梅々
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バレンタイン。
櫻の蕾にはまだ疾し
紅梅散りゆくその後に
貴方に愛を捧げませう
梅香抄
「総悟、逃げよう」
何度目かの情事のあと、彼は言った。
「逃げる、って何処へ?」
逃げられないと思うし、逃げたい、とは思わない。
いまの生活が、好きだから。
「何処へでも。こんな、人目を忍んで・・・っつうのはもうやめようぜ?」
そこで俺はシャツを着るのをやめ、後ろを顧みた。土方さんの表情が知りたかったから。
「土方さん・・・」
真剣、そのものだった。
冗談、だったならよかったのに。
俺は、逃げるつもりなんてないから。これっぽっちも。
あんたは、知ってるはずだ。
「なぁ、俺は警察なんざやめる。どっか田舎へいって・・・慎ましく暮らしていこう」
いや、じゃない。けれど、俺は逃げない。組織から抜けれない。ご恩が、あるし。 別にそんなことが理由な訳じゃないけど。
「総悟」
土方さんが優しく腕を掴んで俺を抱きしめた。
抱き締められるのが、好きだ。土方さんの匂いに包まれて頭がフワフワしてくるし、首筋を擽る、少し硬めの髪の毛も、全部好きだ。
この人を守る為、足を洗えない、ってのもあるケド。
「土方さん」
そっ、と体を離す。
そして押し倒して口付けた。
好き、だから離れたくないし、離したくない。ずっとずっとこの腕の中にいたい。
俺と土方さんが内通・・・というかこういう関係だと漏れたら、俺等は無事ではいられないだろう。土方さんは最低でも、職を失う程度だろうけど、俺は――――――。
「総悟」
名残惜しそうに、土方さんの舌が、唇が離れる。
「へい」
「・・・もう、行ったほうがいいんだろ?」
引き留めるように、強く言う。俺だって此処に居たい。でも。
わかってるだろィ?アンタも。
逃げられない、って。運命なんだ、って。
俺はいそいそと服を着て、土方さんの元を去った。
***
「旦那ァ」
「ん~?なぁに?総悟君」
いつも死んだ魚の目をしているクセして、中々抜け目のないボスに、いつもどおりの口調で話し掛けた。
「もし、俺が逃げたらどうしやす?」
旦那は一瞬だけ、ジャンプから顔をあげ、またジャンプに視線を戻した。
「総悟君なら、別になんもしないかな。側近だけど、口かたそうだし?・・・でも」
内心ガッツポーズをした瞬間、でも、と付け足された。まるで俺の心の中を知っているようなタイミングだった。
「・・でも?」
「駈け落ち、とかだったら許さないかな。連れ戻して薬漬けにして、その躯に俺を教えてやるよ」
そう言ったときの目付きがいつものような目、ではなく、暗い光が宿っていた――――気がする。
瞬きしたらいつも通り、笑っていたけれど。
「なんで、駈け落ちは駄目なんで?」
「それはね、総悟君の事が好きだからだよ」
「へ・・・」
突然の告白に、一瞬思考回路が停止した。
冗談、だよな・・・?
「大丈夫か~?固まってんぞ~?」
「冗談・・・?」
「さぁ、どっちだと思う?」
どっちだと思う?と言われても本気でわからない。旦那は笑顔でキツイ事言うし、その逆だってあるし。
何を考えてるのか、なんて全くわからない。
「まぁ、安心しなよ。両思いになりた~い、って訳じゃないから。好きな人がいるならそれでいいし?ただ、逃げなければいいから。傍に居てくれるなら」
・・・なんか、似てると思った。俺と、旦那の恋愛感、みたいなものが。
でも、傍にいれればいい、なんてありえないと思う。恋愛とは、相手の全てが欲しくなるものだと思うから。
多分、旦那はそれをわかってて言ってると思う。催促するつもりじゃあないだろうけど。
「土方・・・」
「えっ!?」
旦那が口にするとは思っていなかった名をきいて、過剰な反応をしてしまった。
・・・ばれてる?
「・・・気をつけたほうがいい」
そこで旦那はチェシャ猫のように、にんまり笑った。
「情が移るから、さ」
「・・・旦那は千里眼かなんかですかィ?」
なんでも、全てばれてる気がする。でも、不思議と嫌、だとか後ろめたさとかいう負の感情は生まれてこない。
「んな訳ないでしょ?総悟君の閨の中、までは知らないし」
その一言に、かーっと顔が赤くなるのがわかった。
そんなことまで知ってるのか、とも思ったが、土方さんとはラブホでしか会ってないんだから当たり前の事なのだ。
「・・・明日バレンタインなんだし、なんかやれば?」
バレン、タイン・・・?
そうか。何か、あげたほうがいいのか。・・旦那にも、あげたほうがいいのだろうか?
「ちょっと出掛けて来まさァ」
「はいよー」
***
どうしよう。チョコは買えたけど、土方さんに会う約束をしていない。ということは、渡せない。
「おはよー。総悟君」
「あっ、旦那。へいどうぞ」
とチョコを差し出した。旦那は全く予期していなかったらしく、目をパチクリさせている。
何か、新鮮な反応だ。
「・・あ~。なんてーか、ありがとな。義理でも嬉しいわ」
照れ臭そうに頭を掻いて、銀時はスタスタと歩いて行ってしまった。
・・可愛い。シャイだよなァ。旦那って。
さてと。電話、かけなきゃ。チョコを渡さねばならないんだから。
なんて言えばいいのかは旦那がちゃんと教えてくれたし、あとは・・タイミングと心意気。
深呼吸してから、かなりレトロな電話のダイヤルを回した。
『・・土方ですが』
「あっ・・・土方さん?」
『総悟か?どうした』
初めて、俺から電話がかかってきて、喜びつつも戸惑っているのが電話越しにもわかった。 つい、頬が緩んでしまう 。
「今日、一、二時間空いてやせんか?」
『昼前からならあいてるけど・・・?』
「じゃあ、いつものホテルの前にある公園に来てくだせぇ。いいですねィ?」
『あ、ああ・・』
言いたい事だけ言って、さっさと電話を切った。 胸がドキドキ、ドキドキと煩く、鳴り止まない。
あとは、渡すだけ、なのだけどそれが一番大変なのだ。 とちらないで、出来るかな?
兎角、支度をして行かなければ。
「あっ、沖田さん・・何処へ?」
出掛けよう、としたら旦那の・・所謂秘書に、丁度擦れ違った。
「眼鏡、旦那に出掛けるっつっといてくだせぇ」
「眼鏡じゃねぇよっ!ってあっ、ちょっ・・・」
突っ込み返す新八を無視し、コートを手に取り外へ出た。
約束の場所に、三十分も前についてしまった。いくらなんでも早すぎる。少女漫画の主人公みたいだ。乙女チック過ぎる。
・・・寝るか。もし来てくれたら起こしてくれるだろう。もしも、の話だけど。
来て、くれるだろうか―――――?
「・・・イ、オイ。起きろ」
霧がかった頭に響く、聞き慣れた声。
「・・・土方・・さん?」
重い目を擦り、土方さんが座れるよう上体を起こした。
「ったくよ・・・折角来てやったら寝てる、なんていい神経してるよな、お前」
隣にドカッと座り煙草をふかす姿に見惚れるが、怒っているのが見てわかる。そこもまた格好いいけど。
「で、何?」
「あの、ですねィ」
・・・言いづらい。またドキドキしてきたし。
生唾を飲んで、深呼吸して覚悟を決めた。
「これ、やりまさァ」
青い小さな包みを片手で土方さんの前に差し出した。
何度、キスしていても、抱かれていても、こういうのは初めてだから恥ずかしくて堪らない。
しかも、早く受け取ってくれればいいのに、全然受け取ってくれない、どころか身動き一つとらない。
「土方さん・・?」
背けていた顔を戻し、土方さんの顔を見ると・・・。
俺に負けないくらい、真っ赤だった。
「・・・ありがとな」
「なんでそんなに真っ赤なんで?」
「・・もらえるとは思ってなかったんだよ」
滅多に見れない土方さんの照れた顔に、目が釘付けになる。 バレンタインとはいいものかもしれない。こんなに素直な土方さんも、旦那も、滅多に見れないものだし。
突然、腕を掴まれ、立たされた。
「土方さん?」
「お返し、いまからやるよ」
「えっ・・ちょっ・・・職務放棄・・・っ」
「あ~。もうクビにでもどうとでもなれ」
そういい土方はホテルへと沖田を引っ張っていった。
でもちゃんとホワイトデーにもお返しするよ。土方だから。
にしても詰め込みすぎた。
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