梅々
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土方の愛した沖田とは
- 2014/03/14 (Fri) |
- 土沖 |
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数年前から書きたかった記憶が一日しか持たない沖田ネタ。
本当は本にしたかったけど書けないよ!
恋人である土方さんが仕事があるとかで出掛けてしまったから、することもなく家の中をぶらぶらうろついた。テレビは面白そうなものがやっていないし、そもそも見る気にならなくて。自分が寝ていた部屋は布団と箪笥があるだけで何も面白いものはなかった。続いてもう一つの部屋を覗いてみた。
そこは書斎のようだった。小さい部屋の壁面には本棚があり、窓に面した文机もある。土方さんの部屋だろう。何かないかと部屋へ入り、まず本棚を物色してみた。
小難しそうなのが並んでいる中、十冊弱、背表紙のない同じ装丁の本が並んでいた。
「……エロ本とかだったりして」
なんて期待して開いたら、それは日記だった。しかも日付は十年も前のものだ。
書いたのは土方さんだろう、几帳面な字で綴ってある。
なになに……と読み進めたら、目を疑うようなことが書いてあった。
「総悟」
「……ああ、おかえりなせぇ」
かちり、電気がついてはっと顔を上げた。気づけば日が暮れていた。顔を上げれば部屋の入り口に土方さんが立っていた。
「…………読んだのか」
「全部は読めてやせんけどね」
読み終えて積んだ本を見て薄く笑い、腹が減ってねぇかと土方さんは着ていた羽織を脱ぎながら問いかけてきた。
「それよりも。これに書いてあんのは本当なんですかィ?」
「嘘だと思うか? そんな狂っちゃいねぇよ」
ああでも、続けながら土方さんは部屋を出てしまうから慌てて追いかけて続きをきく。
「恋人ってのは嘘だ」
座卓の上に買ってきた弁当を置いて、座る土方さんの真向かいに腰掛けた。
「あれ読んだのはおまえが初めてだ。まぁ、あんまり家空けないようにしてるから、その所為かもしれねぇが」
「……病名は難しくて読めなかったけど、記憶が一日しかもたねぇって」
「そうだ」
「あんた、十年間毎日そんな俺の相手してんの?」
「そうだ」
なんてことないように言って煙草を吸い始める。
どんな気持ちで、俺のそばにいるのだろう。
最初の頃は、小さなことを忘れるところから始まったらしい。一緒に行ったお祭りだとか、仕事の話だとか。それからどんどん一緒に仕事している人のことを忘れていったらしい。亡くしたという俺の姉のことも、世界で一番大事にしていたという人のことも、勿論土方さんのことも。
そうして、一年から半年、半年から一月、そして一日と、俺の記憶が持つ時間は年を経ることに短くなったのだという。その頃には土方さん等がいた組織は解体されたらしくて、土方さんは物書きとなって俺の世話をしているらしい。
目覚めた俺の挨拶はいつも土方さんに誰だと尋ねるもので、それに土方さんは所々嘘を交えて答える。時には友人、時には兄弟、時には姉の旦那、時には恋人。すんなり信じて一緒に買い物行って料理をする日もあれば、疑い尽くして部屋の隅で丸くなって一日を終える日もあるらしい。
日によって俺はまるで別人のようで。なんでそれでも、こうして側にいてくれるんだろうか。今日、こうやって土方さんのことを思う俺も明日には消えてしまうのに。
「土方さんってドM?」
「昔、おまえによくそう言われたよ」
そう、懐かしそうに言う顔がとても優しい。
「おれのことすきだったの」
ぽんと、尋ねてから口を手で覆った。何も考えないで馬鹿なことを言った。
おそるおそる土方さんを見つめたら、間の抜けた顔をしていた。
それが、心底おかしそうな顔に変わる。
「じゃなきゃこんな酔狂なことはしねぇ」
頬を愛しげになでられて、なんだか無性に泣きたくなった。
本当は本にしたかったけど書けないよ!
恋人である土方さんが仕事があるとかで出掛けてしまったから、することもなく家の中をぶらぶらうろついた。テレビは面白そうなものがやっていないし、そもそも見る気にならなくて。自分が寝ていた部屋は布団と箪笥があるだけで何も面白いものはなかった。続いてもう一つの部屋を覗いてみた。
そこは書斎のようだった。小さい部屋の壁面には本棚があり、窓に面した文机もある。土方さんの部屋だろう。何かないかと部屋へ入り、まず本棚を物色してみた。
小難しそうなのが並んでいる中、十冊弱、背表紙のない同じ装丁の本が並んでいた。
「……エロ本とかだったりして」
なんて期待して開いたら、それは日記だった。しかも日付は十年も前のものだ。
書いたのは土方さんだろう、几帳面な字で綴ってある。
なになに……と読み進めたら、目を疑うようなことが書いてあった。
「総悟」
「……ああ、おかえりなせぇ」
かちり、電気がついてはっと顔を上げた。気づけば日が暮れていた。顔を上げれば部屋の入り口に土方さんが立っていた。
「…………読んだのか」
「全部は読めてやせんけどね」
読み終えて積んだ本を見て薄く笑い、腹が減ってねぇかと土方さんは着ていた羽織を脱ぎながら問いかけてきた。
「それよりも。これに書いてあんのは本当なんですかィ?」
「嘘だと思うか? そんな狂っちゃいねぇよ」
ああでも、続けながら土方さんは部屋を出てしまうから慌てて追いかけて続きをきく。
「恋人ってのは嘘だ」
座卓の上に買ってきた弁当を置いて、座る土方さんの真向かいに腰掛けた。
「あれ読んだのはおまえが初めてだ。まぁ、あんまり家空けないようにしてるから、その所為かもしれねぇが」
「……病名は難しくて読めなかったけど、記憶が一日しかもたねぇって」
「そうだ」
「あんた、十年間毎日そんな俺の相手してんの?」
「そうだ」
なんてことないように言って煙草を吸い始める。
どんな気持ちで、俺のそばにいるのだろう。
最初の頃は、小さなことを忘れるところから始まったらしい。一緒に行ったお祭りだとか、仕事の話だとか。それからどんどん一緒に仕事している人のことを忘れていったらしい。亡くしたという俺の姉のことも、世界で一番大事にしていたという人のことも、勿論土方さんのことも。
そうして、一年から半年、半年から一月、そして一日と、俺の記憶が持つ時間は年を経ることに短くなったのだという。その頃には土方さん等がいた組織は解体されたらしくて、土方さんは物書きとなって俺の世話をしているらしい。
目覚めた俺の挨拶はいつも土方さんに誰だと尋ねるもので、それに土方さんは所々嘘を交えて答える。時には友人、時には兄弟、時には姉の旦那、時には恋人。すんなり信じて一緒に買い物行って料理をする日もあれば、疑い尽くして部屋の隅で丸くなって一日を終える日もあるらしい。
日によって俺はまるで別人のようで。なんでそれでも、こうして側にいてくれるんだろうか。今日、こうやって土方さんのことを思う俺も明日には消えてしまうのに。
「土方さんってドM?」
「昔、おまえによくそう言われたよ」
そう、懐かしそうに言う顔がとても優しい。
「おれのことすきだったの」
ぽんと、尋ねてから口を手で覆った。何も考えないで馬鹿なことを言った。
おそるおそる土方さんを見つめたら、間の抜けた顔をしていた。
それが、心底おかしそうな顔に変わる。
「じゃなきゃこんな酔狂なことはしねぇ」
頬を愛しげになでられて、なんだか無性に泣きたくなった。
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