梅々
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人魚の涙
バイトしてきましたー。
もうひきこもり生活がいっぺんして、外にいる時間が増えてそこにバイトが入りでとても疲れました・・・。
そんな今日、先週から熱出てる妹から移ったのか母と妹もばたんきゅー。
我が身には降り注がないことを祈ってます。
では、遅くなりました。ホリック女郎蜘蛛の話のパロで土沖チック。
もうひきこもり生活がいっぺんして、外にいる時間が増えてそこにバイトが入りでとても疲れました・・・。
そんな今日、先週から熱出てる妹から移ったのか母と妹もばたんきゅー。
我が身には降り注がないことを祈ってます。
では、遅くなりました。ホリック女郎蜘蛛の話のパロで土沖チック。
人魚の体を得れば不老不死を得る
人魚の心を得れば何を得る?
氷細工
淡い桜色の柔らかそうな唇が、近藤さん?と弱々しく声を発した。鈴の転がるような、澄んだ声。髪の色は艶やかな蜂蜜色だが乱れていて、無粋な包帯が額を隠すように巻かれている。肌も白い。白く、艶やかであったのだろうが、痣や殴られた痕などが痛々しく、顔に、素足に残っていて。
部屋も、無惨なものなのだ。玄関のドアを開けた途端、視界に入る室内には物が散乱しており、床や壁には凹んでいる箇所があり、床に落ちている鋏の刃先には赤黒く固まった血が付着している。
こんな部屋に、いて。目の前の人間は何事もないような顔をしている。
「・・・近藤さんの頼みで来た」
「ふーん。・・・近藤さん、具合でも悪いんですかィ」
「いや、多忙なだけだ」
「・・・そうですかィ」
力なく呟いて、彼は視線を下げた。
まだあどけなさが残っている少年。十代後半、同い年あたりだろうか。落胆のしようから近藤さんを心から慕っているのだと分かった。
というか、これは家庭内暴力なんじゃないか。家も惨憺たるもので、彼の姿も暴行を受けたと一目で分かるものだ。そう、問うと。
「・・・恋人でさァ。俺、いつも怒らしちまうんで」
それならあれだ、デートDV。そう言おうとしたら強い眼差しが、言葉を拒否した。見ず知らずの人間に、口出されたくはないのだろう。プライドの高そうな顔をしている。
だが、赤の他人ではあるが、こんなにも酷い姿を見たら口を出さずにはいられない。多少お節介な自覚はある。だがそれを抜きにしても、心配になる。
「・・・俺が、抵抗しなかっただけでさ。アンタは、気にしないでいい」
心配にはなったのだが。突き放されればそれ以上は何も言えない。近藤さんからの手紙を手渡し、結局何もすることができないまま、俺は帰った。
*
それが、五年前の話だ、彼のことは何気なく覚えていた。普段は意識すらしないが、不意に、思い出すことがあったりして。綺麗な顔をしていた、だが傷だらけの姿だったから、というのが理由だろう。印象が強すぎる。
いま思えば、無遠慮に言い過ぎた。赤の他人にああもズカズカ自分の領域入り込まれ口を出されては、誰しもが不快な思いをするというのに。
前と同じように、近藤さんに彼のところへ行ってくれと頼まれた。「俺は手が離せなくて行けなくってな。トシなら大丈夫だと思うから、行ってくれないか?」とこんな感じに言われて、思い出した。五年前も、俺なら大丈夫だと言われた。
だが実際はどうだ。不快な思いをさせただけではないか。大丈夫ではない。なかった。だが近藤さんは相も変わらず俺なら、と言った。彼は近藤さんに告げ口しなかったのだろうか。俺の言葉で不快になったと。
五年前とは、違うマンションだった。外装は新しく、立地もいい。うちのマンションとは偉い違いだ、と僅かに思う。
呼び鈴を鳴らす。誰も出てこない。うっすらと既視感を感じつつ、ドアノブを回す。開いた。そのまま中へ入る。
前回よりかは室内は荒れていなかった。紙だの小物だのは散らばっているが、椅子が倒れてるわけではない。だが、赤く点々と、染みが出来ているのが視界に入った。慌てて中に入り、彼の姿を探す。閉じられていたリビングへのドアを開けるとすぐに、見つけた。
外からは穏やかな春の日差しが降り注ぎ、明かりのついていない部屋を優しい色に染めていた。開いたままの窓から吹き込む柔らかな風に、床やローテーブルの上に散らばっている紙や本がはためく。そんな中、靡くカーテンに埋もれながら窓に背を預け体育座りをした彼の姿があった。総悟と言うらしい。近藤さんが教えてくれた。
「・・・総悟、」
「・・・ヒジカタ、さん」
顔を上げた、彼の顔は五年前と変わらなかった。包帯や怪我の位置、状態は違ったが、問題なのはそこではない。
全く成長していないのだ、記憶の中のままの、顔。鼻や唇などの細部まで覚えているわけではないが、輪郭も瞳の大きさも、成長とともに鋭くなっていくはすのものが未だに丸みを帯びたままだ。同い年に見えた彼は、五年経った今、年下にしか見えない。
だが五年前とは違い、名前を呼ばれた。余所余所しさが僅かに、なくなっている気がする。
「・・・なんで名前知ってんだ?」
「近藤さんに聞いた。アンタもでしょう」
「ああ。・・・また恋人か? 病院行ったほうがいいんじゃねぇか」
聞けば何も言わずに、視線を反らした。視線を反らし、開いたままの窓の向こう、ベランダを見遣った。
とりあえず、と散らばった紙の類いを纏めていると、紙に混じり散乱していた写真を見つけた。写真の中で満面の笑みを浮かべている彼の姿と、男の姿。男のほうも楽しげに笑っているのに、何故彼らはいま、こうなってしまったのだろう。
「怖くなったんだそうです。皆そう言う。最初は嬉しそうにするくせに怖くなって、俺に当たりだすんでさァ。・・・そんで、皆」
死んじまった。
聞き捨てならない言葉に顔を上げた。彼は、此方を見てうっすらと、笑みを浮かべる。
ふんわりと、淡い光が彼の体を包んだ。きらりきらり、光の粒が浮遊して、目元に残る痣が溶けるように消えていく。目許だけではない。手足も、あっという間に白く、滑らかな肌へと、変わっていった。
それだけではなかった。白く柔らかそうな肌を光が覆い、それらが瞬きながら白銀に煌めく鱗へ変わり―――両の足があっという間に、一つの尾ひれへと変わった。
「え、」
人魚だ。シャツを頼りなくきた上半身も人形のような顔もそのままで、ただ下肢だけが、鱗に覆われて。
テレビを見ているようだ。或いは、夢か。しかし、窓から入る春の匂いを伴う風も、驚きのあまりしだした頭痛も、夢にしては妙に冴えきっている。
人でないから年をとらず、人魚だから傷も癒えるのか。昔からよくいう、人魚の血肉を食べると不老不死になると。人魚などいないから、ただの空想だと思っていたが。
「傷を治したら怖がってキレるから、治せなかったけど。あの人も結局死んじまったし。・・・アンタは怖がりやすか?」
聞いたその目が縋るような光を帯びているように、見えた。実際は気のせいだったかもしれないが、そう俺の目には映った。怖い、と思うのは仕方がないことだと思う。自分の知らない世界が存在すると知り、純粋に喜べるのは子どもだけだ。大人になると、それが敵対するものではないかに意識がいき、結果恐怖を招く。
怖いが、それだけではなくて。
「そりゃあ。・・・でもな、」
「でも?」
「・・・それだけじゃなくて、なんつうか」
綺麗だと思う。可哀想だと思う。お節介を自負していながらも、守ってやりたいと思った。だが、安易に言葉にするわけにはいかない。会って二回目の所詮は他人だ。思い付きで守ってやるなんて行ったところで、末路は目に見えている。
言葉にせずとも伝わったのか、彼は嬉しそうに、ありがとうございやすと呟いた。その表情になんとも言えず切なくなる。何度、信じては裏切られたのだろうか。彼は。自分の理想と現実のギャップに畏怖を覚えた人間に、傷つけられて。無意識のうちに、相手にも自分と同じものを望むからだろうか。それならば。
―――――単なる、思い付きでしかないけれど。もし、できるのなら。
「お前が、嫌じゃないなら。おまえの血を舐めさせろ」
「・・・は?」
「そしたら、本当かは知らねぇが俺もおまえと似たような感じになるんだろ?」
唖然として、人魚は俺を見た。待てよ、これで不老不死とかにならなかったら意味ない。言ってから問題点に気付いたが、深くは考えない。
同じものを求めるのなら。自分が彼と同じになればいい。たったそれだけのことではないのだろうか。
「・・・ははっ、そんなこと言ったのアンタが初めてでさァ。いいですぜ、ヒジカタさん。アンタに血をあげまさァ」
「・・・いいのか」
「・・・保証はできやせんが。流石は近藤さんが認めた人ですねィ」
手元に転がっていたカッターで総悟は指を切った。線から玉が生まれ、弾けるように肌を滑る赤い血。近づいて、指ごと口に含み舌に絡めると、不思議な味がした。甘くて、仄かに鉄の味。舐めながら総悟の顔を見ると、微笑んでいる。
愛しいのかもしれない。そうでなければこんな突飛な行動には出ない。
唇を離し、総悟、と名を呼ぶとしなやかな腕が背に回された。
人魚の心を得れば何を得る?
氷細工
淡い桜色の柔らかそうな唇が、近藤さん?と弱々しく声を発した。鈴の転がるような、澄んだ声。髪の色は艶やかな蜂蜜色だが乱れていて、無粋な包帯が額を隠すように巻かれている。肌も白い。白く、艶やかであったのだろうが、痣や殴られた痕などが痛々しく、顔に、素足に残っていて。
部屋も、無惨なものなのだ。玄関のドアを開けた途端、視界に入る室内には物が散乱しており、床や壁には凹んでいる箇所があり、床に落ちている鋏の刃先には赤黒く固まった血が付着している。
こんな部屋に、いて。目の前の人間は何事もないような顔をしている。
「・・・近藤さんの頼みで来た」
「ふーん。・・・近藤さん、具合でも悪いんですかィ」
「いや、多忙なだけだ」
「・・・そうですかィ」
力なく呟いて、彼は視線を下げた。
まだあどけなさが残っている少年。十代後半、同い年あたりだろうか。落胆のしようから近藤さんを心から慕っているのだと分かった。
というか、これは家庭内暴力なんじゃないか。家も惨憺たるもので、彼の姿も暴行を受けたと一目で分かるものだ。そう、問うと。
「・・・恋人でさァ。俺、いつも怒らしちまうんで」
それならあれだ、デートDV。そう言おうとしたら強い眼差しが、言葉を拒否した。見ず知らずの人間に、口出されたくはないのだろう。プライドの高そうな顔をしている。
だが、赤の他人ではあるが、こんなにも酷い姿を見たら口を出さずにはいられない。多少お節介な自覚はある。だがそれを抜きにしても、心配になる。
「・・・俺が、抵抗しなかっただけでさ。アンタは、気にしないでいい」
心配にはなったのだが。突き放されればそれ以上は何も言えない。近藤さんからの手紙を手渡し、結局何もすることができないまま、俺は帰った。
*
それが、五年前の話だ、彼のことは何気なく覚えていた。普段は意識すらしないが、不意に、思い出すことがあったりして。綺麗な顔をしていた、だが傷だらけの姿だったから、というのが理由だろう。印象が強すぎる。
いま思えば、無遠慮に言い過ぎた。赤の他人にああもズカズカ自分の領域入り込まれ口を出されては、誰しもが不快な思いをするというのに。
前と同じように、近藤さんに彼のところへ行ってくれと頼まれた。「俺は手が離せなくて行けなくってな。トシなら大丈夫だと思うから、行ってくれないか?」とこんな感じに言われて、思い出した。五年前も、俺なら大丈夫だと言われた。
だが実際はどうだ。不快な思いをさせただけではないか。大丈夫ではない。なかった。だが近藤さんは相も変わらず俺なら、と言った。彼は近藤さんに告げ口しなかったのだろうか。俺の言葉で不快になったと。
五年前とは、違うマンションだった。外装は新しく、立地もいい。うちのマンションとは偉い違いだ、と僅かに思う。
呼び鈴を鳴らす。誰も出てこない。うっすらと既視感を感じつつ、ドアノブを回す。開いた。そのまま中へ入る。
前回よりかは室内は荒れていなかった。紙だの小物だのは散らばっているが、椅子が倒れてるわけではない。だが、赤く点々と、染みが出来ているのが視界に入った。慌てて中に入り、彼の姿を探す。閉じられていたリビングへのドアを開けるとすぐに、見つけた。
外からは穏やかな春の日差しが降り注ぎ、明かりのついていない部屋を優しい色に染めていた。開いたままの窓から吹き込む柔らかな風に、床やローテーブルの上に散らばっている紙や本がはためく。そんな中、靡くカーテンに埋もれながら窓に背を預け体育座りをした彼の姿があった。総悟と言うらしい。近藤さんが教えてくれた。
「・・・総悟、」
「・・・ヒジカタ、さん」
顔を上げた、彼の顔は五年前と変わらなかった。包帯や怪我の位置、状態は違ったが、問題なのはそこではない。
全く成長していないのだ、記憶の中のままの、顔。鼻や唇などの細部まで覚えているわけではないが、輪郭も瞳の大きさも、成長とともに鋭くなっていくはすのものが未だに丸みを帯びたままだ。同い年に見えた彼は、五年経った今、年下にしか見えない。
だが五年前とは違い、名前を呼ばれた。余所余所しさが僅かに、なくなっている気がする。
「・・・なんで名前知ってんだ?」
「近藤さんに聞いた。アンタもでしょう」
「ああ。・・・また恋人か? 病院行ったほうがいいんじゃねぇか」
聞けば何も言わずに、視線を反らした。視線を反らし、開いたままの窓の向こう、ベランダを見遣った。
とりあえず、と散らばった紙の類いを纏めていると、紙に混じり散乱していた写真を見つけた。写真の中で満面の笑みを浮かべている彼の姿と、男の姿。男のほうも楽しげに笑っているのに、何故彼らはいま、こうなってしまったのだろう。
「怖くなったんだそうです。皆そう言う。最初は嬉しそうにするくせに怖くなって、俺に当たりだすんでさァ。・・・そんで、皆」
死んじまった。
聞き捨てならない言葉に顔を上げた。彼は、此方を見てうっすらと、笑みを浮かべる。
ふんわりと、淡い光が彼の体を包んだ。きらりきらり、光の粒が浮遊して、目元に残る痣が溶けるように消えていく。目許だけではない。手足も、あっという間に白く、滑らかな肌へと、変わっていった。
それだけではなかった。白く柔らかそうな肌を光が覆い、それらが瞬きながら白銀に煌めく鱗へ変わり―――両の足があっという間に、一つの尾ひれへと変わった。
「え、」
人魚だ。シャツを頼りなくきた上半身も人形のような顔もそのままで、ただ下肢だけが、鱗に覆われて。
テレビを見ているようだ。或いは、夢か。しかし、窓から入る春の匂いを伴う風も、驚きのあまりしだした頭痛も、夢にしては妙に冴えきっている。
人でないから年をとらず、人魚だから傷も癒えるのか。昔からよくいう、人魚の血肉を食べると不老不死になると。人魚などいないから、ただの空想だと思っていたが。
「傷を治したら怖がってキレるから、治せなかったけど。あの人も結局死んじまったし。・・・アンタは怖がりやすか?」
聞いたその目が縋るような光を帯びているように、見えた。実際は気のせいだったかもしれないが、そう俺の目には映った。怖い、と思うのは仕方がないことだと思う。自分の知らない世界が存在すると知り、純粋に喜べるのは子どもだけだ。大人になると、それが敵対するものではないかに意識がいき、結果恐怖を招く。
怖いが、それだけではなくて。
「そりゃあ。・・・でもな、」
「でも?」
「・・・それだけじゃなくて、なんつうか」
綺麗だと思う。可哀想だと思う。お節介を自負していながらも、守ってやりたいと思った。だが、安易に言葉にするわけにはいかない。会って二回目の所詮は他人だ。思い付きで守ってやるなんて行ったところで、末路は目に見えている。
言葉にせずとも伝わったのか、彼は嬉しそうに、ありがとうございやすと呟いた。その表情になんとも言えず切なくなる。何度、信じては裏切られたのだろうか。彼は。自分の理想と現実のギャップに畏怖を覚えた人間に、傷つけられて。無意識のうちに、相手にも自分と同じものを望むからだろうか。それならば。
―――――単なる、思い付きでしかないけれど。もし、できるのなら。
「お前が、嫌じゃないなら。おまえの血を舐めさせろ」
「・・・は?」
「そしたら、本当かは知らねぇが俺もおまえと似たような感じになるんだろ?」
唖然として、人魚は俺を見た。待てよ、これで不老不死とかにならなかったら意味ない。言ってから問題点に気付いたが、深くは考えない。
同じものを求めるのなら。自分が彼と同じになればいい。たったそれだけのことではないのだろうか。
「・・・ははっ、そんなこと言ったのアンタが初めてでさァ。いいですぜ、ヒジカタさん。アンタに血をあげまさァ」
「・・・いいのか」
「・・・保証はできやせんが。流石は近藤さんが認めた人ですねィ」
手元に転がっていたカッターで総悟は指を切った。線から玉が生まれ、弾けるように肌を滑る赤い血。近づいて、指ごと口に含み舌に絡めると、不思議な味がした。甘くて、仄かに鉄の味。舐めながら総悟の顔を見ると、微笑んでいる。
愛しいのかもしれない。そうでなければこんな突飛な行動には出ない。
唇を離し、総悟、と名を呼ぶとしなやかな腕が背に回された。
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