梅々
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無知
出来たのでとりあえずアップ。
明日から同人誌(沖土)三昧だァ♪
それじゃ土沖でもう明日はにゃんこな日だけどバレンタイン。
明日から同人誌(沖土)三昧だァ♪
それじゃ土沖でもう明日はにゃんこな日だけどバレンタイン。
逢ひ見ての のちの心に くらぶれば
昔は物を 思はざりけり
運命の歯車
物なんかに頼らなくても想いは伝わるけれど。
想いを確認するために人は物を求めるのだ。
ガラ、と障子を開けると目の前の光景は見慣れた自室では無かった。
畳が見えない程積み上げられているのは色とりどりの箱の山。
部屋を、間違えたか。
そう思い一度部屋から出て隣室の障子も開けてみるが自分の部屋と同じ有り様だった。それならやっぱ、さっきのは俺の部屋だったのか。
「総悟」
「すごい山ですねィ」
後ろから自分の部屋を覗きこむ土方を肩越しに振り返る。去年も、郵送物の仕分け部屋に入りきらないからと山崎が嫉妬しつつもこの部屋に運び入れていた。量も、今年の方が多そうだ。
「こんなに食えるかっての」
「安心しなせぇ。俺が全部食ってやりまさァ」
「今年はおめぇもすげぇからな。無理じゃねぇのか?」
「あら、知ってたんで?」
俺でさえ今知ったばかりだというのに。
それにしても、去年はチョコなんて一つ二つぐらいしか貰わなかったのにあの山は何だ。旦那だったら小踊りする程喜ぶだろう。俺はそんなに喜ばないけれど。
「お前、自分の部屋の障子開けっ放しだろ」
「そうだった。あんたの部屋と間違えたかと思ったんでさァ」
結局は間違って無かったけれど。
……ってことは、去年の土方みたく暫く自室では寝れないんじゃないか? 去年は寝る場所がないとか言って土方が自分の布団に入ってきていたけれど、今年は自分の寝る場所さえも無い。だからといって近藤さんと寝るのは厳しいものがある。鼾がすごいし寝相も悪いし、一緒に寝たら即刻風邪を引きそうだ。
土方と寝ることのほうが嫌だけれど、この際しょうがない。これが夏だったら近藤さんを選んでいたけど。
俺の横をすり抜けて、土方さんはチョコの山をかきわけ自分が座るスペースを作った。そして、灰皿を山の中から探しだし、一服し始める。どうやら俺に座らせる気はないらしい。
「……お前の分のチョコもこの部屋に置いてお前の部屋で寝るってのはどうだ」
「わかりやした。チョコはあんたの部屋に全部置いて、あんたは広間とか副長室とかで寝んですねィ」
「ちげぇだろ。俺にメリットがねぇだろうが」
当たり前だろう。
それが土方という人間なのだから。今更気付くなんて結構どんくさい。
なんて思っていたら土方は無言で此方を見てきた。何か話でもあるのか、そう思ったが口を開く様子は一向に無い。
「何ですかィ」
「………」
絶対に聞こえているのに無視するとはたかが土方の分際でいい度胸だ。喧嘩売ってるに決まっている。といつもなら素早く喧嘩を売り返すのだが、調子が狂う。
そんな真剣な目で真っ直ぐ見られると。
何がしたいのか分からない。何を思っているのか分からない。
居心地が悪い。物凄く。
「ったく……。何なんで? そんなに見つめられても困るんですがねィ」
「チョコ、くんねぇの? お前は」
がしっ、と強い力で手首を引かれ、バランスを崩して土方さんの前に座り込んでしまう。俺の体の下には、顔も名前も知らない人たちが作ったたくさんのチョコがひしゃげている。
─────誰かの気持ちを踏みにじるなんて日常茶飯事だ。
だけどこういう特別な日に今まで溜めてた想い全部注いで、作ったものを俺が壊している。この人に関してのこと全部でそうだ。
「どうせ食わねぇくせに。そんなにたくさん欲しいんで? 俺から貰ったって一個しか変わりやせんよ」
「─────お前のだから欲しいに決まってんだろ」
どこまで傲慢な人なのだろう。たくさんの想いを踏みにじっておいて、自分の願いは貫こうとする。他人に、押し付ける。“いつも甘やかしてやってるだろ”なんてどの口が言う。いつも甘やかして、成すがままにされているのは俺なのに。
腹立たしい。
抗えない。
だからこそ死んでほしい。この手で、一回でも抗えたなら。
「どうせ俺が食うのに」
「ちゃんと俺が食うから」
ほらまた俺が、妥協する。
非常食に、と懐に忍ばせていた一口大のチョコレートをぱくっと口に含む。そしてそのまま、ぐいっと顔を引き寄せる。
「……何、口移し?」
「…ん。」
否定か肯定かわかんねぇよ。
ぼやきは合わせた唇に溶けて消える。
周りが柔らかくなったチョコを舌で無理矢理押し渡す。 甘い物苦手な癖にそれを甘受して、キスしたまま土方さんはそれを飲み込んだ。
ごくりと飲み込むその振動が唇にも伝わって、本当に食べるとは思ってなかった俺は少し驚いて、続いて離そうとした唇を舌でぺろりと舐められてまた驚いた。
俺とキスすんの嫌いなくせに。何で俺とキスしてんだよ。
付き合ってまだ一年にも満たないけれど、それにしたってキスをした回数は今まで土方さんが付き合っていた女の人たちと比べて極端に低い。
触れ合うこともない、キスすることもない、甘い言葉を交すなんてもっとない。付き合う前と変わらない今、付き合っていると果たして言えるのだろうか。
ただの庇護欲と独占欲で俺を縛り付ける。そんなことしなくても俺は、誰かに依存して生きようとは思わない。近藤さん以外。
自分の気が済むまで口唇を蹂躪し続けようとする我が儘な舌に何故だか急に腹が立って、死なない程度におもいっきり噛みついた。
「ぃって!!!!」
様ァみろ。言おうとして口の中、チョコの味に血が混じっているのに気付いた。
この味なら土方さんも嫌いじゃなさそうだ。
「……口移しでやっただけでありがたく想いなせぇよ」
口移しでチョコなんざあげられた事が地味に嬉しい。自分から口付けようなんて思ったこと、無かった俺にしちゃ大きな一歩だ。
─────別に土方の馬鹿を好きなわけではない。
好きじゃない、けれども。
「…そろそろ食い時か、お前」
「は? どういう意味で?」
「別に」
そう言った土方さんは不敵に笑い、唇を合わせてくる。
ぐしゃり、また足元で箱の潰れた音が胸に刺さった。
#43
昔は物を 思はざりけり
運命の歯車
物なんかに頼らなくても想いは伝わるけれど。
想いを確認するために人は物を求めるのだ。
ガラ、と障子を開けると目の前の光景は見慣れた自室では無かった。
畳が見えない程積み上げられているのは色とりどりの箱の山。
部屋を、間違えたか。
そう思い一度部屋から出て隣室の障子も開けてみるが自分の部屋と同じ有り様だった。それならやっぱ、さっきのは俺の部屋だったのか。
「総悟」
「すごい山ですねィ」
後ろから自分の部屋を覗きこむ土方を肩越しに振り返る。去年も、郵送物の仕分け部屋に入りきらないからと山崎が嫉妬しつつもこの部屋に運び入れていた。量も、今年の方が多そうだ。
「こんなに食えるかっての」
「安心しなせぇ。俺が全部食ってやりまさァ」
「今年はおめぇもすげぇからな。無理じゃねぇのか?」
「あら、知ってたんで?」
俺でさえ今知ったばかりだというのに。
それにしても、去年はチョコなんて一つ二つぐらいしか貰わなかったのにあの山は何だ。旦那だったら小踊りする程喜ぶだろう。俺はそんなに喜ばないけれど。
「お前、自分の部屋の障子開けっ放しだろ」
「そうだった。あんたの部屋と間違えたかと思ったんでさァ」
結局は間違って無かったけれど。
……ってことは、去年の土方みたく暫く自室では寝れないんじゃないか? 去年は寝る場所がないとか言って土方が自分の布団に入ってきていたけれど、今年は自分の寝る場所さえも無い。だからといって近藤さんと寝るのは厳しいものがある。鼾がすごいし寝相も悪いし、一緒に寝たら即刻風邪を引きそうだ。
土方と寝ることのほうが嫌だけれど、この際しょうがない。これが夏だったら近藤さんを選んでいたけど。
俺の横をすり抜けて、土方さんはチョコの山をかきわけ自分が座るスペースを作った。そして、灰皿を山の中から探しだし、一服し始める。どうやら俺に座らせる気はないらしい。
「……お前の分のチョコもこの部屋に置いてお前の部屋で寝るってのはどうだ」
「わかりやした。チョコはあんたの部屋に全部置いて、あんたは広間とか副長室とかで寝んですねィ」
「ちげぇだろ。俺にメリットがねぇだろうが」
当たり前だろう。
それが土方という人間なのだから。今更気付くなんて結構どんくさい。
なんて思っていたら土方は無言で此方を見てきた。何か話でもあるのか、そう思ったが口を開く様子は一向に無い。
「何ですかィ」
「………」
絶対に聞こえているのに無視するとはたかが土方の分際でいい度胸だ。喧嘩売ってるに決まっている。といつもなら素早く喧嘩を売り返すのだが、調子が狂う。
そんな真剣な目で真っ直ぐ見られると。
何がしたいのか分からない。何を思っているのか分からない。
居心地が悪い。物凄く。
「ったく……。何なんで? そんなに見つめられても困るんですがねィ」
「チョコ、くんねぇの? お前は」
がしっ、と強い力で手首を引かれ、バランスを崩して土方さんの前に座り込んでしまう。俺の体の下には、顔も名前も知らない人たちが作ったたくさんのチョコがひしゃげている。
─────誰かの気持ちを踏みにじるなんて日常茶飯事だ。
だけどこういう特別な日に今まで溜めてた想い全部注いで、作ったものを俺が壊している。この人に関してのこと全部でそうだ。
「どうせ食わねぇくせに。そんなにたくさん欲しいんで? 俺から貰ったって一個しか変わりやせんよ」
「─────お前のだから欲しいに決まってんだろ」
どこまで傲慢な人なのだろう。たくさんの想いを踏みにじっておいて、自分の願いは貫こうとする。他人に、押し付ける。“いつも甘やかしてやってるだろ”なんてどの口が言う。いつも甘やかして、成すがままにされているのは俺なのに。
腹立たしい。
抗えない。
だからこそ死んでほしい。この手で、一回でも抗えたなら。
「どうせ俺が食うのに」
「ちゃんと俺が食うから」
ほらまた俺が、妥協する。
非常食に、と懐に忍ばせていた一口大のチョコレートをぱくっと口に含む。そしてそのまま、ぐいっと顔を引き寄せる。
「……何、口移し?」
「…ん。」
否定か肯定かわかんねぇよ。
ぼやきは合わせた唇に溶けて消える。
周りが柔らかくなったチョコを舌で無理矢理押し渡す。 甘い物苦手な癖にそれを甘受して、キスしたまま土方さんはそれを飲み込んだ。
ごくりと飲み込むその振動が唇にも伝わって、本当に食べるとは思ってなかった俺は少し驚いて、続いて離そうとした唇を舌でぺろりと舐められてまた驚いた。
俺とキスすんの嫌いなくせに。何で俺とキスしてんだよ。
付き合ってまだ一年にも満たないけれど、それにしたってキスをした回数は今まで土方さんが付き合っていた女の人たちと比べて極端に低い。
触れ合うこともない、キスすることもない、甘い言葉を交すなんてもっとない。付き合う前と変わらない今、付き合っていると果たして言えるのだろうか。
ただの庇護欲と独占欲で俺を縛り付ける。そんなことしなくても俺は、誰かに依存して生きようとは思わない。近藤さん以外。
自分の気が済むまで口唇を蹂躪し続けようとする我が儘な舌に何故だか急に腹が立って、死なない程度におもいっきり噛みついた。
「ぃって!!!!」
様ァみろ。言おうとして口の中、チョコの味に血が混じっているのに気付いた。
この味なら土方さんも嫌いじゃなさそうだ。
「……口移しでやっただけでありがたく想いなせぇよ」
口移しでチョコなんざあげられた事が地味に嬉しい。自分から口付けようなんて思ったこと、無かった俺にしちゃ大きな一歩だ。
─────別に土方の馬鹿を好きなわけではない。
好きじゃない、けれども。
「…そろそろ食い時か、お前」
「は? どういう意味で?」
「別に」
そう言った土方さんは不敵に笑い、唇を合わせてくる。
ぐしゃり、また足元で箱の潰れた音が胸に刺さった。
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