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梅々

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命あっての人生かな。

やっぱりさ、そういう系の人が男子校入るんだよ。

と、男性二人が話あっていた。彼らはノーマルなはずだが、興味あるのかな?とか真面目に悩んだ。私の周りにはノーマルしかいないけど、土方&沖田変換したくなるような人々は何気に多いです。

「このプリント欲しい?」

「当たり前だろ」

「じゃあ、あげない」

というやりとりを後ろの席でやられてりゃ誰しも変換したくなると私は信じてます。


それでは受験ネタな百人一首。













思ひわび さても命は あるものを
憂きにたへぬは 涙なりけり





想いを捧ぐ崇高なる夜想曲





朝から様子がおかしいとは思っていた。
妙にいつもより静かであるし、時々切なそうに窓の外に向けられる視線。チラチラと時計を見る瞳は、山崎が出来ることなら時計になってしまいたいと思ってしまう程に熱がこもっていた。

今日は、あの人が休みなのだ。

本日数回目の休み時間、見慣れない携帯を両手で握り締め祈るように目を瞑っている沖田は、本物のキリシタンかと見間違う程必死そうだった。
堪らなくなって山崎は勇気を振り絞り声をかける。

「どうしたんですか? 沖田さん」

我ながらもう少し気の利いた事が言えないのかと腹立たしくなるがそれでも、沖田は哀しげな双眸に山崎を写した。

「・・・今日、東大の選抜の日なんでさァ」

その一言で全てが分かった。
土方はこの学校から唯一、東大という国公立の大学へ進む人だ。土方以外は就職か私立かで、“我が校初の東大生”と全校生徒に限らず職員からの期待を背負っている。その割には、受験日当日はいつも通りに授業やなんやかんややっているのだから薄情なものであるが。
そんな風にプレッシャーだけかけといて、全面的に応援するわけでもないから山崎みたく“今日”という日の大切さを忘れている者が七割はいるだろう。残り三割は秘かに土方への恋慕を募らせている女子─────そして、沖田と近藤。
沖田は朝からあからさまに所作に示しているし、近藤は近藤でいつもよりも騒がしく妙に迫っている。不安を紛らわせる為なのだろうと分かっていても、近藤には静かにしていて頂きたいがそれはさておき。
沖田は朝から今までずっと待っているのだ。結果は今日でないにしても、『やれるだけやった』と土方から報告が入るのを授業中でも自分の携帯を握り締めて。
なんて、一途なのだろう。あの人のいない時はこんなにも真っ直ぐに、沖田は土方だけを想う。
そんな姿を見て山崎は思いしらされるのだ。
沖田の傍に土方が居ても居なくても、沖田の中には土方しかいないのだと。

勝負をする前から山崎が負けるという結果は堂々とそこにある。山崎にとってどうあがいても越えられない壁のようなものなのだ、土方は。

「・・・合格するといいですね」

「・・・・・・別に。落ちちまえばいいんでさァ、あんなヤツ」

それなら、何で貴方はそんなに必死そうに祈っているんですか。

本人が気付いていないから質が悪い。それは恋心なんですよ、なんて教えてあげられる程山崎は諦めが良くない。幾度となく諦めようとするのだが結局は諦めきれずに無意味だと理解していてもあがく。
それでも、沖田は気付かない。


ヴヴヴ・・・とバイブの音が響いた。沖田は早く声を聞こうと手際良く通話ボタンを押した。

「もしもし、土方さんっ・・・! ・・・へい。・・・・・・そうですかィ・・・受かりそうなんで? ・・・・・・ハハ、そんな自信あって落ちたら無様ですねィ」

嬉しそうな笑みを浮かべ安心しきった声で朗らかに沖田は電話の相手である土方と楽しそうに話す。
山崎には土方の声も話も聞こえてこないが、沖田の様子からそれなりの手応えを感じたのだろうと推測出来る。
こんな嬉しそうな沖田を見ることが出来て良かったと思う反面、憎くもある。沖田に笑顔をもたらしたのも不安にさせたのも土方なのだ。好敵手意識がいつまで経っても消えない。敵うところなんて味覚と地味さぐらいしかない、土方と正反対な俺なんかが、彼に選ばれる可能性は、皆無。
頭で理解出来ていても心はいうことを聞かない。好きだと思ったが最後、増殖する気持ちを止める術など無くて、ただただ辛くなるだけ。

「・・・山崎、土方さんこれから学校来るってよ」

「人垣が出来そうですよね・・・」

「何で皆土方さんに注目なんかすんだろ。理解しかねまさァ。な、山崎」

誰よりもあの人を見ているくせに。

つい憎まれ口を叩いてしまいそうになり、そうですねと溜め息まじりに呟いた。





#82

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