出すのは、俺らが江戸で活躍していた頃のこと。あの頃は楽しかった。
ずっと、割り込めないあの三人組を見ていられる、そう思っていたのに。想像の未来が覆されてから何十年も経ったように感じる。

「あ、そうだ・・・。副長からコレを、と・・・」

彼女が再び去ってから、荷をほどき中から紙袋を取り出す。コレを渡すためだけに俺はパシられたわけだけど、今回は文句を言ったりしない。沖田さんの為なら例え火の中水の中・・・。
紙袋を受け取り、沖田さんは小さく笑った。

「あの人ァ・・・。自分で持ってくりゃあいいのにねィ・・・」

「本当ですよ」

「・・・それほど頑張ってんですねィ・・・皆」

―――――療養に、と沖田さんが武州に強制的に返されてから色々なことが起こった。
桂、高杉ら攘夷浪士らの計らいにより始まった、戦。
それを俺ら人間全員の反逆だと見なした天人達。真選組は今まで守っていた天人と戦うことになり俺は少し複雑な心境だけど、副長や局長は前より伸び伸びしているように見える。
それもそうだろう。武士から刀を奪ったくせにその刀で自分らを守れというアイツらを一番嫌っていたのは彼等なのだから。

「副長なら・・・吉報手土産に来るんじゃないですか?」

「・・・そうだねィ」

井草の他に、フワッと甘い香りが舞った。振り返ると床の間に赤く咲いた梅が生けてあった。
副長の好きな、紅梅。

この家には梅なんてないのに。





#56
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
いまひとたびの 逢ふこともがな

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