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梅々

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明日はバイト………

銀沖をちびちび書き始めました。雨のイメージ。
沖土を嵐のイメージで書いたら小雨になっていまだに首を傾げています。なんで?

久々に鬼束ちひろ聞いたけどあの人も素敵。イメージのくくりはは月子さん。タイプは違うけれど。月光とか漂流の羽根とか、シャインとか。cageはカイザーだと思いました。
事変とCoccoはイメージはかぶるけど真逆だなぁ。





では、土沖前提の山+沖でシリアスです。土方浮気疑惑。
これ原稿ノルマ二日分を二時間半で書いて、原稿はプレッシャーやばいんだと気付きました、今更。
あと土方が沖田をNTRれるネタが好きです本当に!それが土方の想像でも!














大体、愛ない?





裏表らばーず





 知っていたことだけど、予想していたことだけど、それが本当に起こるとは思っていなくて目の当たりにした今途方に暮れている。
 隠れるように入った路地裏、壁に背を預けてこれからどうするかなぁとなんとなく空を見上げる。ちかちか星が瞬いて、時々船が横切る。月はビルに隠れて見られない。今のも見なければ良かったなぁとずるずるしゃがみこむ。
 想像したことはあった。土方さんはもてるから。バレンタインだの誕生日だの、送り届けられる物はすごい数で接待に行ったときも女に囲まれるらしいし、見廻りの時も呼び止められたりすることは度々ある。だが、何だかんだいって初な土方さんはそんなことしないだろうと甘く見ていた。本当に甘ったるい考えだ。
 ぶぶぶ、とポケットの中で携帯が震えた。一瞬土方さんからかもしれないと思い出たくなくなるけれどそれはない。あの人はいま俺に構う余裕はないはずだ。ポケットから出して画面を見ると山崎だった。

「もしもし?沖田さん?」
「んー」
「勝手にはぐれないでくださいよ!吃驚したじゃないですか!」
「あー悪ィ。ついでにさ、迎えに来なせェよ」
「はい?」

 十分以内な、一方的に言って電話を切る。時間の表示を見てからそれを握りしめたまま踞る。それでも回りに意識を向けているのだから俺は何て真面目なんだろう。
 泣きそうな気配はないが胸が痛い。茶化さないとやってけなくてサンドバックの到着をただひたすらに待つ。
 吉原じゃなくても女売ってるとこなんてここらはたくさんあって。この辺の店を接待だとかに使っているのも知っていたけれど、歓楽街は俺には厄介な揉め事が多い場所ぐらいにしか思っていなかった。だから今日も、見廻りついでにちらりと視線を向けただけだったのに、目敏い俺はあの人の姿を見つけた。そのまま後を付けた俺が馬鹿だった。同伴とかなんだそれ。二人仲良く不純異性交遊の場に入っていくとかなんだ。茶髪の頭の軽そうな女に優しく笑いかけたり、して。アンタあんまり笑わないくせに。
 浮気だ、と騒げる立場に俺はいるのか、分からなくてどうしたらいいのか分からない。

「あっ、沖田さん!」

 さっきの機械の絡んだ声ではない肉声が名前を呼んだ。顔を上げればぎょっとした顔の山崎が携帯片手に立っている。GPS機能は便利だと、余所事してみるけれど気分は晴れない。

「どうしたんですか……?」
「……別に」
「別にじゃないでしょう。……まぁいいや、戻りましょうか」
「おう」

 心配そうな顔をされてそをな酷い顔してるのかと不安になる。ぺたぺた顔を触ってみるが大丈夫、いつも通り。
 あれは浮気なのか。でもよくよく考えたら最近はあんまりやってない上に夜土方さんが自室にいないことも多かったような。そもそも俺と土方さんってどんな関係なんだと頭の中がごちゃごちゃしてきた。
 どうせなんか聞いてくるだろう、と思ったけども山崎は意外に静かで、今夜は暑いけど明日からは秋の爽やかな風が吹くらしいですよとか、彼処の店の茄子の漬け物が美味しいんですよとか、くだらないことをぽつりぽつりと言うだけ。気を使われてるのだと、自室について気付いた。
 真っ暗な部屋の真ん中に電気もつけないでぼーっと座り込んでいたらお茶を持った山崎が入ってきて、しょうがないですねとぼやきながら明かりを灯した。お盆の上にはお茶二つと栗最中が二つ見えて食欲がわく。

「で、どうしたんですか」

 向かいに座った山崎が真っ直ぐとこっちを見て尋ねてくる。語尾が柔くて、わざと優しい口振りで言うものだから閉口した。しかも眉がへの字にさがっていて、今の俺はそんなに酷いのか本当に気になる。
 でも確かに山崎からの電話にほっとしたのも確かで、そんな風に山崎に縋ってる時点で相当参ってる。

「……土方さんが、女と娼館入ってくとこ見たんでさ」
「え、」
「同伴とかすました面してよくやりやすよね」

 山崎だけは俺と土方さんの関係を知っているからそれはそれは、深刻な顔をした。見間違いでは、とか聞いてこない辺りも楽だ。俺が土方さんを見間違うはずがないことも知っているから。
 今頃あの人は、あの女を抱いてるのか。俺はもう飽きられちまったのか。終わったのか。好かれていたのではなかったのか。知りたいことだらけではぁと溜め息をつく。

「捜査とかでは?」
「お前が知らねぇなら可能性は低いだろィ」
「ですよね」

 俺ん時も、お前だけは知ってたんだからと言いながら立てた膝に額を置く。土方さんが本当に単独行動することは極めて少ない。心配している人がいるのを知っているから、山崎を使ったり俺を共犯者にしたりする。それもないのだから仕事ではないとしか思えない。
 最後に寝たのは一週間前だ、記憶を辿っていると空しくなってきた。優しくしてくれるけど、それだけで。求めてないからいいが甘い言葉を囁かれることはない。名前を呼んで、顔を見てくれているけれど。都合の良い相手ぐらいでしかなかったんじゃないか。あり得そうで嫌になる。

「本人に聞くべきだと思いますけど」
「聞くも何も、あの人が俺をセフレとしか考えてなかったら答えるどころか気まずくなるだろィ」
「変なところ繊細ですね」
「硝子の十代舐めんな」

 折角手に入れたと思ったのにな。最中の包みを開きながらぼやく。
 これが結婚するだとか、相手が素人だったりしたら未だ良かったけれど玄人にしか手を出さないと評判だった色男はやっぱり素人には手を出さないらしい。俺に手を出してからは夜遊びもしなくなっていたんだけど気紛れだったのか。
 重たい沈黙を茶を啜る音が破る。

「このまま自然消滅させんのが一番だろうなァ」
「でも副長が浮気とは考えられないですけど」
「事実は事実でさァ」

 暫くは受け入れらんないだろうけど。また一人寝に戻るのかと思うと萎える。

「最中うまい」
「でしょう? これ結構高いんですよー」

 そこでふと、目の前の寂しそうな独り身に気付いた。にんまり笑えば、気付いたように山崎が青ざめた。
 さっきまでの重たい空気もいつも通りに戻る。サンドバックの効果は偉大だ。

「慰めなせェよ」





「オイ総悟」

 ちょうど靴を脱いだタイミングで不機嫌そうな声に名を呼ばれた。顔を上げれば眉間に皺を寄せて腕を捲っている土方さんが仁王立ちしていた。ちょうど山崎と見廻りついでに夕飯を食べた帰りで、後ろの山崎は微酔いだ。
 ギシ、と上がると土方さんが山崎を一瞥した。それを受けて、山崎は先戻ってますねと行ってしまう。なんだ、アイコンタクト?

「何ですかィ。風呂入りたいんですけど」
「お前最近、夜自室にいないだろ。どこ行ってやがる」
「山崎のとこでさァ」

 おかしなことを聞くものだと眉が寄る。そんなこと気にしてどうすんだ。
 浮気現場に遭遇してから二週間が経った。あれから仕事のない日は毎晩山崎の部屋に行ってゲームしたり漫画読んだりして、それから一緒に寝ている。それが中々楽しくて、大分気が紛れている。素知らぬふりして土方さんと話せるぐらいには。
 どんな神経で俺の居場所を聞いたんだか。もしかして二股かける気なのかと思ったら胸糞悪くなった。未練はあるけれど土方さんに抱かれたいとは思わない。遊びでもいいけれどそんな、日替わりのオカズのひとつにされるのは生理的に無理だ。汚い。

「ずっとか?」
「そうでさ。暫くは山崎のとこいるつもりですぜ」
「……最近やけにアイツの傍にいるよな」
「んー。まぁ、山崎も暇ですし」

 慰めろといったら渋々頷いたから、暇を山崎で潰してるだけだ。代わりにあんまり土方さんの傍には寄らなくなった。まだ頭の中がまとまりきっていないから、長く傍にいると酷く居心地が悪くなる。もう少ししたら、いつも通りに戻れるだろうけれど。

「……今夜部屋来い」
「行く用がねぇでさァ。じゃ、俺風呂入りたいんで」
「おい、」

 後ろから声が聞こえたけど逃げるように部屋に戻る。
 今更なんで俺を抱こうとするんだ。二週間放置したくせに。女がいるくせに。俺の体はそんな安くはない。独占欲か何か知らないけれど、俺はアンタのもんじゃない。
 好き勝手なんてさせやしない。





 廊下に消えていった後ろ姿に堪えきれず壁を殴る。
 避けられていると気付いたのは先週のことだ。部屋に邪魔をしに来ることもなければ一緒の見廻りの時にサボることもなければたかられることもない。夜に部屋に行っても布団すら敷いておらず部屋に戻ってくる気配もなく。一番辛いのは名を呼ばれることもなくなったことだ。土方さんと、最後に呼ばれたのがいつか分からない。それなのに仕事の話の時は調子が変わらないのが益々堪える。
 一服してから部屋へ戻る。総悟の部屋は明かりがついていないから風呂へ行ったのだろう。この際突撃しちまおうかと血迷う。あの淡い髪を撫でたい。白い肌に触りたい。せめて感情の隠った目に、見つめられたい。
 俺が何をした。思い当たる節がない。なんで避けられなければならないんだ。

「……総悟」

 互いに言葉にはしないが思い合えているのだと思っていた。それがなんで山崎なんだ。昼飯は山崎と取り夕飯もそうだ。仕事の用で山崎の部屋へ行くと総悟が漫画を読んでいたのも一度や二度でなかったが、夜も一緒なのか。
 それならば、山崎は総悟の寝顔を知っているのか。それ以上のことも。
 考えただけで胸がどす黒く染まる。アイツは俺のものだ、誰にもやらない。俺だけが知っていれば、それでいい。

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