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梅々

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子持ち童貞

受胎告知ってあれ処女で懐妊だから神聖なんですよね?
童貞の子持ちはって思ったらただの連れ子ですね……。

本日幻鎖恋様のリンクを張りました!
あきら様夜様宜しくお願いします……!





では、前に言っていた沖田子持ち現代パラレルで両片想い。
スランプつらいです。




















ベビーベッド





大学二年の春、俺は久々に生まれ育った街へ戻った。
高校を卒業し、大学の側に家を借り一人暮らしを始めて。昨年は忙しさのあまり帰省のタイミングを逃し、留学したり、そのためのバイトだので中々帰れず、やっと、二年の成績が出てから実家へ戻った。家族は相変わらず元気で、挨拶もそこそこに土産を寄越せだの成績を見せろだの煩くて。久々に会った近藤さんも変わらなかったが、志村妙に漸くお付き合いを認められたのだと言って二人でとったプリクラを見せてくれた。
変わったことは、何もなかった。ただ、総悟がいないことを除いて。
家族や近藤さんとは連絡を取り合っていたが、総悟とは卒業以来、会いもしなければメールも電話もしなくて。就職したのは辛うじて知っていたが、どこにいるかなどは全くで。
俺の帰省を口実に飲む家族を横目に総悟のことを問えば、近藤さんはぱちくりと瞬きをした。その仕草は総悟を彷彿とさせるもので、一気にあいつのことを思い出した。
人の携帯で出会い系サイトに登録してみたり、おごらせたりパシりに使ったりしやがるくせに、いつも俺の部屋に遊びに来ていた総悟。妙に距離をとるくせにいつも、傍にいた。俺をからかうことを生き甲斐にしていた、見た目は珠玉、中身は始末に負えない幼馴染み。

「あれ、おまえ知らないのか?」
「なにをだ?」
「総悟、結婚して子どももいるんだ」
「……え」

テーブルの上のグラスを掴もうとした手が空を掴んだ。
結婚?
子ども?
あの、総悟に?
視線だけで問い返す。近藤さんの顔は嘘をついているようには見えない。嘘をつけないこの人が、嘘をつくときは必ず分かりやすく視線をさ迷わせるくせがあるが、俺から視線は剥がれない。
そんなまさか。そんな、嘘だ。

「やっぱ聞いてないのか。自分から連絡するっつってたのにな」

高校時代に総悟が勝手に変えたままの着信音は一回も鳴ることがなかった。卒業してから、一度も。呪いの着信音だとかいって、毎夜電話をかけてきて俺をびびらせようとしていたのに。
結婚、なんて。ずっと女っ気なかったのに。
アイツは俺を好いていると思っていたのに。勘違いだったのか。ただ傍にいた、だけだったのか。

「じゃあ、家出てんのか」
「ああ。ミツバさんも結婚してるしな、隣町で家族で暮らしてるぞ。折角だから、会いに行ったらどうだ?」
「そうだな……」

会って、俺には何ができるんだ、何を得るんだ。そうは思うが、ただひたすらに会いたい。
水を得た魚のようだ。きっかけがなければ自分からメールすらできないのだ。それは、昔からそうだった。


**


表札に沖田と書かれているのを見て今更緊張した。手書きのそれは、総悟の字だ。くせのある独特な字。そんな些細なことまで覚えていて、忘れる気配がないのに自嘲する。
昨日、近藤さんに急かされるままに総悟に電話をした。電話口のアイツは二年ぶりだというのに何も変わらなくて、開口一番に久しぶりですねィと、あの独特な口調で言った。家へ行ってもいいかと問うと、聞いてくるから待ってくだせェと、背後に声をかけて。それに返ってきた声が、聞いたことのないもので改めて、コイツは結婚したんだと知った。声を聞いただけだ、動揺はそこまでではなかった。だが会ったら、俺は、どうなるか解らない。
好きだったのだ、ずっと、ずっと。口にしやしなかったが、そんな甘ったるい思いは総悟に伝わっていると思っていた。総悟も同じなんだと思っていた。
今でも忘れてはいない。一度だけ、キスをしたことを。柔らかな唇も、睫毛が絡まるほど傍で見つめた綺麗な瞳も、目を瞑ればそこにあるのに。
総悟が幸せならばそれでいいと、思ってはいても感情がまだ抑えられない。
馬鹿だ、俺は。思いを告げられないなら終わらせれば良かったのだ。それを、未だにずるずると引き摺って。
未練がましさを断ち切る代わりに、意を決しインターホンを鳴らす。
瞼を閉じ数秒待つと足音が聞こえた。それからカチャリと、鍵が開き、ドアが開く。その隙間から見えた、薄茶色。はっと目を見張った。

「へい。あ、久しぶりでさァ土方さん」
「……おう」

姿を見て、名を呼ばれて、無性に抱き締めたくなった。ぴくりと動きかけた腕を必死に押し止めて、爪が食い込むぐらい拳を作る。
童顔なのは変わらないが、僅かに頬の丸みがなくなり、ほんの少しだけ男らしくなった気がする。それでも中性的だ、声も変わりない。
どうせなら、もっと変わっていればいいのに。着ている服は見覚えあるものだし、さらさらな髪は撫でたくなる光沢を放っている。

「まぁこんなとこじゃアレですから上がりなせェ」
「……お邪魔します」

サンダルが一足あるだけの玄関で靴を脱ぐ。ちょうど視界に、女物の靴と小さく新しい子どもの靴がラックにしまわれているのを見て、腹部が石を入れたかのように重くなった。ずしん、と衝撃がきて胃が痛くなる。百聞は一見にしかずってこういうときでも使えるのかと妙に感心する。
廊下はなく、台所を抜けた先には襖で仕切られただけの居間があった。部屋の真ん中にテーブルがあり、二人がけの低いソファーやブラウン管テレビ、棚が置いてある。モノトーンで統一された部屋だ、自分の部屋にいるかのように、落ち着く。
そして、テーブルの横には歩行器があり、そこにちょこんと赤ん坊が座って玩具で遊んでいた。

「とりあえずソファーにでも座っててくだせェ」
「ああ」

ソファーに座ると、歩行機に座っている赤ん坊と目があった。これが、総悟の子どもか。
もやもやと胸の内を得体の知れないものが蠢く。痛いとも苦しいとも言えない。これが、総悟に全く似ていなければよかったのにと、目前の赤ん坊を見る。
一歳ぐらいだろうか、艶やかな黒い髪はふさふさとしていて、前髪の形が俺のに似ている気がした。何よりも、総悟に似ているのは真ん丸く大きな瞳だ。総悟ほどではないが薄い色をしたそれを、囲むように生えている睫毛。桜色の、涎に濡れた唇も可愛らしい。

「コーヒー入れてやりやしたぜ」
「ありがとな。これ、土産だ」
「おっ、なんですかィ!」

 テーブルにマグカップを置き、俺の手元を覗き込んでくる。その近さに身を硬くした俺には気付かず、俺の手から紙袋を引ったくる。
ふわりと、石鹸の香りがした。総悟の匂いだ、変わらない。丸いその頭に鼻をつけてすんすんと匂いを嗅ぎたくなった。抱き締めたい、触れたい、五感でその存在を味わいたい。
それを押し止めるため、此方をじいっと見たままの赤ん坊に視線を向けた。

「名前は、何て言うんだ?」
「ん? ああ、冬悟でさ。冬に悟るって書いて。一歳ですぜ、可愛いでしょう」

冬悟か、呟きながらも頭は下世話なことを考えている。一歳ぐらいということは、高校卒業してすぐぐらいの時にヤったのか。
 改めて、俺は何を期待していたのだろうと馬鹿馬鹿しくなる。ずっと総悟のことを考えていた、この二年、いや昔から、誰と付き合おうとも。
歩行機に座っていた冬悟を抱き上げ、総悟は胡座をかいた足の上に冬悟を座らせる。柔らかそうな頬をつんつんとつついて、土方さんですぜ、挨拶は? と声をかけている、その表情は見たことないものだった。
父親の顔なのだ。慈しむ、優しい眼差しを向けている。そんな表情を見たことがないのは当たり前だ。
急に知らない人間のように感じられて眉を寄せる。

「目元がお前に似てるな」
「……そうですかィ?」
「ああ。真ん丸いところがそっくりだ。そういや、嫁さんはどうしたんだ?」
「生憎出掛けてるんでさ。なんでィ、アンタ人妻趣味?」
「んなわけあるか!」

ほら、と冬悟を抱き上げ、総悟が俺へと差し出してくる。脇の下を掴まれた赤ん坊はより首が見えない。ぽかんと唇を開けてきょろきょろ辺りを見回しているその赤子を、流れで受け取った。軽い。とっくに首はすわっているようだがそのままごろんと顔が落ちやしまいか心配になる。
抱き上げたままじっと見ていると、きゃっきゃと笑い出した。

「そいつ人見知りすんのになァ。流石土方さん」

からかう口調にむっとするが、総悟が、俺の隣に座り、肩に寄りかかるようにして冬悟の様子を見るものだから、胸の鼓動のほうが気になった。総悟が冬悟に手を伸ばした拍子に、さらさらとした髪が頬を擽った。
人妻なんかに興味はない。ただ、誰のものになろうと子どもがいようと、お前だけを。
こうして並んでいるだけで、自分たちが夫婦になったような錯覚に陥るぐらい、お前が好きなんだ。
言えない言葉は飲み込み笑いかけてくる総悟の子どもに微笑み返すと、一層冬悟は嬉しそうに笑った。


**


「ん、どうした冬悟」

 土方さんを見送った帰り、抱っこして歩いているとぶーぶー文句を言い始めた。熊の耳がついた帽子をかぶり、俺の後ろを指差して何か言っている。唾も飛んでんだろうなと思いつつ背中を撫でる。
まだ駅が見える。土方さんと別れるのが名残惜しかったりするのだろうか。やっぱり本能で解るのか。

「本当の父親だもんなァ」
「うー」

可愛い冬悟。俺の遺伝子なんか微塵も入っていない代わりに半分は土方さんの遺伝子を継いでいる。可愛い可愛い、あの人の子。
俺の妻は、土方さんが卒業間近、一時だけ付き合っていた彼女だ。その期間も一週間ぐらいらしいし、ヤったのも一回だけ。その一回が、土方さんにしては珍しく避妊具を使わなかったらしくて。別れた後に妊娠に気付いて、土方さん恋しさに認知されなかろうと生もうとしていたところ出会った。高校の一個上の先輩だったからなんとなく知っていたし、俺が土方さんと仲良かったのも知っていたあの人は、酔った勢いで事情を全部話してきて、俺は酔った勢いで父親になってやろうかと提案した。
土方さんの子どものために、俺たちは結婚したのだ。仮面夫婦ってやつかもしれない。それでも、あの人のことは嫌いじゃないし冬悟は本当に可愛い。

「冬悟」
「んーあ」

 顔が見えるように抱き直すとにこりと冬悟は笑った。
目元が似ているなんて土方さんは言っていたけどそれはありえない。冬悟の目元は妻に似ている。前髪は土方さん。鼻の形も土方さん。唇は妻かな。俺に似てるなんて錯覚だ。馬鹿な人。
最後に会ったときから全然変わっていない。少し、目付きの鋭さは増していたけど。身に纏う煙草の匂いも、俺に言い返すとき、右の眉が上がるのも。
冬悟が大きくなったら、土方さんみたいになるのだろうか。そうなってほしい。全然似ていなくてもいいけれど。

「あーあ!」
「また会えるといいなぁ、冬悟」
「ぶー?」

何も知らない綺麗な眼を向ける冬悟の唇に、ちゅっとちゅーしたら、昔一度だけ土方さんとキスしたことを思い出した。

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