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梅々

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七夕

あと一時間で沖田誕生日…!土方は時計見て「あーあと一時間か」って思いながら書類やってるのかな。
沖田は布団でごろごろ。

そして七夕。こちら所々空は見えるが星は見えませんどうぞ。天の川見たいなぁ。
織姫は土方で彦星は沖田だろうなって思う。二人でいてサボるのは沖田しかないし。


明日はテストとプレゼンでがっつり三教科の上明後日漫研原稿〆切の火曜英語テストです。死にそう。





では、七夕も絡めたおきたんネタ前編!甘々えっちに繋げたい。















今の距離がちょうどいいのは知ってる

でも我慢なんかできねぇよ





催涙雨





 音をなくした世界で、郷愁に似た眩しさがちかちか瞬いた。泣きたくなるような淡い色彩、優しげな横顔。
 欲しくなって手を伸ばした。忽ち壊れる静けさ。クラスメイトの声ががやがや耳に入り丸い目が俺を視界の中心に据えた。生粋の日本人のくせに赤みがかった瞳、日に瞬く薄い髪の色。見慣れたそれが一瞬、いつもと違って見えてどきりとした。

「えっ、なに土方さん」

「いやなんでもね」

 期末試験前の暑い七月。節電のため設定が高いエアコンの恩恵に肖れない窓際。カーテンが温い風にそよぐ。そのまま目の前の柔らかな髪を拐う様は涼しげだ。中途半端な位置まで伸ばした腕は引っ込め頬杖をつき直す。
 周りは自習をしていたり、試験範囲からクイズを出し合っている奴らばかりの中、何をするでもなく向かいあってぼーっと窓の外を眺める。総悟は眠いのか口数が少ない。
 昨日、違うクラスの女子が総悟の誕生日を祝おうかと話していたのをたまたま聞いた。日誌を出しに行った帰りで本人は傍にいないときだった。誕生日か、そういえばそろそろだとその話を聞いて思い出したぐらい、かれこれ十八年間まともに祝って来なかったのだが。気になって仕方ない。例年その日は俺の家で皆でわいわい夕飯を食う。ミツバと母と姉が、昼間から仕込みをして俺の誕生日よりも豪華なものを作る。俺は、一緒に食うだけで何かやったこともおめでとうと言ったこともない。言われたこともない。
 何かしてやりたいと思う。総悟が喜ぶならなんでもいい。

「何ぼーっとしてんですかィ。呆けやしたか」

「んなわけねぇだろ」

「じゃあ恋煩いですかィ」

 まさか、笑い飛ばしてやろうとしたが呼吸が喉に張り付き噎せた。これじゃあ図星みたいだ、否定しようと顔を上げたら、総悟が目を丸くしていた。こんなに驚いた顔を久々に見る。ニヤニヤ笑ったりはよくするけれど、基本的に表情が乏しい奴だから。
 珍しい表情を見れ少し嬉しく思った薄ら寒い自分は無視して、口を開く。そんなに驚かれるようなことか。

「総悟?」

「付き合ってんですかィ? 片想い?」

 ふと顔を背けて総悟は窓の外を見る。楽しそうに揶揄うでもなく、淡々と聞かれて凹んだ。そこまで俺に興味はないのか。窓の外を熟視る横顔は無表情のくせにどこか切なげで、そんな表情にどきりとする。
 完全な片想いだ。総悟は俺を見やしない。視線を辿ると、自販機の前に担任が立っているのが見えた。そんな表情で、見るほどの価値はあるのかあいつに。

「……片想いだよ」

「へー。土方さんにも落とせない女がいるんですねィ」

 ニヤリ、此方を向いた総悟にお前だと言えたらどれぐらい嬉しいか。じわじわ真綿で首を絞められているようだ。無意識の言葉が一番質が悪い。
 十八年間傍にいた。十七年目にこれは友情なのかと違和感を感じ、十八年目にして恋心に気付いた。まだ出来立てほやほやの恋心、嫉妬や優越感を制御できずにいる。

「ほっとけ」

「まぁでも、アンタはいいとこねぇからなァ」

「あんだと?」

 ハハッと笑いながらちょっと便所へ、と立ち上がった総悟をぼんやりと見送る。サラサラと揺れる髪に触りたい、掻き乱したい。抱き締めたい。
まさかあんなやつに骨抜きにされるとは思わなかった。触りたくて触りたくて、頭が狂いそうになる。近藤さんのように触れられたらいい。だが、近藤さんみたいになりたいわけではない。
 独り占めしたい。俺のためだけに笑ってくれりゃそれでいい。俺のために笑うなんてことはありえないが。
 あー触りたい。思いながら総悟の机に突っ伏しているとトイレから帰ってきた総悟に頭を叩かれた。





 七夕飾りでさァ!
 チャリの後ろに乗っていた総悟がいきなり声を上げて、ブレーキを踏む。振り返ってみると商店街の入り口に笹が飾ってある。それに、色とりどりの短冊。書いてある願いは様々で、お姫様になりたいだの単位が欲しいだの、これ以上視力が悪化しないようにだの統一性は全くない。
 俺がチャリから降りる頃には総悟は笹の前に置かれた机の前に立ち、短冊を書き始めていた。餓鬼臭い。叶わないのは知っているだろうに。そう思うがアンタも書けと言われれば水を差すような言葉は喉の奥に押し戻してペンを握るしかない。
 何を書くか悩んでいる内に、さらさらと書き終えた総悟は短冊を笹に飾り付けていた。

「何て書いたんだよ」

「土方さんの片想いが実らないように」

「あぁそうかよ…」

 そんなこと書かずとも実らないようなものなのに。いつも通りの悪戯のつもりだろうが、一撃必殺のノリでMPを全部かっさらった。叶うものなら俺は片想いが実るよう願いたいが、総悟が隣にいる状況でそれを書くと恥をかくだけだ。無難に「大学合格」と書けば詰まらなさそうに唇を尖らせた。
 艶やかな桜ん坊色の唇が誘っているようにしか見えない。

「つまんねぇのー」

「うるせぇよ」

 帰るぞ、言って自転車に乗れば総悟は素直に返事をし、背中にぎゅうとしがみついてくる。心臓を直に捕まれたようになって歯を噛み締め手にも力を込める。気を抜いたら何をするか分からない、なんてことを毎日繰り返して堪えている自分を誉め称えたい。

「おまえは好きなやついるのか」

 商店街を抜け川沿いの土手を走る。視界は開けているが背後に確かな温もりを感じる。川の水が太陽の光に反射してきらきら眩しい。
 どうせばれたのだからと開き直り聞き返す。あーと曖昧な声を発した総悟はしがみついてくる力を少し強めた。砂利道だから不安定なんだろう。

「いやすよ」

「…そうか」

 きっぱりと返されてちらつくのはあのいけすかない担任だ。総悟は矢鱈と懐いているし、さっきのあの視線からしてもあいつ以外に考えられない。もし相手が近藤さんなら、仕方ないと思えるのだがあの野郎だけは嫌だ。
 なんとなく予想はできていた返答だが、それでも傷つきはする。MPはもうマイナス値だ。総悟の温もりが回復してくれるがそんなじゃとても間に合わない。

「やっぱり短冊、アンタの願いが叶わねぇように、にしときゃ良かったなぁ」

「どっちにしろ俺のことじゃねぇか。おまえの願いを書けっつうの」

 どうせ叶わねぇし。
 ぽつり、風音の合間に聞こえた声は不安定で顔を見たくなったけれど。阻むように後ろから抱き締められて泣きたくなった。そんなにアイツが好きなのか。

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